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第六章 第六節

修行その②「魔力操作(コントロール)」

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タカシ
「しっかし、相変わらずだなぁ。あの師匠譲りのチート技。」

ナオヤも頷きながら
「だよなぁ。先代魔王が得意とした、只単に圧倒的魔力差だけで頭を吹き飛ばす技。師匠は先代魔王と仲良かったから覚えたとか言っていたけどな。」

タカシは半分呆れ顔で
「仲良いからって、普通出来るかよなぁ。それを伝承して受け継いでるケンジさんも、ホントに人間ですか?って話だよな。」

ミーは眼をキラキラさせながら
「やっぱり、アンタ達しか居ないよ。コレだけのチカラが有れば、皆納得だよ。」

三人の話の主たるケンジはと云うと、袋に入ったマイの頭を一旦、道場中央の正面に丁重に置き、眼を閉じ手を合わせている。

其れを不思議そうに見ていたレナは思う。
「アンナ姉さんもあんな風にしたら、喜んでくれるかなぁ?」

タカシ
「そうだな。今度落ち着いたら、アンナ姉さんも弔ってやらないとな。」

レナ
「うん。ありがとう、タカシ。」

ケンジ
「さあ。先ずは此のゴミを片付けるぞ。ミーは其処に座って休んどけ。二人は雑巾掛け。オレは外でゴミを焼却処分してくる。」

三人(四人)
「はーい。」

ケンジ
「返事は短く。はい。」

三人(四人)
「はい。」

各々、掃除に取り掛かる。ミーは隅の方で座って其の様子を観ている。
二人が雑巾を水で濡らし、絞り終えた頃、もう終わらせたのでしょうか。ケンジはあっさりと涼しい顔で戻って来る。

ケンジ
「何だ。未だ雑巾を絞った処か。」

二人(三人)
「ケンジさんが早すぎるんです。」

其れを観ていたミーは、やっと笑顔でケラケラと笑っている。ミーの様子を案じてした三人(四人)にも笑顔が漸く戻る。

ケンジ
「仕方が無い。オレにも雑巾を寄越せ。」

レナ
「はい。ケンジさんの分です。」

そう云うと、レナは持っていた雑巾を渡す。

タカシは少々驚く。

レナ
「お手本を見せて下さい。私は、初めてなので。タカシさんの記憶を見れば分からない事は無いですけど、ケンジさんのお手本を見てみたいです。」

ケンジ
「そうか。レナちゃんもやる気になって来てくれたのかな。それじゃあ、魔力操作(コントロール)の修行を兼ねて教えてやろう。」

タカシとナオヤ
「マジか。」

レナ
「ありがとうございます。」

ケンジは渡された雑巾を床に置く。そして先ず、息を整える。ふぅと、軽く息をゆっくりと吐く。水の入ったバケツに向かって両掌を拡げて向ける。ふん。っとケンジがチカラを込めると、バケツの中の水が宙に浮く。其れを汚れた床の上まで浮かせたまま移動させると、ケンジは再びチカラを込める。水の塊は、雨粒位に分散する。更に、ケンジが両掌をクルクルと動かして行くと、小さなハリケーンの様な物が出来る。其のまま、汚れをハリケーンで落とすと、今度は落とした汚れと一緒に小さなハリケーンは、バケツの中に収まる。

其れを観ていたミーとレナは
「わー。すごーい。」

と眼をキラキラと輝かせながら、パチパチと手を叩いて喜ぶ。
ケンジは、ドヤ顔です。

タカシとナオヤはと云うと、呆れて見ている。

タカシ
「コレをやれと?」

ナオヤ
「嫌々。嘘でしょ?」

こんな具合で、無事修行は進むのでしょうか?三人(四人)の修行は未だ始まったばかりです。長い目で見て行きましょう。
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