上 下
27 / 76

ハイン視点 不思議な幼女

しおりを挟む
ミコちゃんは寝て、他の騎士の奴らも酒のんで騒いで寝てる。
僕も飲もうと思ったけど今日は流石に報告が先っすねえ…。

「ハイン、報告はあるか?」

団長が話しかけてくる。
今は大勢酔っていて、ミコちゃんも近くにいない。
これほど絶好の報告の機会はないっすしねぇ。

「今日一日見ていた感想だと、ミコちゃんどこからどう見ても普通の子じゃないっすねぇ。
決して俺たちみたいな攻撃向けの強い魔法を使えるというわけでも、特殊な力があるわけでもない。
むしろ魔法に関してはここにいる騎士団の誰よりも弱いんじゃないっすかねぇ。」


「今の所ただの小さい女の子のように聞こえるが、どの辺が普通じゃないんだ?」

そう、ここの時点だと年相応の女の子に見える。
でも、あの子には他の誰にも真似できない力がある。

「あの魔法は異常っす。」


「魔法が異常ですか?」

ケイトさんも酒飲まないで聞いてたんすねぇ…。
なんだかんだ団長もケイトさんもミコちゃんのこと気にかけてるなあ。

「あの子、魔法の操作が死ぬほど上手いんすよ。
それはもう僕が今まで見たどんな人間よりも。」


「それは…相当だな。」

一つ目は精密な魔法を簡単に使うこと。
これは僕たち強い魔法を使える人間にとっても特に難しいことっす。
弱い魔法しか使えない者でもあそこまで精密な操作はだいぶきついと思われるっす。
それを最も簡単にやっている、どう考えても年相応の魔法の使い方とは言えないやり方。
あれが天性の才能ならよっぽどっすね。

「もう一個が、使える魔法の多さっす。」

「魔法の多さ?3属性くらい使えるとかですか?」

「俺が見た限りでは3属性っすけど、あれ多分全属性使えるっす。」


『は?』


団長とケインさんの声がハモる。
いやまあそりゃそうっすよねぇ。
全属性使える人間なんて聞いたことありませんもん。

「でもおかしいんすよねぇ、仮に全属性使えるとしてもあの威力の弱さは。
料理する時ものの受け取りの際に手に触れてなんとなく魔力量を調べてみたんすよ。
そしたら団長の魔力量の倍以上はあったっす。
あれ勇者並みっすよ。」


「おいまて、色々と待て。」


団長が情報量多くてパンクしてるっすね。
あ、ケインさんも頭抱えてる。

魔法というのは魔力量と比例して使える魔法の強さが変わる。
あの子の魔力は正直化け物並みっす。
それならせめてどれか一つの属性でも強い魔法を使えないとおかしいんすよね。
でもあの子の自身の魔法を使うたびの落ち込みぶりを見るに、自分の魔法はすごく弱いと思っていることを感じたっす。

これはちょーっと謎っすねぇ。
そもそも団長の魔力量がこの国で勇者に次いで多いのに。

「しかも服を乾かす時の風は僅かにあったかかったっす。
あれ風と火の複合魔法っすねぇ…。」

複合魔法なんて使える人はだいぶ少ないんすけどどこでおぼえたんすかねミコちゃんは。


「他国のスパイっていう可能性はないんですか。」


「まぁないこともないっすけど。
だとしたらもっと普通な子を送り込んだほうがいいと思うんすけど。
全属性使える獣人の幼女とか怪しさの塊じゃないっすか。
それに嘘もバレバレでしたし。」

あの子は記憶喪失と言っているが多分嘘だってのが僕たちの考えっす。
こんなに今まで見たことない料理できて僕たちがよくわからない文化を知っている。
その時点で記憶、ありそうっすよねぇ。
まああっても獣人の幼女が森で1人置かれてる時点でいい過去な気はしないっすけど。
それに今いろんな国が魔獣で溢れかえってて討伐で忙しそうっすからスパイを送って何になるって感じだし。

「まあ難しいことは抜きにして僕個人の意見をいいっすか?」

「まあ、言ってみろ。」


「あの子…ミコちゃんはいい子っすよ。
害意も感じなかったし、今日1日ひたすら僕たちのためにって頑張ってくれてたし、それに何より可愛いですし。」


「…途中私情が入らなかったか?」


…都合の悪いことは無視っす!


「どこか秘密は多そうっすけど、ひとまずは大丈夫じゃないっすかねぇ。
とりあえずこの騎士寮にすんでもらわないっすか?
ここメイドいないし。」

この寮にメイドがいない理由は、やたらと容姿が良くで騎士の出も多い騎士団、そこの雑用係のメイドなんて何回か採用したことあるっすが、全部仕事放棄していろんな騎士に色目使って玉の輿に乗ろうとする連中でダメだったっす。

その点ミコちゃんは幼女。
恋愛なんてまだ早そうな年齢っすし、仕事も完璧。
今の騎士団に必要な人材だと思うんすよねぇ。
あと純粋に癒しだし。

「どうせ報告書書いて引き取ってくれって書いても獣人の幼女なんて王城以外引き取り場所ないっすよ。
それならこの騎士団で囲っても大して変わらないっす。
なんかことが起こるまでうちで引き取りたいってのが僕の意見っす。」

お姫様のような服を着た獣人の幼女。
これはどう考えても事件が起こるっす。
こっちが何もしなくても起こるパターンっす。
まあそれまでの間、王城にいても騎士団にいても防衛面では大して変わらないっす。


「まあ、ハインの意見は分かった。
正直この食堂と料理を見たらミコの働きぶりを認めざるを得ないしな。
ミコの報告書類の情報の追加と騎士団で引き取れないか掛け合ってみるかぁ…。
あと謎の光の報告もちゃんとしないとだし…、
仕事がだいぶ増えたな…書類仕事は苦手なんだが。」


「ミコちゃんのためっすよ。」


「まあ、そうだよなぁ。」


書類のことを考えながら遠い目をしている団長と、それを見て呆れているケイトさん。
僕はそんな光景を見ながらアヒージョを一口齧って堪能した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミコちゃんは強いというより器用貧乏です。
魔法の威力的には圧倒的に弱いです。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

 だから奥方様は巣から出ない 〜出なくて良い〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:141,582pt お気に入り:1,842

【完結】変身したら幼女になる。そんなヒーローってアリですか?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

離婚してください、今すぐに。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:53,100pt お気に入り:604

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,927pt お気に入り:3,687

私はあなたの母ではありませんよ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:773pt お気に入り:3,415

たとえあなたに選ばれなくても【本編完結 / 番外編更新中】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,746pt お気に入り:2,730

処理中です...