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四章
第53話 神聖力
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認めてもらわないと。
ーーレアンドルは、恋を諦めたんだってーー。
そうしてほしいと、私の心が叫んでいる。
そうでないと、私の心にはまた傷がつくから。ーー嘘をついていたのに、私は傷ついたことになる。
「…レアンドルは、恋を諦めたのです。そうよね、レアンドル」
彼が諦めたと、そう言ってもらえれば、私と同じなのだと、思えるから。
だから、お願い。
どうか、そう言ってーー。
「…そう、ですね」
少々私の押しに逆らえなかったような感じがしたが、とりあえず言質はとれた。
ーーこれ以上、レアンドルのことで、心に傷をつけたくないから。
セシリア様とアレクシス殿下は、腑に落ちない様子だったが、その後彼は別の話題を提示した。
「これを見てもらえますか」
見せてもらったのは、赤いペンダントーー私が持っているのと、同じだ。
「どうして、これを…」
「母の形見でして」
母の。ーーエレナ妃の?
そうであれば、持っている理由にも頷ける。
「…これが、光ったのです」
セシリア嬢が、前に聞いてきた。
ーー光ることは、ありますかと。
あのときは、ない、と答えたがーー。
「では、見せてもらえますか」
「ええーーやってみます。セシリア、大丈夫?」
セシリア様はこくんと頷き、手に光を溜めた。
詠唱し、途端に光の小さな泡ができる。
そしてそれを、ペンダントに近づけたそのときーー。
パアァァ
光が、溢れ出す。
しばらく、見惚れていたーー美しくて、こんなに綺麗なものは見たことがない。
そして、フッと消えた。
「…その魔石は」
「ーーああ、これはやはり魔石なのですね。ーー何が込められているのですか?」
「神聖力ですがーーエレナ妃のかもしれませんわね」
エレナ妃のであるならば、セシリアに流れるマナか、もしくは神聖力が、エレナ妃のである、ということーー。
「…魔法、使えるのですね」
「ええ。冷魔の森が壊れましたので」
冷魔の森は、私たちスザンヌでも知る森だ。
そんな大切な、森が破壊されたーー要因は、一つしかないだろう。
「…渦、ですか?」
「はい」
なるほど。
ならば、マナが流れて当然だ。ーーもともとアスレリカ民にもマナは宿っているが、それら全てを冷魔の森が吸収し守っていたのだから。
「なら、神聖力でしょうか?」
アスレリカ民は、昔も、神聖力など持っていない。
一方、スザンヌにはある。
そして、神聖力は、その持ち主の物に宿るとかーー。
「…エレナ妃の持ち物。全て、かき集めてみましょう」
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