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王城にて6

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光に包まれた後、次に目を開けるとそこは知らない部屋だった。
いかにもお貴族様っていう部屋だけれど、誰の部屋だろう。
男性の部屋っぽいし、多分王城の中の部屋だと思うんだけれど…?


「…幼女?
しかも獣人?」


後ろからそんな声が聞こえる。
くるりと振り返るとそこには黒髪黒目の、14歳くらいの男の子が立っていた。
…ん?黒髪黒目?


「うわぉ、予想外に可愛い子だった。
君、迷子かな?」

にこりと人懐っこそうな笑顔を浮かべてくる。
うーん、ショタ好きにモテそうとか普段の私は思ったのだろうが今の私はそんな場合じゃない。
この人、まさか…。

「あぁ、知らない人に急に声かけられるとびっくりするよね。
僕は直人なおと
この城に滞在している勇者で、一応ここは僕の部屋なんだ~。」

まて、心優ちゃんどんなとこに私を飛ばしてるの!?
おかしいよね!勇者の部屋スタートはおかしいよね!


「私は、えっと…ミコっていうの。
ハル…飼い猫を追いかけていたらここに入っちゃって…ごめんなさい。」


正直驚きすぎてて上手く言葉が出てこない。
このくらいのことを言うのが限界だった。


「そっかぁ、今日は王城に何しにきたのかな?」


なんと言うか、ずっとニコニコしてる人だな。
子供受けが良さそうという感想を幼女が残しておこう。


「今日はえっと、女王様に謁見にきたの。」


「あぁ、あの人にか。
一緒に来た人はいる?」


「クレアって名前の騎士のお姉ちゃんなんだけれど…直人お兄ちゃんわかる?」


「クレアさんか~、最近見ないなと思ったけれど、君といたんだね。
…うんっ、お兄ちゃんと一緒に探しに行こっか!」


なんかお兄ちゃんって部分を強調されたような?
すごく笑顔だし嬉しかったのならいいけれど…?


「…あの、この手は?」


私は左手をぎゅっと握られている。
まあ、直人お兄ちゃんに手を繋がれているという状況だ。


「また迷子になったら困るから、お兄ちゃんがちゃんと手を繋いであげようと思ってね~。」


うわ、めっちゃ嬉しそう。
こっちが手なんて繋がなくても迷わないから大丈夫だよって言えないくらい嬉しそう。

かくして私はもう一人の勇者に手を繋がれながらクレアお姉ちゃんを一緒に探すと言う意味がわからない状況になった。

…いやほんとにどうゆう状況だよ!
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