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二章
第25話 献上された宝石
しおりを挟む「いつまでもベラベラとーー自分がヒロインになったつもりか?」
アレクシス様は、いつになく低い声色でアメリアへ言葉を発する。
それは、私も怖いほどでーー。
「セシリアへの侮辱は私への侮辱、私への侮辱は皇族・帝国に対する侮辱だ。これ以上傷つけることを言えば許さない」
「…お、お待ちくださいっ!アメリアは、本当のことを言っただけです。どうか、見逃してーー」
「は?「本当のこと」だと?とんだ馬鹿だな。セシリア、行くぞ。こんな奴ら、相手にしなくていい」
庇って、くださった…?
その優しさが嬉しくて、思わず涙が出そうになった。
「ご婚約おめでとうございます!」
皆が献上品を持ってくる。そして、気に入っていただけるかと、目をキラキラさせて「開けて」と促してくるので、開けざるを得ない。
そして、ロードン伯爵という男は、ある箱を渡してきた。
「鍵が必要です。ああ、鍵はこちらに」
個包装されたその鍵は、二つある。
形にあった方を差し込み、がちゃ、と開ける。そこには、眩しいほどの宝石がーー。
流石に、贅沢すぎるのでは…?
「その宝石は、中に何かを入れられるようになっております。どうぞ開けてみてください」
言われるがまま、もう一つの鍵を差し込んで、開いた瞬間ーー。
「ご、ほ…ごほっ」
なに、これ?
悪臭というよりも、むしろーー。
それはだんだん会場に広がっていく。みんな、咳き込み始める。
「み、みんなっ、に、げ、て……ごほっ…」
警備兵が異変に気付き、すぐさま皆を外へと非難させる。
はやく、宝石を閉じないとーー。
……………………………………え…。
なんで閉じないの。最初は綺麗にしまっていたじゃない!なんで、なんで!このままだと、みんなーー。
死ぬ、の…?
「あ、あ…アレクシス、様…お逃げ、くだ、さい…」
あなただけでも、生きて欲しいーー。
ただ朦朧とする意識の中で、アレクシス様の、必死に私を呼ぶ声が脳裏をかすめたーー。
◇◇◇
ああ、上手く行ったようね。
ロードン伯爵が、想像以上に上手く動いてくれて助かったわ。
これで、あの生意気な小娘は、死んでくれる!
アレクシスは上手くいかなかったけれど、何度だって機会はあるのよ。
「ふ、は、…あはははははっ!!」
高笑いする。
ああ、全てが私の思い通りにならないと、気が済まないのよねぇ。
だから、あの時のようにーー皇后エレナを殺した時のように、今回も上手くいったことに興奮する。私の怒りを買うからこうなるのよ、残念ね?
「ああ…ざまあみなさい…!」
それを、リカが、密かに聞いていたーー。
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