DA天使によろしく

ぴよまる

文字の大きさ
上 下
20 / 20
2.

2-10.

しおりを挟む
チャアは起き上がってホワイトボードの前で、教師がやるように手をヒラヒラさせた。

「あのなあ、そんくらいの値上がりでガタピシするような会社ならとっくに潰れてら。テディの家業は4代続いてんだろ。輸送業は原油価格が高下するたびに儲けを出す仕組みを作ってんだよ。ゲームで言うなら経験値を上げてるのさ。で、そのノウハウを後継に渡して経営を続けてる。後継者はレベルアップしたアカウントからゲームを始められるのと同じだ。だから素人が叶わねーんだよ」

「テディが嘘を言うとは思えない」

「ははん。奴を問いつめてみな。多分あいつはこう言うぞ。『嘘は言ってない。原油が値上がりしたせいで友人が減ったのは本当だ』。お前な、原油が値上がりすると何が起こるか知らないのか?」

「輸送費が上がるから・・・」

「物価が上がる。それで困るのは、誰だ?収入が一定額の人間だろ。収入が減るに等しいからな。最たるのが学生ローンやら奨学金で暮らしている学生だ。特に自立したばかりの学生はインフレに対して経験値が0だ。で、学生はどうするか?金のかかるパーティは控えてバイトに励む。結果、テディの遊び相手が減る」

「・・・・それはそれでおもしろいね。水面の波を追っていたら、同じ震源から派生した水面下の波にいきなり襲われるようなものかな」

「そうだな。物価が上がる原因は運送業の仕業でもあるから、その恩恵に与ってぬくぬく暮らしてるボンボンは悪口の一つも言われるだろうし、家業が上手くいってない時に、友人までに誘いを断られたらこの世の終わりみたいに感じるかもしれない。だが、それはもし、テディがなにも知らなければだ。あいつには年上の兄弟がいるよな。兄ちゃんが先に同じ経験をしたのをテディは知ってるはずだ。今更友人が減ったのを動揺したり悲しんだりするわけねーんだよ」
「・・・・・なるほどね。確かにテディは、嘘は言ってない。原油価格が上がって友人が減ったっていう事実を述べただけだ。それに対して僕が勝手にテディに同情した」

「バカめ。それがテディの思惑なんだよ。つーか、お前に頼み事をして断られたから、同情をひくっていう奥の手をだしたんだろ。原油の話を出す前になんか頼まれなかったか?」

「CEOになってくれって言われて断った」

「な。それがテディのやり方なんだよ。大体な、もしテディの親の会社が破産したとしても、テディに友人がいなくなるわけねえだろ。あいつはコールドリーディングの天才だ。いつでもどこでも誰とでも友人になれる」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

処理中です...