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第六章 第七節

師匠の墓前にて

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ケンジは遣るべき事に関しては、滞り無く素早く済ませるタイプで、ユキナとミーも交えて話し合った上で、其の次の日には、マイの火葬をして更には、師匠のお墓に納骨埋葬を終えていた。勿論、簡単な葬儀も五人(六人)で執り行った。

ミー
「皆さん、ありがとうございました」
「マイ姉さんも、大好きな人と一緒のお墓で喜んで成仏?ってのをしてくれると思います」

ケンジ
「うむ。成仏か。サキュバスが死後如何なるとか、正直な処オレには解らないが、師匠なら解っただろうし、師匠の魂がきっと導いてくれそうだよな。」

一堂、ケンジのその言葉には、納得同意でした。それ位、彼等の師匠はとんでもなく、呆れる程に凄い人だった様です。

皆で墓前にて、手を合わせていると後ろから声が掛かる。

「ミー!ミーじゃあないか。こんな処に居たのかい?それにしてもこんなにも大勢でお墓参りかい?」

ミーは振り返ると
「アイ姉さ~ん。わ~っ。会いたかったよ~。」

とサキュバスの長女に抱き付き、その胸で泣きじゃくる。アイも又、心配をしていた素振りで優しくミーの頭を撫でる。その眼には涙が滲んでいる。

アイ
「急に居なくなるから心配したよ。それに、マイも居なくなるしで、何処に行ってしまったのかと…」

アイとミーは漸く再会出来たらしく、それを感じ取った皆は、暫くそのままを見守った。
ケンジは話に割って入らない様に、少し落ち着いた様子を見計らって切り出す。

「そろそろいいかな?」

アイ
「なんだい?畏まって。そうか、やっと決心してくれたんだねぇ。ありがとう。これで私達も、漸く落ち着けるねぇ。」

ケンジ
「否、そうじゃなくてな。その話もしたいんだが…」

ミー
「良かったね!アイ姉さん。」

アイ
「あぁ。良かったね。ミー。」

ミー
「これで晴れて、私もタカシのお嫁になれるね」

レナ
「え?何ですって?嫁?」

タカシはシドロモドロな様子で、
「違うだろ。ケンジさん、マイさんが亡くなったって話をちゃんとしてよ。」

アイは眼を丸くする。
「…」

ケンジ
「色々とこちらで起きた詳しい事は、後で話すから。其方の事情も詳しく聞かせてくれ。それから、マイさんは師匠と一緒の墓に弔わせてもらったからな。」

アイは、ケンジの冷静な言葉の言い回しに、自分も落ち着いて静かに返す。

「はい。そうですか。マイが…。」

ナオヤ
「そうと決まれば、何か食べに行こうぜ。其処でゆっくり話せば良いじゃん。オレはもう、腹ぺこで倒れそうだよ。」

タカシ
「其れにはオレも賛成だな。食事しながらゆっくり話しましょう。」

ケンジ
「バカ言うな。今、感染症対策で食事処は、会話禁止だ。少なくとも、話すときはマスク着用だ。」

ユキナ
「なら、マスクをすれば良いのね」

ナオヤ、タカシ、レナ
「ですね」

はぁ。とケンジは息を付くと、

「んじゃ行くか」

ナオヤ、タカシ、レナ、ミー
「いえーい」
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