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1-3. 神様
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3)神様
簡単に忘れられるなら苦労はしないが、なにせ相手は自分のボスだ。嫌でも顔を会わす機会はやってくる。次の日からWB日本語版改訂プロジェクトが発足した。僕は部長に言われていた通り、改訂案を持参してミーティングに出席した。社会人たるもの、苦手な人の前でも愛想を振りまけるようにしなければいけない。
が、CEOはいなかった。
それどころか、ミーティングには日本支社のスタッフしかいなかった。
拍子抜けだ。
「CEOは、『案がまとまったら決裁するのでよろしく』だそうです。」
プロジェクトリーダーが苦笑いしている。
そうですか。
CEOが日本語版のバージョンアップなんか、やるわけないですよね。
パーティの時の誠実そうなスピーチはやっぱり演出ですか。
大体「よろしく」ってなんだ。実際は「やっとけ」って言われたんだろ。
憧れていた分だけ、僕の彼に対する評価はダダ下がりである。
噂では、シュルツは出社すらしてないらしい。彼のWBの記事からすると、観光でもしているのか、毎日のように街を散策しているらしかった。本当に、気が向いた時しか仕事しなくて良い御身分なんだな。
忘れよう。
チャラ男の言う通り、放っておくに限る。
向こうも僕のことを忘れているだろう。
というか、気にも留めていないんだろう。
こっちも気に病むだけ無駄だ。
住んでる世界が違うんだから。
しかし、次の週明け、僕の機嫌が直った頃合いを見計らったかのように、シュルツがまた燃料を投下してくれた。社内掲示板のトップに、CEOから「アイディア募集」というよく分からない記事が出ていた。CEO権限で企画開発部を新しく立ち上げるが、新商品のシーズを提供した者はそのメンバーの選考において考慮されるという話だった。
期限は一週間後だ。
これは彼がやる気を出したことか?
いや、つまりシュルツは新開発部や新商品のビジョンすら持たずに日本にやってきたということだ。ほんとにやる気があるのか、おちょくっているのかと皆騒いでいた。
「里見君はもちろん社内コンペに応募するよね?」
部長がわざわざ僕のデスクに聞きに来た。
「どうしましょうかね。改訂版のために仕事も増えてますし、1週間後だと準備するのは無理かもしれません」
コンペはCEO達が審査するわけだから、できれば避けておきたい。
「・・・・里見君。ちょっと」
部長に小会議室に連れ込まれる。部長は仏頂面で、しばらくもじもじしていた。
「何ですか、今度は?」
「君に気がついて欲しかったんだけど、この際、あえてはっきり言っておくよ」
堰を切ったように部長が喋りだす。
「組織改編で今のカスタマーサポート部門はなくなる。少なくとも君のユニットはうちの部署から出て行ってもらう」
鼓動が、ひとつ鳴った。部長の声が遠くなる。
「CEOの意向だ。WBは誰にでも簡単に扱えるビジネスソフトを売りにしてるのに、社員が顧客のWBをセットアップするのは気に食わないそうだ。カスタマイズまでしているのは君のユニットだけだから、君のとこが名指しでやり玉にあげられた。向こうさんは、自分の作った商品を里見君が欠陥品呼ばわりしてるとでも思ったのかもしれない」
息が、苦しくなる。
落ち着け。
言われているのは僕自身のことじゃない。
僕の仕事に関してだ。
部長は僕と目を合わせず喋り続けている。
「君のユニットは純然たるプログラマーが多いから、カスタマーサポートだけじゃ飽き足らずWBの日本人向けサービスを提案してるんだって説明しておいた。だから改訂版関わってもらうことになったんだ。あっちからしたら君達のお手並み拝見と言ったところだ」
部長にキレてはいけない。だけど・・・
「・・・・部長、いつからこの話ご存知だったんですか?」
「いつって、そんなに前のことでもないけど・・その・・・」
「この間の昼食の時、このこと言うつもりだったんじゃないですか」
パーティで彼に会う前に知っていれば、あの時、他に対応のしようもあったのに。僕は敵対視されてる相手にヘラヘラと近づいたのだ。
「その・・・里見君は、顔に似合わず気が強いから、シュルツさんに悪い印象を持ってない方が上手くいくと思って・・・。とにかく、現状では君達ユニットの行き先は新しい企画開発部しかないんだ。コンペは最優先で取り組んでシュルツさんに取り入った方が良い。実際のシュルツさんはいい人みたいだし・・・・」
あからさまに敵意を表すのはいい人のすることか?
「・・・・部長、ご高配、ありがとうございます」
ようやく、それだけ言った。
僕は大馬鹿だ。
カスタマーサポートという立場を理解していなかった。
アホみたいに、せっせと仕事を取ってきてはCEOに嫌われる材料を増やしていたわけだ。ついデカいため息をついてしまい、顔を上げるとユニットメンバーがみんな僕を見ていた。
こいつらに何て言ったら良いんだ?
サービス残業までさせて、評価を上げるどころか、次のポジションを危うくしてしまった。
ダメだ。
まだ言えない。
僕はPCをログアウトして立ち上がった。
「先に帰る。みんなも今日は残業しないで適当なところで帰って。」
「ええ~っ!ちょっと待って下さいよ。俺も一緒に・・・」
「チャラ男、たまには自分の家に帰れ」
だがチャラ男は廊下にまで付いて来た。歩くスピードを速めてもまだ付いてくる。
「なんか体調でも悪いんすか。」
「体調悪いっていうか、ストレス?」
なんだか寒気がする。本当に病気になったかもしれない。
「ちょっとショックなことがあって、仕事にならない。明日までに気分転換してくる。」
「気分転換なら鮨でも食いに・・・」
「チャラ男」
僕は立ち止まって、チャラ男に人差し指を突きつけた。
「マジで。今日は一人で帰りたい」
「・・・すんません。でも・・・」
「放っておいてくれ。ちょっと神様を見てくるだけだから」
チャラ男がギョッとしたので、自分が言ったことのヤバさに気がついた。僕は肩をすくめて笑った。
「フォートランのことだよ」
僕のフォートランの中には神様が住んでいる。
いや神様の分身だ。
正確に言えば神様からもらった「世界の理」が入っている。
大学院の卒業が確実になり就職先を探していた時に、僕はR-bitの学生就業研修に参加した。
僕はその時に神様に会った。
研修用のフロアに案内された僕達学生は、最初に自分の社内アカウントを作ることを命じられた。30台程あるPCのどれでも好きなのを使って良いと言われ、他の皆は最新モデルから陣取っていった。僕だけはふらふらとフロアの奥までうろついて、神様の隠れ家を見つけた。
開放的な研修用フロアの一画に、パーティションに囲われた巣のような空間があり、中にはいかにも自作のPCが鎮座していた。明らかに研修用の席ではなかったが僕は引き寄せられるように中に入った。モニターが、昔僕が持っていたものと同じだったからだ。小学生の頃、アパートの隣のお兄さんに貰った初めてのPCだった。引っ越しの時、捨ててしまった事を僕はずっと後悔していた。R-bitに務めるようなプロの人がどんな組み方をしているのか、僕は覗いてみずにはいられなかった。モニターを覗くと振動のせいか、魔法が解けるようにスクリーンセーバーが解除された。
古ぼけたPCの中で、フォートランが動いている。これで嬉しくなる僕は単なる変態である。このマシンのユーザーも僕の同類らしい。行儀が悪いと知りつつ、僕は椅子に座って中のプログラムを見てしまった。そしてすぐ自分がとんでもないものを見ていることに気がついた。
世界がひっくり返ったような衝撃だった。
僕は大学院時代、とあるプログラムを創るのに挑戦していた。しかし、いくら膨大で複雑なアルゴリズムを積み重ねていっても、完成には程遠く、途中で諦めてしまった。「現代のコンピューターでは解答を得られない、できると思うのは若気の至りだ」と指導教授は言っていた。そのプログラムのコアになるアルゴリズムが、目の前の旧型のPCの中で軽々と動いている。
世界の理はこんなに単純だったのか。
「美しい」って言葉を理系の人間はよく使うが、この賞賛がぴったり当てはまる対象を僕は初めて見た。
どれぐらい見入っていただろう。ふと気がつくと、パーティションの入り口に、太ったおっさんが立っていた。なぜか、瞬間的にその人がこのPCの持ち主であることが分かった。僕は泥棒猫のように飛び上がってしまった。
「あわわ、す、すみません!」
おっさんもびっくりしたらしく、ぽかんとした顔で僕を見ている。
「僕は研修生です。あなたのプログラムを盗もうとしたわけではありません。ただ、あなたのプログラムがあまりにもエレガントだったもので・・・・・」
僕はたどたどしい英語で言い訳した。
そのおっさんは、伸び放題のもじゃもじゃの髪ともっさりしたヒゲが顔を覆っていて、魔法使い映画か何かに出てきそうな風貌だったが禍々しい感じはなかった。おっさんの毛の色は、明るくて、窓からの日光を浴びて光り輝いていたからだ。まるで後光がでているみたいで、白っぽいゆったりした服装と相まって、杖を持たせたら完璧に神様だった。
「気に入った?」
もじゃもじゃのヒゲが動いて神様がちょっと笑った気がした。
「え?」
「君は、それ、気に入った?」
神様の英語は聞き取りにくかった。
「え、ええ。とても」
「じゃあ、あげる」
「え?」
「気に入ったなら、これ君にあげる」
「そんな、いいえ!とんでもない」
神様はパーティションの中に入って来てキーボードを触った。神様の肌は全体的にピンクがかっていて温かそうだった。
「いいよ。どうせ、気まぐれに書いたんだ。僕が持ってても、なんの価値もない。君がもらってくれたら嬉しいな」
眼鏡の奥からのぞく瞳は、優しく光っていて引き込まれそうになる。
「君はこの子が高く飛ぶと思う?」
飛ぶ?動作するってことか?
「え?ええ」
「うれしいな。いつかこの子に外を飛ばせてあげたかったんだ」
神様がくすくす笑ったら、彼の髪がふわふわ揺れた。その髪に触ってみたい衝動に駆られる。
何かに似てると思ったら、神様はゴールデンリトリバーに似ていた。
子供の頃、近所の大きい家の庭にゴールデンリトリバーがいた。良く躾されている犬で子供にも優しかった。犬に抱きつくと温かくて太陽の匂いがした。その頃元気だった父は僕が小学生になったら庭付きの家に引っ越して、犬も飼ってくれると約束してくれた。ゴールデンリトリバーは僕が欲しくて手に入らなかった幸せだった。
幸せの化身みたいな人が、僕の探していたアルゴリズムを授けてくれた。こんな夢みたいなことがあっていいのか。僕が不躾に神様をじろじろ見ていたら、神様は不思議そうに僕を見上げた。
「ああ」
神様が、合点がいったようにうなずく。
「・・・・・これ何かにコピーしてあげるね」
「ハル!こっちに来て!」
研修生の引率係が大声で僕を呼んだ。
「はい!?」
僕は慌ててパーティションから飛び出した。
引率係は僕を引き寄せて、神様の場所から一番離れた席に僕を座らせた。
「ごめんね。怖かっただろ。まさかビッグフットの席に行くなんて」
「ビッグフット?」
「あいつ、めったに出てこないくせに、今日に限ってだよ。君もとんだラッキーに遭遇したね。」
「めったに会えないんですか!それはラッキーだな。すごいプログラマーですよね」
引率係は声をひそめた。
「いやさ、あいつ、役員の親戚かなんからしいんだけど、仕事してるわけじゃないんだ。リハビリの一環でここに通ってるんだって。給料出てないとはいえ、まったく迷惑な話なんだ」
「リハビリ・・・・」
「頼むから、あいつに近づかないでくれよ。研修生に何かされたらこっちの首まで飛びかねないから」
ビッグフットさんが少し変わっている人なのは確かだ。普通の人にはあのアルゴリズムは創れない。リハビリ・・・・?そういえばさっき、Fly highって言った。
「彼は・・・麻薬か何か・・・?」
僕も声をひそめた。引率係は首を絞められたみたいな顔をした。タブーを口にしてしまったようだ。
「とにかく、奴に関わらないでくれ」
僕がビッグフットさんに関わろうとしたところで、その機会には二度と恵まれなかった。2週間の研修期間の間、ビッグフットさんと会えたのはその時一回きりだったのだ。研修最終日、僕は彼のデスクに僕のメアドを書いたメモを置いたが、彼からは一度も連絡がなかった。彼にとって研修生への興味などそんなものだろう。あの時もっと話せなかったのが残念で仕方なかった。
卒業後、R-bitに就職するか迷ったが、当時R-bitはオンラインゲームを創るベンチャー企業に過ぎなかったこともあり、僕は日本に戻ってNYANCに就職した。その当時NYANCは小型ロボットを開発していた。僕は大学でロボットの知覚工学を専門にしていたので、それを活かしたかった。だけど僕は希望が叶わず営業部に配属されてしまった。2年後NYANCがR-bitに買収されたのは驚きだった。R-bitは突然ビジネス向け統合ソフトWBを発表して、いつのまにかナスダックに上場できるくらいの一大企業に成長していた。僕にはよほど先見の明がなかったと言える。
神様に会いたい。
僕はあの時以来、神様からもらったアルゴリズムを元にしたプログラムをコツコツと書いている。ロボットの人工知能だ。これをロボットに入れれば、ロボットは人間になる。現代のロボットに欠けている最後のパーツだ。
それが今は、僕の現実逃避の手段に成り下がっている。
ロボット、作れたら良いのに。
経営破綻しかけたNYANCではロボット開発は凍結されてしまったし、今のR-bitの財政でもロボット開発はまだまだ非現実的だ。僕が最初からR-bitに務めていたら少なくとも今の状況よりマシだっただろうか?
今、会えたら神様は僕に何て言うだろう?せっかくのアルゴリズムを僕が2年以上も腐らせていることに失望するだろうか。それでもやはり神様は笑ってくれるような気がするのだ。神様は笑ってこう言うだろう。
「この子に外を飛ばせてあげたい」
・・・・・・あれ?
まてよ。
「外を飛ばせる」?
外を飛ばせるってどういうことだ?
僕はこの子をロボットの中に閉じ込めることだけ考えていた。ロボットの人工知能ならこの子の働く場所はロボットの中だけしかない。いや、ロボットの中に限定する必要があるか?
頭の中に風が吹き抜けたような気がした。
この子に羽をつけたら、R-bitの新商品にぴったりじゃないか。
R-bitにはちょうど天使が住む雲がある。
コンペ、参加しよう。
これって、神の啓示かもしれない。
その日は一睡もせず、始発で出社した。
「あれ?あれれ~~?」
定時に出社して来たチャラ男が僕のモニターを覗き込んで叫ぶ。
「ちょ、ちょっと、お前ら、これを黙認してていいのぉ~!里見さんが会社のPCにフォートランいれてるよ!」
「黙れ、チャラ男。里見さんの邪魔しないで」
「だって、だって、里見さんが違う世界に行っちゃうじゃんよ!」
「チャラ男」
僕は振り向いてチャラ男を見た。チャラ男はすでに事情を察したのか、ものすごく嬉しそうにニヤニヤしている。
「僕、コンペに出るんだ。サポートしてくれる?」
「だから通常業務は俺らだけで遂行するのだ。了解?」
「はいぃ~。本気を出した里見さんってステキっす!」
コンペ準備の息抜きに、本社に勤めた事がある友人にビッグフットさんのことを調べてもらうことにした。もらったとはいえ、あのアルゴリズムは彼のものだ。僕としては、この機会に彼と一緒に仕事をしていきたかった。
「R-bitは社員の入れ替わりが激しいからもういないかもしれないね」
友人は本社の知り合いにメールを書きながら言った。
「そうなんだ。研修の時の知り合いももう辞めているし。でも役員の親戚らしいから誰か情報を知ってるんじゃないかな」
「逆に身内のジャンキーなら隠したがるんじゃないか。まあ分かってる情報は全部くれ」
「名前はビッグフット・・・」
「ブッ、それニックネームだろ」
「う~ん。実は本名知らないんだ。200ポンド以上の大男で、目は鳶色。髪はゴールデン・・・・」
「ブロンドね。アメリカじゃどこにでもいそうな奴だな・・・」
「とにかく凄いプログラミングする人なんだよ。絶対誰かは知ってるって」
「まあ、期待しないで待っててくれ。送信っと」
部下が僕の分の業務を負担してくれているとはいえ、一週間後のプレゼンはスケジュール的にキツい。僕は奥の手を出した。泊まり込み仕事である。夜も深けて、人が少なくなったのを見計らい、僕は着古したジャージの上下に着替えた。コンタクトを外し高校の時に買った度の弱い眼鏡をかける。長時間プログラミングするためのユニフォームである。
ロッカールームから戻った僕を見て、チャラ男が変な声を出した。
「里見さん、ブサッ・・・かっわいい~~っ!」
「うるさいっ。そして撮るな!」
「だって~。いつにも増して可愛い~んだもん。これ総務のオネーサマ方に売っちゃおうっと~」
「さっさと帰れ!チャラ男!それ売ったら今月の残業代は出さないからな!」
チャラ男はキャッキャッ言いながら廊下を走って逃げて行った。
チャラ男がいなくなると、急に静けさを感じた。隣の部署から、かすかに人が働いている音がする。集中して働くには最適だ。僕は時間を忘れてフォートランに入り込んだ。本気でプログラミングするのは久しぶりだ。頭の血流が勢い良く流れて、脳神経がフル活動しているのを感じる。少しずつ天使の羽が形を成してくる。これはイケる。他にこんな企画できる奴は絶対にいない。
あとは、これをどうプレゼンするかだ。コンペでは全て見せる必要はない。インパクトのあるところだけプレゼンすれば良い。なんだか、全てが上手くいきそうな気がして来た。自分も飛んでるみたいだ。これも一種のFly highだな。
そんなことを考えながら、僕はトイレに立った。
すでに日付が変わってからだいぶ過ぎている。ついでに自販機で軽食を買ってこよう。僕は勢い良く部署のドアを開けた。
「うわっ!」
向こうも僕も揃って声を上げた。
ドアの前にシュルツが立っていた。
なんでこいつ夜中にこんなところにいるんだ?出社してないんじゃなかったか?
「Hello,シュルツさん。こんな遅くまで仕事ですか?」
一応挨拶をしてみる。シュルツは目をぱちくりさせていた。最初僕だと気がつかなかったのかもしれない。
「フッ。フフフフフ」
シュルツが手で口を押さえて笑い出した。
そんなにおかしいか?
肩を振るわせて笑えるほど、おかしいか。人の恰好が。
頭に血が上って耳まで熱くなった。
僕だって、こんな姿はこいつにだけは見られたくなかった。
最悪だ。
どうせ、僕の中身はキモオタですよ。
せっかくの清々しい気分が台無しになった。
なんで、絶妙のタイミングで邪魔しに現れるんだ?
悪魔かあいつは。
簡単に忘れられるなら苦労はしないが、なにせ相手は自分のボスだ。嫌でも顔を会わす機会はやってくる。次の日からWB日本語版改訂プロジェクトが発足した。僕は部長に言われていた通り、改訂案を持参してミーティングに出席した。社会人たるもの、苦手な人の前でも愛想を振りまけるようにしなければいけない。
が、CEOはいなかった。
それどころか、ミーティングには日本支社のスタッフしかいなかった。
拍子抜けだ。
「CEOは、『案がまとまったら決裁するのでよろしく』だそうです。」
プロジェクトリーダーが苦笑いしている。
そうですか。
CEOが日本語版のバージョンアップなんか、やるわけないですよね。
パーティの時の誠実そうなスピーチはやっぱり演出ですか。
大体「よろしく」ってなんだ。実際は「やっとけ」って言われたんだろ。
憧れていた分だけ、僕の彼に対する評価はダダ下がりである。
噂では、シュルツは出社すらしてないらしい。彼のWBの記事からすると、観光でもしているのか、毎日のように街を散策しているらしかった。本当に、気が向いた時しか仕事しなくて良い御身分なんだな。
忘れよう。
チャラ男の言う通り、放っておくに限る。
向こうも僕のことを忘れているだろう。
というか、気にも留めていないんだろう。
こっちも気に病むだけ無駄だ。
住んでる世界が違うんだから。
しかし、次の週明け、僕の機嫌が直った頃合いを見計らったかのように、シュルツがまた燃料を投下してくれた。社内掲示板のトップに、CEOから「アイディア募集」というよく分からない記事が出ていた。CEO権限で企画開発部を新しく立ち上げるが、新商品のシーズを提供した者はそのメンバーの選考において考慮されるという話だった。
期限は一週間後だ。
これは彼がやる気を出したことか?
いや、つまりシュルツは新開発部や新商品のビジョンすら持たずに日本にやってきたということだ。ほんとにやる気があるのか、おちょくっているのかと皆騒いでいた。
「里見君はもちろん社内コンペに応募するよね?」
部長がわざわざ僕のデスクに聞きに来た。
「どうしましょうかね。改訂版のために仕事も増えてますし、1週間後だと準備するのは無理かもしれません」
コンペはCEO達が審査するわけだから、できれば避けておきたい。
「・・・・里見君。ちょっと」
部長に小会議室に連れ込まれる。部長は仏頂面で、しばらくもじもじしていた。
「何ですか、今度は?」
「君に気がついて欲しかったんだけど、この際、あえてはっきり言っておくよ」
堰を切ったように部長が喋りだす。
「組織改編で今のカスタマーサポート部門はなくなる。少なくとも君のユニットはうちの部署から出て行ってもらう」
鼓動が、ひとつ鳴った。部長の声が遠くなる。
「CEOの意向だ。WBは誰にでも簡単に扱えるビジネスソフトを売りにしてるのに、社員が顧客のWBをセットアップするのは気に食わないそうだ。カスタマイズまでしているのは君のユニットだけだから、君のとこが名指しでやり玉にあげられた。向こうさんは、自分の作った商品を里見君が欠陥品呼ばわりしてるとでも思ったのかもしれない」
息が、苦しくなる。
落ち着け。
言われているのは僕自身のことじゃない。
僕の仕事に関してだ。
部長は僕と目を合わせず喋り続けている。
「君のユニットは純然たるプログラマーが多いから、カスタマーサポートだけじゃ飽き足らずWBの日本人向けサービスを提案してるんだって説明しておいた。だから改訂版関わってもらうことになったんだ。あっちからしたら君達のお手並み拝見と言ったところだ」
部長にキレてはいけない。だけど・・・
「・・・・部長、いつからこの話ご存知だったんですか?」
「いつって、そんなに前のことでもないけど・・その・・・」
「この間の昼食の時、このこと言うつもりだったんじゃないですか」
パーティで彼に会う前に知っていれば、あの時、他に対応のしようもあったのに。僕は敵対視されてる相手にヘラヘラと近づいたのだ。
「その・・・里見君は、顔に似合わず気が強いから、シュルツさんに悪い印象を持ってない方が上手くいくと思って・・・。とにかく、現状では君達ユニットの行き先は新しい企画開発部しかないんだ。コンペは最優先で取り組んでシュルツさんに取り入った方が良い。実際のシュルツさんはいい人みたいだし・・・・」
あからさまに敵意を表すのはいい人のすることか?
「・・・・部長、ご高配、ありがとうございます」
ようやく、それだけ言った。
僕は大馬鹿だ。
カスタマーサポートという立場を理解していなかった。
アホみたいに、せっせと仕事を取ってきてはCEOに嫌われる材料を増やしていたわけだ。ついデカいため息をついてしまい、顔を上げるとユニットメンバーがみんな僕を見ていた。
こいつらに何て言ったら良いんだ?
サービス残業までさせて、評価を上げるどころか、次のポジションを危うくしてしまった。
ダメだ。
まだ言えない。
僕はPCをログアウトして立ち上がった。
「先に帰る。みんなも今日は残業しないで適当なところで帰って。」
「ええ~っ!ちょっと待って下さいよ。俺も一緒に・・・」
「チャラ男、たまには自分の家に帰れ」
だがチャラ男は廊下にまで付いて来た。歩くスピードを速めてもまだ付いてくる。
「なんか体調でも悪いんすか。」
「体調悪いっていうか、ストレス?」
なんだか寒気がする。本当に病気になったかもしれない。
「ちょっとショックなことがあって、仕事にならない。明日までに気分転換してくる。」
「気分転換なら鮨でも食いに・・・」
「チャラ男」
僕は立ち止まって、チャラ男に人差し指を突きつけた。
「マジで。今日は一人で帰りたい」
「・・・すんません。でも・・・」
「放っておいてくれ。ちょっと神様を見てくるだけだから」
チャラ男がギョッとしたので、自分が言ったことのヤバさに気がついた。僕は肩をすくめて笑った。
「フォートランのことだよ」
僕のフォートランの中には神様が住んでいる。
いや神様の分身だ。
正確に言えば神様からもらった「世界の理」が入っている。
大学院の卒業が確実になり就職先を探していた時に、僕はR-bitの学生就業研修に参加した。
僕はその時に神様に会った。
研修用のフロアに案内された僕達学生は、最初に自分の社内アカウントを作ることを命じられた。30台程あるPCのどれでも好きなのを使って良いと言われ、他の皆は最新モデルから陣取っていった。僕だけはふらふらとフロアの奥までうろついて、神様の隠れ家を見つけた。
開放的な研修用フロアの一画に、パーティションに囲われた巣のような空間があり、中にはいかにも自作のPCが鎮座していた。明らかに研修用の席ではなかったが僕は引き寄せられるように中に入った。モニターが、昔僕が持っていたものと同じだったからだ。小学生の頃、アパートの隣のお兄さんに貰った初めてのPCだった。引っ越しの時、捨ててしまった事を僕はずっと後悔していた。R-bitに務めるようなプロの人がどんな組み方をしているのか、僕は覗いてみずにはいられなかった。モニターを覗くと振動のせいか、魔法が解けるようにスクリーンセーバーが解除された。
古ぼけたPCの中で、フォートランが動いている。これで嬉しくなる僕は単なる変態である。このマシンのユーザーも僕の同類らしい。行儀が悪いと知りつつ、僕は椅子に座って中のプログラムを見てしまった。そしてすぐ自分がとんでもないものを見ていることに気がついた。
世界がひっくり返ったような衝撃だった。
僕は大学院時代、とあるプログラムを創るのに挑戦していた。しかし、いくら膨大で複雑なアルゴリズムを積み重ねていっても、完成には程遠く、途中で諦めてしまった。「現代のコンピューターでは解答を得られない、できると思うのは若気の至りだ」と指導教授は言っていた。そのプログラムのコアになるアルゴリズムが、目の前の旧型のPCの中で軽々と動いている。
世界の理はこんなに単純だったのか。
「美しい」って言葉を理系の人間はよく使うが、この賞賛がぴったり当てはまる対象を僕は初めて見た。
どれぐらい見入っていただろう。ふと気がつくと、パーティションの入り口に、太ったおっさんが立っていた。なぜか、瞬間的にその人がこのPCの持ち主であることが分かった。僕は泥棒猫のように飛び上がってしまった。
「あわわ、す、すみません!」
おっさんもびっくりしたらしく、ぽかんとした顔で僕を見ている。
「僕は研修生です。あなたのプログラムを盗もうとしたわけではありません。ただ、あなたのプログラムがあまりにもエレガントだったもので・・・・・」
僕はたどたどしい英語で言い訳した。
そのおっさんは、伸び放題のもじゃもじゃの髪ともっさりしたヒゲが顔を覆っていて、魔法使い映画か何かに出てきそうな風貌だったが禍々しい感じはなかった。おっさんの毛の色は、明るくて、窓からの日光を浴びて光り輝いていたからだ。まるで後光がでているみたいで、白っぽいゆったりした服装と相まって、杖を持たせたら完璧に神様だった。
「気に入った?」
もじゃもじゃのヒゲが動いて神様がちょっと笑った気がした。
「え?」
「君は、それ、気に入った?」
神様の英語は聞き取りにくかった。
「え、ええ。とても」
「じゃあ、あげる」
「え?」
「気に入ったなら、これ君にあげる」
「そんな、いいえ!とんでもない」
神様はパーティションの中に入って来てキーボードを触った。神様の肌は全体的にピンクがかっていて温かそうだった。
「いいよ。どうせ、気まぐれに書いたんだ。僕が持ってても、なんの価値もない。君がもらってくれたら嬉しいな」
眼鏡の奥からのぞく瞳は、優しく光っていて引き込まれそうになる。
「君はこの子が高く飛ぶと思う?」
飛ぶ?動作するってことか?
「え?ええ」
「うれしいな。いつかこの子に外を飛ばせてあげたかったんだ」
神様がくすくす笑ったら、彼の髪がふわふわ揺れた。その髪に触ってみたい衝動に駆られる。
何かに似てると思ったら、神様はゴールデンリトリバーに似ていた。
子供の頃、近所の大きい家の庭にゴールデンリトリバーがいた。良く躾されている犬で子供にも優しかった。犬に抱きつくと温かくて太陽の匂いがした。その頃元気だった父は僕が小学生になったら庭付きの家に引っ越して、犬も飼ってくれると約束してくれた。ゴールデンリトリバーは僕が欲しくて手に入らなかった幸せだった。
幸せの化身みたいな人が、僕の探していたアルゴリズムを授けてくれた。こんな夢みたいなことがあっていいのか。僕が不躾に神様をじろじろ見ていたら、神様は不思議そうに僕を見上げた。
「ああ」
神様が、合点がいったようにうなずく。
「・・・・・これ何かにコピーしてあげるね」
「ハル!こっちに来て!」
研修生の引率係が大声で僕を呼んだ。
「はい!?」
僕は慌ててパーティションから飛び出した。
引率係は僕を引き寄せて、神様の場所から一番離れた席に僕を座らせた。
「ごめんね。怖かっただろ。まさかビッグフットの席に行くなんて」
「ビッグフット?」
「あいつ、めったに出てこないくせに、今日に限ってだよ。君もとんだラッキーに遭遇したね。」
「めったに会えないんですか!それはラッキーだな。すごいプログラマーですよね」
引率係は声をひそめた。
「いやさ、あいつ、役員の親戚かなんからしいんだけど、仕事してるわけじゃないんだ。リハビリの一環でここに通ってるんだって。給料出てないとはいえ、まったく迷惑な話なんだ」
「リハビリ・・・・」
「頼むから、あいつに近づかないでくれよ。研修生に何かされたらこっちの首まで飛びかねないから」
ビッグフットさんが少し変わっている人なのは確かだ。普通の人にはあのアルゴリズムは創れない。リハビリ・・・・?そういえばさっき、Fly highって言った。
「彼は・・・麻薬か何か・・・?」
僕も声をひそめた。引率係は首を絞められたみたいな顔をした。タブーを口にしてしまったようだ。
「とにかく、奴に関わらないでくれ」
僕がビッグフットさんに関わろうとしたところで、その機会には二度と恵まれなかった。2週間の研修期間の間、ビッグフットさんと会えたのはその時一回きりだったのだ。研修最終日、僕は彼のデスクに僕のメアドを書いたメモを置いたが、彼からは一度も連絡がなかった。彼にとって研修生への興味などそんなものだろう。あの時もっと話せなかったのが残念で仕方なかった。
卒業後、R-bitに就職するか迷ったが、当時R-bitはオンラインゲームを創るベンチャー企業に過ぎなかったこともあり、僕は日本に戻ってNYANCに就職した。その当時NYANCは小型ロボットを開発していた。僕は大学でロボットの知覚工学を専門にしていたので、それを活かしたかった。だけど僕は希望が叶わず営業部に配属されてしまった。2年後NYANCがR-bitに買収されたのは驚きだった。R-bitは突然ビジネス向け統合ソフトWBを発表して、いつのまにかナスダックに上場できるくらいの一大企業に成長していた。僕にはよほど先見の明がなかったと言える。
神様に会いたい。
僕はあの時以来、神様からもらったアルゴリズムを元にしたプログラムをコツコツと書いている。ロボットの人工知能だ。これをロボットに入れれば、ロボットは人間になる。現代のロボットに欠けている最後のパーツだ。
それが今は、僕の現実逃避の手段に成り下がっている。
ロボット、作れたら良いのに。
経営破綻しかけたNYANCではロボット開発は凍結されてしまったし、今のR-bitの財政でもロボット開発はまだまだ非現実的だ。僕が最初からR-bitに務めていたら少なくとも今の状況よりマシだっただろうか?
今、会えたら神様は僕に何て言うだろう?せっかくのアルゴリズムを僕が2年以上も腐らせていることに失望するだろうか。それでもやはり神様は笑ってくれるような気がするのだ。神様は笑ってこう言うだろう。
「この子に外を飛ばせてあげたい」
・・・・・・あれ?
まてよ。
「外を飛ばせる」?
外を飛ばせるってどういうことだ?
僕はこの子をロボットの中に閉じ込めることだけ考えていた。ロボットの人工知能ならこの子の働く場所はロボットの中だけしかない。いや、ロボットの中に限定する必要があるか?
頭の中に風が吹き抜けたような気がした。
この子に羽をつけたら、R-bitの新商品にぴったりじゃないか。
R-bitにはちょうど天使が住む雲がある。
コンペ、参加しよう。
これって、神の啓示かもしれない。
その日は一睡もせず、始発で出社した。
「あれ?あれれ~~?」
定時に出社して来たチャラ男が僕のモニターを覗き込んで叫ぶ。
「ちょ、ちょっと、お前ら、これを黙認してていいのぉ~!里見さんが会社のPCにフォートランいれてるよ!」
「黙れ、チャラ男。里見さんの邪魔しないで」
「だって、だって、里見さんが違う世界に行っちゃうじゃんよ!」
「チャラ男」
僕は振り向いてチャラ男を見た。チャラ男はすでに事情を察したのか、ものすごく嬉しそうにニヤニヤしている。
「僕、コンペに出るんだ。サポートしてくれる?」
「だから通常業務は俺らだけで遂行するのだ。了解?」
「はいぃ~。本気を出した里見さんってステキっす!」
コンペ準備の息抜きに、本社に勤めた事がある友人にビッグフットさんのことを調べてもらうことにした。もらったとはいえ、あのアルゴリズムは彼のものだ。僕としては、この機会に彼と一緒に仕事をしていきたかった。
「R-bitは社員の入れ替わりが激しいからもういないかもしれないね」
友人は本社の知り合いにメールを書きながら言った。
「そうなんだ。研修の時の知り合いももう辞めているし。でも役員の親戚らしいから誰か情報を知ってるんじゃないかな」
「逆に身内のジャンキーなら隠したがるんじゃないか。まあ分かってる情報は全部くれ」
「名前はビッグフット・・・」
「ブッ、それニックネームだろ」
「う~ん。実は本名知らないんだ。200ポンド以上の大男で、目は鳶色。髪はゴールデン・・・・」
「ブロンドね。アメリカじゃどこにでもいそうな奴だな・・・」
「とにかく凄いプログラミングする人なんだよ。絶対誰かは知ってるって」
「まあ、期待しないで待っててくれ。送信っと」
部下が僕の分の業務を負担してくれているとはいえ、一週間後のプレゼンはスケジュール的にキツい。僕は奥の手を出した。泊まり込み仕事である。夜も深けて、人が少なくなったのを見計らい、僕は着古したジャージの上下に着替えた。コンタクトを外し高校の時に買った度の弱い眼鏡をかける。長時間プログラミングするためのユニフォームである。
ロッカールームから戻った僕を見て、チャラ男が変な声を出した。
「里見さん、ブサッ・・・かっわいい~~っ!」
「うるさいっ。そして撮るな!」
「だって~。いつにも増して可愛い~んだもん。これ総務のオネーサマ方に売っちゃおうっと~」
「さっさと帰れ!チャラ男!それ売ったら今月の残業代は出さないからな!」
チャラ男はキャッキャッ言いながら廊下を走って逃げて行った。
チャラ男がいなくなると、急に静けさを感じた。隣の部署から、かすかに人が働いている音がする。集中して働くには最適だ。僕は時間を忘れてフォートランに入り込んだ。本気でプログラミングするのは久しぶりだ。頭の血流が勢い良く流れて、脳神経がフル活動しているのを感じる。少しずつ天使の羽が形を成してくる。これはイケる。他にこんな企画できる奴は絶対にいない。
あとは、これをどうプレゼンするかだ。コンペでは全て見せる必要はない。インパクトのあるところだけプレゼンすれば良い。なんだか、全てが上手くいきそうな気がして来た。自分も飛んでるみたいだ。これも一種のFly highだな。
そんなことを考えながら、僕はトイレに立った。
すでに日付が変わってからだいぶ過ぎている。ついでに自販機で軽食を買ってこよう。僕は勢い良く部署のドアを開けた。
「うわっ!」
向こうも僕も揃って声を上げた。
ドアの前にシュルツが立っていた。
なんでこいつ夜中にこんなところにいるんだ?出社してないんじゃなかったか?
「Hello,シュルツさん。こんな遅くまで仕事ですか?」
一応挨拶をしてみる。シュルツは目をぱちくりさせていた。最初僕だと気がつかなかったのかもしれない。
「フッ。フフフフフ」
シュルツが手で口を押さえて笑い出した。
そんなにおかしいか?
肩を振るわせて笑えるほど、おかしいか。人の恰好が。
頭に血が上って耳まで熱くなった。
僕だって、こんな姿はこいつにだけは見られたくなかった。
最悪だ。
どうせ、僕の中身はキモオタですよ。
せっかくの清々しい気分が台無しになった。
なんで、絶妙のタイミングで邪魔しに現れるんだ?
悪魔かあいつは。
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