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「とりあえず……逃げ切ったか……」
二階建てアパートの階段近くの柱で、一つ、二つと深呼吸をしながら胸を撫で下ろす鉄竜。
一心不乱に夜の町を駆けた。文字通り、一陣の風になり駆け続けた。
それでも尚、しばらくの間何発か反撃を受ける事があったが、自宅周辺に到着する頃には銃弾が放たれる事はなく、ようやく、落ち着く事が出来た。
落ち着くと同時にやってくる虚脱感と安心感。鉄竜は柱に左手を当て、大きな溜息を吐いた。
「久々に運動したって気がするな。けど、それで命狙われてるってのはやめて欲しいけど」
まさか、一日の最後に自身の命を狙われる事になるなんて。不幸にも程がある。
というのも本来狙われているのはきっと、今も尚、右肩の上で眠る女性だろう。そんな状況を知ってか知らずか、女性は規則正しい健やかな寝息を立てている。
「本人は分かってんのかね……」
鉄竜は大きな溜息を吐きながらも、一度女性を担ぎなおし、鉄製の階段を一歩ずつ上がっていく。
踏みしめる度になる金属と靴がぶつかり合う打撃音。
深夜だからか、辺りに強く、広く響き渡り、鉄竜は片足を思わず上げた。
「おっと、時間が時間だからな。静かにしないと……」
時間は既に深夜0時5分ごろ。幼児などの小さな子が暮らす家ではもう既に寝静まっている時間だ。
出来る限り静かに階段を上がり、【鉄輪】と書かれた二階、階段から一番奥の玄関扉に手を掛ける。
すんなりと落ちるドアノブ。鉄竜は扉を押すと同時に口を開いた。
「ただいま、愛」
「おかえりなさいって、どうしたの!? その女の子」
返事と共に驚愕に染まった愛の声音が響く。
愛は、炊飯器とサランラップを並べ、近くには既に完成されたのりを巻いていない三角おにぎり。
どうやら、夜食を作っている途中らしく、未だ両手でおにぎりを握っている。
鉄竜は愛の横を抜け、六畳一間のリビングへと足を進めながら、口を開く。
「詳しい話は後でする。とりあえず、この子がケガしてんだよ。助けてやってくれないか?」
「ケガ……ちょっと待っててね。すぐに準備するから」
言いながら、愛は忙しなく、両手で握っていたおにぎりを乱雑におき、すぐにエプロンで両手を拭く。それからすぐにリビングへと足を進め、押入れの中から、専門的な治療キットを取り出す。
対する鉄竜は、肩に担いでいた女性をゆっくりとベッドの上に寝かせる。
と、ここで、鉄竜は気が付き、己の目を疑い、己の見た物を処理した脳を疑った。
そして、すぐに頭の中で見た現実を否定した。
否、現実を否定しようとも、目の前で見せ付けられたものは、紛れも無い事実だ。
一瞬、思考の海に深く潜り込みそうになるが、愛の言葉が鼓膜を震わせる。
「テツくん? ケガの状況は? 出来るだけの事は出来るけど……って、テツくん?」
「……愛。傷――治ってやがる」
「え? えぇ!? それって、テツくんと同じ……」
「いや、違う。こいつは俺と同じ気配を感じない。俺とは違うはずだ」
鉄竜は女性を観察しながら、極めて冷静に伝える。
あのとき、あの場所で見つけた女性にあった傷が全て完治していた。
真っ赤に染まっていた腹部の傷、それどころか着ていた真紅のドレスまで。何事も無かったかのように傷が塞がっていた。この僅かな短時間の間に。そんな事はありえない。
否、それは語弊があった。ある人物、ある存在にだけならば、それは当てはまる。
けれど、彼女はただの人間だ。そんな事は万が一、億が一でもありえない。
鉄竜の動揺を察したのか、愛は首を傾げ、口を開いた。
「本当に傷はあったんだよね? 見間違いじゃなくて」
「ああ。証拠なら、これだ」
鉄竜はポケットからあの時に回収した銃弾を愛に渡す。あの場所で狙われたのは彼女と己。そして、ケガを負って倒れていたのは女性だ。ならば、狙われていたのは女性である事は状況が言っている。
そして、空洞となった傷跡から、素人目から見ても、この撃って来た銃弾だと考えるのが妥当だ。
愛は鉄竜の手から受け取り、まじまじと見つめた。
「これは……銃弾だね」
「ああ。それが俺とこの子目掛けて撃たれたんだよ。その傷が確実に腹にあったはずなんだ」
「撃たれるって……本当に?」
どこか信じていない疑念を孕んだ眼差しを鉄竜に向ける愛。
確かに突拍子も無い話をしているのは間違いないが、これは間違いなく真実で、先ほどまで起こっていた話。嘘偽りなんて何一つない。だからこそ、鉄竜は自信を持って、口を開く。
「本当なんだって。その信じてない眼差しをやめろよ、お前! 俺が嘘なんて吐いたかよ」
「……そうだけど。でも、テツくん。時々、変なウソ吐くでしょ?」
「それは……いや、違うんだって。しょうがないのよ、その嘘は。けど、今度のは嘘じゃないって!」
「う~ん……別に疑ってるんじゃないんだけど……」
と言いながらも、チラチラと疑念を孕んだ眼差しを鉄竜に向ける。
「何が気になるんだよ、お前は!」
「……お、おっぱいかな? テツくん大きいおっぱい好きだし。この女の人もおっぱい大きいし」
愛のあまりに突飛な意見に鉄竜は目を丸くしたが、すぐに我に返る。
「お、お前、そんなわけ無いだろ!いくらなんでもTPOくらいは弁えるわ!」
「場所を弁える人が女の子が来る部屋にこんな本なんか置かない気がするんだけどね……」
ペラペラと何処からか取り出した本をめくる愛。その本に鉄竜は見覚えがあった。
愛の持つ本。それは鉄竜秘蔵コレクションの一部である本だった。女性が見る事を許されていない聖典。男にだけ許された万能の願望器。それを愛が何故か持っている。
鉄竜はすぐさま愛の手から本を掠め取った。
「お前、いつこの本を出した!」
「今日もアルバイトだからって、お部屋の掃除してるときに押入れから出したよ。毎度の事だからもう慣れたけど、そろそろ処分するこっちの身になって欲しいかな?」
「また、また処分したのかお前ぇ……」
なぜ、いつも場所がばれてしまうのか。鉄竜は思わず肩を落とす。
何度も、何度も隠す場所はありとあらゆる場所を試した。
押入れの使い古されたダンボール。台所の下の戸棚。ベッドの下。本棚の裏。
けれど、どれも看破され、鉄竜の秘蔵コレクションは全て塵と化している。
だから、今回は木を隠すのなら森の中という事で、本を山積みにした押入れの中に隠したというのに。
鉄竜は更に大きく肩を落とし、脱力した。
「……まぁ、もぅいいや。また……集めればいいし……。それよりも、こいつだって。傷は俺が見つけたときは確かにあったんだ。血の量も結構あったよ」
「けど、その傷は……見てみると無くなってるね。ちょっとごめんねー」
愛は眠っている女性の傍から身を乗り出す。
女性の顔を見ながら、傷があったであろう腹部を指先で撫でるように触り、触れた指先同士を擦り合わせる。
「テツくん。この辺りで血が出てたんだよね? 間違ってないかな?」
「ああ。その辺りだな」
「……服にも血が付いてる様子が無いね。触った感じ、痛んでるっていう表情の変化も見られない。テツくんはずっと肩に担いでたの? そのときの傷の位置は?」
「急だったからな、傷口は肩に触れてたと思うが……」
鉄竜が右肩を愛に見せると、愛は鉄竜の肩を軽く撫でて、撫でた指と撫でていない指を擦り合わせる。
「う~ん……血が出てたんだよね? 服に血が付いてるはずなんだけど……」
「そういえば、付いてないな」
自身の右肩を見つめ、頷く。
確かに、あの時。駅で拾ったときは血が流れていたはずだ。それも血の海が出来るほどに。
だとすると、肩に付いていないのは明らかにおかしい。もしかしたら、と思い、鉄竜は口を開いた。
「血が乾いたのか?」
「どうだろ? けど、確認とかしてる余裕は無かったんだよね?」
「正直そうだな」
あれだけの状況。女性を傷つけずに逃げるだけでも手一杯だ。細かいところを気にしている余裕なんて無い。鉄竜がそう伝えると、何やら愛がボソボソと呟き、鉄竜は首を傾げる。
「どうした? 何か気になるか?」
「……ううん。何でもないよ。後は……ここかな?」
愛は自身の手を女性の安らかに眠る顔へと動かし、閉ざされた唇を僅かだけ動かし、口内を覗く。
「うん。テツくんみたいに犬歯が人よりも発達してる訳でもない……」
「俺みたいな『もどき』で身体的に特徴が出る。だとすると、確証に近いな」
「そうだね。この子はテツくんと一緒じゃない。ただの人間だよ」
愛は口から手を離し、女性をじっと見つめる。
「けど、それだとおかしいよね。なんで再生したのか……」
「再生か……妖魔の類だとするなら――不死鳥とか?」
「不死鳥だと……フェニックス。絶命をする直前に炎から飛び込んで、命を焼き、炎と共に再生する……。その強い不死性が、彼女の特徴だったとしても……その線は薄いかな?」
鉄竜は愛の言葉に首を傾げると、愛は人差し指を立てて、女性を観察する為に上げていた腰を落ち着かせながら、口を開いた。
「もし、不死鳥の不死性が強く反映されてるんだとしたら……彼女は絶命した後に、炎と共に復活する事になるよ? けど、テツくんが運んできたとき、彼女は燃えていなかった。もし、燃えてたんだとしたら、テツくんなら気づくよね? 熱とかあんまり好きじゃないし」
「それはそうだ。俺に太陽と熱は天敵だからな」
「だったら、彼女が燃えてる線は無くなるよ。じゃあ、再生したのは何? ってなるんだけど……妖魔絡みなのは何となく察せるんだけどね……まだ確実って訳じゃないけど……」
「流石に、愛でも分からないか?」
鉄竜が一縷の望みを懸けて問うと、愛は曖昧に笑った。
「それは難しいかな……私も全部を知ってるわけじゃないし……」
「そうか~。お前の雑学というか、知識は滅茶苦茶すげぇと思うんだけどな」
「この知識は私のじゃなくて、借り物だよ?」
「借り物って……お前の知識はお前のものだろ? 謙遜するなって」
愛は物事を良く知っていると、鉄竜は思っている。
二人とも高校生で愛は秀才であり、常に学年トップ。更にはいつも参考書や雑学本や、考察本、図鑑に及ぶまでありとあらゆる分野の本を読んでいる本の虫だ。
絵に描いたような優等生だと鉄竜は思っているのだが、愛はいつも曖昧に笑う。
「私はそんな凄くないよ? こんなに地味だし」
「地味な訳ないだろ? お前、学校じゃ美人って有名だぞ?」
「……それは大体、このおっぱいだし……」
大抵、彼女は美人だという話をすると、露骨に落ち込んだ様子を見せ、自分の豊満な胸を触る。
確かに胸もあるだろうが、それ以上に鉄竜は愛の可愛さもあると思っている。
綺麗で艶のある黒い髪が靡けば、男の視線を集める。
それどころか、笑顔も人を幸せにするような花咲き誇るような笑顔で。
それでいて、男の視線を虜にする豊満でマシュマロのように柔らかそうな胸。
視線を少し下げれば、豊満な胸とは対照的にくびれた腰つきと持ち上がった綺麗な下半身。これで男の視線を集めるな、という方が無理な話だ。
そんな鉄竜の観察が愛の琴線に触れたのか、胸を隠すように腕で覆う。
「ほら……そーいう目。テツくんはいいけど、他の子の目はすっごく気持ち悪いんだよ?」
「俺なら良いという所にとても喜びを覚え、俺はすぐにでもお前のその胸を触り、揉みしだきたいんだが、どうだろう?」
「ダメに決まってるじゃん」
「いや、少しだけ。先っちょだけで良いからさ」
「さきっちょって……尚更ダメだよ!」
素早い動きで豊満でマシュマロのような胸を隠す愛。
だが、隠した事によって、柔らかな胸は押し出され。より卑猥に形を変える。
それが更に鉄竜の脳を焼き、興奮させる。
興奮を抑えきれず、すぐさま行動へと移り、鉄竜は愛に馬乗りになる。
「いや、その動作は卑怯だ。もう、触る! 触っちゃうもんね!」
「ちょ、テツくん!? テツくんに襲われたら抵抗できないんだけど!?」
「いや~、今、俺はこの身体に感謝してるよ」
「しないで! その身体はテツくんにとっての罪と罰なんでしょ!?」
「じゃあ、その罪を今、懺悔し、罰として、俺は胸をもみます」
「意味分かんないよって、やめっ……あんっ……」
鉄竜は愛の胸へと手を伸ばし、柔らかさを堪能する。
揉む度に形を変えていく胸。頬が上気し、甘い吐息、艶かしい声を漏らす愛。
「ちょっ、テツくん、ダメだって……な、なんかいやらし……んっ!?」
「いや、俄然興奮するわ。服脱がせて、吸っていいですか?」
「バカじゃないの!? いい加減怒るよ!?」
愛が部屋全体に響き渡るほどの大声を出した瞬間、ベッドから小さな物音が響いた。
鉄竜は決して愛の胸から手を離すことなく、愛は抵抗するのをやめ、視線だけをベッドへと向けると、先ほどまで眠っていた女性が起き上がっていて、寝ぼけ眼を擦っている。
「んぅ……なんだ、ここは……それに、なんだ? この服は……」
「あれ? 起きた?」
鉄竜が思わず声を上げると、その声に気づいたのか、女性と鉄竜の視線が交錯する。
女性は眼差しは宝石で例えるのなら、ルビー。色で例えるのなら、真紅。見つめ続ければ吸い込まれてしまいそうな魅惑的な眼差し。
鉄竜はその眼差しに囚われていると、女性は馬乗りになっている鉄竜と馬乗りになられている愛を見つめ、首をかしげた。
「逢瀬の、途中?」
「い、いや! そうじゃないよ! テツくん、離れて!!」
「ぐべっ!?」
馬乗りになっていた鉄竜を愛は両手で押し飛ばし、すぐさま寝転がっていた身体を起こす。
飛ばされた鉄竜はそのまま壁に背中を打ちつけ、カエルが鳴くようなしゃがれた声を出す。
一連の動きを見ていた女性は戸惑いと疑念を孕んだ眼差しを二人に向ける。
「……ここは、どこなんだ? それに君たちは……」
「え? え、えっと、私の名前は恋久保愛《オンガクホアイ》。このバカは、鉄輪鉄竜だよ!」
「バカって……お前な!」
「バカじゃん! バーカ! バーカ!」
「なっ!? 人を突き飛ばしといてなんて言い草だ!」
飛ばされた体勢のまま文句を垂れる鉄竜。頬を朱に染めた愛は腕を組み、鉄竜から視線を逸らす。
「それを言うなら、人の胸を揉むなんてどういう事、だよ! ふん! おにぎりは無しだからね!」
「ちょっ!? ご、ごめんて。いや、ホント」
「聞き飽きた」
人殺しに会い、バイト帰りの空腹を満たせないのは鉄竜としては辛い。
鉄竜が必死に弁解をしようと腰を落ち着かせ、愛に詰め寄ろうとすると、女性の声音が鼓膜を叩いた。
「オンガクホアイ、に、カンナワテツリュウ……変わった名前だ……それでここは?」
「ここか? ここは、俺の家だ」
だが、弁解をするよりも前に彼女の事がある。
せっかく目覚めたのだから、色々と聞いておきたい事が山ほどある。
鉄竜は打ち付け痛む腰を抑えつつ、愛の隣へと移動し、女性へと視線を向ける。
「それで、お前。なんで命を狙われてたんだよ」
「命を狙われている? 何のことだ?」
「いや、お前。駅で倒れてただろ? 助ける為にとりあえず連れて来たんだよ、俺が」
「ん? エキとは……なんだ? それに、助けるというのは一体……」
ん? 鉄竜の頭の中に大きな、大きな疑問符が出てくる。
女性はまるで初めて聞いたといわんばかりの反応を示している。
命なんて狙われている自覚が無くて、駅という存在すらも知らないような……新鮮な反応。
鉄竜はある推測を頭の中に立て、その推測を元に質問をぶつける。
「じゃ、じゃあ、君。何処から来たの?」
「何処……そのエキとやらじゃないのか?」
「いや、エキの前」
「エキの前……どこだろうな?」
「し、質問を変えようか……名前は?」
「名前……」
女性は腕を組み、顎に手を当て考え込むような仕草を見せる。
だが、すぐに両手を広げ、肩を竦めた。
「すまない。覚えていない」
「そ、そうか……じゃあ、出身地は?」
「出身地……分からないな」
「誕生日!」
「……分からない」
聞けば聞くほど見たくも無い現実を突きつけられる。
それに愛も気づいたのか、こっそりと鉄竜の耳へと口を近づける。
「この子、もしかして……」
「ああ、間違いない」
愛と鉄竜がこっそりと話をしているのが、不思議に思っているのか無邪気に首を傾げる女性。
駅で拾った命を狙われている女性は――間違いなく、『記憶喪失』だった。
二階建てアパートの階段近くの柱で、一つ、二つと深呼吸をしながら胸を撫で下ろす鉄竜。
一心不乱に夜の町を駆けた。文字通り、一陣の風になり駆け続けた。
それでも尚、しばらくの間何発か反撃を受ける事があったが、自宅周辺に到着する頃には銃弾が放たれる事はなく、ようやく、落ち着く事が出来た。
落ち着くと同時にやってくる虚脱感と安心感。鉄竜は柱に左手を当て、大きな溜息を吐いた。
「久々に運動したって気がするな。けど、それで命狙われてるってのはやめて欲しいけど」
まさか、一日の最後に自身の命を狙われる事になるなんて。不幸にも程がある。
というのも本来狙われているのはきっと、今も尚、右肩の上で眠る女性だろう。そんな状況を知ってか知らずか、女性は規則正しい健やかな寝息を立てている。
「本人は分かってんのかね……」
鉄竜は大きな溜息を吐きながらも、一度女性を担ぎなおし、鉄製の階段を一歩ずつ上がっていく。
踏みしめる度になる金属と靴がぶつかり合う打撃音。
深夜だからか、辺りに強く、広く響き渡り、鉄竜は片足を思わず上げた。
「おっと、時間が時間だからな。静かにしないと……」
時間は既に深夜0時5分ごろ。幼児などの小さな子が暮らす家ではもう既に寝静まっている時間だ。
出来る限り静かに階段を上がり、【鉄輪】と書かれた二階、階段から一番奥の玄関扉に手を掛ける。
すんなりと落ちるドアノブ。鉄竜は扉を押すと同時に口を開いた。
「ただいま、愛」
「おかえりなさいって、どうしたの!? その女の子」
返事と共に驚愕に染まった愛の声音が響く。
愛は、炊飯器とサランラップを並べ、近くには既に完成されたのりを巻いていない三角おにぎり。
どうやら、夜食を作っている途中らしく、未だ両手でおにぎりを握っている。
鉄竜は愛の横を抜け、六畳一間のリビングへと足を進めながら、口を開く。
「詳しい話は後でする。とりあえず、この子がケガしてんだよ。助けてやってくれないか?」
「ケガ……ちょっと待っててね。すぐに準備するから」
言いながら、愛は忙しなく、両手で握っていたおにぎりを乱雑におき、すぐにエプロンで両手を拭く。それからすぐにリビングへと足を進め、押入れの中から、専門的な治療キットを取り出す。
対する鉄竜は、肩に担いでいた女性をゆっくりとベッドの上に寝かせる。
と、ここで、鉄竜は気が付き、己の目を疑い、己の見た物を処理した脳を疑った。
そして、すぐに頭の中で見た現実を否定した。
否、現実を否定しようとも、目の前で見せ付けられたものは、紛れも無い事実だ。
一瞬、思考の海に深く潜り込みそうになるが、愛の言葉が鼓膜を震わせる。
「テツくん? ケガの状況は? 出来るだけの事は出来るけど……って、テツくん?」
「……愛。傷――治ってやがる」
「え? えぇ!? それって、テツくんと同じ……」
「いや、違う。こいつは俺と同じ気配を感じない。俺とは違うはずだ」
鉄竜は女性を観察しながら、極めて冷静に伝える。
あのとき、あの場所で見つけた女性にあった傷が全て完治していた。
真っ赤に染まっていた腹部の傷、それどころか着ていた真紅のドレスまで。何事も無かったかのように傷が塞がっていた。この僅かな短時間の間に。そんな事はありえない。
否、それは語弊があった。ある人物、ある存在にだけならば、それは当てはまる。
けれど、彼女はただの人間だ。そんな事は万が一、億が一でもありえない。
鉄竜の動揺を察したのか、愛は首を傾げ、口を開いた。
「本当に傷はあったんだよね? 見間違いじゃなくて」
「ああ。証拠なら、これだ」
鉄竜はポケットからあの時に回収した銃弾を愛に渡す。あの場所で狙われたのは彼女と己。そして、ケガを負って倒れていたのは女性だ。ならば、狙われていたのは女性である事は状況が言っている。
そして、空洞となった傷跡から、素人目から見ても、この撃って来た銃弾だと考えるのが妥当だ。
愛は鉄竜の手から受け取り、まじまじと見つめた。
「これは……銃弾だね」
「ああ。それが俺とこの子目掛けて撃たれたんだよ。その傷が確実に腹にあったはずなんだ」
「撃たれるって……本当に?」
どこか信じていない疑念を孕んだ眼差しを鉄竜に向ける愛。
確かに突拍子も無い話をしているのは間違いないが、これは間違いなく真実で、先ほどまで起こっていた話。嘘偽りなんて何一つない。だからこそ、鉄竜は自信を持って、口を開く。
「本当なんだって。その信じてない眼差しをやめろよ、お前! 俺が嘘なんて吐いたかよ」
「……そうだけど。でも、テツくん。時々、変なウソ吐くでしょ?」
「それは……いや、違うんだって。しょうがないのよ、その嘘は。けど、今度のは嘘じゃないって!」
「う~ん……別に疑ってるんじゃないんだけど……」
と言いながらも、チラチラと疑念を孕んだ眼差しを鉄竜に向ける。
「何が気になるんだよ、お前は!」
「……お、おっぱいかな? テツくん大きいおっぱい好きだし。この女の人もおっぱい大きいし」
愛のあまりに突飛な意見に鉄竜は目を丸くしたが、すぐに我に返る。
「お、お前、そんなわけ無いだろ!いくらなんでもTPOくらいは弁えるわ!」
「場所を弁える人が女の子が来る部屋にこんな本なんか置かない気がするんだけどね……」
ペラペラと何処からか取り出した本をめくる愛。その本に鉄竜は見覚えがあった。
愛の持つ本。それは鉄竜秘蔵コレクションの一部である本だった。女性が見る事を許されていない聖典。男にだけ許された万能の願望器。それを愛が何故か持っている。
鉄竜はすぐさま愛の手から本を掠め取った。
「お前、いつこの本を出した!」
「今日もアルバイトだからって、お部屋の掃除してるときに押入れから出したよ。毎度の事だからもう慣れたけど、そろそろ処分するこっちの身になって欲しいかな?」
「また、また処分したのかお前ぇ……」
なぜ、いつも場所がばれてしまうのか。鉄竜は思わず肩を落とす。
何度も、何度も隠す場所はありとあらゆる場所を試した。
押入れの使い古されたダンボール。台所の下の戸棚。ベッドの下。本棚の裏。
けれど、どれも看破され、鉄竜の秘蔵コレクションは全て塵と化している。
だから、今回は木を隠すのなら森の中という事で、本を山積みにした押入れの中に隠したというのに。
鉄竜は更に大きく肩を落とし、脱力した。
「……まぁ、もぅいいや。また……集めればいいし……。それよりも、こいつだって。傷は俺が見つけたときは確かにあったんだ。血の量も結構あったよ」
「けど、その傷は……見てみると無くなってるね。ちょっとごめんねー」
愛は眠っている女性の傍から身を乗り出す。
女性の顔を見ながら、傷があったであろう腹部を指先で撫でるように触り、触れた指先同士を擦り合わせる。
「テツくん。この辺りで血が出てたんだよね? 間違ってないかな?」
「ああ。その辺りだな」
「……服にも血が付いてる様子が無いね。触った感じ、痛んでるっていう表情の変化も見られない。テツくんはずっと肩に担いでたの? そのときの傷の位置は?」
「急だったからな、傷口は肩に触れてたと思うが……」
鉄竜が右肩を愛に見せると、愛は鉄竜の肩を軽く撫でて、撫でた指と撫でていない指を擦り合わせる。
「う~ん……血が出てたんだよね? 服に血が付いてるはずなんだけど……」
「そういえば、付いてないな」
自身の右肩を見つめ、頷く。
確かに、あの時。駅で拾ったときは血が流れていたはずだ。それも血の海が出来るほどに。
だとすると、肩に付いていないのは明らかにおかしい。もしかしたら、と思い、鉄竜は口を開いた。
「血が乾いたのか?」
「どうだろ? けど、確認とかしてる余裕は無かったんだよね?」
「正直そうだな」
あれだけの状況。女性を傷つけずに逃げるだけでも手一杯だ。細かいところを気にしている余裕なんて無い。鉄竜がそう伝えると、何やら愛がボソボソと呟き、鉄竜は首を傾げる。
「どうした? 何か気になるか?」
「……ううん。何でもないよ。後は……ここかな?」
愛は自身の手を女性の安らかに眠る顔へと動かし、閉ざされた唇を僅かだけ動かし、口内を覗く。
「うん。テツくんみたいに犬歯が人よりも発達してる訳でもない……」
「俺みたいな『もどき』で身体的に特徴が出る。だとすると、確証に近いな」
「そうだね。この子はテツくんと一緒じゃない。ただの人間だよ」
愛は口から手を離し、女性をじっと見つめる。
「けど、それだとおかしいよね。なんで再生したのか……」
「再生か……妖魔の類だとするなら――不死鳥とか?」
「不死鳥だと……フェニックス。絶命をする直前に炎から飛び込んで、命を焼き、炎と共に再生する……。その強い不死性が、彼女の特徴だったとしても……その線は薄いかな?」
鉄竜は愛の言葉に首を傾げると、愛は人差し指を立てて、女性を観察する為に上げていた腰を落ち着かせながら、口を開いた。
「もし、不死鳥の不死性が強く反映されてるんだとしたら……彼女は絶命した後に、炎と共に復活する事になるよ? けど、テツくんが運んできたとき、彼女は燃えていなかった。もし、燃えてたんだとしたら、テツくんなら気づくよね? 熱とかあんまり好きじゃないし」
「それはそうだ。俺に太陽と熱は天敵だからな」
「だったら、彼女が燃えてる線は無くなるよ。じゃあ、再生したのは何? ってなるんだけど……妖魔絡みなのは何となく察せるんだけどね……まだ確実って訳じゃないけど……」
「流石に、愛でも分からないか?」
鉄竜が一縷の望みを懸けて問うと、愛は曖昧に笑った。
「それは難しいかな……私も全部を知ってるわけじゃないし……」
「そうか~。お前の雑学というか、知識は滅茶苦茶すげぇと思うんだけどな」
「この知識は私のじゃなくて、借り物だよ?」
「借り物って……お前の知識はお前のものだろ? 謙遜するなって」
愛は物事を良く知っていると、鉄竜は思っている。
二人とも高校生で愛は秀才であり、常に学年トップ。更にはいつも参考書や雑学本や、考察本、図鑑に及ぶまでありとあらゆる分野の本を読んでいる本の虫だ。
絵に描いたような優等生だと鉄竜は思っているのだが、愛はいつも曖昧に笑う。
「私はそんな凄くないよ? こんなに地味だし」
「地味な訳ないだろ? お前、学校じゃ美人って有名だぞ?」
「……それは大体、このおっぱいだし……」
大抵、彼女は美人だという話をすると、露骨に落ち込んだ様子を見せ、自分の豊満な胸を触る。
確かに胸もあるだろうが、それ以上に鉄竜は愛の可愛さもあると思っている。
綺麗で艶のある黒い髪が靡けば、男の視線を集める。
それどころか、笑顔も人を幸せにするような花咲き誇るような笑顔で。
それでいて、男の視線を虜にする豊満でマシュマロのように柔らかそうな胸。
視線を少し下げれば、豊満な胸とは対照的にくびれた腰つきと持ち上がった綺麗な下半身。これで男の視線を集めるな、という方が無理な話だ。
そんな鉄竜の観察が愛の琴線に触れたのか、胸を隠すように腕で覆う。
「ほら……そーいう目。テツくんはいいけど、他の子の目はすっごく気持ち悪いんだよ?」
「俺なら良いという所にとても喜びを覚え、俺はすぐにでもお前のその胸を触り、揉みしだきたいんだが、どうだろう?」
「ダメに決まってるじゃん」
「いや、少しだけ。先っちょだけで良いからさ」
「さきっちょって……尚更ダメだよ!」
素早い動きで豊満でマシュマロのような胸を隠す愛。
だが、隠した事によって、柔らかな胸は押し出され。より卑猥に形を変える。
それが更に鉄竜の脳を焼き、興奮させる。
興奮を抑えきれず、すぐさま行動へと移り、鉄竜は愛に馬乗りになる。
「いや、その動作は卑怯だ。もう、触る! 触っちゃうもんね!」
「ちょ、テツくん!? テツくんに襲われたら抵抗できないんだけど!?」
「いや~、今、俺はこの身体に感謝してるよ」
「しないで! その身体はテツくんにとっての罪と罰なんでしょ!?」
「じゃあ、その罪を今、懺悔し、罰として、俺は胸をもみます」
「意味分かんないよって、やめっ……あんっ……」
鉄竜は愛の胸へと手を伸ばし、柔らかさを堪能する。
揉む度に形を変えていく胸。頬が上気し、甘い吐息、艶かしい声を漏らす愛。
「ちょっ、テツくん、ダメだって……な、なんかいやらし……んっ!?」
「いや、俄然興奮するわ。服脱がせて、吸っていいですか?」
「バカじゃないの!? いい加減怒るよ!?」
愛が部屋全体に響き渡るほどの大声を出した瞬間、ベッドから小さな物音が響いた。
鉄竜は決して愛の胸から手を離すことなく、愛は抵抗するのをやめ、視線だけをベッドへと向けると、先ほどまで眠っていた女性が起き上がっていて、寝ぼけ眼を擦っている。
「んぅ……なんだ、ここは……それに、なんだ? この服は……」
「あれ? 起きた?」
鉄竜が思わず声を上げると、その声に気づいたのか、女性と鉄竜の視線が交錯する。
女性は眼差しは宝石で例えるのなら、ルビー。色で例えるのなら、真紅。見つめ続ければ吸い込まれてしまいそうな魅惑的な眼差し。
鉄竜はその眼差しに囚われていると、女性は馬乗りになっている鉄竜と馬乗りになられている愛を見つめ、首をかしげた。
「逢瀬の、途中?」
「い、いや! そうじゃないよ! テツくん、離れて!!」
「ぐべっ!?」
馬乗りになっていた鉄竜を愛は両手で押し飛ばし、すぐさま寝転がっていた身体を起こす。
飛ばされた鉄竜はそのまま壁に背中を打ちつけ、カエルが鳴くようなしゃがれた声を出す。
一連の動きを見ていた女性は戸惑いと疑念を孕んだ眼差しを二人に向ける。
「……ここは、どこなんだ? それに君たちは……」
「え? え、えっと、私の名前は恋久保愛《オンガクホアイ》。このバカは、鉄輪鉄竜だよ!」
「バカって……お前な!」
「バカじゃん! バーカ! バーカ!」
「なっ!? 人を突き飛ばしといてなんて言い草だ!」
飛ばされた体勢のまま文句を垂れる鉄竜。頬を朱に染めた愛は腕を組み、鉄竜から視線を逸らす。
「それを言うなら、人の胸を揉むなんてどういう事、だよ! ふん! おにぎりは無しだからね!」
「ちょっ!? ご、ごめんて。いや、ホント」
「聞き飽きた」
人殺しに会い、バイト帰りの空腹を満たせないのは鉄竜としては辛い。
鉄竜が必死に弁解をしようと腰を落ち着かせ、愛に詰め寄ろうとすると、女性の声音が鼓膜を叩いた。
「オンガクホアイ、に、カンナワテツリュウ……変わった名前だ……それでここは?」
「ここか? ここは、俺の家だ」
だが、弁解をするよりも前に彼女の事がある。
せっかく目覚めたのだから、色々と聞いておきたい事が山ほどある。
鉄竜は打ち付け痛む腰を抑えつつ、愛の隣へと移動し、女性へと視線を向ける。
「それで、お前。なんで命を狙われてたんだよ」
「命を狙われている? 何のことだ?」
「いや、お前。駅で倒れてただろ? 助ける為にとりあえず連れて来たんだよ、俺が」
「ん? エキとは……なんだ? それに、助けるというのは一体……」
ん? 鉄竜の頭の中に大きな、大きな疑問符が出てくる。
女性はまるで初めて聞いたといわんばかりの反応を示している。
命なんて狙われている自覚が無くて、駅という存在すらも知らないような……新鮮な反応。
鉄竜はある推測を頭の中に立て、その推測を元に質問をぶつける。
「じゃ、じゃあ、君。何処から来たの?」
「何処……そのエキとやらじゃないのか?」
「いや、エキの前」
「エキの前……どこだろうな?」
「し、質問を変えようか……名前は?」
「名前……」
女性は腕を組み、顎に手を当て考え込むような仕草を見せる。
だが、すぐに両手を広げ、肩を竦めた。
「すまない。覚えていない」
「そ、そうか……じゃあ、出身地は?」
「出身地……分からないな」
「誕生日!」
「……分からない」
聞けば聞くほど見たくも無い現実を突きつけられる。
それに愛も気づいたのか、こっそりと鉄竜の耳へと口を近づける。
「この子、もしかして……」
「ああ、間違いない」
愛と鉄竜がこっそりと話をしているのが、不思議に思っているのか無邪気に首を傾げる女性。
駅で拾った命を狙われている女性は――間違いなく、『記憶喪失』だった。
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