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お味はいかに

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「…騎士団でここまで美味しそうな料理初めてみたっす。」

「そ、そこまで行きます?」

期待に添えるといいんだけれど。


ハインお兄ちゃんがパクっと一口。
私はドキドキしながらその様子を見つめる。
ごくんと飲み込んだハインお兄ちゃんは真顔で一言。


「もうミコちゃん騎士団で雇われてくれません?」

そう言いながらもぐもぐ食べ進めている。

「えっと、美味しいですか?」

「それはもうすごく。
今まで騎士団の料理が酷すぎてその反動が一気にきてるっす。
そこの見つめてる人たちも食べたそうですし。」

ハインお兄ちゃんが指を刺した方向にはさっき食堂にいた人たちがたくさん。


「へ?皆さんどうしたんですか?」


そんなに気になってたの親子丼?

「いや掃除始めた時からずっとミコちゃんのことみてたっすよあの人たち。
ミコちゃんみたいに女の子がここにいることって珍しいですし、ましてやあんな繊細な魔力操作できる人なんていないっすから。
しかもこの食堂から食欲そそる香りが漂ってるんすよ、あの絶望と言われる騎士団の食堂から。
そりゃあ気になっちゃうっすよ。
この親子丼は僕のっすから誰にもあげないっすけど。」


あれ、そういえばさっき私が埃を集めて掃除したあたりからやけに周りがシーンとしたような…?
というか食堂まで押し掛けてくるほどお腹すいてるみたいなのに何かあげないのもなぁ。
今残ってるのは炊き立てのお米だ。

これは小さい子に人気なアレをやろう。

私は炊き立てのおにぎりを握っておにぎり型にする。

後は醤油をかけてフライパンへgo。
両面じっくり焼いて、焼きおにぎりの完成。


「あの良かったから、これどうぞ…?」


一応大皿に並べて差し出してみた。

すると

『ありがとうございます!』

すごい勢いで感謝されて食堂の机に並べられ、瞬く間になくなった。
美味しそうに食べてくれるのは作った冥利に尽きるけれど。

「騎士ってすごい…。」

「まあみんなたくさん食べるっすからね。
あの、もう一つお願いなんすけど、今日の夜ご飯も作ってくれません?」


「よるごはん?ですか。
…ちなみに聞くんですけど何人分ですか?」

「今日は60人分すねぇ。」


60人。食べ盛りな騎士60人に振る舞わなければいけない。
ちょっと遠い目だ。

「やっぱり無理っすか?」

ただいまの時刻は4時くらい。
料理によっては不可能ではない。


「…わかりました、やってみます…。」

残り二時間ちょっとで60人前の料理を作るという私の戦いが始まった。


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