レオン〜騎士道を知らずに騎士になった少年〜

お嬢さんのために

　レオンはエラのために、情報屋としての自分のネットワークを駆使して王子さまに関する情報を集めているところだ。他の街の情報屋にも調査を依頼し、日々聞き込みを続けている。王子さまの好きな物や興味のあることに関する情報を日々かき集めては、おしみなく全部エラに教えた。もちろん無償で。
　そしてエラはそれらの情報を元に、王子さまのハートを射止めるための作戦を練る。二人ともわくわくしていた。なんだかうまく行きそうな気がする。これはひょっとして、ひょっとするかもしれない……。

　そして王子さまのお妃選びの舞踏会の夜。レオンは、美しく装ったエラを荷馬車でお城に送り届けた。彼女はこの日のために、母親の形見のドレスをリメイクしていたのだ。可愛い共布の靴も履いている。大人っぽく髪を結い上げ、頭にきらきらした綺麗な飾りを乗せたエラは、本物のお姫さまのように見えた。
　エラが荷馬車に乗り込む際、レオンは彼女から包みを一つ預かった。中身はヘアメイク道具一式。
「王子さまのハートを射止めることができたら馬車には戻らない。だけど十二時までは待っていて」
　そう言われて待っていたけれど、エラは戻ってこなかった。