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〇〇授業のお知らせです
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「で? まーた性懲りもなくのらりくらり交わして、別の役目を押し付けて婚約者候補って立場から目をそらさせたって?」
「ふふん。どうよセイシス!! 私、詐欺師の才能あるのかもしれないわ!!」
「アホか。お前一応王女だろうが」
いつもの如き容赦ない突っ込み。
何と言われてももういいわ!!
婚約者候補を退けられたならそれで!!
彼らと結婚さえしなければ、私はきっと生き残ることができる!!
それから求婚の言葉を私が聞くことができる相手を適当に探して結婚すれば、万事解決!! 多少愛がない結婚でも生き残ることができるなら良いわ!!
適当にやることやって世継ぎ作って隠居してやる!!
「で? 次の候補者は誰? もう誰が来ても適当にかわせる自信があるわ!!」
「あーそれだがな……残りのフロウ王子だが、今こちらに向かってきているから、来るにしても来週になりそうだ」
あ、そうか。
フローリアン王国はこの国から南に位置する少しばかり離れた国。
こちらにいらっしゃるとは言ってもなかなかすぐにとはいかないわよね。
「じゃぁ次はアルテスかしら?」
「アルテスも、今ちょうど騎士団の遠征で西の森に行っている。今週には遠征を終えて帰ってくるから、来週になるだろうな」
セイシスのマクラーゲン公爵家には、正妻の息子であるセイシスの他に二人の血のつながらない兄弟がいる。
その一人がセイシスの4つ下の異母弟のアルテス。
そしてもう一人は、セイシスの2つ上で異父兄であるランベルト。
正妻の長子であるセイシスはなぜか私の護衛騎士になってしまったし、アルテスは1年前に騎士団に入団して隊舎住まいになっているし、ランベルトは辺境の町で医者をしている。
皆それぞれの道を行っているけれど、きっといつかはセイシスがマクラーゲン公爵家を継ぐのよね。
そうなればセイシスともお別れか。
少し寂しいわね。
ちらりと横目でセイシスを見れば、たまたまセイシスも私を見ていたようで、その黒曜石の瞳と視線がぶつかる。
「ん? どうした?」
「ううん。アルテスもランベルトも自分の道を歩んでるでしょう? いつかはマクラーゲン公爵家はセイシスが継ぐのかな、って。そうしたらセイシスともお別れなのかなって考えてただけ」
マクラーゲン公爵家は我が国の最有力公爵家。
公爵と夫人は仮面夫婦だけれど、仕事に関してはものすごく有能なのよね。
そんな家を途絶えさせるなんてことはないだろうし、跡継ぎは必須だわ。
私の言葉に、セイシスがにんまりと嫌な笑みを浮かべる。
「何? 寂しいのか?」
「っはぁぁあっ!? んなわけないでしょ!? わ、私はセイシスなんていなくても、ちゃーんと生き残ってみせるんだからね!!」
「いや何で生死の問題になってんだよ……。お前ちょいちょい命の問題に持っていくな」
命の問題なんだよ、私にとってこの二度目の人生は。
生きるか死ぬか。
生まれた時からそれだけが私の人生のテーマだったんだから。
「安心しろ。俺はずっとお前の護衛騎士だよ」
そう言って頭に置かれた大きな手。
昔は私と同じくらいの小さな手だったのに、いつの間にか身長だけでなく手の大きさも一人でどんどん大きくなって。
「セイシス……。で、でもマクラーゲン公爵家は……?」
「んな小さいことお前は気にしなくていいの」
小さいか⁉
一国の大貴族の未来が小さいことなのか⁉
「お前は、この国の未来を、いや、それ以上に、自分の幸せのことを考えてろ。それがお前が考える一番大きなことだ」
私の幸せが……一番大きな、考えるべきこと?
国の未来よりも?
大貴族の後継よりも?
「っ、っふふ。何それ。そんなこと言うの、あなただけね、きっと」
「だろうな。でもいいだろう? 一人ぐらい、そんな奴がいても」
「ふふ、そうね。ありがとう、セイシス」
「どーいたしまして」
やっぱり気が楽だわ。
セイシスといると。
そう言えば一度目の人生、セイシスはどうしたのかしら?
全然覚えてないのよね、一度目のセイシスのこと。
私のそばを離れることのないセイシスが、みすみす私を殺させた。
まぁ、結婚したからセイシスもそばにいなかったのかもしれないけれど。
それでももし、セイシスがいてくれたなら、また違った未来だったのかしら?
私がそんな考えを浮上させた、その時だった。
コンコンコン──「リザ王女殿下。テレンシーです」
控えめに戸を叩く音の後に、しゃんとした低音ボイスが響いた。
テレンシー宰相?
どうしたのかしら?
「どうぞ」
私はセイシスと顔を見合わせて首をかしげながらも、入室を促すと、すぐに「失礼します」と断ってから、髪を後ろでなでつけた男性が部屋に入ってきた。
ポール・テレンシー宰相。
5年前、前宰相であった父の跡を継ぎ35歳という若さで宰相になったやり手の宰相で、厳格で公正な目からお父様やお母様からだけでなく城内での信頼は厚い。
父母とは同い年で幼馴染だからなのか、物言いも容赦ないのよね。特に父には。
「王女殿下、突然の訪問、失礼いたします」
「どうしたのテレンシー宰相。何かあった?」
彼が直接ここに来るのは珍しい。
何か火急の大切な伝達でもあったのかしら?
「リザ王女殿下の閨授業について、スケジュールが決まりましたのでお知らせに参りました」
「……」
「……」
「……」
ね……や……?
閨授業ぉぉおぉおおお!?
「ふふん。どうよセイシス!! 私、詐欺師の才能あるのかもしれないわ!!」
「アホか。お前一応王女だろうが」
いつもの如き容赦ない突っ込み。
何と言われてももういいわ!!
婚約者候補を退けられたならそれで!!
彼らと結婚さえしなければ、私はきっと生き残ることができる!!
それから求婚の言葉を私が聞くことができる相手を適当に探して結婚すれば、万事解決!! 多少愛がない結婚でも生き残ることができるなら良いわ!!
適当にやることやって世継ぎ作って隠居してやる!!
「で? 次の候補者は誰? もう誰が来ても適当にかわせる自信があるわ!!」
「あーそれだがな……残りのフロウ王子だが、今こちらに向かってきているから、来るにしても来週になりそうだ」
あ、そうか。
フローリアン王国はこの国から南に位置する少しばかり離れた国。
こちらにいらっしゃるとは言ってもなかなかすぐにとはいかないわよね。
「じゃぁ次はアルテスかしら?」
「アルテスも、今ちょうど騎士団の遠征で西の森に行っている。今週には遠征を終えて帰ってくるから、来週になるだろうな」
セイシスのマクラーゲン公爵家には、正妻の息子であるセイシスの他に二人の血のつながらない兄弟がいる。
その一人がセイシスの4つ下の異母弟のアルテス。
そしてもう一人は、セイシスの2つ上で異父兄であるランベルト。
正妻の長子であるセイシスはなぜか私の護衛騎士になってしまったし、アルテスは1年前に騎士団に入団して隊舎住まいになっているし、ランベルトは辺境の町で医者をしている。
皆それぞれの道を行っているけれど、きっといつかはセイシスがマクラーゲン公爵家を継ぐのよね。
そうなればセイシスともお別れか。
少し寂しいわね。
ちらりと横目でセイシスを見れば、たまたまセイシスも私を見ていたようで、その黒曜石の瞳と視線がぶつかる。
「ん? どうした?」
「ううん。アルテスもランベルトも自分の道を歩んでるでしょう? いつかはマクラーゲン公爵家はセイシスが継ぐのかな、って。そうしたらセイシスともお別れなのかなって考えてただけ」
マクラーゲン公爵家は我が国の最有力公爵家。
公爵と夫人は仮面夫婦だけれど、仕事に関してはものすごく有能なのよね。
そんな家を途絶えさせるなんてことはないだろうし、跡継ぎは必須だわ。
私の言葉に、セイシスがにんまりと嫌な笑みを浮かべる。
「何? 寂しいのか?」
「っはぁぁあっ!? んなわけないでしょ!? わ、私はセイシスなんていなくても、ちゃーんと生き残ってみせるんだからね!!」
「いや何で生死の問題になってんだよ……。お前ちょいちょい命の問題に持っていくな」
命の問題なんだよ、私にとってこの二度目の人生は。
生きるか死ぬか。
生まれた時からそれだけが私の人生のテーマだったんだから。
「安心しろ。俺はずっとお前の護衛騎士だよ」
そう言って頭に置かれた大きな手。
昔は私と同じくらいの小さな手だったのに、いつの間にか身長だけでなく手の大きさも一人でどんどん大きくなって。
「セイシス……。で、でもマクラーゲン公爵家は……?」
「んな小さいことお前は気にしなくていいの」
小さいか⁉
一国の大貴族の未来が小さいことなのか⁉
「お前は、この国の未来を、いや、それ以上に、自分の幸せのことを考えてろ。それがお前が考える一番大きなことだ」
私の幸せが……一番大きな、考えるべきこと?
国の未来よりも?
大貴族の後継よりも?
「っ、っふふ。何それ。そんなこと言うの、あなただけね、きっと」
「だろうな。でもいいだろう? 一人ぐらい、そんな奴がいても」
「ふふ、そうね。ありがとう、セイシス」
「どーいたしまして」
やっぱり気が楽だわ。
セイシスといると。
そう言えば一度目の人生、セイシスはどうしたのかしら?
全然覚えてないのよね、一度目のセイシスのこと。
私のそばを離れることのないセイシスが、みすみす私を殺させた。
まぁ、結婚したからセイシスもそばにいなかったのかもしれないけれど。
それでももし、セイシスがいてくれたなら、また違った未来だったのかしら?
私がそんな考えを浮上させた、その時だった。
コンコンコン──「リザ王女殿下。テレンシーです」
控えめに戸を叩く音の後に、しゃんとした低音ボイスが響いた。
テレンシー宰相?
どうしたのかしら?
「どうぞ」
私はセイシスと顔を見合わせて首をかしげながらも、入室を促すと、すぐに「失礼します」と断ってから、髪を後ろでなでつけた男性が部屋に入ってきた。
ポール・テレンシー宰相。
5年前、前宰相であった父の跡を継ぎ35歳という若さで宰相になったやり手の宰相で、厳格で公正な目からお父様やお母様からだけでなく城内での信頼は厚い。
父母とは同い年で幼馴染だからなのか、物言いも容赦ないのよね。特に父には。
「王女殿下、突然の訪問、失礼いたします」
「どうしたのテレンシー宰相。何かあった?」
彼が直接ここに来るのは珍しい。
何か火急の大切な伝達でもあったのかしら?
「リザ王女殿下の閨授業について、スケジュールが決まりましたのでお知らせに参りました」
「……」
「……」
「……」
ね……や……?
閨授業ぉぉおぉおおお!?
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