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四章

第53話 神聖力

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◇◇◇
認めてもらわないと。

ーーレアンドルは、恋を諦めたんだってーー。

そうしてほしいと、私の心が叫んでいる。
そうでないと、私の心にはまた傷がつくから。ーー嘘をついていたのに、私は傷ついたことになる。

「…レアンドルは、恋を諦めたのです。そうよね、レアンドル」

彼がと、そう言ってもらえれば、私と同じなのだと、思えるから。
だから、お願い。
どうか、そう言ってーー。

「…そう、ですね」

少々私の押しに逆らえなかったような感じがしたが、とりあえず言質はとれた。

ーーこれ以上、レアンドルのことで、心に傷をつけたくないから。


セシリア様とアレクシス殿下は、腑に落ちない様子だったが、その後彼は別の話題を提示した。

「これを見てもらえますか」

見せてもらったのは、赤いペンダントーー私が持っているのと、同じだ。

「どうして、これを…」
「母の形見でして」

母の。ーーエレナ妃の?
そうであれば、持っている理由にも頷ける。

「…これが、光ったのです」

セシリア嬢が、前に聞いてきた。
ーー光ることは、ありますかと。

あのときは、ない、と答えたがーー。

「では、見せてもらえますか」
「ええーーやってみます。セシリア、大丈夫?」

セシリア様はこくんと頷き、手に光を溜めた。

詠唱し、途端に光の小さな泡ができる。
そしてそれを、ペンダントに近づけたそのときーー。

パアァァ

光が、溢れ出す。
しばらく、見惚れていたーー美しくて、こんなに綺麗なものは見たことがない。

そして、フッと消えた。

「…その魔石は」
「ーーああ、これはやはり魔石なのですね。ーー何が込められているのですか?」
「神聖力ですがーーエレナ妃のかもしれませんわね」

エレナ妃のであるならば、セシリアに流れるマナか、もしくは神聖力が、エレナ妃のである、ということーー。

「…魔法、使えるのですね」
「ええ。冷魔の森が壊れましたので」

冷魔の森は、私たちスザンヌでも知る森だ。
そんな大切な、森が破壊されたーー要因は、一つしかないだろう。

「…渦、ですか?」
「はい」

なるほど。
ならば、マナが流れて当然だ。ーーもともとアスレリカ民にもマナは宿っているが、それら全てを冷魔の森が吸収し守っていたのだから。

「なら、神聖力でしょうか?」

アスレリカ民は、昔も、神聖力など持っていない。
一方、スザンヌにはある。

そして、神聖力は、その持ち主の物に宿るとかーー。

「…エレナ妃の持ち物。全て、かき集めてみましょう」
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