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プチ家出
少し自由になりたくて
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冬も含め、看護師達は皆、疲れ果てていた。
予定入院8件。
まぁそれは良い。
自動車事故で重症患者が3人纏めて入った。
もう看護師メンバー皆一杯一杯だった。
今日は流石に日勤でも21時帰宅コースだと誰もが、諦めていた。
そこに再び緊急入院を打診する連絡が来た。
ベッドは1床確保していたが、それは明日、集中治療室から上がってくる患者の予約ベッドだった。
「えーっ!!!」
皆が一斉に叫んだ。
「マジ?もう無理だよ。」
「誰だよ…今日の運気最悪だった奴は?」
…当科だけど、ベッドが空くまで他科で診てもらうしか無いか。
師長不在で冬は、
代行管理者として電話を後輩から代わった。
「ああ月性さんか?助かりました。一人入れたいんだけど駄目?ホントに悪いんだけど。」
小鳥遊医局長だった。
「先生、満床です。」
冬はきっぱりと言った。
「確かに,画面上は満床になってるけど、この1床に1日だけ入れられないかな?」
小鳥遊もPCで空床状況を確認しているようだった。
「無理です。明日の朝一番で,ICUから、高橋先生の患者が上がってきますので、その予約ベッドですから。」
…自分達で手術してるんだから覚えておいて欲しい…てか知ってて聞いてるの?だとしたら、ぶち切れても良い案件なり。
「あんまり他科には入れたく無いんだけどなぁ。」
脳外は特殊なので、他の科からだと嫌がられることが多い。ただ、それはどの科もお互い様…の筈だ。
「そんな事を言ったって無理です。日勤だけで入院11件で、その中の3人は重症ですよ?」
「師長さんは?」
…師長が居たとしてもきっと駄目だって言う。
「今会議中でおりません。」
…私じゃ頼りにならないって言いたいの?
「どうにかなりませんかね?」
…今日はやけにしつこいぞ?
「空いてないものは空いてないんです。だって今うちに来て、結局明日の朝には他科に…だったら最初から他科病棟で見てもらった方がいいとは思いませんか?明日の退院もありますけど、それも予約ベッドで埋まりますよ?」
…どうした小鳥遊?お前らしくないぞ。
「トーコさんだったら、どうにかして貰えると思ったんだけどなぁ。」
小鳥遊は少し甘えたような声で言った。
…何それ?
今まで病院内に居る時に、たとえ電話だったとしても、冬は名前で呼ばれた事は一度も無かった。家で甘えている時のような物言いに、冬はあからさまにムッとした。
「先生そう仰られても無理なんです。」
冬のイライラもマックスだったが、同僚や後輩が二人の電話のやり取りを固唾を飲んでじっと見ている。
「意地悪…。」
小鳥遊がまた甘えた声を出した。
…おい…いい加減にしろや。
「意地悪で申し上げているのではありません。明日、ICUから患者が10時に上がってきます。その前までなら最低最悪の場合対処しますけど。他科の空床数見ますから…ちょっと待って。」
冬はPCで空床状況を確認した。
「空床だったら、僕も今見てるよ。」
小鳥遊は、悪びれもせずに言ったが、冬は無視した。
「ええと…内科なんて7床も空いてますけれど?あ…流石に内科は怖いですか?そうですよね。では、脳神経内科なんてどうでしょう?2床…空いてますよ?、あらまあ 何ということでしょう?先生の大好きな藤田医局長のいらっしゃる外科は、4床“も”空いてますよ。画面上では…ですが。」
後ろで病棟の看護師達が冬とのやりとりを聞いていて爆笑して言いたいことを言い始めた。
「やべー月性さんがぶち切れてる。怖えぇ。」
「相手誰だろうね?」
「しつこいから禿か?」
「まさかのキョクチョーだったりして。」
その声が聞こえたのか、これには流石に小鳥遊もムッとしたようだった。
「…確認します。」
―――ガチャリ
小鳥遊は電話を切った。
…エロ 撃退。
皆がどうでした?という顔をして冬を見た。
「とりあえず、うちは入院取らなくて大丈夫です。」
冬は冷静に病棟の看護師達に報告をしたが、小鳥遊に怒っていた。
「イェーース!!」
「さすが月性さん♪」
「あざーっす。」
ナースステーションから喜びの声が上がった。
…こういうことが嫌なのだ。
「どうしたんだろ医局長…今まではこんなこと無かったのに。」
冬が皆に言った。
「禿はまだしも医局長まで…病棟に何でも押し付けりゃいいと思ってるんじゃ無いですかね?」
「禿病蔓延中…。」
「やだ…そんなの流行らせないでよ。」
「だってさぁ準夜終わりギリで“明日の朝からお願いねー”とか最近時間も守れていないんだよ?あったまくるよね。」
皆、言いたい放題だった。
「今日の阻止お疲れーっす。」
準夜勤の見回りから戻って来た男性看護師達である。
「予約ベッドだって言ってるのに、小鳥遊先生ったら、意地悪って私に言ったんですよ?信じられる?」
冬は思わず文句を言ってしまった。
…今日は家に帰ったらたっぷり説教だ。待ってろエロ。
自分の仕事が終わり、冬が後輩の仕事を全力で手伝ったのにも関わらず、その日の日勤業務が全て終了したのは21時近かった。
+:-:+:-:+:-:+:🐈⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
冬が鼻息荒く帰ったものの、小鳥遊はまだ帰宅していなかった。
…あれ…緊急オペか。
お風呂に入り冬はそのまま寝てしまった。
―――そして翌朝
今日から冬は冬休みだった。
いそいそと早朝から珍しく出かける支度をしている冬をチラリと小鳥遊は見た。
昨日は緊急オペが終わり、小鳥遊が戻って来た時には、冬はすやすやと寝ていた。
朝も禄に話をしないところを見ると、怒っているのかも知れないと小鳥遊は思った。
半同棲生活をし始めて暫く経過したが、休日出かけられないと言うのは、冬にとってストレスだった。
それに加えて昨日の出来事。考えてみれば、アメリカから帰って来て外食にすら行っていない
一緒に出歩けば、すぐにばれてしまうし、そんなことは冬も充分良く分かっていた。
…なんか窮屈。
もともと自分の時間を趣味に費やしていた冬は、誰かとずっと一緒に居ることが今まで一度も無かった。
…冬休み 実家に帰るって嘘ついて、自分のマンションへ帰ろっと。
昨日のこともあったが、その前から溜まってきた私物を少しつづ運び出していた。
「トーコさん…あなた何か良からぬことを考えていませんか?」
…ちっ…こんな時だけ感が良いな。
「良からぬことって?」
「例えば…僕の家から出て行くとか…。」
…冬休みだけですよ。
「いえいえ…妹が来てて、一緒に実家へ帰るんです。だから、マンションに帰ってないと、結婚前に男性と同棲してるなんてお父様に知れたら…怒られちゃうから♪」
…妹いないし…早く結婚しろ、子供だけ作れとか放任主義だし。
「二十歳を超えても厳しいなんて…。」
小鳥遊は冬が作った朝ご飯を食べていた。
「ええそうなんですよ。」
「…だから反動で、こんなエッチな子になっちゃったんですね。」
…昨日のことと良い…変態エロ…表出ろ。
「一体誰のせいでエッチなことになってるんですかねぇ?じゃ…ごきげんよう。」
やっと手に入れた久しぶりの自由~♪
冬は、予約してたエステや美容室へ行き、部屋の掃除をして就寝した。朝は、ゆっくりと起きてジョギングへ行きシャワーを浴びた。夜はエロのゲリラ襲撃も無いのでぐっすり眠れた。
…あああ…自由って…ス・テ・キ♪
冬は今度からこの手を使おうと密かに思った。
冬はのびのびと一人を満喫した。
…ああ 正月明け…先生の所に戻るの面倒だなぁ。
+:-:+:-:+:-:+:🐈⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:
冬は、何となく正月明けから、小鳥遊の所には戻らず自分のマンションから病院へ通った。
小鳥遊の事が嫌いになったとかでは無く、少々窮屈だったからだ。
…一緒に居過ぎるのもお互いの調子が狂って良くない気がする。
小鳥遊には暫くひとり過ごしたいとだけ言って、冬休みが終わってからは部屋へは行ってなかった。
「今泉先生、月性さんから全然誘われないって言ってたわよー。」
師長が、わざわざ冬をステーションの隅に呼び寄せて囁いた。
「あなたたち上手く行ってるの?」
…いや…だって…付き合って無いし。
今泉の外堀埋め作戦の効果が効いてきたようで、師長は何かにつけて、冬を心配して聞いてきた。
「なんか最近疲れちゃって…家に帰るとすぐ眠くなっちゃうんですよねぇ。」
得意の笑って誤魔化し作戦。
「あら良いサプリあるわよ。30超えるとねぇ色々きつくなるけど、40超えるともっとだから。」
…いやいやシチョーさん。そこ迄は…。
小鳥遊は家を出て以来、何も言ってこないし、余り病棟にも上がって来ない。
…ってことは…終わったのか?…終わったの私達?
それはそれで、内心焦っている冬だった。
しかし、休み明けで、ゴタゴタするのも面倒だった。
…先生が言ってくるまでほっといて良いよね。
小峠も言い寄る事が無くなったので、新しい犠牲者が出たのかも知れないと冬は思った。
マンションと病院を往復の生活。小鳥遊に振り回されたお陰?で時間の使い方が上手くなり、効率よく進んでいるようにさえ思えた。
そして時間があれば習い事の充実した生活へと戻って行った。
冬とは反対に、小鳥遊は焦っていた。何も言わずに冬が出て行き、暫くしてからひとりでマンションで過ごしたいと言った事。思い当たるのは、あの入院患者のことだけだった。
…でも そんなことでだけで怒ったりする筈はない。
本人に直接聞けば良いのだが、それも出来ず不安と性欲は溜まる一方だった。お互いの生活を取り戻して1ヶ月が過ぎようとしたある日の夜
(青年医師:トウコさん助けて)
(どうしました?)
(青年医師:熱出て辛いの…おかゆ作りに来て)
(青年医師:お願いします トウコさん)
(青年医師:本気…と書いてマジです。)
嘘だと思った冬は無視し続けた。明日は日勤だったが、朝早く師長から電話があった。
「今日 小鳥遊先生の体調が悪くてオペ中止になったから、人余っちゃうからあなた今日休んで…ってことは2連休ね…デート行けるわよ♪うふふふ。」
…なんということでしょう~本気と書いてマジだったのか。
冬は慌ててメールを返した。
(生きてますか?)
(青年医師:エジプト考古学博物館からオファー来そうな感じです。 )
(青年医師:あと…解熱剤何でも良いから買うてきて下さい。)
(Roger)
(青年医師:あとアイスも食べたい。)
薬局で解熱剤と水枕、ポカリやゼリーにアイス、取り合えずの食材を買って冬は慌てて小鳥遊のマンションへと向かった。
寝室を覗くと辛そうな小鳥遊がベットで横になって居た。寝ているようだったので、買って来たものを冷蔵庫に入れた。おかゆを作っている途中で目が覚めたらしい。
「トーコさん来てくれてありがとう…。」
「先生ごめんなさいふざけてるのかと思って無視してました。」
「うん…そんな気がしました。」
小鳥遊はフラフラとダイニングへ来て出来たおかゆとポカリを飲んだ。
熱を測ると39℃もあった。
「ああ…一日ぶりの食事…美味しいです。」
小鳥遊がおかゆを食べている間に、シーツや枕カバーを手際よく変え、水枕を作った。下着や着替えも用意した。薬を飲ませ、着替えを手伝い寝室へと連れて行った。
「トーコさん 風邪移っちゃうから、もう大丈夫ですよ。」
小鳥遊は微笑んだ。
「食べたいものがあったら言って下さい。作りますから。」
「はい…ありがとう。」
…あ…今日は私を食べたいとかじゃ無いんだ。これは相当弱ってるな。
部屋を見ると 少し散らかっていた。ゴミ箱を見るとコンビニご飯の空がいっぱいになっていた。
…あーもうっ 掃除掃除!
掃除や皿洗い、トイレ掃除に床掃除。
仕事机の上に、冬がサンディに乗っている写真があった。あがったばかりの朝日が靄を照らしてキラキラと輝いていた。
…ジェスに怒られた時か。
もうちょっと踵上げた方が良かったな。写真でしか確認できない姿勢を見て冬は思った。慌しく動き、疲れた冬はソファーで少し横になった。
…いつの間にか眠っていたらしい。
冬に毛布が掛かっていた。
小鳥遊は起きてゼリーを食べていた。髪の毛の寝癖が可愛かった。
「先生 熱は?」
そう言いながら冬はおでこに触れた。
「7度台まで下がりました。お風呂沸かして貰えますか?」
小鳥遊は微笑んだ。
「じゃあ少し熱めにしますね。」
冬がソファーから立ち上がり風呂場へ行こうとすると、小鳥遊に腕を掴まれ、抱きしめられた。
…来てくれてありがとう。
翌日はオペも無いので小鳥遊はもう一日休むと言った。
熱は下がったものの少し怠そうだった。
「じゃあ私はこれで帰りますから。ご飯冷蔵庫に入ってますから、食べて下さいね。」
風呂から上がるのを見届けてから冬は荷物を纏めだした。
「トーコさん 大人の関係なんて言ってごめんなさい。」
「え?」
「もう僕たちはSteadyな関係ですよね。」
「…はい。そう思います。」
「では僕と正式に御付き合いして下さい。」
冬は暫く返事を考えていた。
「それは…多分…無理です。」
冬は微笑んだ。
「どうしてですか?」
「では…逆にお聞きしますが、結婚もしないし、子供も多分無理だと私が申し上げても御付き合いしたいですか?」
小鳥遊はショックだった。何故なら、今迄付き合って来た女性達に言い続けてきた言葉が、まさにそうだったからだった。
「先生のことが好き…大好き。でも…仕事も大事。私が求めるのは、Steadyな大人の関係。結婚とか御付き合いとか…お互いに時間が無くて無理だと思うんです。」
…冬は蝶だ。
追いかければふわふわと飛んで行ってしまうが、じっとしている限り自分に留まっている。
「ベッドで愛し合いたいと思うのは、先生だけです。でもずっと一緒には居られない。だけど、Steadyなつかず離れずの関係であれば私は先生の傍にずっといたいです。未来は判りませんけど、今はこれが私の正直な気持ちです」
…どうした小鳥遊…今まで自分がしてきたことじゃないか…なのにどうして冬から言われるとこんなにもショックを受けるんだ?
「そうですか…。」
…身体ではあんなに愛し合っていたのに、心がこんなにも遠かったことに気づきもしなかった。
冬の行動は若かりし頃の小鳥遊の生き写しのようだった。女性の部屋に好きなだけいて、疲れるとまた別の所へと去って行き、恋しくなるとまた元の場所へ戻る。ただ冬と若かりし頃の小鳥遊との大きな違いは、冬が自分だけを好きだと言っていることだ。
「それと…ついでで申し訳ないのですが、この際はっきりさせておきたいので言わせて頂きます。以前の緊急入院患者の時の様なことはしないで下さい。ここではトーコもしくはトウコでもいかように呼んで下さって結構ですが、病院では止めて下さい。」
…ほら…これも全く同じだ。
小鳥遊が昔付き合った看護師や女医に公私混同するなら今すぐ関係は解消すると宣言していた。
秘密を洩らさないことは当たり前だが、そんな隙を見せた時点で連絡を絶った。本気で好きな相手に言われるとこんなにも辛く厳しいものだったのかと冬に言われて気が付いた。
…ビジネスライク…と言う言葉がぴったりだ。
小鳥遊は思わず苦笑してしまった。
「先生 私何かおかしなことを申し上げたでしょうか?」
冬は少しムッとした顔で言った。
「いえ…何でもありません。」
小鳥遊は思った。
…今 その女性達の報いを受けているのかも知れない。
「はい…私からのお話は以上です。さぁ…お昼ご飯は何が食べたいですか?」
冬はいつもの冬に戻っていた。
「んーじゃあトーコさん。」
…やっぱりそうくるよね。
「熱がちゃんと下がってからじゃないと駄目です。」
小鳥遊は身もだえた。
「トーコさんが居るのに、このまま寝たらずっとして無いから夢精してしまいます。」
…そういえばずっとしてなかった…のか。
腕を掴まれベッドに引き込まれた。
「…でも正式に御付き合いして下さいって言われてとっても嬉しかった。」
冬は小鳥遊に抱きついて言った。
「じゃあ…結婚して下さい。」
小鳥遊は耳元で囁いた。冬のセーターをゆっくりと脱がし、スリップドレス、ブラ…と器用に脱がせていく。
「だから…無理です。でも…もし結婚することがあったら、先生としたいです。」
続けてスカートのジッパーを下げて脱がした。
「…意地悪。」
冬は笑った。
「でもいつも先生の傍に居ますから。」
ガーターベルトの上のショーツをそっと脱がした。
「…ガーターベルトしたままだととってもエッチですね。僕好きかも…。」
小鳥遊は舌を腰からゆっくり冬の下腹部に這わせつつ、優しく胸を揉み、時を愛撫した。
「…あ。」
「もっと…聞かせて。」
小鳥遊の舌は引き締まった二つの小さな肉丘の間を這い、冬の太ももの大きく開かせた。
「先生…恥ずかしい…」
「その恥ずかしがっているトーコさんの顔が見たい。」
ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てながら突起を円を描くように舌先で愛撫した。
「…ぁん。」
冬の形の良い入り口にそっと指をいれた。内側の桃色の花弁がヒクヒク動き、小鳥遊の大きな指を締め付けた。ゆっくりとした動きで出し入れすると、指にトロトロと愛液が絡み付いて来た。
「トーコさんとても…濡れていますよ?」
…はぁ
「あなたは好きなようにすればいい…だけど最後はいつも必ず僕の所に戻って来て欲しいんです。」
…くっ…
「僕の所に戻って来ると言って下さい。」
…はぁ…はぁ…そんなのずるい…です。
「お願いします…トーコさん。」
愛液は換えたばかりのシーツに丸い染みを付けていた。
小鳥遊は、ゆっくりと指を抜き、冬の前で舐めて見せた。はち切れんばかりの自分を先をピンク色の入り口に押し当てた。冬は久しぶりのセックスに頭の芯が熱くなった。
「戻って来るといってくれなきゃ…挿れてあげません。」
「そんなの…あらがえ…ないです…はぁはぁ。」
小鳥遊は冬の入り口を執拗に愛撫した。冬の腰はそれに呼応し、求めるように動いた。冬は小鳥遊の腰に足を絡ませ引き寄せようとしたが、小鳥遊は全く動かなかった。小鳥遊は意地悪く微笑んでいた。
「…挿れて。」
快感を欲する冬の姿はいやらしく小鳥遊の征服欲を掻き立てた。
「私は…先生のものです。」
冬は小鳥遊の顔を両手で手で挟んた。
「だから…お願いです…私を今すぐ先生で満たして。」
快感で潤った大きな瞳で小鳥遊をじっと見つめた。
「僕は…それでも…トーコさんの全てが欲しい…。」
潤い蜜が滴る入り口から滑る様に冬の中へと入り込んだ。
「…んん…はぁぁ。」
冬が貫かれ、その刺激に身もだえた。
「ああ…僕がトーコを満たしてあげる…気持が良いよ。」
「もっと…もっと…先生が…欲しい。」
冬は快感で潤んだ眼で小鳥遊を見つめ微笑んだ。
「沢山愛してあげる…。」
冬の尖った乳首を強く吸うと、冬の身体全体が小鳥遊の腕の中で力が入り痙攣し始めた。同時に強い伸縮を感じた。
「あぁ…感じるの…ぁ。せんせ…一緒に…一緒に…いきたいの。」
冬の収縮が連続的になり、小鳥遊を欲した。
「僕も…いく…よ。」
冬は小鳥遊と手を繋いだ。
…一緒に。
こうして冬と小鳥遊の微妙な半同棲生活は再び始まった…かのように見えた。
+:-:+:-:+:-:🐈⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
冬は今泉との2回目のデートで、はっきりと断った。
…が、お試しの3ヶ月はまだ過ぎていませんよと言って取り合ってはくれなかった。
毎日のように他愛も無いことでメールが来た。家で冬の携帯が鳴るたびに小鳥遊はちらりと冬を見るのだった。
「こんなに今泉先生がしつこいとは思わなかった。ああもう面倒くさい。」
そう言えば自分にもメッセージをこちらから送った時にしか冬は、返事を寄こさないなと小鳥遊は思った。
オペで遅くなっても別段 「忙しいの?」とかいつ「帰って来るの?」とか聞かれた事が全く無い。
「ちゃんと返事ぐらいしてあげたらどうですか?」
来月の当直表を作りながら言った。
「だって…どうでも良いこと送って来るんですもの。」
ほら…と言ってメールを小鳥遊に見せた。
(いま何していますか?)
(お昼ご飯を一緒に食堂で食べませんか?)
(今度いつ会えますか?)
(休みの日は何してますか?)
…女性から貰うメールのようだ。
小鳥遊は笑った。
ふと見るとメッセージの中に気になるものを見つけた。
(ホットケーキよりキスの方が甘かったでした。)
「トーコさん…これはどういう意味でしょうか?」
小鳥遊はその大きな体で冬を引き寄せた。
冬はちらっと見て
「あ…これですか?」
…まずい…言ってないし、消去してなかった。
「えっと…それは…」
…駄目だ開き直ろう。
「完全なるアクシデントでした…。」
暫く沈黙が続いた。
「本当ですか…これ…いつの話?」
「病院の忘年会の時…先生が熟女に拿捕されたあの夜です。」
「だから…言ったじゃないですか。気を付けないと…。」
「うーん。でも不思議と胸がキュンキュンしちゃって、一緒に居たら心地よかったかも?」
…あ…つい本音が出ちゃった。
「例えば?」
「えーと。酔った姿が可愛かったから…とか、部屋で飲んで可愛い僕を見てみる?とか…そんな感じのことですかねぇ。」
…あと忘れちゃったのよね。
「そんなこと僕はいつもトーコさんに言ってるじゃないですか。」
「そーなんですよねぇ…それが不思議なの。これって…恋?」
「えっ。」
お茶を飲んでいた小鳥遊がギョッとした。
「冗談です。若い子なら騙されちゃうと思いますが、私は先生にメロメロだから大丈夫♪」
…ちょっとここらで、変態エロも褒めとこ。
「それは判っていますが…。」
…あ…認めた…なんか憎たらしい…ホントにそうだけど。
「もし結婚するとすれば、私は先生としたい…しないけど。」
冬は突然引き寄せられ、小鳥遊の膝にいつものように座らせられた。
「酷い。」
小鳥遊は冬のズボンのベルトをカチャカチャと緩めた。
「違うんです。車降りて、月性さん忘れ物~って言われて運転席をのぞき込んだらチュってされちゃったんです。」
冬の尻に、硬くて太いものが当たり思わず笑った。
「それって未必の故意じゃないですか?」
冬のズボンと下着は瞬く間に下ろされた。
「違います過失です。」
逃れようとす冬をしっかりと抱きしめた。指は慣れた手つきで冬の中へと滑り込んだ。
「黙っていたなんて、やましいと自分で判っているからでしょう?」
「あっ…忘れてたんです。んん…それぐらいのキスだったんです…ってば。」
…すぐ消しときゃ良かった。
「今日はお仕置きです。」
小鳥遊は指を静かに沈めていった。
「あ…ん…だから何もありませんでした…キス…以外は…。」
冬が逃げようとしても体の大きな小鳥遊には抵抗が出来なかった。
「それだから隙があるって言うんです。僕が居ない時にはRape-aXeを付けて貰うしか無いですね。」
冬は笑った。指は優しく、冬が感じる場所をしっかりと覚えていて、執拗に攻め始めた。
「あ…ん…間違えて…先生が挿れちゃうと…思いますけど。」
冬は手を小鳥遊の膝に置き、快感から逃れようと腰を少し浮かせた。
寝込みや、帰って来てすぐ、お風呂中、まだ寝ている早朝など家の中では、所かまわずの小鳥遊にとっては、その危険性は充分あり得た。
「良いこと…思いついちゃった…んん。」
「……!!!」
「私が」
「駄目です。」
「…したくない時に」
「絶対駄目です。」
「つけて…おけば良いん…じゃない? ああ…せんせ…そこ駄目ぇ。」
「つけなくて良いんじゃないですか?」
「あとで…ググろっ…と。ああ…そんなに…されたら…。」
「ごめんなさい。お願いだから止めて下さい。僕にとっては死活問題ですから。」
そう言いつつも、冬の中へと小鳥遊は押し入り、ゆっくりと腰をスライドさせた。
「ん…また…これで…誤魔化せる…と…思って。」
そう言いつつも、冬から愛液は流れ出し小鳥遊を優しく包み込んでいた。
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予定入院8件。
まぁそれは良い。
自動車事故で重症患者が3人纏めて入った。
もう看護師メンバー皆一杯一杯だった。
今日は流石に日勤でも21時帰宅コースだと誰もが、諦めていた。
そこに再び緊急入院を打診する連絡が来た。
ベッドは1床確保していたが、それは明日、集中治療室から上がってくる患者の予約ベッドだった。
「えーっ!!!」
皆が一斉に叫んだ。
「マジ?もう無理だよ。」
「誰だよ…今日の運気最悪だった奴は?」
…当科だけど、ベッドが空くまで他科で診てもらうしか無いか。
師長不在で冬は、
代行管理者として電話を後輩から代わった。
「ああ月性さんか?助かりました。一人入れたいんだけど駄目?ホントに悪いんだけど。」
小鳥遊医局長だった。
「先生、満床です。」
冬はきっぱりと言った。
「確かに,画面上は満床になってるけど、この1床に1日だけ入れられないかな?」
小鳥遊もPCで空床状況を確認しているようだった。
「無理です。明日の朝一番で,ICUから、高橋先生の患者が上がってきますので、その予約ベッドですから。」
…自分達で手術してるんだから覚えておいて欲しい…てか知ってて聞いてるの?だとしたら、ぶち切れても良い案件なり。
「あんまり他科には入れたく無いんだけどなぁ。」
脳外は特殊なので、他の科からだと嫌がられることが多い。ただ、それはどの科もお互い様…の筈だ。
「そんな事を言ったって無理です。日勤だけで入院11件で、その中の3人は重症ですよ?」
「師長さんは?」
…師長が居たとしてもきっと駄目だって言う。
「今会議中でおりません。」
…私じゃ頼りにならないって言いたいの?
「どうにかなりませんかね?」
…今日はやけにしつこいぞ?
「空いてないものは空いてないんです。だって今うちに来て、結局明日の朝には他科に…だったら最初から他科病棟で見てもらった方がいいとは思いませんか?明日の退院もありますけど、それも予約ベッドで埋まりますよ?」
…どうした小鳥遊?お前らしくないぞ。
「トーコさんだったら、どうにかして貰えると思ったんだけどなぁ。」
小鳥遊は少し甘えたような声で言った。
…何それ?
今まで病院内に居る時に、たとえ電話だったとしても、冬は名前で呼ばれた事は一度も無かった。家で甘えている時のような物言いに、冬はあからさまにムッとした。
「先生そう仰られても無理なんです。」
冬のイライラもマックスだったが、同僚や後輩が二人の電話のやり取りを固唾を飲んでじっと見ている。
「意地悪…。」
小鳥遊がまた甘えた声を出した。
…おい…いい加減にしろや。
「意地悪で申し上げているのではありません。明日、ICUから患者が10時に上がってきます。その前までなら最低最悪の場合対処しますけど。他科の空床数見ますから…ちょっと待って。」
冬はPCで空床状況を確認した。
「空床だったら、僕も今見てるよ。」
小鳥遊は、悪びれもせずに言ったが、冬は無視した。
「ええと…内科なんて7床も空いてますけれど?あ…流石に内科は怖いですか?そうですよね。では、脳神経内科なんてどうでしょう?2床…空いてますよ?、あらまあ 何ということでしょう?先生の大好きな藤田医局長のいらっしゃる外科は、4床“も”空いてますよ。画面上では…ですが。」
後ろで病棟の看護師達が冬とのやりとりを聞いていて爆笑して言いたいことを言い始めた。
「やべー月性さんがぶち切れてる。怖えぇ。」
「相手誰だろうね?」
「しつこいから禿か?」
「まさかのキョクチョーだったりして。」
その声が聞こえたのか、これには流石に小鳥遊もムッとしたようだった。
「…確認します。」
―――ガチャリ
小鳥遊は電話を切った。
…エロ 撃退。
皆がどうでした?という顔をして冬を見た。
「とりあえず、うちは入院取らなくて大丈夫です。」
冬は冷静に病棟の看護師達に報告をしたが、小鳥遊に怒っていた。
「イェーース!!」
「さすが月性さん♪」
「あざーっす。」
ナースステーションから喜びの声が上がった。
…こういうことが嫌なのだ。
「どうしたんだろ医局長…今まではこんなこと無かったのに。」
冬が皆に言った。
「禿はまだしも医局長まで…病棟に何でも押し付けりゃいいと思ってるんじゃ無いですかね?」
「禿病蔓延中…。」
「やだ…そんなの流行らせないでよ。」
「だってさぁ準夜終わりギリで“明日の朝からお願いねー”とか最近時間も守れていないんだよ?あったまくるよね。」
皆、言いたい放題だった。
「今日の阻止お疲れーっす。」
準夜勤の見回りから戻って来た男性看護師達である。
「予約ベッドだって言ってるのに、小鳥遊先生ったら、意地悪って私に言ったんですよ?信じられる?」
冬は思わず文句を言ってしまった。
…今日は家に帰ったらたっぷり説教だ。待ってろエロ。
自分の仕事が終わり、冬が後輩の仕事を全力で手伝ったのにも関わらず、その日の日勤業務が全て終了したのは21時近かった。
+:-:+:-:+:-:+:🐈⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
冬が鼻息荒く帰ったものの、小鳥遊はまだ帰宅していなかった。
…あれ…緊急オペか。
お風呂に入り冬はそのまま寝てしまった。
―――そして翌朝
今日から冬は冬休みだった。
いそいそと早朝から珍しく出かける支度をしている冬をチラリと小鳥遊は見た。
昨日は緊急オペが終わり、小鳥遊が戻って来た時には、冬はすやすやと寝ていた。
朝も禄に話をしないところを見ると、怒っているのかも知れないと小鳥遊は思った。
半同棲生活をし始めて暫く経過したが、休日出かけられないと言うのは、冬にとってストレスだった。
それに加えて昨日の出来事。考えてみれば、アメリカから帰って来て外食にすら行っていない
一緒に出歩けば、すぐにばれてしまうし、そんなことは冬も充分良く分かっていた。
…なんか窮屈。
もともと自分の時間を趣味に費やしていた冬は、誰かとずっと一緒に居ることが今まで一度も無かった。
…冬休み 実家に帰るって嘘ついて、自分のマンションへ帰ろっと。
昨日のこともあったが、その前から溜まってきた私物を少しつづ運び出していた。
「トーコさん…あなた何か良からぬことを考えていませんか?」
…ちっ…こんな時だけ感が良いな。
「良からぬことって?」
「例えば…僕の家から出て行くとか…。」
…冬休みだけですよ。
「いえいえ…妹が来てて、一緒に実家へ帰るんです。だから、マンションに帰ってないと、結婚前に男性と同棲してるなんてお父様に知れたら…怒られちゃうから♪」
…妹いないし…早く結婚しろ、子供だけ作れとか放任主義だし。
「二十歳を超えても厳しいなんて…。」
小鳥遊は冬が作った朝ご飯を食べていた。
「ええそうなんですよ。」
「…だから反動で、こんなエッチな子になっちゃったんですね。」
…昨日のことと良い…変態エロ…表出ろ。
「一体誰のせいでエッチなことになってるんですかねぇ?じゃ…ごきげんよう。」
やっと手に入れた久しぶりの自由~♪
冬は、予約してたエステや美容室へ行き、部屋の掃除をして就寝した。朝は、ゆっくりと起きてジョギングへ行きシャワーを浴びた。夜はエロのゲリラ襲撃も無いのでぐっすり眠れた。
…あああ…自由って…ス・テ・キ♪
冬は今度からこの手を使おうと密かに思った。
冬はのびのびと一人を満喫した。
…ああ 正月明け…先生の所に戻るの面倒だなぁ。
+:-:+:-:+:-:+:🐈⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:
冬は、何となく正月明けから、小鳥遊の所には戻らず自分のマンションから病院へ通った。
小鳥遊の事が嫌いになったとかでは無く、少々窮屈だったからだ。
…一緒に居過ぎるのもお互いの調子が狂って良くない気がする。
小鳥遊には暫くひとり過ごしたいとだけ言って、冬休みが終わってからは部屋へは行ってなかった。
「今泉先生、月性さんから全然誘われないって言ってたわよー。」
師長が、わざわざ冬をステーションの隅に呼び寄せて囁いた。
「あなたたち上手く行ってるの?」
…いや…だって…付き合って無いし。
今泉の外堀埋め作戦の効果が効いてきたようで、師長は何かにつけて、冬を心配して聞いてきた。
「なんか最近疲れちゃって…家に帰るとすぐ眠くなっちゃうんですよねぇ。」
得意の笑って誤魔化し作戦。
「あら良いサプリあるわよ。30超えるとねぇ色々きつくなるけど、40超えるともっとだから。」
…いやいやシチョーさん。そこ迄は…。
小鳥遊は家を出て以来、何も言ってこないし、余り病棟にも上がって来ない。
…ってことは…終わったのか?…終わったの私達?
それはそれで、内心焦っている冬だった。
しかし、休み明けで、ゴタゴタするのも面倒だった。
…先生が言ってくるまでほっといて良いよね。
小峠も言い寄る事が無くなったので、新しい犠牲者が出たのかも知れないと冬は思った。
マンションと病院を往復の生活。小鳥遊に振り回されたお陰?で時間の使い方が上手くなり、効率よく進んでいるようにさえ思えた。
そして時間があれば習い事の充実した生活へと戻って行った。
冬とは反対に、小鳥遊は焦っていた。何も言わずに冬が出て行き、暫くしてからひとりでマンションで過ごしたいと言った事。思い当たるのは、あの入院患者のことだけだった。
…でも そんなことでだけで怒ったりする筈はない。
本人に直接聞けば良いのだが、それも出来ず不安と性欲は溜まる一方だった。お互いの生活を取り戻して1ヶ月が過ぎようとしたある日の夜
(青年医師:トウコさん助けて)
(どうしました?)
(青年医師:熱出て辛いの…おかゆ作りに来て)
(青年医師:お願いします トウコさん)
(青年医師:本気…と書いてマジです。)
嘘だと思った冬は無視し続けた。明日は日勤だったが、朝早く師長から電話があった。
「今日 小鳥遊先生の体調が悪くてオペ中止になったから、人余っちゃうからあなた今日休んで…ってことは2連休ね…デート行けるわよ♪うふふふ。」
…なんということでしょう~本気と書いてマジだったのか。
冬は慌ててメールを返した。
(生きてますか?)
(青年医師:エジプト考古学博物館からオファー来そうな感じです。 )
(青年医師:あと…解熱剤何でも良いから買うてきて下さい。)
(Roger)
(青年医師:あとアイスも食べたい。)
薬局で解熱剤と水枕、ポカリやゼリーにアイス、取り合えずの食材を買って冬は慌てて小鳥遊のマンションへと向かった。
寝室を覗くと辛そうな小鳥遊がベットで横になって居た。寝ているようだったので、買って来たものを冷蔵庫に入れた。おかゆを作っている途中で目が覚めたらしい。
「トーコさん来てくれてありがとう…。」
「先生ごめんなさいふざけてるのかと思って無視してました。」
「うん…そんな気がしました。」
小鳥遊はフラフラとダイニングへ来て出来たおかゆとポカリを飲んだ。
熱を測ると39℃もあった。
「ああ…一日ぶりの食事…美味しいです。」
小鳥遊がおかゆを食べている間に、シーツや枕カバーを手際よく変え、水枕を作った。下着や着替えも用意した。薬を飲ませ、着替えを手伝い寝室へと連れて行った。
「トーコさん 風邪移っちゃうから、もう大丈夫ですよ。」
小鳥遊は微笑んだ。
「食べたいものがあったら言って下さい。作りますから。」
「はい…ありがとう。」
…あ…今日は私を食べたいとかじゃ無いんだ。これは相当弱ってるな。
部屋を見ると 少し散らかっていた。ゴミ箱を見るとコンビニご飯の空がいっぱいになっていた。
…あーもうっ 掃除掃除!
掃除や皿洗い、トイレ掃除に床掃除。
仕事机の上に、冬がサンディに乗っている写真があった。あがったばかりの朝日が靄を照らしてキラキラと輝いていた。
…ジェスに怒られた時か。
もうちょっと踵上げた方が良かったな。写真でしか確認できない姿勢を見て冬は思った。慌しく動き、疲れた冬はソファーで少し横になった。
…いつの間にか眠っていたらしい。
冬に毛布が掛かっていた。
小鳥遊は起きてゼリーを食べていた。髪の毛の寝癖が可愛かった。
「先生 熱は?」
そう言いながら冬はおでこに触れた。
「7度台まで下がりました。お風呂沸かして貰えますか?」
小鳥遊は微笑んだ。
「じゃあ少し熱めにしますね。」
冬がソファーから立ち上がり風呂場へ行こうとすると、小鳥遊に腕を掴まれ、抱きしめられた。
…来てくれてありがとう。
翌日はオペも無いので小鳥遊はもう一日休むと言った。
熱は下がったものの少し怠そうだった。
「じゃあ私はこれで帰りますから。ご飯冷蔵庫に入ってますから、食べて下さいね。」
風呂から上がるのを見届けてから冬は荷物を纏めだした。
「トーコさん 大人の関係なんて言ってごめんなさい。」
「え?」
「もう僕たちはSteadyな関係ですよね。」
「…はい。そう思います。」
「では僕と正式に御付き合いして下さい。」
冬は暫く返事を考えていた。
「それは…多分…無理です。」
冬は微笑んだ。
「どうしてですか?」
「では…逆にお聞きしますが、結婚もしないし、子供も多分無理だと私が申し上げても御付き合いしたいですか?」
小鳥遊はショックだった。何故なら、今迄付き合って来た女性達に言い続けてきた言葉が、まさにそうだったからだった。
「先生のことが好き…大好き。でも…仕事も大事。私が求めるのは、Steadyな大人の関係。結婚とか御付き合いとか…お互いに時間が無くて無理だと思うんです。」
…冬は蝶だ。
追いかければふわふわと飛んで行ってしまうが、じっとしている限り自分に留まっている。
「ベッドで愛し合いたいと思うのは、先生だけです。でもずっと一緒には居られない。だけど、Steadyなつかず離れずの関係であれば私は先生の傍にずっといたいです。未来は判りませんけど、今はこれが私の正直な気持ちです」
…どうした小鳥遊…今まで自分がしてきたことじゃないか…なのにどうして冬から言われるとこんなにもショックを受けるんだ?
「そうですか…。」
…身体ではあんなに愛し合っていたのに、心がこんなにも遠かったことに気づきもしなかった。
冬の行動は若かりし頃の小鳥遊の生き写しのようだった。女性の部屋に好きなだけいて、疲れるとまた別の所へと去って行き、恋しくなるとまた元の場所へ戻る。ただ冬と若かりし頃の小鳥遊との大きな違いは、冬が自分だけを好きだと言っていることだ。
「それと…ついでで申し訳ないのですが、この際はっきりさせておきたいので言わせて頂きます。以前の緊急入院患者の時の様なことはしないで下さい。ここではトーコもしくはトウコでもいかように呼んで下さって結構ですが、病院では止めて下さい。」
…ほら…これも全く同じだ。
小鳥遊が昔付き合った看護師や女医に公私混同するなら今すぐ関係は解消すると宣言していた。
秘密を洩らさないことは当たり前だが、そんな隙を見せた時点で連絡を絶った。本気で好きな相手に言われるとこんなにも辛く厳しいものだったのかと冬に言われて気が付いた。
…ビジネスライク…と言う言葉がぴったりだ。
小鳥遊は思わず苦笑してしまった。
「先生 私何かおかしなことを申し上げたでしょうか?」
冬は少しムッとした顔で言った。
「いえ…何でもありません。」
小鳥遊は思った。
…今 その女性達の報いを受けているのかも知れない。
「はい…私からのお話は以上です。さぁ…お昼ご飯は何が食べたいですか?」
冬はいつもの冬に戻っていた。
「んーじゃあトーコさん。」
…やっぱりそうくるよね。
「熱がちゃんと下がってからじゃないと駄目です。」
小鳥遊は身もだえた。
「トーコさんが居るのに、このまま寝たらずっとして無いから夢精してしまいます。」
…そういえばずっとしてなかった…のか。
腕を掴まれベッドに引き込まれた。
「…でも正式に御付き合いして下さいって言われてとっても嬉しかった。」
冬は小鳥遊に抱きついて言った。
「じゃあ…結婚して下さい。」
小鳥遊は耳元で囁いた。冬のセーターをゆっくりと脱がし、スリップドレス、ブラ…と器用に脱がせていく。
「だから…無理です。でも…もし結婚することがあったら、先生としたいです。」
続けてスカートのジッパーを下げて脱がした。
「…意地悪。」
冬は笑った。
「でもいつも先生の傍に居ますから。」
ガーターベルトの上のショーツをそっと脱がした。
「…ガーターベルトしたままだととってもエッチですね。僕好きかも…。」
小鳥遊は舌を腰からゆっくり冬の下腹部に這わせつつ、優しく胸を揉み、時を愛撫した。
「…あ。」
「もっと…聞かせて。」
小鳥遊の舌は引き締まった二つの小さな肉丘の間を這い、冬の太ももの大きく開かせた。
「先生…恥ずかしい…」
「その恥ずかしがっているトーコさんの顔が見たい。」
ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てながら突起を円を描くように舌先で愛撫した。
「…ぁん。」
冬の形の良い入り口にそっと指をいれた。内側の桃色の花弁がヒクヒク動き、小鳥遊の大きな指を締め付けた。ゆっくりとした動きで出し入れすると、指にトロトロと愛液が絡み付いて来た。
「トーコさんとても…濡れていますよ?」
…はぁ
「あなたは好きなようにすればいい…だけど最後はいつも必ず僕の所に戻って来て欲しいんです。」
…くっ…
「僕の所に戻って来ると言って下さい。」
…はぁ…はぁ…そんなのずるい…です。
「お願いします…トーコさん。」
愛液は換えたばかりのシーツに丸い染みを付けていた。
小鳥遊は、ゆっくりと指を抜き、冬の前で舐めて見せた。はち切れんばかりの自分を先をピンク色の入り口に押し当てた。冬は久しぶりのセックスに頭の芯が熱くなった。
「戻って来るといってくれなきゃ…挿れてあげません。」
「そんなの…あらがえ…ないです…はぁはぁ。」
小鳥遊は冬の入り口を執拗に愛撫した。冬の腰はそれに呼応し、求めるように動いた。冬は小鳥遊の腰に足を絡ませ引き寄せようとしたが、小鳥遊は全く動かなかった。小鳥遊は意地悪く微笑んでいた。
「…挿れて。」
快感を欲する冬の姿はいやらしく小鳥遊の征服欲を掻き立てた。
「私は…先生のものです。」
冬は小鳥遊の顔を両手で手で挟んた。
「だから…お願いです…私を今すぐ先生で満たして。」
快感で潤った大きな瞳で小鳥遊をじっと見つめた。
「僕は…それでも…トーコさんの全てが欲しい…。」
潤い蜜が滴る入り口から滑る様に冬の中へと入り込んだ。
「…んん…はぁぁ。」
冬が貫かれ、その刺激に身もだえた。
「ああ…僕がトーコを満たしてあげる…気持が良いよ。」
「もっと…もっと…先生が…欲しい。」
冬は快感で潤んだ眼で小鳥遊を見つめ微笑んだ。
「沢山愛してあげる…。」
冬の尖った乳首を強く吸うと、冬の身体全体が小鳥遊の腕の中で力が入り痙攣し始めた。同時に強い伸縮を感じた。
「あぁ…感じるの…ぁ。せんせ…一緒に…一緒に…いきたいの。」
冬の収縮が連続的になり、小鳥遊を欲した。
「僕も…いく…よ。」
冬は小鳥遊と手を繋いだ。
…一緒に。
こうして冬と小鳥遊の微妙な半同棲生活は再び始まった…かのように見えた。
+:-:+:-:+:-:🐈⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
冬は今泉との2回目のデートで、はっきりと断った。
…が、お試しの3ヶ月はまだ過ぎていませんよと言って取り合ってはくれなかった。
毎日のように他愛も無いことでメールが来た。家で冬の携帯が鳴るたびに小鳥遊はちらりと冬を見るのだった。
「こんなに今泉先生がしつこいとは思わなかった。ああもう面倒くさい。」
そう言えば自分にもメッセージをこちらから送った時にしか冬は、返事を寄こさないなと小鳥遊は思った。
オペで遅くなっても別段 「忙しいの?」とかいつ「帰って来るの?」とか聞かれた事が全く無い。
「ちゃんと返事ぐらいしてあげたらどうですか?」
来月の当直表を作りながら言った。
「だって…どうでも良いこと送って来るんですもの。」
ほら…と言ってメールを小鳥遊に見せた。
(いま何していますか?)
(お昼ご飯を一緒に食堂で食べませんか?)
(今度いつ会えますか?)
(休みの日は何してますか?)
…女性から貰うメールのようだ。
小鳥遊は笑った。
ふと見るとメッセージの中に気になるものを見つけた。
(ホットケーキよりキスの方が甘かったでした。)
「トーコさん…これはどういう意味でしょうか?」
小鳥遊はその大きな体で冬を引き寄せた。
冬はちらっと見て
「あ…これですか?」
…まずい…言ってないし、消去してなかった。
「えっと…それは…」
…駄目だ開き直ろう。
「完全なるアクシデントでした…。」
暫く沈黙が続いた。
「本当ですか…これ…いつの話?」
「病院の忘年会の時…先生が熟女に拿捕されたあの夜です。」
「だから…言ったじゃないですか。気を付けないと…。」
「うーん。でも不思議と胸がキュンキュンしちゃって、一緒に居たら心地よかったかも?」
…あ…つい本音が出ちゃった。
「例えば?」
「えーと。酔った姿が可愛かったから…とか、部屋で飲んで可愛い僕を見てみる?とか…そんな感じのことですかねぇ。」
…あと忘れちゃったのよね。
「そんなこと僕はいつもトーコさんに言ってるじゃないですか。」
「そーなんですよねぇ…それが不思議なの。これって…恋?」
「えっ。」
お茶を飲んでいた小鳥遊がギョッとした。
「冗談です。若い子なら騙されちゃうと思いますが、私は先生にメロメロだから大丈夫♪」
…ちょっとここらで、変態エロも褒めとこ。
「それは判っていますが…。」
…あ…認めた…なんか憎たらしい…ホントにそうだけど。
「もし結婚するとすれば、私は先生としたい…しないけど。」
冬は突然引き寄せられ、小鳥遊の膝にいつものように座らせられた。
「酷い。」
小鳥遊は冬のズボンのベルトをカチャカチャと緩めた。
「違うんです。車降りて、月性さん忘れ物~って言われて運転席をのぞき込んだらチュってされちゃったんです。」
冬の尻に、硬くて太いものが当たり思わず笑った。
「それって未必の故意じゃないですか?」
冬のズボンと下着は瞬く間に下ろされた。
「違います過失です。」
逃れようとす冬をしっかりと抱きしめた。指は慣れた手つきで冬の中へと滑り込んだ。
「黙っていたなんて、やましいと自分で判っているからでしょう?」
「あっ…忘れてたんです。んん…それぐらいのキスだったんです…ってば。」
…すぐ消しときゃ良かった。
「今日はお仕置きです。」
小鳥遊は指を静かに沈めていった。
「あ…ん…だから何もありませんでした…キス…以外は…。」
冬が逃げようとしても体の大きな小鳥遊には抵抗が出来なかった。
「それだから隙があるって言うんです。僕が居ない時にはRape-aXeを付けて貰うしか無いですね。」
冬は笑った。指は優しく、冬が感じる場所をしっかりと覚えていて、執拗に攻め始めた。
「あ…ん…間違えて…先生が挿れちゃうと…思いますけど。」
冬は手を小鳥遊の膝に置き、快感から逃れようと腰を少し浮かせた。
寝込みや、帰って来てすぐ、お風呂中、まだ寝ている早朝など家の中では、所かまわずの小鳥遊にとっては、その危険性は充分あり得た。
「良いこと…思いついちゃった…んん。」
「……!!!」
「私が」
「駄目です。」
「…したくない時に」
「絶対駄目です。」
「つけて…おけば良いん…じゃない? ああ…せんせ…そこ駄目ぇ。」
「つけなくて良いんじゃないですか?」
「あとで…ググろっ…と。ああ…そんなに…されたら…。」
「ごめんなさい。お願いだから止めて下さい。僕にとっては死活問題ですから。」
そう言いつつも、冬の中へと小鳥遊は押し入り、ゆっくりと腰をスライドさせた。
「ん…また…これで…誤魔化せる…と…思って。」
そう言いつつも、冬から愛液は流れ出し小鳥遊を優しく包み込んでいた。
+:-:+:-:+:-:🐈⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
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