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第八話 ロッグダメージの被害者母娘の顔と体を元に戻してしまいましょう

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 アザレアが完全に快癒し、俺の嫁になった。第二夫人となる。
 何と言うか、男女が結ばれるには色々と物語があるでしょう。溶けた顔を元に戻したくらいでいいのかな、と思っていたらアザレアいわく『十分です』と即答。それにおんぶされた時、ああ、この人についていこう、そう思ってくれたとか。彼氏彼女、恋人同士、そんな段階すっ飛ばしてアザレアは俺の第二夫人になってくれた。

 てなわけで、ギルドに用意してもらった屋敷に、俺、サナ、アザレアの三人生活が始まった。
 アザレアは二十一歳で俺より二つ年上だ。実際は俺が六十五歳も年上だけど。

 完全復活したアザレアの肢体は本当に蕩けそうだった。金髪清楚系白人美女と言えばいいんですかね。サナもエッチ大好きJKですけど、アザレアもエッチ大好きJDですよ。
 何度も言うけど、この世界の女性たちは性欲が強いと言う設定にはジャンピング土下座したいくらい感謝です作者さん。

 最初は三人でいたすことを渋ったサナとアザレアですが、今は二人まとめて愛しちゃうことが多いです。
 ああ…。こんな幸せでええんかのう…。香苗、あの世で儂のこと幻滅しておるじゃろうな。
 おっと、うっかり年寄り言葉に戻ってしまった。

 今日も仕事だと寝室のカーテンを開けると日差しで目が覚めるサナとアザレア。
「おはよう」
「「おはよう、ケンジ」」
 スッキリしている顔の二人、何か男として誇りに感じるな。アッチで二人を大満足させている証ではないか。
「さて、昨日仕込んでおいたシチュー食べよう。アザレア、パンを焼いてくれ。サナ、お茶の用意を」
「「OK」」

 この家の料理番は俺だ。朝は簡単に済ませることも多いけれど、こうして前日に仕込んでおくことも有る。
 カレーを作るか作るまいか真剣に悩んでいる。あれが世に出たら大変だろう。現状、俺は地球とこの世界、共通して存在する料理を、より美味にして嫁たちに振舞っているだけだ。異世界転生ファンタジー小説でありがちなプリンを作ってヒロインたちの胃袋鷲掴みなんてこともしない。

 俺は消防装備品以外の令和日本のオーパーツを出すことは避けたい。前世、不人気だったけれど異世界転生ファンタジー小説を書いていた俺、作中で主人公にあれこれ発明させる場面も書いた。だから中世欧州レベルの文化でも材料さえ揃えれば作れてしまうオーパーツは幾つか心当たりはあるが、あえてしないことにしている。
 本音を言えば、米が食べたいぜ…。納豆…。香苗の作った味噌汁が恋しい…。

 朝食を食べ終えると、それぞれの仕事の準備だ。俺は嫁二人に弁当を持たせる。
 アザレアは俺より一足先にギルドに出勤、サナは週三日に港の食堂で給仕の仕事、そして同じく週三日槍の道場に通っている。先日、初段をもらえたとか。大したものだ。ちなみに俺は斧使いだけど段位など持っていない。

 俺は嫁二人が出たあと、水魔法で屋敷内を一斉に洗浄してピカピカに。庭の草むしりをウォーターカッターで一斉に刈って、その草をゴミ集積場に持っていく。嫁の衣類も水魔法で洗濯、生活魔法の応用で乾燥、たたむのだけは手作業だ。ふふっ
「見てくれよ、俺の渾身の力作の下着を」

 サナ愛用の可愛いピンクのパンティを恍惚の表情で広げている。
 完全に変態だ。中身は八十五歳の爺のくせに。
 まあ、男は歳を取ってもスケベはやめられないし。

 この世界の女性の下着事情はひどい。胸はサラシ、下は男と同じトランクス。
 だけど、令和日本のオーパーツは…と我慢していた。
 でも、とうとう耐えきれず俺は裁縫スキルをフル活用して、セクシーなブラジャーとパンティを作ってしまった。サナとアザレア、大喜び、俺にセクシーな下着姿のショーを見せてくれたのだ。
 アザレアの水色のパンティもいいなあ…。

 でっへっへ…。
 被っちゃお

 ふおおおおおっ!

 クロス・アゥ!
 変〇仮面参上!

 なんやかんや、嬉々として嫁の下着をたたんでいき、それが終わるといよいよ俺も出勤だ。地球の時間で言うと午前十時ごろ。社長出勤だ。
 ちなみに水魔法や生活魔法を応用しての家事も、最初はサナとアザレアも驚いていた。基本、男は家事をしないものらしい。日中は三人とも仕事や習い事があるのだから家政婦を雇っては、と話も出たけれど、今のところ保留だ。魔法に頼りすぎるのもいい傾向ではないからな。
 ともあれ、作業服に着替えて胸当て装備、安全ベルトに手斧を装着、編み上げ靴を履いて屋敷を出た。
 消防士は常在戦場、男は外に出たら七人の小人ありだ。ん、敵だったかな?
「いい天気だ…。そろそろ、この世界に来て一年、十九になったのかな。グレンの誕生日分からないからな」


 冒険者ギルドに入ると、ケイトさんとアザレアが駆けてきた。
「どうした?」
「ケンジ、商業ギルドがブラジャーとパンティの製法を教えてほしいって」
「…ああ、そういえば、王都の商業ギルドは作業服の発明者として一度顔を見せただけだったよな…。下着、気づいたんだ」
「作業服と編み上げ靴は、すぐに技術を提供したと聞いていますが下着はどうして?」
 と、ケイトさん。
「サナにも特許と商標登録勧められましたけどね…。この王都の商業ギルド、男性職員ばかりでしたし、サンプルとして下着を着けた女性の姿を見たいとか言い出したら、どうしようかと思って今まで言い出せなかったのですよ」
「ああ、ものがものだから…」
 納得顔のケイトさん、良かった、分かってくれて。
「立ち合い者、すべて女性なら用向きに応えますと伝えておいてよ、アザレア」
「分かったわ。そのさい、サンプルとして私が赴くから」
「頼むよ」

 アザレアは一度ギルドの事務所に戻り、再び戻ってきた。『私』から『公』にチェンジ。
「お待たせしましたケンジ様、本日の予定を説明しても」
「はい」
「南街区の一番町から三番町にいるロッグダメージ被害者女性は計九名、街区長にすでに事前連絡し、全員二番町の町民学校の講堂に集めるよう伝えてあります」
「分かりました。ここ西街区からだと駅馬車で行くのでしたね」
「その通りです。参りましょう」

 このころになると、一軒一軒患者宅を周るということは無くなった。ギルドのある西街区にいる患者たちの顔をすべて元に戻すと、他の街区の患者たちも、それを耳にして何とか勇気を振り絞り、約束した日時に街区長が指定した場所へと赴くようになったのだ。
 ロッグダメージ、地球で言うアシッドアタック、心無い男より酸と言う劇物を顔に浴びせられて溶けてしまった女性たちの顔を元に戻すのが俺の仕事だ。

 駅馬車に乗り、任地に向かう。隣同士で馬車内の席に座るとアザリアから資料を渡される。患者の受傷理由や程度などが記されているのだ。アザレアは言葉を発しない。俺の横に静かに座り、俺が読み終わるまで待っている。堂に入ったものだ。
 俺は前世消防士だったから秘書なんて大層なものを就けられたことはないが、有能な秘書と云うのは彼女みたいな人を言うのだろう。書類には俺が満足できる情報すべて網羅されているし。ベッドではあんなに可愛いのに…。

 任地の町民学校最寄りの停留所に降りた。
「母娘で酸を浴びせられたと云うのは酷い話だな…」
「元は大工だった父親なのですが、現場で負傷して働けなくなり、やがて酒に溺れて妻と娘に暴力を振るうように。たまらず妻は夫が酔って昼寝している時、娘を連れて逃げ出し最寄りの停留所に向かったそうです。そして駅馬車に乗車しようというところ夫が追いかけてきて妻子を捕まえて路上に引きずり下ろしたうえロッグを浴びせたとのこと。苦しむ妻子を指さして大笑いして、周りの乗客や市民たちに捕らえられても『ざまぁみろ!俺を裏切ろうとした罰だ!』と言っていたそうです」
「…酸を持っていたと云うことは、離婚を切り出されたら使ってやろうと思っていた、ということか。終わっているな、その旦那は」
「死刑さえ制御効果が無いならば、どうすればいいのでしょうか…。女は男からの交際を断るのも、また別れを切り出すのも命懸けです」
 アザレアもロッグ被害者だ。本来なら、こうして俺とロッグダメージについて話すのもつらいと思う。
「俺が必要でなくなる世は訪れるのかな…」
 アザレアは答えなかった。訪れない、そう言いたかったのだろう。そりゃそうだ。今だ地球の中東や東南アジアでも毎年被害者が多数出ているのだ。俺がこの世界であと六十年生きたとしても、無くなっている可能性はゼロだ。
「アザレア」
「はい」
「生きている間、一人でも多くの女性の顔を元に戻すよ。一緒にやってくれるかい?」
「はい、ケンジ様の命尽きる時まで一緒です」

 二番町の町民学校に着いた。校門に街区役場の人が出迎えに来て、俺とアザレアは講堂に案内され、今日の患者である女性たちと会った。
 先の話に出た母娘を始め、今回は火災や事故による火傷はなく、全員がロッグダメージの被害者らしい。加害者はすべて捕えられて死刑にされているが、それで彼女たちの顔が元に戻るというわけではない。
 本当に恐ろしい話だ。愛情と憎悪は紙一重と言うが、たとえ明日に死刑になろうとも自分を裏切った女を地獄に誘うためなら何の迷いもなく酸を浴びせるのだから。

 最初に母娘でロッグダメージを受けた娘さんの顔を元に戻すことに。五歳くらいの少女だった。
 俺は腰を落として目線を合わせた。いや
「目、見えないの?」
「うん、お父さんに熱い水をかけられて…」
「そうか、つらかったね」
「お兄ちゃん、治してくれるの?」
「俺はケンジ、君は」
「アイカ」
 母親が不安そうに見ている。術のレベルから、貫禄ある魔導士が来るとでも思っていたのだろう。
 だが、俺は十九になったばかりのスポーツ刈の青年だ。頼りなさげに見えるのかもしれない。
「ごめんね、顔をお兄ちゃんに見せるのは嫌だろうけど魔法を直接アイカちゃんの顔にかけたいから」
「アイカのこと化け物と言わない?」
「言わない、約束する。そしてアイカちゃんの顔が戻ったら、お兄ちゃん、何故か火傷した女の人の顔、綺麗に忘れてしまう頭なんだよ」
「そうなんだ!じゃ、今のアイカの顔もすぐに忘れちゃうんだ」
「うん、顔が戻って可愛くなったアイカちゃんの顔は忘れないけどね」

 震える手で被り物を取ったアイカちゃん、ひでえことしやがる、そう思った。
 頭髪はすべて消え失せ、両眼とも熱傷して失明、熱傷は胸部まで及んでいると思えた。
 俺は母親に
「すみません、上着を…」
「分かりました。アイカ、恥ずかしいかもしれないけれど、お兄ちゃんにおっぱいも治してもらおうね」
「うん、分かったよ、ママ」
 地球じゃ感染症にかかって死んでもおかしくない熱傷だが、この世界には治癒魔法がある。
 元に戻せなくても火傷そのものは治癒(中)で治せるのだ。
「では、じっとしていてね…。『ハイヒール』」
 アイカちゃんの上半身が俺の魔力、白き輝きに包まれる。

「見える…!目が見えるよ、ママ!」
 顔と頭に触れて、パアとひまわりのような笑顔を見せるアイカちゃん。
 それを見るや母親が泣き崩れた。
「ああっ、ああああ…!」
「アイカちゃん、そこ鏡」
 俺が指すとアイカちゃんは大きな鏡に全身を映し
「かっ、髪の毛もある!耳もお鼻も、おっぱいも元に戻っているよ!うっ、うっ、うわああああああん!」
 大きな声を出して泣いた。他の患者さんたちも元に戻ったアイカちゃんの姿を見て号泣していた。
 私も元に戻れるんだという歓喜も相まって。

 次に母親の治療にあたる。
「マリナと言います。これからお恥ずかしい姿を見せます。治療後はお忘れください」
「はい、お約束します」
 二十二・三歳くらいの女性だ。被り物を取ると同時に肌着も脱ぐ。
 頭部と顔面、そして背中一面と臀部が溶けている。治癒(中)で火傷が治ったが溶けたまま固まっているのだ。

「治ったら、すぐに被り物を着て下さい。好きでもない男にお尻を見せることになるので」
「あっ、はい…。分かりました」
「では俺に対して横向きになって下さい」
 恥ずかしそうに指示通りの体位を示すマリナさん。両腕で乳房と股間を隠している。
 可愛い人だな。ガン見したい衝動を抑えて俺は治癒(大)を放った。
『ハイヒール』
 俺は左手をマリナさんの顔面、右手を背中に。彼女の全身が白き輝きに包まれた。

 ファサッと美しい茶色の長い髪が背中に落ちてきたのを感じたのだろう。
 髪が戻り、かつ両の穴で鼻呼吸が出来ることに気付いた。彼女は被り物を被ることも忘れ鏡に駆けた。
「あっ、ああああっ、あああああああ!」

 マリナさんは両手を両頬に当てて大粒の涙を流した。元に戻っている頭と顔、そして鏡に背を向けて背中の熱傷も消えているのも見て、さらに号泣。
「ああああああ!」

 アザレアが大急ぎで被り物と服を持っていき
「ちょっ、ちょっとマリナさん!この部屋には殿方もいるのですよ!」
 俺も呆気に取られていた。乳房と股間を隠そうともせず鏡の前で、嬉々としてストリップをいきなり始めだした彼女の姿に。圧倒的眼福…ッ!アザレアの言葉で俺の存在をやっと思い出したマリナさんは全身を真っ赤にして
「きゃああああああ!」
 と、慌ててアザレアから被り物をひったくって着た。

「ママ、ばっちりお兄ちゃんに見られていたよ」
「うう…。恥ずかしい…」
「ははは、それほど嬉しかったということですよね。術を施した者としても嬉しいです。元に戻った姿も忘れた方がいいですか?」
「い、いえ、そちらは忘れないでもらえると…って、何言っているの私ったら!」
 後に、このマリナさんは俺の第三夫人となるのだが、それはまた別のお話に記そう。
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