9 / 35
幼少期編
9 初めましてなんです
しおりを挟む(……清々しい朝だ)
新しい朝を迎えた。
今日はいよいよ義兄と初対面。緊張はするが、昨日とは打って変わって会うのが少し楽しみになっていた。
(折角家族になるのだから気兼ねない間柄になれると良いな)
起こしに来たシンリーに早速着替えさせてもらう。本日は白を基調にしたフリルのワンピースだ。髪はハーフアップにしてもらい、白いレースのリボンで結んでいる。
清楚な感じで良い。レティシアは鏡の前で満足気に頷いた。本日からきちんと鏡で確認する様にしたのだ。鏡に映る姿は相変わらず森の妖精のように神秘的に可愛い。
昨日貰ったネックレスを首から下げて服の中に入れている。出来れば毎日身に付けて欲しいと懇願された為だ。
両親曰く、強力な守りの加護が宿っているらしい。
「大変可愛らしゅうございます、レティシア様」
「えへへ、あいがと」
相手は子供とはいえ男の子だ。これだけ可愛いければ初っ端から邪険にはされないだろう。レティシアは自分の可愛い外見をフルに活用しようと画策していた。
「朝食はユリウス様もご同席されるそうです。楽しみでございますね」
緊張させまいとしているのだろう。何事もない事の様に笑顔で言うシンリーに、レティシアも笑顔で返事をした。
「うん! あと、このしりょいおようふく、よごしゃないようにきをつけてたべなきゃね!」
「まあっレティシア様ったら。ふふっ」
程よくリラックスしながらダイニングへと向かった。
***
「おはようレティ」
「おお! レティおはよう! 待っていたよ!!」
「おはよーごじゃーます」
ダイニングには既に両親が自分の席に座っているが食事をしている様子はない。レティシアが来るのを待っていたようだ。
「もうすぐユリウスも来るよ! 昨日はなかなか寝付けなかった様でね! 少しお寝坊さんになってしまったが、許してやって欲しい!!」
レティシアは頷いてシンリーに自分の席へと座らせてもらった。
暫くすると、ノックも無しにダイニングの扉が勢いよく開かれた。
「おはようございまーす! ユリウス坊ちゃんをお連れしました~」
少し垢抜けた感じの青年が笑顔で立っていた。
「これランディ!! 旦那様の許可を得るどころかノックもせずに扉を開ける従事があるか!」
レオナルドの執事であるセバスが、ランディと呼んだ人に近づいて頭を叩いた。
「いってぇ! いきなり殴るなよ! セバス爺ちゃん」
「仕事中は爺ちゃんと呼ぶでないと言っておるだろう! この大馬鹿者!」
再び頭を叩かれている。
「旦那様、奥様、並びにレティシアお嬢様。お騒がせして大変申し訳ございません」
セバスは深々と頭を下げた。ランディは軽く会釈しただけだ。セバスはすかさずランディの頭を掴んで下げさせた。
そんなやり取りを見ていたルシータは声を上げて笑い、レオナルドは微笑ましい様子で声を掛けた。
「セバス、そんなに気にしなくて良い。ランディは私の護衛をしっかりと務めてくれている。屋敷の中では畏まらなくて良いとランディに言ったのは私だからな」
「ですが、公爵家の使用人として大問題です。我が孫ながら何とも不甲斐ない……!」
「えー信用無いなー。外では結構ちゃんとやってるって! セバス爺…いたっ!」
「お前は坊ちゃ……旦那様に甘え過ぎだ!!」
レティシアは呆気に取られながら二人を眺めた。
(この人がお父様の側近。初めて見た。髪と瞳の色がセバス爺やと同じだから、何だか祖父と孫ってよりか親子みたい。お父様と同じ歳位のイケメンだけど、言動が何だかチャラ男)
「わかった! わかったから! ちゃんとやる! ちゃんとやるから叩くなって!」
ランディは咳払いをすると、顔付きがガラリと変わった。
「……失礼致しました。改めましてユリウス様をお連れ致しました。お通ししてもよろしいでしょうか、レオナルド様」
「ああ。通してくれ」
急に真面目になったランディに連れられて、貴族の服を身に纏った子供がダイニングに入って来た。
ルシータと同じ金髪に紫の瞳。子供特有のスラリとした体型の。
「……おんなのこ……?」
思わず呟いてしまった。
それ位にとても整った綺麗な顔。ぱっちりとした瞳がこちらを見て僅かに目を見張った。かと思えば直ぐにそっぽを向かれた。……さっきの呟きが聞こえていたのかもしれない。
ルシータは立ち上がってユリウスに近づくとその肩を軽く叩いた。
「おはようユリウス! 昨日の今日で心労が残っているかも知れないが、今日から心機一転新しい生活に早く慣れてくれると嬉しい!! それでは改めて新しい家族として自己紹介してくれるか! ユリウス!!」
ユリウスは小さく頷いた。
「……ユリウスです。……これからどうぞ宜しくお願いします…」
少し元気がないが、耳当たりのいい声だ。
ユリウスが頭を下げると、襟足を一つに束ねているのが少し見えた。
「うん!! レオとは既に顔合わせしたからいいとして! さあ! お待ちかねの私の娘を紹介しよう!! おいでっレティシア!!」
ルシータに呼ばれたレティシアは椅子から飛び降りてユリウスに近づいた。
近くで見るといよいよ女の子にしか見えない。レティシアは今世紀最大の笑顔で挨拶をした。
「はじめまちて。レティシアでしゅ。あたらちぃおにーたまができてうれしーです。よろしくおねがいしましゅ、ユリリュシュ…ユ・リ・ウ・シュにいたま!」
18
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる