2 / 66
第一章
猫とカラスと出涸らしと
しおりを挟む
冷たい風が肌を刺す。
赤くかじかんだ指先を両手で握り合いながら、冬の夜の森を外套も羽織ることなく進んでいくなんて自殺行為だと思うだろう。
だって仕方ないじゃないか、持っていないのだもの。
出涸らしに防寒具なんて、贅沢品だ。
森の中を歩きながら思い出すのは、幼いころの姉との会話。
“裏の森にはね、こわーいこわーい魔法使いがいるのよ”
“まほうつかい?”
“そうよ。人を食べちゃうこわーい魔法使い。真っ黒い髪に、血のように赤い目をしているんだって。だからね、絶対に裏の森に入ってはダメよ? 入ったら最後、その怖い魔法使いに食べられちゃうんだから”
“わかりましたお姉さま!! 私、絶対に裏の森には近づきません!!”
“いい子ね、──”
あの頃、お姉さまは優しかった。
今もそうだ。
お姉さまは、いつも優しい。
お野菜の注文ができていなくて配達されず、食事の準備ができなかった時も、お姉さまは「大丈夫よ、誰にでも忘れることはあるから」と一人かばってくれた。
お母様のスープに黒光りするあの虫がプカプカ浮かんでいた時も、「使用人のいない家でなかなか手入れができないのだから仕方がないわ。大丈夫。スープは新しいものに取り換えて、後で虫を駆除しておいてくれたらそれでいいのよ」と言ってくれた。
いつもお姉様は、ダメな私の失敗を「大丈夫」だと言ってくれた。
でもいつからだろう。
私のことを、名前ではなく、“出涸らしちゃん”と呼ぶようになったのは。
もう、今となっては名前なんてどうでもいいことだけれど。
ぐぅうううう~……。
ぐぅぅうう……ぐるるるぅうう……。
さっきから私のお腹の主張がとてつもなく激しい。
どうせ殺してもらいに行くのだからと、夕食も食べずに来てしまったのが仇となってしまった。
歩いても歩いても続く森の中、私はとうとう歩き疲れて木の根元へと座り込んでしまった。
「ふぁ……ねむい……」
あぁ、そういえば私、今日は朝早くからとっても忙しかったんだった。
休む暇もないほどに走り回って、姉や母のマッサージや肌の手入れ、ヘアセットやメイク、ドレスの着付け、それに食事も作って──。
「疲れたなぁ……もう。来世ではきっとこの疲れもまた忘れるんだよね。そうしたら……今度は幸せになれるのかしら?」
ぼんやりと見上げた満天の星空を見ていると、ほろりと口からこぼれてしまった言葉。
初めて望んだ自身の幸せに自分でも驚きながら、限界だった私の瞼がゆっくりと落ちていった。
***
「──おーいお嬢さん、ねぇねぇ、起きてよ」
「駄目よそんな生易しい声じゃ。起こす時はこうよ!! すぅぅうううう──っ、おぉぉおおおおい!! 朝よぉぉおおおおお!!」
「ふぁぁぁぁあああっ!?」
突然耳元で響いた甲高い大声に鼓膜を破壊されかけた私は、勢いよく跳ねるように飛び起きた。
「何!? 奇襲!? って……え……?」
目の前で私をじっと見つめるのは、美人黒猫のまる子とカラスのカンタロウ。
あれ? でもさっき、人の声がしたような……。
「なぁにとぼけた顔してんのよ。相変わらずぼんやりしてるわね!!」
「それが可愛いところだけどね」
「へ……? ……えぇぇえぇええええええ!?」
まる子とカンタロウが……しゃべった!?
え、でも、ちょっと待って。
カンタロウが女口調なんだけど!?
「まさかオネエカラス……?」
「あんた、突っつくわよ!? だいたい、ひとの雌雄確認もせずに適当に妙な名前つけてんじゃないわよ!! 何よカンタロウって!? こんなキュートな乙女に!!」
頬をぷくっと膨らませ鋭い金色の瞳でぷりぷりしながら睨み抗議するけれど、どこを見れば乙女だというのか、私にはまったくわからない。
「ご、ごめんなさい。カンタロ……かん子さん」
「今更変えられても違和感しかないし、大して変わんないからカンタロウでいいわよ!!」
「す、すみません……あの、あなた達はどうしてしゃべる事ができるの? 今までずっと『カァ』とか『にゃー』とかだったのに」
もともと二匹とも、私の言葉がわかるかのように、私の言葉に対してよく返事をしてくれていた。
だけど人語を喋るところなんて一度も見たことがなくて、二匹と会話をしていることに驚きを隠せない。
私が尋ねると、一匹のカラスと猫は互いに顔を見合わせてからくすくすと笑った。
「そうか。そうだったね。君は僕たちの言葉がわからなかったんだね!! っはははは!!」
「私たちに話しかけてくるから、てっきり言葉が理解できるんだと思ってたけど……ふふっ、あはははっ、変な子っ」
おそらくただ私が友達のいないぼっち属性だっただけだ。
ただひたすら動物に笑われ続ける女の図の、なんとシュールなことか。
「僕たちの言葉はね、この森の中でしか通じないんだ。基本はね」
「森の中でしか?」
「そうよ。この森はオズの魔力で満ちているからね。魔力のない人間でもオズの魔力の干渉のおかげで、私たちの言葉がわかるのよ。ま、あんたの場合は森の外で通じてもおかしくはないんだけど……。ちなみに、私はグリフォン。こいつはケットシーよ」
「グリフォンと……ケットシー!?」
って、確か幻の魔法生物……!!
絵本の中でしか見たことのないその生物が、まさか実在するだなんて……。
「でもどう見てもカラスと猫……」
グリフォンといえば頭は鷲、下半身は獅子で、その翼は美しいあめ色をしているというし、ケットシーといえば黒くて大きな、二足歩行をする猫の妖精だったはず。
「あんたバカ!? 本当の姿で外の世界になんて行ったら、私たち二人ともつかまって見世物小屋送りよ!? カモフラージュよ、カモフラージュ。皆が皆、あんたみたいにおっとりまったりしているわけじゃないんだからね!!」
再びぷりぷりし始めたカンタロウに「ご、ごめんなさい」と小さくなると、カンタロウは「わかればいいのよ、わかれば」とふんっと鼻を鳴らした。
「あ、あの、それで、オズ、っていうのは……」
「あぁ、この森の持ち主であり薬師の、オズだよ」
「くす……し?」
て、薬を作る人のこと、よね?
「えぇ。オズは魔法使いだから、魔法を込めた魔法薬を作ってるのよ」
「魔法!?」
つい私らしからぬ大きな声が出てしまった。
森に住む魔法使い。
きっとその人が、私が求めていた悪い魔法使いだわ──!!
「まる子、カンタロウ、お願い!! その人の所へ連れて行って!!」
「オズの所に? なんでまた」
「どうしても……どうしても会わなきゃいけないの……」
私を痛みを感じることなくきれいに殺してもらうために。
来世での幸せ生活のために。
「どうする?」
「いいんじゃない? たまにはオズも領地以外の人間と関わったほうが、脳の活性化にはいいと思うわ」
脳の活性化?
悪い魔法使い様はご年配の方なのかしら?
私が首をかしげた刹那──。
「お前たち、ここにいたの──か……?」
ザッザッザッと草木を踏みしめる音を鳴らしながら影の方から現れたのは、一人の黒いマントを羽織った男性。
「黒い髪に……赤い目……」
“裏の森にはね、こわーいこわーい魔法使いがいるのよ”
「君は……誰だ?」
赤くかじかんだ指先を両手で握り合いながら、冬の夜の森を外套も羽織ることなく進んでいくなんて自殺行為だと思うだろう。
だって仕方ないじゃないか、持っていないのだもの。
出涸らしに防寒具なんて、贅沢品だ。
森の中を歩きながら思い出すのは、幼いころの姉との会話。
“裏の森にはね、こわーいこわーい魔法使いがいるのよ”
“まほうつかい?”
“そうよ。人を食べちゃうこわーい魔法使い。真っ黒い髪に、血のように赤い目をしているんだって。だからね、絶対に裏の森に入ってはダメよ? 入ったら最後、その怖い魔法使いに食べられちゃうんだから”
“わかりましたお姉さま!! 私、絶対に裏の森には近づきません!!”
“いい子ね、──”
あの頃、お姉さまは優しかった。
今もそうだ。
お姉さまは、いつも優しい。
お野菜の注文ができていなくて配達されず、食事の準備ができなかった時も、お姉さまは「大丈夫よ、誰にでも忘れることはあるから」と一人かばってくれた。
お母様のスープに黒光りするあの虫がプカプカ浮かんでいた時も、「使用人のいない家でなかなか手入れができないのだから仕方がないわ。大丈夫。スープは新しいものに取り換えて、後で虫を駆除しておいてくれたらそれでいいのよ」と言ってくれた。
いつもお姉様は、ダメな私の失敗を「大丈夫」だと言ってくれた。
でもいつからだろう。
私のことを、名前ではなく、“出涸らしちゃん”と呼ぶようになったのは。
もう、今となっては名前なんてどうでもいいことだけれど。
ぐぅうううう~……。
ぐぅぅうう……ぐるるるぅうう……。
さっきから私のお腹の主張がとてつもなく激しい。
どうせ殺してもらいに行くのだからと、夕食も食べずに来てしまったのが仇となってしまった。
歩いても歩いても続く森の中、私はとうとう歩き疲れて木の根元へと座り込んでしまった。
「ふぁ……ねむい……」
あぁ、そういえば私、今日は朝早くからとっても忙しかったんだった。
休む暇もないほどに走り回って、姉や母のマッサージや肌の手入れ、ヘアセットやメイク、ドレスの着付け、それに食事も作って──。
「疲れたなぁ……もう。来世ではきっとこの疲れもまた忘れるんだよね。そうしたら……今度は幸せになれるのかしら?」
ぼんやりと見上げた満天の星空を見ていると、ほろりと口からこぼれてしまった言葉。
初めて望んだ自身の幸せに自分でも驚きながら、限界だった私の瞼がゆっくりと落ちていった。
***
「──おーいお嬢さん、ねぇねぇ、起きてよ」
「駄目よそんな生易しい声じゃ。起こす時はこうよ!! すぅぅうううう──っ、おぉぉおおおおい!! 朝よぉぉおおおおお!!」
「ふぁぁぁぁあああっ!?」
突然耳元で響いた甲高い大声に鼓膜を破壊されかけた私は、勢いよく跳ねるように飛び起きた。
「何!? 奇襲!? って……え……?」
目の前で私をじっと見つめるのは、美人黒猫のまる子とカラスのカンタロウ。
あれ? でもさっき、人の声がしたような……。
「なぁにとぼけた顔してんのよ。相変わらずぼんやりしてるわね!!」
「それが可愛いところだけどね」
「へ……? ……えぇぇえぇええええええ!?」
まる子とカンタロウが……しゃべった!?
え、でも、ちょっと待って。
カンタロウが女口調なんだけど!?
「まさかオネエカラス……?」
「あんた、突っつくわよ!? だいたい、ひとの雌雄確認もせずに適当に妙な名前つけてんじゃないわよ!! 何よカンタロウって!? こんなキュートな乙女に!!」
頬をぷくっと膨らませ鋭い金色の瞳でぷりぷりしながら睨み抗議するけれど、どこを見れば乙女だというのか、私にはまったくわからない。
「ご、ごめんなさい。カンタロ……かん子さん」
「今更変えられても違和感しかないし、大して変わんないからカンタロウでいいわよ!!」
「す、すみません……あの、あなた達はどうしてしゃべる事ができるの? 今までずっと『カァ』とか『にゃー』とかだったのに」
もともと二匹とも、私の言葉がわかるかのように、私の言葉に対してよく返事をしてくれていた。
だけど人語を喋るところなんて一度も見たことがなくて、二匹と会話をしていることに驚きを隠せない。
私が尋ねると、一匹のカラスと猫は互いに顔を見合わせてからくすくすと笑った。
「そうか。そうだったね。君は僕たちの言葉がわからなかったんだね!! っはははは!!」
「私たちに話しかけてくるから、てっきり言葉が理解できるんだと思ってたけど……ふふっ、あはははっ、変な子っ」
おそらくただ私が友達のいないぼっち属性だっただけだ。
ただひたすら動物に笑われ続ける女の図の、なんとシュールなことか。
「僕たちの言葉はね、この森の中でしか通じないんだ。基本はね」
「森の中でしか?」
「そうよ。この森はオズの魔力で満ちているからね。魔力のない人間でもオズの魔力の干渉のおかげで、私たちの言葉がわかるのよ。ま、あんたの場合は森の外で通じてもおかしくはないんだけど……。ちなみに、私はグリフォン。こいつはケットシーよ」
「グリフォンと……ケットシー!?」
って、確か幻の魔法生物……!!
絵本の中でしか見たことのないその生物が、まさか実在するだなんて……。
「でもどう見てもカラスと猫……」
グリフォンといえば頭は鷲、下半身は獅子で、その翼は美しいあめ色をしているというし、ケットシーといえば黒くて大きな、二足歩行をする猫の妖精だったはず。
「あんたバカ!? 本当の姿で外の世界になんて行ったら、私たち二人ともつかまって見世物小屋送りよ!? カモフラージュよ、カモフラージュ。皆が皆、あんたみたいにおっとりまったりしているわけじゃないんだからね!!」
再びぷりぷりし始めたカンタロウに「ご、ごめんなさい」と小さくなると、カンタロウは「わかればいいのよ、わかれば」とふんっと鼻を鳴らした。
「あ、あの、それで、オズ、っていうのは……」
「あぁ、この森の持ち主であり薬師の、オズだよ」
「くす……し?」
て、薬を作る人のこと、よね?
「えぇ。オズは魔法使いだから、魔法を込めた魔法薬を作ってるのよ」
「魔法!?」
つい私らしからぬ大きな声が出てしまった。
森に住む魔法使い。
きっとその人が、私が求めていた悪い魔法使いだわ──!!
「まる子、カンタロウ、お願い!! その人の所へ連れて行って!!」
「オズの所に? なんでまた」
「どうしても……どうしても会わなきゃいけないの……」
私を痛みを感じることなくきれいに殺してもらうために。
来世での幸せ生活のために。
「どうする?」
「いいんじゃない? たまにはオズも領地以外の人間と関わったほうが、脳の活性化にはいいと思うわ」
脳の活性化?
悪い魔法使い様はご年配の方なのかしら?
私が首をかしげた刹那──。
「お前たち、ここにいたの──か……?」
ザッザッザッと草木を踏みしめる音を鳴らしながら影の方から現れたのは、一人の黒いマントを羽織った男性。
「黒い髪に……赤い目……」
“裏の森にはね、こわーいこわーい魔法使いがいるのよ”
「君は……誰だ?」
146
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
【完結】見た目がゴリラの美人令嬢は、女嫌い聖騎士団長と契約結婚できたので温かい家庭を築きます
三矢さくら
恋愛
【完結しました】鏡に映る、自分の目で見る姿は超絶美人のアリエラ・グリュンバウワーは侯爵令嬢。
だけど、他人の目にはなぜか「ゴリラ」に映るらしい。
原因は不明で、誰からも《本当の姿》は見てもらえない。外見に難がある子供として、優しい両親の配慮から領地に隔離されて育った。
煌びやかな王都や外の世界に憧れつつも、環境を受け入れていたアリエラ。
そんなアリエラに突然、縁談が舞い込む。
女嫌いで有名な聖騎士団長マルティン・ヴァイスに嫁を取らせたい国王が、アリエラの噂を聞き付けたのだ。
内密に対面したところ、マルティンはアリエラの《本当の姿》を見抜いて...。
《自分で見る自分と、他人の目に映る自分が違う侯爵令嬢が《本当の姿》を見てくれる聖騎士団長と巡り会い、やがて心を通わせあい、結ばれる、笑いあり涙ありバトルありのちょっと不思議な恋愛ファンタジー作品》
【物語構成】
*1・2話:プロローグ
*2~19話:契約結婚編
*20~25話:新婚旅行編
*26~37話:魔王討伐編
*最終話:エピローグ
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる