上 下
11 / 65
一章

第11話 助けるために

しおりを挟む
「注文して良いか?」
「はい、承りますね」

これとこれ、と注文して行くこの若い男性は、後から聞いた話によると、どうやらこの店がオープンした頃からの常連らしい。だが、だれもその正体を知らないという。

「ハンサムですよね、かっこいいですぅ!」

一緒に働くことになった彼女はマーガレットといい、俗に言う「夢見る少女」だ。
そこで、私はふと気づく。

何かしら、あれ。

魔石のような、でも違う、赤色の宝石のペンダントーー。
それに、なんだか彼は正体を隠している感じがする。

「…よくないわね」

人のことを探るのは。

「?何か言いましたかっ?」
「ううん。なんでもないわ」

今日からバリバリ働いた私は、疲れきって即寝落ちしてしまった。

次の日も、その次の日も、バリバリ働いて私は褒められた。
さらに、私はマーガレットと遊びに行くことになった。

「わぁ。これ、可愛いわね」

私が見つけたのは、一つのヘアアクセサリー。
マーガレットは、

「た、高っ!?」

と驚いていた。もちろん、私は買ったけれど。
貴族令嬢だったから、金銭感覚が麻痺してるのかしら。
こんなふうに、人と出かけることなど許されなかったし、時間も妃教育や家の仕事で取れなかったから私には新鮮だ。そうして、お出かけも終盤に差し掛かった頃ーー。

「…大変。路地裏に!」

一人の少女が路地裏に連れて行かれたのだ。

「セシリアさんっ、行っては危ないです!」

だけど、私は自衛用の短剣を常に懐に入れているし、扱い方も、「妃教育の一環」として教えられた。王妃や王太子妃は、命を狙われやすいからだ。
だから、少なくとも私はマーガレットよりは助けられるはずーー!

「あ?のこのこ自分から来てくれてありがとな。可愛い嬢ちゃんじゃねえか」

怖いけど、怖いけど…!

「借りさせてもらうわ!」
「お、おい…!」

剣だってなんども握ってきた!自分のために、殿下の相応しくなれるようにーー。

剣が混じり合う。
カン、カン、と音がするたび、私は恐怖に駆られる。
だけど。人を助ける方が先。何も抵抗する術がないのが、一番怖いはずだから。

「今のうちにっ、逃げてっ、…!」

ふぅ。終わったかと思えばーー。

「残念だったな」

残党が、一人…!
しまった。殺される…!

どしゃ。

血を出して倒れた彼の後ろにいたのはーー。

「大丈夫かい?」

金髪碧眼…だがしかし、レストランの常連と同じ顔と声をしていた青年だったーー。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

恋は盲目とはよく言ったものです。

火野村志紀
恋愛
魔法と呼ばれる力が存在する世界。 水魔法の名家であるロイジェ公爵子息クリストフには、かつて愛していた婚約者がいた。 男爵令嬢アンリ。彼女は希少な光魔法の使い手で、それ故にクリストフの婚約者となれた。 一生守るつもりだったのだ。 『彼女』が現れる、あの時までは。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

私は私を大切にしてくれる人と一緒にいたいのです。

火野村志紀
恋愛
花の女神の神官アンリエッタは嵐の神の神官であるセレスタンと結婚するが、三年経っても子宝に恵まれなかった。 そのせいで義母にいびられていたが、セレスタンへの愛を貫こうとしていた。だがセレスタンの不在中についに逃げ出す。 式典のために神殿に泊まり込んでいたセレスタンが全てを知ったのは、家に帰って来てから。 愛らしい笑顔で出迎えてくれるはずの妻がいないと落ち込むセレスタンに、彼の両親は雨の女神の神官を新たな嫁にと薦めるが……

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

処理中です...