異世界生活は「めんどくさい」

究極のモブ

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第1章 前書き…?

第3話 なんだこいつ

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(何とかって…まず何で倒れてるの。)

めんどくさいと思いつつ、倒れている人のところに足を進める。が、一定の距離を保って倒れているはずの人は移動していく。しばらく歩いて気づいた。

(結界で近づけない…!賢者)
〈はい〉
(これじゃ何もできない。結界なんとかして)
〈なんとかしてと言われましても…。私じゃどうにもできないですよ?〉

賢者に頼んでも万事解決とはいかない。これで一つ賢くなったのだった。

(じゃあ諦めよう)

くるりと踵を返した。すると賢者が慌てて引き止めた。

〈待ってください!倒れてる人放置ですか。〉
(どうしようもできない)
〈できますよ!私の話聞いてください!〉

若干キレて賢者が言う。若干キレて言い返す。これを何回か繰り返してやっと賢者が話し始める。

〈簡単なことです。あの人の侵入を許可すればいいんですよ。〉
(侵入を、許可?)
〈はい!この結界は色々おかしいですが、流石にそこは大丈夫だと思います〉

「…侵入、許可?」
〈あっ…〉
(え、なに)

賢者が声を上げる。…とほぼ同時に後ろからガサガサという音が聞こえ始めた。振り向くとキングスライムがゆっくりと接近していた。

(なんでこっち来てるの)
〈侵入を許可しちゃったからですね…〉
(賢者がしろって言った)
〈それはあの倒れてる人の侵入をってことですよ!〉
(先に言えばいいのに)

賢者との喧嘩大会が始まりそうになったところで、かなり危ない状況なのを思い出した。キングスライムとの距離はおよそ2m。後ずさりして木の後ろに回り込んだりして距離を離そうとするが、木々を溶かして一直線に向かってくる。だいたい距離は3mくらいになった。そして……倒れている人がいたことを思い出した。見渡してみると、キングスライムと1mも離れていないところにいる。

「…なんか、動くのめんどくさいな、」

助けに行こうとはしない。残酷である。さよなら、と心の中で呟いた。その時、その人が立ち上がり、キングスライムの前にある木を蹴って高く跳躍した。そして、キングスライムの額に剣を突き刺した。パキッと何かが砕けるような音がして、キングスライムは光の粒となって消えた。

(おお…倒した…?)

その人は、何かを拾い上げると振り返って、

「酷くない?!」

叫んだ。がっつりとこちらを向いて叫んだ。思わず俯いて、木の陰に隠れた。その人は、ダッシュしてきて、目の前で止まると、

「あの、危うく死ぬところだったのですが。」

にっこりを浮かべて、ゆっくり言った。

「助けようとした。」

俯いたまま答える。

「してなかったでしょう?!というか、まず、顔を上げたらどうなんですか。人と話すときは目を見て!常識でしょう。」

いきなり常識を説かれて、混乱しつつ顔を上げる。そしてこの時初めて目があった。その人は、目が合った瞬間、固まった。銅像並みにカチカチに固まった。賢者が〈イケメン…ですね〉と呟く。賢者のつぶやきを聞き、イケメンな顔をまじまじみて…

「チッ」

舌打ちをした。その人は、気づいているのか、全く気づかなかったのか、突然顔を真っ赤にして叫んだ。

「お、おおお俺の名前は、アレクシス・ベイクウェル!美しい方、俺と、ここ婚約してください!」
(…なんだこいつ)
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