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幼少期編
43 試練は続くんです
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封印の腕輪を身に付けての生活が始まった。
普段の生活には支障は無いが、ルシータの特訓中にこの腕輪の恐ろしさを、すぐに身をもって知った。
初めに、一切の身体強化魔法が使えない為、体力、忍耐力の弱さが露わとなった。
先ずは基礎体力をつける為、ランニングから始める事となった。
運動らしい運動をした事のない令嬢にランニングですら苦行だった。
地味に辛い特訓が続き、それと並行して腕輪の解除方法を模索した。
しかし、この封印の腕輪は思っていた以上に厄介な代物だった。
破壊不可の術式が施されていて、物理的に破壊する事はほぼ不可能。
しかもレティシアのチート要素でもある、魔力そのものを封じる腕輪なのだ。
魔法で壊そうにも魔力が封じられている。自分の力だけで外すなんて無理ゲーだった。
(よっぽど魔術学園に通わせたく無いんだな、お父様は……。ヤバい、解除方法が思いつかない……どうしよう)
こうして解決方法が見つからないまま、筋肉痛に苦しむ月日が流れた。
あっという間に年末になり、荒みそうな気持ちから一転、いよいよ兄様が帰ってくる! と、ユリウスの到着を心待ちにしていた矢先。
なんとユリウスが年末年始に帰って来ない事になってしまったのだ。
どうにもやらなくてはならない課題が多すぎて帰って来れない、と転写書に連絡が来たのだ。
予想外のまさかの事態に、首がもげそうに項垂れた。
「そんな……。やっと逢えると思っていたのに……」
絶望感に苛ませそうになったが、ユリウスから届いた転写書の内容から、苦渋の決断であった事を理解した。
(大変そうだな兄様……。私も落ち込んでないで、しっかりしなければ……!)
会えないのは残念だけど学業頑張って、と無理に明るい文面で返事を書いた。
そしてその日から、悲しみを糧に一層特訓に打ち込んで筋肉痛を克服し、ルドルフに癒しを貰いつつ、色んな人達と手紙のやり取りをこなし、腕輪を外す方法を探して過ごす事、丸一年。
その間に月のものが始まって、だんだん幼児体型から女性体型へ進化していき、十二歳にして随分大人びた顔付きになってきた気がする。
つまり絶世の美少女から絶世の美女へ成りつつあった。
約二年ユリウスに会えていない。
さぞかし眩いばかりの美青年に成長していることだろう。
会えなかった期間が長かった分、ユリウスに対する推し妄想が膨れ上がっていた。
しかし。そんな妄想は脆くも崩れ去ることになった。
レオナルドとルシータは年末は特に忙しいのか、一緒に夕食を共に出来ないことが多く、今日もルドルフと二人だけで夕食を食べ終えた直後に、信じられない事実を突き付けられた。
「えっ?! 兄様また今年も帰って来れないの!?」
「は、はいぃ! その様に聞き及んでおりますです!!」
愕然とするレティシアに、シシリーは恐縮しながらも懸命に答えた。
「にーに、かえーて、ないのー?」
「う、うん……。そうだって……」
(……どうして。優秀な兄様でも、そんなに学園って大変なの……? ……それとも、逢えなくても良いと思うようになったの? ユリウス兄様……)
レティシアは特訓の疲労に加え、封印の腕輪の解除が一向に進まない事に、苛立ちを覚え始めていた。
そんな矢先にまたユリウスに逢えないと聞かされ、遂にレティシアの鬱憤が頂点に達してしまった。
「……ルルー、今日は早めにねんねしようね? 歯磨きして、お風呂入っておいで?」
「うーん……。ねーね、ルルーちがう、ルデー!」
「うぐっ、ルルールルる、でぃ……」
「うん!」
なんと最近のルドルフは、ルルー呼びを否定してくるようになったのだ。
(どうしてなの? ルルー……。ああ……もう、何だか色々上手くいかない……)
ルドルフと別れた後、暫く一人にして欲しいとシシリー達従者に告げて、普通なら一人では訪れることの無い、夜の野外鍛錬場に赴いた。
年末ともなると温暖なアームストロング領も、冬の寒々しい風景が広がっている。
白い息を吐きながら暫く鍛錬場の中央で佇んでいたが、イライラのピークを超えていたレティシアは、涙目で封印の腕輪を睨みつけた。
(……完璧な美少女だってなあぁ? どうしょうもなくぅ、キレることだってぇ? ……あるんじゃあああぁぁぁ!!!!)
腕輪が嵌められた左腕を振り上げ、怒りのまま握りしめた拳を地面に打ちつけたと同時に、鬱憤を晴らしたくて封印されている魔力を無理矢理解放しようと、己の魔力を最大限に放出させた。
レティシアの魔力に反応した腕輪が、その強過ぎる魔力に対抗するかの様に、漆黒の光が腕輪の周りに迸り、腕から迸る透明に輝く光と腕輪から発する漆黒の光が反発しては、火花の様に何度も弾けた。
(舐めるなよ。このレティシア・アームストロングが、こんなちっぽけな封印に、負けて、たまるかっ……つーのーー!!!!)
心からの叫びと共に、更に限界まで魔力を絞り出す。
自分のありったけ全ての魔力を腕輪に注ぎ込んだ。
レティシアの全身が眩い光に包まれ、禍々しい光が飲み込まれたと同時に腕輪に亀裂が走った。
「消えなさい!!」
怒号と共に、封印の腕輪は無数の亀裂で埋め尽くされ、遂に光を失って木っ端微塵に吹き飛んだ。
普段の生活には支障は無いが、ルシータの特訓中にこの腕輪の恐ろしさを、すぐに身をもって知った。
初めに、一切の身体強化魔法が使えない為、体力、忍耐力の弱さが露わとなった。
先ずは基礎体力をつける為、ランニングから始める事となった。
運動らしい運動をした事のない令嬢にランニングですら苦行だった。
地味に辛い特訓が続き、それと並行して腕輪の解除方法を模索した。
しかし、この封印の腕輪は思っていた以上に厄介な代物だった。
破壊不可の術式が施されていて、物理的に破壊する事はほぼ不可能。
しかもレティシアのチート要素でもある、魔力そのものを封じる腕輪なのだ。
魔法で壊そうにも魔力が封じられている。自分の力だけで外すなんて無理ゲーだった。
(よっぽど魔術学園に通わせたく無いんだな、お父様は……。ヤバい、解除方法が思いつかない……どうしよう)
こうして解決方法が見つからないまま、筋肉痛に苦しむ月日が流れた。
あっという間に年末になり、荒みそうな気持ちから一転、いよいよ兄様が帰ってくる! と、ユリウスの到着を心待ちにしていた矢先。
なんとユリウスが年末年始に帰って来ない事になってしまったのだ。
どうにもやらなくてはならない課題が多すぎて帰って来れない、と転写書に連絡が来たのだ。
予想外のまさかの事態に、首がもげそうに項垂れた。
「そんな……。やっと逢えると思っていたのに……」
絶望感に苛ませそうになったが、ユリウスから届いた転写書の内容から、苦渋の決断であった事を理解した。
(大変そうだな兄様……。私も落ち込んでないで、しっかりしなければ……!)
会えないのは残念だけど学業頑張って、と無理に明るい文面で返事を書いた。
そしてその日から、悲しみを糧に一層特訓に打ち込んで筋肉痛を克服し、ルドルフに癒しを貰いつつ、色んな人達と手紙のやり取りをこなし、腕輪を外す方法を探して過ごす事、丸一年。
その間に月のものが始まって、だんだん幼児体型から女性体型へ進化していき、十二歳にして随分大人びた顔付きになってきた気がする。
つまり絶世の美少女から絶世の美女へ成りつつあった。
約二年ユリウスに会えていない。
さぞかし眩いばかりの美青年に成長していることだろう。
会えなかった期間が長かった分、ユリウスに対する推し妄想が膨れ上がっていた。
しかし。そんな妄想は脆くも崩れ去ることになった。
レオナルドとルシータは年末は特に忙しいのか、一緒に夕食を共に出来ないことが多く、今日もルドルフと二人だけで夕食を食べ終えた直後に、信じられない事実を突き付けられた。
「えっ?! 兄様また今年も帰って来れないの!?」
「は、はいぃ! その様に聞き及んでおりますです!!」
愕然とするレティシアに、シシリーは恐縮しながらも懸命に答えた。
「にーに、かえーて、ないのー?」
「う、うん……。そうだって……」
(……どうして。優秀な兄様でも、そんなに学園って大変なの……? ……それとも、逢えなくても良いと思うようになったの? ユリウス兄様……)
レティシアは特訓の疲労に加え、封印の腕輪の解除が一向に進まない事に、苛立ちを覚え始めていた。
そんな矢先にまたユリウスに逢えないと聞かされ、遂にレティシアの鬱憤が頂点に達してしまった。
「……ルルー、今日は早めにねんねしようね? 歯磨きして、お風呂入っておいで?」
「うーん……。ねーね、ルルーちがう、ルデー!」
「うぐっ、ルルールルる、でぃ……」
「うん!」
なんと最近のルドルフは、ルルー呼びを否定してくるようになったのだ。
(どうしてなの? ルルー……。ああ……もう、何だか色々上手くいかない……)
ルドルフと別れた後、暫く一人にして欲しいとシシリー達従者に告げて、普通なら一人では訪れることの無い、夜の野外鍛錬場に赴いた。
年末ともなると温暖なアームストロング領も、冬の寒々しい風景が広がっている。
白い息を吐きながら暫く鍛錬場の中央で佇んでいたが、イライラのピークを超えていたレティシアは、涙目で封印の腕輪を睨みつけた。
(……完璧な美少女だってなあぁ? どうしょうもなくぅ、キレることだってぇ? ……あるんじゃあああぁぁぁ!!!!)
腕輪が嵌められた左腕を振り上げ、怒りのまま握りしめた拳を地面に打ちつけたと同時に、鬱憤を晴らしたくて封印されている魔力を無理矢理解放しようと、己の魔力を最大限に放出させた。
レティシアの魔力に反応した腕輪が、その強過ぎる魔力に対抗するかの様に、漆黒の光が腕輪の周りに迸り、腕から迸る透明に輝く光と腕輪から発する漆黒の光が反発しては、火花の様に何度も弾けた。
(舐めるなよ。このレティシア・アームストロングが、こんなちっぽけな封印に、負けて、たまるかっ……つーのーー!!!!)
心からの叫びと共に、更に限界まで魔力を絞り出す。
自分のありったけ全ての魔力を腕輪に注ぎ込んだ。
レティシアの全身が眩い光に包まれ、禍々しい光が飲み込まれたと同時に腕輪に亀裂が走った。
「消えなさい!!」
怒号と共に、封印の腕輪は無数の亀裂で埋め尽くされ、遂に光を失って木っ端微塵に吹き飛んだ。
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