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第一章 第五節

おにぎり握れる?

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次の日の朝。登校して間もなくシゲノブは、タカシを見つけるなり凄い勢いで捲し立てる。

シゲノブ
「あの後お前帰っただろ!あれから、コッチはオオトモ先生に質問攻めにあったんだぞ。どんだけ誤魔化すのに苦労した事か。分かってんのか?おい?」

タカシは悪びれる様子も無く。

タカシ
「あぁ悪りぃ。そして、ありがとう。」

シゲノブは何時もの事かと直ぐ様冷静さを取り戻し、それでいて、ほっとした感じを覚えた。そうそう、コイツはこうでなきゃな。全く、計画を実行したなんて云うからどうなる事かと思ったぜ。無茶しやがって。

レナ
「ところで、シゲノブ?シゲノブは、おにぎり握って作れるの?」

キョトンとした様子で

シゲノブ
「は?」

タカシ
「あぁ。昨日あれからな、昼に何食べたいか聞いたんだよ。そしたら、おにぎりって。どうも前の世界では、まともな食事イコールおにぎりしか食った事無かったらしい。そりゃあ眼が見えなきゃそんなもんしか食えないわな。」

シゲノブ
「で、お前が握って食わせたのか?ってか自分で握って自分で食べたと?」

タカシ
「そう云う事」

シゲノブ
「で、俺にも握って作れるのかと?」

レナ
「うん。そう云う事。」

シゲノブ
「嫌。話し方真似なくても。嫌々、真似た方が良いのか?って云うか、おにぎり位誰でも握って作れるだろ。」

ニコニコ笑顔でレナは

レナ
「そうなんだ。私も今度、作り方タカシから教わるんだ。へへへ。」

シゲノブは何だか不思議な気分だった。眼の前に居るのは確かに親友のタカシなのに、少女と話しているという。どう感情を持っていけば良いのやら。

朝のホームルームを知らせる鐘の鳴る音♫
「キーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン、カーン、コーン」

タカシ
「朝のホームルームだ。又、後でな。」

シゲノブは複雑な想いを抱えたまま自分の席へ着く。
しかし、おにぎりしか食った事無かったとか。マジか。どんだけ貧しかったんだろう?それとも、それが当たり前の世界?嫌々無いだろ。って否定も出来ないか。レナの能力がありながら、でも眼が視えなくてチカラも使った事無いと。うーん。解らん。考えるだけ無駄かな。何せあのタカシのしでかした事から起きた事だ。うん。考えるたけ無駄だな。
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