小鳥遊医局長の恋

月胜 冬

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I will always love you

安堵

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少しづつ記憶を取り戻した…と言うよりは、シモーネから色々と聞いた。

冬の遺体だと思われていたのはリンだった。冬はリンの家族に最後にあった時のことを聞かせて欲しいと言われたのだが、パーティーの記憶が抜け落ち、全く覚えていなかった。

ほんの数センチ立っていた場所が違うだけで、生死が分かれてしまうなんて、考えると恐怖が込み上げて来た。

冬を庇い、頭を20針ほど縫う怪我と両足を骨折をしていたシモーネは既に退院して、家には両親が来て夏の間は同居することになった。

口は相変わらず達者で、

「愛するトーコが助かって良かったよ。」

…と助けたお礼にと冬にキスをせがんだ。

拒否するとじゃあハグだけでもという言葉に騙されて、しっかりと唇を奪われてしまった。

春は苦笑いをしながら、大丈夫あの二人には言いませんからと囁いた。

「その足じゃ階段の上り下りも大変でしょう?どうせ夏休みなんだから、日本に帰ってゆっくりしたら?」

冬もさすがに二人とも心配しているだろうと思い、春と日本へ帰ることにした。

…心配を掛けた二人に会いたい。

今泉は夜、小鳥遊は朝と毎日欠かさず電話があった。


「じゃあ内緒で日本に帰って驚かせちゃいましょう♪」

一番早く取れた便で日本へ帰ることになった。春と冬は一旦実家に帰り、急ぎ戻って来た健太郎に会い、再会できたことを心から喜んだ。

「パーティーをしましょう♪」

春が提案すると小鳥遊と今泉はそれを聞いて喜んだ。いつもの様に、今泉のキッチンを借りることになった。

出勤したと思われる時間帯に春と冬は今泉の部屋へ行き、主に春が二人の好きなものを沢山作った。

春のこの元気さに冬は少々呆れた。年取るとね、余り眠れなくなるものなのよ。だから動いていた方が良いのよねと春は笑った。

「ちょっと疲れたから、ベッドで寝て来るね。」

そう言って今泉のベッドに横になって休んだ。

…静さんの香り。

フローラル系の甘い香りに包まれて、冬はぐっすり眠った。

少し遅くなるが二人仲良く帰りますからと今泉からメールがあった。

昼から夕方までぐっすりと眠った冬が、起きて来た。

時差ぼけと後遺症で酷く頭が痛んだ。春が作った料理をつまみ食いしてから頭痛薬を飲んだ。

「きっとふたりともびっくりすると思うわよ♪」

春はとても楽しそうだった。


二人に会うのは4ヶ月振りだった。短い様で長い気がした。


「ただいまー♪」「ただいま帰りました。」

春が二人を出迎えた。
ふたりとも声が弾んでいるのが冬には判った。

「帰って来てそうそう…パーティーなんて春さん大丈夫ですか?」

小鳥遊は笑った。

「ええ…大丈夫よ♪あなた達の“だ~いすきなもの”を揃えたから♪」

春は意味深に言った。

「はぁ いい匂い~お腹が減った~。」


二人がダイニングへ来ると冬が椅子に座って微笑んでいた。


「あ!」「トーコさん!!」

「ね…言ったでしょう?あなた達の大好きなものって♪」

今泉は走り寄るように近づき、強く抱きしめた。

「ちょ…静さん…痛い。」

そして熱い口づけを交わした。

小鳥遊も冬をしっかりと抱きしめた。

「本当に…心配しました。」

小鳥遊は躊躇していたが、冬が小鳥遊の顔を引き寄せて甘く蕩ける様なキスをした。

「心配を掛けてごめんなさい。」

「師長さんも看護師さん達もとても心配していましたよ。」

小鳥遊が冬を愛おしそうに見つめていた。

「そうだ。折角だから師長さんとご飯でも食べに行きましょうか?」

今泉はメールしておきますよと笑った。

「楽しそうね♪」

春が嬉しそうに言った。

「春さんも一緒にどうですか?みんなが驚く顔が見たい。」

今泉は嬉しそうだった。

「えーっお母さんもくるの?」

冬は露骨に嫌な顔をした。

「みんなにご馳走しちゃうわ。」

春が言った。

「都合を聞いておかなきゃ♪」

今泉は早速師長にメールをしていていた。

春が食後片づけをしてる間

「今夜はどちらの部屋で寝ますか?」

小鳥遊がこっそり冬に聞いた。

「静さん…かな。」

冬も台所にいる春とチラリとみて囁いた。

「…そうですか。」

小鳥遊は寂しそうだった。

(だって今日はエッチ出来ない日だから♪)

耳元で囁いた。

「それでも良いのに…。」

「じゃあちょっと待ってて…。」

ソファで寛いでいる今泉に内緒話をすると

僕は良いですよ…と
冬の腰を抱き寄せてキスをした。

「…では明日…お休み♪」

「じゃあ、お風呂入ってからガクさんの所に行きますね。」

…チュッ。

小鳥遊は冬を抱き寄せて優しくキスをした。


――ガチャン


よいしょ…。

冬は松葉杖を壁に立てかけていると、
その音を聞き、小鳥遊は玄関にやってきて冬をひょいっと横抱きにした。
冬は笑って小鳥遊の首に手を回した。

「お茶でも飲みますか?それともソファで寛ぎますか?」


…あ…すぐベッドじゃないんだ。

冬は笑った。

「僕は何かおかしいことを言いましたかね?」

出来ない時でも大抵はベッドへ行き、挿入以外のことをして、口でフィニッシュがいつもの流れだったからだ。

「ガクさんのことだから、すぐベッドかと思ったの。じゃあソファで♪」

小鳥遊は軽々とソファに運んだ。

冬はギプスが巻いてある重い足をソファの上に投げ出した。

足を床に下ろしているだけで、浮腫み始めるからだ。

夏休みの間にギプスは取れ、リハビリをしっかりしてアメリカに戻る予定だった。

「お帰りなさい トーコさん。」

小鳥遊はそういうと冬を強く抱きしめ 突然泣き始めた。

冬の名が犠牲者リストに乗ったのを見た瞬間から、今泉が取り乱していた分、自分だけは冷静でいなければと思い感情を抑圧していた。

余裕が無くても、手術予定は来月までびっしりと入っていた。研修医や若い医師達の指導など、数日間はまるでロボットの様にがむしゃらに働いた。その方が気が紛れて良かったからだ。

「良かった。本当にあなたが生きていてくれて。無事に帰って来てくれてありがとう。」

冬の声、髪の香り、柔らかい肌、細い肩…何もかもが小鳥遊には愛おしかった。

「私も…会いたかったです…とても。」

小鳥遊の涙を冬は手でそっと拭き頬にキスをした。

冬を抱きしめ、甘く優しい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「でもね…爆発で飛ばされた後、血だらけのシモーネを見た時に、自分も身体が動かないし、もう駄目だと思ったの。その時に、がくさんとしずさんにもう一度だけ会いたい。って思った。」

受傷後暫くしてから、その部分だけ冬の記憶だけが鮮明に蘇ったがパーティーへ行ったことや、その少し前の事は思い出せなかった。

「僕は今回のことで、自分の身体の一部が捥ぎ取られたように感じました。静さんの取り乱しようといったら…食堂で死亡者の名前にあなたの名前があった時、それはそれは見て居られませんでした。」

冬の手足には所々にカサブタや痣が出来ていた。

「心配させて本当にゴメンなさい。それに…ガクさんを苦しめてごめんなさい。ガクさんが言うように私は自分勝手だった。」

冬は小鳥遊の広く大きな胸に手を回し抱きしめた。

「僕は…あなたを待ちます。いつまでも。」

小鳥遊は冬の顎をそっと指であげ、柔らかい冬の唇を自分の唇で優しく挟んだ。冬も同じように優しくキスを返した。そして何度も軽いキスを繰り返ししてはお互いに微笑んだ。

「ガクさんの唇…大福餅みたいでとっても柔らかい。」

例えが大福って純日本的ですねと
小鳥遊は冬の頬に優しく触れながら微笑んだ。その大きな手の上に冬は小さな手を重ねた。

…温かい。

「僕はずっとここに居ますから。心配しないで、好きな時に帰って来て下さい。」

睫毛についた涙が、キラキラと光って冬の澄んだ目を飾っていた。

「学さん…。」

「あなたが…この世から居なくなってしまったと思ったあの悪夢の3日間に比べれば、距離が遠いことや、暫く会えないことなんて何ともないと思ったんです。」

冬の眼から再び大粒の涙が零れた。

「私さえいなければ、あなたは自由になれると思ったから…傍にいることで苦しめてしまうと思ったから。最初から気持ちをちゃんと伝えておけばよかった…素直じゃなくって…ごめんなさい。あなたを傷つけてしまって…本当に…ごめんなさい。」

「…分りましたから…もう泣かないで下さい。」

今度は小鳥遊がその大きな手で冬の涙を拭った。

「本当は…いつも…あなたを食べてしまいたいほど…愛してる。ただその気持ちに正直になることがとても怖かったの。どんなに愛していても、消えてしまう時は一瞬だから。」

冬は苦しそうに目を閉じた。もう二度とあの最悪の日のような、何年もの間、自分を苦しめ続けている思いをしたくないという恋愛に対する強い防御反応のようなものがいつも働いていた。自分の気持ちは、狭いおもちゃ箱に閉じ込めて、鍵をしっかりと掛けてしまっていた。


「僕も…トーコさんを どうしようもない程に…愛していることに改めて気がつきました。」

小鳥遊は冬をベッドへ運んだ。

「今日はあなたと、ただ抱き合って眠りたいです。」

…でも。

「そうさせて下さい…。」

「お口でしましょうか?」

「いいえ。今は…今夜は…ずっと…こうさせて下さい。」

今は一時も冬から離れたく無かった。ただ一緒に居る、冬が今目の前に存在していると言うことを確かめたかった。

冬は小鳥遊の大きな腕の中に包まれるようにして眠った。

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朝起きると小鳥遊は冬を横抱きにして今泉の部屋へと連れて行った。

春が朝食の準備を始めていた。今泉も起きて来て、冬にキスをしシャワーを浴びに行った。

春と冬がキッチンに立つ姿を小鳥遊は眺めていた。

何でもない日常こそが、今はかけがえの無いものであることを痛切に感じた。

二人が出かけた後、冬と春はソファで寛いだ。

「お母さん…心配を掛けてごめんなさい。」

「本当に…あなたはいくつになっても心配ばっかり掛けて。」

春は冬の背中に手を回しポンポンと叩いた。

「今日は病棟へご挨拶に行きましょうね。」

師長さんも、あなたの同期も後輩も心配していたから。

「うん。」

冬は珍しく春に従った。
菓子折りを持って病棟へ行くと、いつもの様にそっくりだと言って皆が驚いた。

師長や同期、一緒に食事や飲みによく行った後輩も冬を見ると泣いていた。

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同期と後輩が幹事をし、送別会をしてくれたあの店を予約した。

春はその人懐っこさで、早速師長と仲良くなり、二人で世間話をしていた。

「ギプス外れてリハ室に来たら可愛がってやんよ。」

PT理学療法士が笑って言った。

…あーもう。そんな言い方やめて。

脳外医師軍団も招集された。

「月性さんから電話貰った時、あの場に居たんです。」

高橋医師は酔いが回ったどさくさに紛れ冬にシモーネ並みのハグをし、そのまま泣き出したので、PTや研修医数人がかりで、冬から引き剥がされた。

今泉は気が緩んだこともあり、祝杯を求められては飲まされ、へべれけだった。

(ちょっと…静さん大丈夫?)

「うん♪だいじょうぶぅ。チュゥ―――♪」

冬を押し倒し、無理やりキスをした。
周りからはひやかしの声が上がった。

「ちょっと…今泉先生。」

小鳥遊は慌てて今泉を止めた。
今泉の弾けっぷりを心配して酒を全く飲んで居なかった。

「そう言えば、僕たちがあげたプレゼント使ってくれた?」

PTがそれを見て今泉に言った。

…お前ら…その発言は…完全にアウトだ。セクハラだ。

「うん♪二人で使った…楽しかったよー。あの…ね…。」

…ちょ…静さん何いっちゃってんの?

冬は慌てて今泉の口を手で押え、酒を飲んで居ないのに顔が真っ赤になった。

「もう嫌だ…静さん連れて帰りたい。」

冬は大きなため息をついた。

「許してあげましょうよ。とっても心配してたんですから。」

小鳥遊はまあまあと言いながら、今泉の面倒をみていた。

ただ、小鳥遊自身も、医者も看護師も今日は、皆少々飲み過ぎて居る様な気がしていた。

春はあとは皆さんでどうぞと言って、先に会計を済ませ今泉のマンションへと帰った。


…そろそろお開きにした方が良さそうだ。

素面の小鳥遊は思っていた。

冬は小鳥遊にちょっと化粧室へ行ってきます…と声を掛けて席を立った。

小鳥遊は今泉の様子を見ながら、師長の愚痴を聞いていた。

少し離れた席の向こう側では、小峠が若い看護師達にボディータッチをしては嫌がられていた。

そんな小峠が、冬を見てフラフラと立ち上がり、後をついていくのが見えた。

これはまずいかもと思いつつも、師長は話をやめさせてはくれなかった。

冬がトイレから出ようとすると、小峠が待ち伏せしており立ちはだかった。

「月性ちゃぁん…ねぇ…最後だから…お願い…もう一度だけしよう♪」

左足がギブスで固定されている為、素早く動くことが出来なかった。

「小峠先生 飲み過ぎです。」

冬が松葉杖を取ろうとすると小峠がさっと取ってしまった。

「ねぇ…良いじゃない…最後の一回。生でさせて♪どうせ今泉先生とは生でやってんでしょう?いいなぁー今泉先生。」

そう言いながら小峠はジリジリと冬に近づいて来た。

冬は壁際に追いやられ、逃げ場を失った。

「ねぇなんで僕じゃ無かったの?」

「先生…女医さんとお付き合いされてたじゃないですか?二股どころか三股とかして、モテてたんだから良いじゃないですか。」

「違うよぅ…月性ちゃんの事が好きなのに相手にしてくれなくなっちゃったから、寂しかったんだよぅ。ねぇ…僕寂しいの…だから慰めて?ねっ…ねっ。」

そう言うと、冬の首を抑え壁に押し付けるようにして無理やりキスをした。


「ちょっと…やめ…。」

口をしっかりと閉じたが、小峠の舌は冬の唇を割って入ろうとしてきた。
力いっぱい押し付けられ、首が締まり息苦しさで頭がボーっとしてきた。

「せん…せ…苦しい…息が…で。」

冬は両手で必死に小峠が締め付けている手を外そうとしたがびくともしないどころか、益々強く締め付けた。
小峠の反対の手は、冬のスカートをたくし上げていた。

「僕…締まりの良い君と…一度…生で…したかったんだ。」

小峠は冬の耳元で囁いた。酒臭くて熱く荒い息が冬の顔に掛かった。

「い…や。」

「最後だから…記念に。」

小峠の熱く太い指は冬のショーツをずらした。

「僕の大好きなガーターベルト…、知ってた?月性さんって僕の好みに全て当てはまってるの♪顔は可愛いし、おっぱいは大きいし、色が白くて、頭も良くて、優しくて、毛が無くて、締まりも良くって…。」

…駄目だ…抵抗どころか…頭がボーっとして…。

小峠の手は冬の首をぎりぎりと締め付けた。今意識を失ったら駄目だと思いつつも耳元で自分の心臓の拍動が聞こえ始め、視界がぼやけてきた。

小峠の太い指は、冬のふたつの肉丘の間を通り乱暴に入り口を探した。

「今…気持ちよく…してあげるからね。」

女子トイレのドアが突然開き、冬は霞む目で見るとそれは小鳥遊だった。

つかつかと近づき、小峠の首を掴み、冬から遠ざけた。


…ゴホッゴホッ…。

冬はその場にしゃがみこんだ。

「小峠先生 あなたは何をしてるんですかっ?!」

小鳥遊は厳しい口調で小峠を睨んだ。
冬は息を整え、小鳥遊の後ろに咳をしながら隠れた。

「あぁ 小鳥遊せんせぇ。」

泥酔状態の小峠は、まぬけな声を出した。

小鳥遊の顔は怒りで震えていた。

「あなたって…人は…。」

冬は衣服を整え、洗面所で手を洗った。首周りが真っ赤になり、慌てて縛ってあった髪を下して隠した。

今度は小鳥遊が小峠を突き飛ばし壁に押し付けると、小峠はへなへなと力なく床に座り込んだ。

今にも小峠を殴りそうな小鳥遊を冬は止めた。

「この際だから言わせて頂きます。はっきり言って あなたは全部が全部、ものの見事に下手糞でした。最後だから教えてあげる。よく見てて!キスって言うのはね…。」

そう言うと、小鳥遊の顔を両手で挟み、優しく唇に触れたかと思うと激しく唇を貪って濃厚で、いやらしいキスを小峠に見せつけた。

冬のされるがままになってしまった小鳥遊も、呆然としていた。

「こういう風にするんです。」

小峠は、驚く小鳥遊の顔と冬の顔を交互に見ていたが、何が起きたのか判らない様子だった。

ガクさん…ちょっと禿、逃げない様に見ててください。すぐ戻りますから。

そう言うと冬は松葉杖をつきながらトイレから出て行った。

「月性さんはあなたには勿体ない。」

小鳥遊は小峠を冷めた目で見下ろしていた。
冬が戻って来た。手には油性のマジックを持っていた。

小峠の禿げた頭にマジックで何か書き始めた。

流石に小鳥遊もそれには驚き、
冬の突拍子も無い行動をただ見守るだけだった。

「はい…出来ました。これが私からあなたへ送る言葉です。」



早漏でござ候


キョトンとしている小峠に
頭頂部から額に掛けて 大きく書かれたその文字に、この状況でいけないとは思いつつも、小鳥遊は噴き出した。

「小鳥遊先生 置いて行きましょうこんな禿。」

そう言うと冬は松葉杖をついて、洗面所で手を洗い、髪を整えて、再び小峠の目の前で、熱く激しいキスを小鳥遊と交わし、化粧室を出て行った。

小鳥遊はスマホを取り出すと、呆然とする小峠の写真を何枚か撮った。

「自業自得です。」

そう言って、小鳥遊は冬の後を追った。

会はお開きになり、小鳥遊は今泉を支えながらマンションへと向かった。

「静さん…飲み過ぎですよ。ほらもうちょっとですから頑張って歩いて下さい。」

今泉を励ました。

「トーコさん 助けに行くのが遅くなって済みませんでした。師長さんに摑まってしまったものですから。」

(トウコさん。可愛いから大好き♪チューしよう。)

「はいはい…お家に帰ってからいっぱいしましょうね」

…静さん…可愛いかも。

冬は、病棟でせん妄患者に対応するように今泉を宥めた。

「まさか…あそこまでするとは思いませんでした。」

小鳥遊の顔が曇った。

「かなり焦りました。」

笑った冬の首には、真っ赤な手形がついていた。
小鳥遊はそれを見てはっとした。

「静さんがこんなに酔っぱらったの初めてみました。」

(エッチなトウコさんとまたエッチしたいなぁ。はいチュー。)

今泉は、ひとりでしゃべっていた。

「その首…大丈夫ですか?」

「ええ…大丈夫です。ギプスじゃ無ければ逃げられたのに…。ガクさんが助けに来なかったら今回は流石に危なかったでした。」

…間一髪と言えど、あれだって立派なレイプだ。

「あなたは…どうしたいですか?」

…禿の処分についてだ。

暫く冬は考えていた。

「何も。禿…飲み過ぎてましたし、覚えて無いと思いますし…。別に良いです。」

「判りました。」

小鳥遊は静かに言った。

マンションにつき、今泉をベッドに寝かせた。

先に帰った春はもう寝ているようだった。

「では、僕は帰ります。」

小鳥遊は玄関で靴を履いた。

「せんせ…お風呂入った後に部屋へ行っても良い?」

冬は静かに聞いた。

「ええ…ではまた。僕もシャワーを浴びたら あなたをお迎えに来ます。」

冬は小鳥遊と軽いキスをした。

冬が風呂から上がると、小鳥遊はリビングで待っており、冬を当たり前のように横抱きにし自分の部屋へと連れて行った。

「ガクさん…助けに来てくれてありがとう。」

小鳥遊は何も言わずに微笑んだだけだった。そっと冬をベッドへ寝かせると、一応、証拠として首の回りの写真を撮っておきましょうと言って、もう大丈夫だからと嫌がる冬の痣の写真を撮った。そして、冬の隣に大きな体を潜り込ませた。

「さぁ もう遅いから…今日は寝ましょう。」

そう言って小鳥遊は冬を抱き寄せた。

翌朝、春と冬はキッチンで朝ご飯の支度をしていた。

「あなた…それで何も無かったから良い様なものの、ちゃんとガクさんに言って貰わないと。」

冬は苦笑いをした。

「どうせもう会うことも無いだろうし…。あ…お母さん余計なこと静さんに言わないで…また心配掛けるから。」

そんなこと言ったって、その首見れば誰だって聞くわよと春は眉を顰めていた。

冬の首にはくっきりと手で絞められた痣が出来ていた。今泉が頭が痛いと言って起きて来た。

「静さん昨日かなり飲まされていましたよ。なんかキス魔になって可愛かったです。」

キッチンへやって来て棚の上から頭痛薬を取り出そうとしてふと冬を見た。

「その首…どうしたんですか?誰に…。」

その細い指で冬の首の痣をなぞった。

「ほら御覧なさい…誰だって聞くでしょ?これぐらいで済んだから良かったものの…」

「しーっ!もう言わない約束でしょ?」

冬は春に言った。

「昨日何かあったんですね。」

小鳥遊が起きて来て、冬にキスをしにキッチンまでやってきた。

「小峠先生です。」

…言わなくても良いのに。

昨日の出来事を小鳥遊は今泉に話した。

「後で小峠先生ところへ行ってきます。」

…ほら 言わんこっちゃない。

「いいえ…僕が現場を見たので、今日小峠先生に確認してみます。泥酔状態だったので、もしかしたら覚えて居ないかも知れません。」

小鳥遊は言った。

「ふたりとも…もう良いですから。私の中ではリベンジ済んでるし。」

…禿よ…あだ名がこれで昇格したぞ喜べ。

「そうだこれ…昨日冬さんが事件の後 小峠先生に…。」

小峠のあの写真を見せた。

「笑ってる場合じゃ無いけど…駄目だ笑える。」

ちょっと僕にもその写真メールして下さい。本当に本当にごめんなさいトウコさんと言いつつも笑い転げた。

朝の回診を終え小鳥遊は小峠を医局に呼び出した。マジックの跡が少し残る小峠の禿げ頭を見るたびに噴き出しそうになった。

背の低い小峠の頭は丁度、小鳥遊が見下ろした視線の先にある。

…今日は一日中笑いを堪えるのが大変だ。

「小峠先生。昨日のこと覚えていらっしゃいますか?」

真面目な顔をして小峠を呼び止めた。

「あー…っと。途中までは覚えているんですが、記憶が曖昧で…。」

小峠の態度から本当に覚えていないようだった。

「誰とは言いませんが…あなたが嫌がる女性をトイレに引きずりこんで、猥褻なことをしているのを僕が見つけました。」

そう言って冬の首の部分の写真を見せた。

「あっ…。」

小峠は息を飲んだ。

「今度このような事があったら、僕はあなたを庇いきれませんし、院長に報告をします。」

小鳥遊はわざと大きなため息をついた。

「僕は…誰にこんなことしたんでしょう?」

「それはこの女性の希望で言えません。それから被害者探しをしたりすれば事が大きくなります。僕はあなたに忠告をしました。これ以上は詮索しないこと。分りましたね?」

「…。」

小峠は困惑した表情を浮かべていた。

「小峠先生…わかりましたね?」

小鳥遊の口調はきつくなった。

「はい…済みませんでした。」

小峠は消え入りそうな声で言った。


春は週末には自宅へと帰り、
また3人だけの生活に戻った。

冬は秋セメの調整をし始めたがスムーズだった。



今泉の部屋で寝る予定だったが、緊急オペの連絡を受けたので、急遽冬は小鳥遊の元で過ごした。

どちらからともなく何となくそんな雰囲気になり、ベッドへと向かった。

冬の下腹部は、小鳥遊が触れてもいないのに潤いを増した。

「久しぶりなので、最初は駄目ですが、その後は沢山あなたを愛せますから…。」

小鳥遊は荒い息を吐きながら耳元で囁いた。そして冬のパジャマの小さなボタンを大きな手でひとつづつ器用に外した。冬は小鳥遊のスウェットをゆっくりと脱がせた。

「久しぶりだから、なんだか照れくさいような変な感じです。」

冬の顔はピンク色に染まり恥ずかしそうに笑った。

「トーコさん…可愛いです。」

小鳥遊は微笑むと、冬の唇に触れるか触れないかのキスをした。

冬は小鳥遊の頬にその小さな手を置いた。そして今度は優しく触れたキス。小鳥遊の大きな手は、冬の柔らかい乳房を包み揉んだ。

何度もキスを重ね、そのたびに濃厚さを増していった。冬の体は温かくて柔らかく、滑々していた。小鳥遊は冬が自分の元に居る事を楽しんでいた。

「食べてしまいたいほど…あなたが愛しい。」

小鳥遊の手は冬の胸からゆっくりと離れ、下腹部へと向かった。

「いっぱい召し上がれ。」

うっとりとした目で見つめる冬のショーツを小鳥遊はするすると脱がせた。

「もうこんなに濡れて…僕を待ってる。」

…ええ

人差指と中指が、愛液で潤った中へと抵抗も無く入った。ゆっくり前後させると冬が小さな声を漏らした。

「私も久しぶりだから…。」

粘性の少ない透明な蜜を小鳥遊は音を立てながら舐め、一番敏感な部分を舌先で細やかに愛撫した。冬の引けた腰をしっかりと抑えた。


じわじわと快感の徴が冬を包み始めた。

「はぁ…はぁ…駄目…私…ガクさんの…でいきたい…手じゃ嫌っ…。」

冬の反応を満足そうに小鳥遊は眺めていた。

「僕のが 欲しくなっちゃった?」

意地悪そうに笑った。

「うん…欲しくなっちゃった…の。」

冬は切なく甘えた。

「じゃあ卑猥な言葉を使って僕にお願いして下さい。日本語で」

「嫌…恥ずかしい…。」

…日本語縛り…先回りされた。

冬は耳まで真っ赤にしながら、大きな快感を誘導させてくる、小鳥遊のその絶妙な指使いに身もだえていた。

「では…今日は指でイッて下さい。」

…あっ…あっ…。

「待って…」

小鳥遊の頭を引き寄せて、耳元でとても小さな声で囁いた。

「トーコの…に…ガクの…入れて。」

それを聞くと小鳥遊の下腹部はもうこれ以上膨張しない程に一気に膨れ上がった。

冬は小鳥遊の唇を激しく求めた。小鳥遊は冬に答えながら、ゆっくりと自分の膨張したものを冬の中へと埋めていく。一度深く突いたあと、くびれまで引き抜いた。

「あぁ…お願い…焦らさないで。」

膣は小鳥遊の先端をきつく締めつけた。

「トーコ…気持ちが良いんだね。僕も…。」

不規則な締め付けが、欲望の排出を促すようだった。

「そんなに…きつく…締めたら。」

小鳥遊のそれも、ドクドクと拍動し、今にも先端から快感を零れ落としそうだった。臀部に力を入れ、その快感を必死に抑えた。

「トーコを…いっぱい…食べて。」

愛撫でアイスの様に溶け始めた自分を冬は感じた。

「トーコ…僕は…もう…いきそうだよ。」

快感に身を委ね、
徐々に溺れていく冬を小鳥遊は追いかけた。

太い腕で冬の腰をしっかりと抑え、波打つような腰の動きを早めた。

「あぁー…もう…駄目…あ…い…くぅ…。」

不規則だった締め付けが規則的になり、そして冬が果てるのと同時に小鳥遊をきつく締め付けたままとなった。

「愛してる…トーコ。…僕は、これからも…ずっと…。」

強い抵抗のその中を愛情を放出すべき深い場所へと突き進み、全てを一気に開放した。

…あぁ…いぃくっ…くっ…。

絞り出すような声をあげ、小鳥遊も果てた。

体中から湧き上がっていた、快感をその先端へ、冬へと強く流し込んだ後、心地よい倦怠感が襲い、小鳥遊は暫く身動きが取れなかった。

「ガクさん…大丈夫?」

…ちょっと重いんですが。

冬は小鳥遊の下で押しつぶされならが笑って言った。いつもなら、自分の体重を掛けないように肘で支える小鳥遊だったが、今日は冬の上でぐったりとしていた。

「うん…久しぶりで 疲れちゃった。」

…緊急オペ続きだったし、心配させて寝不足だったかも。

「ガクさん オイルマッサージしましょうか?」

「トーコさん いつの間にそんなスキルを?」

冬からやっと離れた小鳥遊はうつ伏せになって、はぁと大きなため息をついた。

「前からですよ…ただここに居る時はエッチばっかりだったからそんな暇が無かっただけです。」

冬はいつも疲れているのに、それを見せずに働いている小鳥遊を労りたかった。

特に小鳥遊はオン・オフをしっかり切り替えるからこそ、長い手術などもこなせるわけで、それは普通の人でも並大抵の事では無かった。

「手術は成功して当たり前…。」と思っている患者は多いが、成功させるためには、医師の技術もそうだが、手術に集中する精神力と忍耐力は、傍で見ていても計り知れないものがあった。


「そうですか…では…初体験なので、お手柔らかにお願いします。」

ちょっと待ててね。静さんの所からオイル取って来る。冬はシーツを体に巻くとさっさと玄関から出て行こうとした。

「ちょ…トーコさんそれじゃあ痴女ですよ。」

そう言っている間に部屋に戻って来た。

「はい…じゃあ ガクさん ベッドでうつ伏せになってね。」

…こんな時 無駄に広いベッドが役に立つ♪

「お疲れのようだから、よく眠れるようにラベンダーにでもしましょうか?」

冬はオイルを手に取り少し温めてからゆっくりとマッサージを始めた。

「手が温かくて…気持ちが良いです。」

適度に筋肉がついた背中は大きかった。冬は静かに筋肉の走行に合わせてゆっくりと掌を滑らせた。

5分も経たないうちに、静かな寝息が聞こえて来た。小鳥遊の無防備な寝顔をみながら、マッサージを続けた。





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