レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
35 / 62
幼少期編

35 その後なんです

しおりを挟む
 例の公爵家達からの手紙は、毎日のように届いた。しかしレオナルドは、殆ど見る事なく燃やしていた。……それで大丈夫なのか。

 取り敢えずアルバートとウィリアムとマクシミアンには、婚約する気は無いと言う内容の手紙は送った。
 するとせめて手紙のやり取りだけでも、と三人からしつこく手紙が届いていたので、仕方なく物凄ーくたまに返事を書く事を許された。


 ルシータの産後の体調も問題無く、育児と鍛錬に奮闘している。

 孫が産まれたのだから祖父と祖母の面会があると思っていたが、レオナルドとルシータはどちらも自分の両親を快く思っていないらしく、会う事はなかった。
 レティシアの時も同様だったらしい。


 それにしても、ルドルフはやはり天使だった。

 愛くるしく笑う笑顔にこちらまで笑顔になる。レティシアはほぼ毎日、ルドルフのお世話をした。


 そんなある日、ルシータが貴婦人達を招いてお茶会を開くこととなり、レティシアも参加する事にした。
 十歳になったのだから、やはり社交界に顔を出さないといけないと思ったからだ。

 相変わらずレオナルドとユリウスはレティシアを屋敷から出したくない様だったので、せめてルシータのお茶会に出席したい、と以前から懇願していた。
 お陰で今回のお茶会に参加出来るのだ。

 そしていずれは、同年代の貴族を招いて自分のお茶会を開いてみたいとレティシアは画策していた。

 いい加減、お友達が欲しいのである。

 家族や使用人達との仲は良好だが、やはり友達ではないのだ。
 前世はボッチでも平気だったが、今世ではボッチでなくてもいいじゃないかと思う。


 そしていざルシータのお茶会に、レティシアは鼻息荒く意気込んで参加したのだが。



「「きゃああぁぁーー!! ルシータ様ーー!!」」
「「お会いしたかったですーールシータ様ーー!!」」

 見た目は普通の貴族の貴婦人な方々なのに、手に持った扇子には『ルシータ様LOVE』の文字が刻まれていた。

 今回のお茶会は、幾つもあるサロンの中で一番広いサロンで行うと聞いていたが、理由が分かった。
 お茶会にしては参加者が多いのだ。

 普段ルシータが公爵家に貴婦人達を招く事は稀なのも理由の一つらしい。招待して欲しいとの貴婦人達の要望にルシータが応えた結果、物凄い人数となった。

 もはやファンクラブのイベントだった。

 ルシータが貴婦人達に微笑むだけで、数人は失神していた。

 勿論レティシアにも注目が集まり、色々質問攻めにあったが、ルシータのフォローもあり何とか笑顔で乗り切った。

 話の中で、貴婦人達からレティシアのファンクラブも既に存在する事を聞かされて、レティシアは驚いた。
 貴族の間ではレティシアが『幻の姫君』と呼ばれている事を知り、やはり社交界へたまには顔を出さないといけないなと改めて痛感する。


 お茶会の半ばには、ウィリアムの母でロゴス領主であるビクトリアが、招待を受けていないにも関わらず無理矢理乱入しようと屋敷に押しかけていたが、予め用意されていたルシータのサイン入りブロマイドで何とか事なきを得た。
 その他は特に問題も無く、お茶会は無事お開きとなった。



「お母様、お疲れ様でした……」

 ルシータとリビングルームに移動して、お茶会なのに満足に飲めなかったお茶を嗜みながら、レティシアは疲れた顔でルシータを労をねぎらったが、当の本人は元気そうだった。

「ハハハ!! レティもお疲れ様!! さて、貴婦人達を相手にしてどうだった?」
「少し疲れたけど、まあ大丈夫。とにかく皆さん、お母様を推したいしているのがよく分かったよ……。ね、お母様はお茶会によく招かれるの? 魔物の討伐ばかりしていると思ったけど、お母様は貴族に顔が広いんだね」
「まあね!! 今回招待した貴婦人達は、魔術学園で知り合った人が多かったな!! 後は魔物討伐の際に顔を合わせた人もいたかな? とにかく、皆素敵なレディ達だよ!!」

(無自覚タラシさんですね我が母は……)

「そ、そうなんだ。それにしても何故か私のファンクラブもあるみたいだし、一度私のお茶会を開いても良いかもって思ったんだけど、お母様はどう思う?」
「うーん。パーティなら、異性も参加するからレオ達は嫌がるかと思うが、同性のみで此処で開くお茶会であれば反対されないだろう! 私はレティがやりたいなら反対はしないかな!! お茶会を開きたい理由は、同性の友達が欲しいからだろう?」
「うん!!」
「なら、レティのファンクラブに在籍する同性で、歳の近い子を招待すれば良いのではないかな?」
「それ良いかも! 本当にファンクラブがあるか分からないけど、一度調べてもらおうかな? 誰かとお友達になれるかな? ふふ、今から楽しみになってきちゃった!」

 嬉しそうに笑うレティシアを見つめ、ルシータは優しく微笑んだ。

「確かに、今までは心配のあまり屋敷に閉じ込め過ぎていたな。……これからは、レティのやりたい事を少しずつやっていけば良い! まあ、危険な事はやって欲しくは無いのは本音だがな!!」
「大丈夫、同性のお友達も作る事が第一優先かな? あ、でもお母様の訓練受けてみたい。やっぱりお母様の様に強い女性に憧れるし! 大人になったら、お母様達の魔物討伐のお手伝いをしたいな!」

 この世界がゲームの世界であろうがなかろうが、魔物は率先して討伐したい。

『私TUEEE~!!』は別に興味無いが、魔物を討伐しなければならない理由が、この世界にはある。
 世界に悪意が溢れると悪意は結晶化して魔石となり、魔石から溢れた魔力が形を成して、やがて魔石が核となった魔物になるからだ。
 悪意が魔物になるのなら、いくら討伐しても真の平和が訪れる事はない。

 人から悪意を完全に消す。

 なんて事は、出来ないだろうから。それが人が人である由縁な気がする。

 因みに魔物が討伐されると、核となっていた魔石も消滅するので、この世界で使用されている魔法石は魔石ではない。魔法が充電出来る特殊な鉱石が魔法石として使われている。

 魔物が存在して良い事など無い。あるとすれば、魔物という共通の敵がいる為、人類同士の争いが前世の世界より少ないこと位だ。
 だから少しでも魔物を減らして、平和に過ごせる世界に束の間だとしても、出来るのなら。レティシアもこっそりお手伝いしたいのだ。

 余談だが、悪意の反対の善意は、魔力の源だとされている。
 人が清き心を失った時、世界から魔法は失われると古くから言い伝えられているそうだ。

「こらこら! 危ない事はさせたくないと言ってるだろう!」
「えー? でも小さい頃、冒険者になりたかったらお母様が鍛えてくれるって言ってたでしょ? それに、魔物討伐も公爵としての大切な責務だよね? 強力な魔物が出た時の対処法を、今から学んでおくのは良い事だと思う!」
「そ、それはその通りだが……!」

 ルシータは困った様に眉を寄せている。もう一押しだ、とレティシアは眼を潤ませて首を傾げた。

「魔物討伐は無理かも知れないけど、訓練は少しずつでいいからさせて? 私、頑張るから」

 ルシータは天を仰いで大きく溜息を吐いてから、諦めた様にレティシアを見た。

「……レオの許しが出たらな!!」

(よし! お母様の許しがあれば、お父様を落とすのは容易い!!)

 近々レオナルドの部屋に押しかける事にしようと考えつつ、レティシアは嬉しそうに微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...