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王城にて2

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さて、私は今よく分からない場所に連れてこられてよく分からない人(美少女)とお茶会をしている。

「オレンジの…パウンドケーキ?」


そのお茶会にでてきたスイーツはオレンジの果肉の挟まったふわふわのパウンドケーキ。
私はこれに見覚えがあった。


「…何か思い出でもあるの?」


春斗はると兄さんって人が私の誕生日にだけ作ってくれたんです。」


私は両親を早くに亡くしている、飛行機事故だった。
親戚も誰も幼い子供の私のことなんて引き取ってくれなくて、児童保護施設に入るしかないはずだった時。

当時若く、遠縁だった春斗兄さんが引き取ってくれた。
きっとその頃の春斗兄さんは20代前半。
私と自分、2人分の家計を賄うために春斗兄さんは夜遅くまで働いた。
その分私も必死にできることを考えて家事を覚えたのもその時だったかな。

決して裕福ではなかったけれど、2人仲良く暮らしていたと思う。

その春斗兄さんが私の誕生日に忙しい合間合間に作ってくれたケーキにそっくりなものが今目の前にある。


「…そう。」

自分から質問してきた割には割とあっさりとした返事だ。

「あの…食べてもいい、ですか?」

目の前には思い出のケーキ…ちょっと…いやかなり食べたい。


「…あなた今の状況でよく目の前のケーキを食べようと思えるわね。
罠だったらどうするのよ。」

表情を変えず、呆れた口調で言われる。

「うっ…。」

ごもっともな意見が来た。
いや私も見知らぬ場所でよくケーキ食べようと思えるなって感じてるよ!?
自分にびっくりだよ!
でも幼女の私が食べろと語りかけてくるんだよ!


「好きなだけ食べるといいわ…正直余ってて困ってたのよ。」

余ってた?のはよく分からないけれどとりあえず食べていいということだろうか。

パクッと1口。
ふわふわで甘いパウンドケーキの中に入っているオレンジの酸味がアクセントになっている。
あの頃と変わらない味だ。

「おいしい…。」


「……。」


ごくんと飲み込んで私は我に帰った。
じゃ、なくて!

「あなたは誰でここはどこなの!?
どうして私のことを知っているの?
ハルはどうして私をあなたの元へ連れてきたの!」

思い出したけど私は今誘拐されてるみたいな状況だった。


「騒がしい子ね…。」

呆れる視線を送られながら目の前の人はごくんと紅茶を飲み込んだ後、こう言った。


「…あたしは何もわかっていないあなたのために魔法の使い方くらいは教えてあげようと思って呼んだだけよ。」


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春斗兄さん→ハルの由来
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