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第二章
魔王の魔石、ゲットだぜ!!
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内部の魔物は皆凶暴で、城内に入るなりに私に襲い掛かってきた。
ひっきりなしに押し寄せるそれをモーニングスターで討伐しながら進み、ようやく最上部。──魔王の部屋だ。
「うわぁ……」
「ぐるるるるううううう」
「ぐあぁぁぁぁぁぁああ」
やる気満々、ね。
すでに臨戦態勢に入った魔物たちが、よだれを垂らしながらこちらを睨みつける。
「仕方ない、やっちゃいます──か!!」
魔物の血で気持ちが悪いから早く終わらせたい。
駆けては飛び上がり、殴ってはぶっ飛ばし、時には光魔法をぶっ放す。
こんな凶悪な聖女がいていいのだろうか。
いや、それ以前に令嬢としてあってはならない姿だ。
まぁ、今ここにいるのは私だけだし、誰に見られているわけでもないから気にすることなく思いっきり行かせてもらおう。
私が次の魔物めがけてモーニングスターを振り上げた、その時。
「ティアラさん!!」
「へ?」
突然響いた、ここで聞こえるはずのない声に、思わず私は声のした方へと降りかえってしまった。
「アユムさん!?」
何で!?
え、書き置きは!?
まさか見なかったの!?
あ、見たから行き先がわかったのか……。
でも見たなら何で?
「ぐるるうぅうううううっ!!!!」
「!!」
しまった!! こっちに集中しなきゃなのに!!
私が振り上げていたもので倒すはずだった獲物がチャンスとばかりに襲い掛かる。
ここから反撃するのは不可能で、私はとっさに受け身を取ろうとモーニングスターを顔の前へ構えた。
「光の剣《ライトソード》!!」
「ぐあぁぁぁぁあああああ!!!!」
光の……剣……。
まっすぐに伸びて私を通り過ぎ、私に襲い掛かる魔物をひと突きにしたのは、びにょーんと伸びに伸びた光の剣。
これ、伸縮自在なの!?
「あ、ありがとうございます、アユムさん。でも何で……」
「説明は後。とりあえず残りを倒そう」
「ぐるるるうぅうぅうううう」
アユムさんの鋭い視線の先にはまだまだ臨戦態勢ばっちりでこちらを狙う魔物たち。
もーっ!! しつこいわね!!
仲間がこんなにやられてても向ってくるなんて、そういう癖《へき》でもあるの!?
「ティアラさん、行くよ!!」
「はいっ!!」
タンッ──!! と二人同時に地を蹴ると、私たちは武器を手に獲物めがけて駆けた!!
「はぁぁぁああああっっ!!」
「はぁっ!! くっ、たぁぁぁあああっ!!」
ザッシュザッシュと切って殴って大乱闘。
そのたびに血しぶきがかかって気持ち悪い。
早く終わらせて、早く魔石見つけて、早く帰ってお風呂に入るわよ!!
「とぅぁぁぁぁああああああああ!!!!」
ゴォォオオオオオオオオン──。
「ぐおぉぉおおおおおおお!!!!」
最後の一体を討伐して、二人乱れた息を整える。
「はぁっ、はぁっ……おわりました、ね」
「うん……っとりあえず、これで全部、みたいだね」
辺りを見回せば殺伐とした光景。
うん、見なかったことにしよう。
正当防衛よ、正当防衛。
「さて──と、魔石は……あった!!」
奥の玉座にポンと乗っている真っ黒い石。
すごい波動を感じる。
「ティアラさん?」
「これだわ……!! 私の求めていた魔王の魔石!! 早速鑑定してもらいにカナンさんの所に行かなきゃ!!」
魔石を取り扱う錬金術師には、元来鑑定のスキルが備わっているというし、きっとカナンさんならわかるはず。
きちんと鑑定してもらって、どんな能力がある魔石なのか正確に知っておかなきゃ。
そうと決まれば城下町へレッツゴーよ!!!!
「え、ちょ、ティアラさん!?」
私はアユムさんのことをすっかり忘れて、魔王城最上階の窓から城下町へと光の翼で飛び立った。
***
「す、すごいです、ティアラ様……」
ごくり、とのどをの鳴らしてカナンさんが震える手で漆黒の魔石を掲げる。
ここは城下町、カナンさんの実家である錬金工房の奥の応接室。
カナンさんは鑑定し終わると、汗をだらだらと流しながら、冒頭の言葉を発した。
「じゃぁ、やっぱり……?」
「はい。間違いなく、この魔石こそが魔王の魔石!! 魔力不干渉通信石です!!」
「!!」
やった……!!
やっぱりあの書物に描かれていたことは正しかったんだわ!!
カナンさんから魔石を受け取り、喜びをかみしめる。
「使い方は通信石と同じですから。もし使うんだったらこの部屋使ってください。私は店の方にいますから」
「ありがとう、カナンさん。助かりました」
ひらひらと手を振ってから、カナンさんはにっこりと笑ってから部屋を出て行った。
「魔力不干渉通信石?」
状況がいまいち吞み込めていないらしいアユムさんが首をかしげる。
あぁそうか、そういえばアユムさんには何も言ってなかったのよね。
それどころか魔王城に置いてけぼりにしてしまったことに今更ながらに猛省する。
「えっと、まず、さっきは置いていってしまってすみませんでした……。あまりの興奮につい……。じつはですね……。魔王の魔石が、魔力を介すことなく通信できる、魔力不干渉通信石だという書物を宝物庫で発見したんです」
「!! 魔力を……介すことなく……?」
「はい。その……それがあれば、魔力を持たないアユムさんのご両親とも繋がることができるんじゃないかと思って」
「俺の……ために……?」
呆然としてつぶやくアユムさんに、私は笑顔で彼の手に今日の戦利品をそっと手渡した。
「私のために世界を捨ててくれたあなたに、どうしても大切な人とのつながりをあきらめてほしくなかった。そしてできることなら、一週間後の結婚式は──あなたの大切な人たちにも見てもらいたい」
だって、私の大好きな人をこれまで大切に見守り育ててくれた人たちだもの。
“贄”に選ばれた時も一緒に逃げようとしてくれたアユムさんの家族。
皆、アユムさんが大好きだったんだと思う。
きっとアユムさんもそう。
「ティアラさん……」
「あなたが私のために何かを諦めなくちゃいけなかったのなら、できる限りそれを私が拾い上げてみせます。言ったでしょう? 必ず、あなたを幸せにするって」
本当に大切なものは諦めてほしくはない。
諦めるというなら、私が拾い上げるまでだ。
夫婦は二人で一人。
支えあうものだと思うから。
「思い浮かべて。あなたの、大切な人たちのこと」
「俺の……大切な人たち──」
じっと手の中のそれを見つめ、アユムさんが瞑目した、その瞬間──。
「きゃぁ!? 何!?」
「!? 歩!?」
目の前に、アユムさんによく似た男女が映し出された。
ひっきりなしに押し寄せるそれをモーニングスターで討伐しながら進み、ようやく最上部。──魔王の部屋だ。
「うわぁ……」
「ぐるるるるううううう」
「ぐあぁぁぁぁぁぁああ」
やる気満々、ね。
すでに臨戦態勢に入った魔物たちが、よだれを垂らしながらこちらを睨みつける。
「仕方ない、やっちゃいます──か!!」
魔物の血で気持ちが悪いから早く終わらせたい。
駆けては飛び上がり、殴ってはぶっ飛ばし、時には光魔法をぶっ放す。
こんな凶悪な聖女がいていいのだろうか。
いや、それ以前に令嬢としてあってはならない姿だ。
まぁ、今ここにいるのは私だけだし、誰に見られているわけでもないから気にすることなく思いっきり行かせてもらおう。
私が次の魔物めがけてモーニングスターを振り上げた、その時。
「ティアラさん!!」
「へ?」
突然響いた、ここで聞こえるはずのない声に、思わず私は声のした方へと降りかえってしまった。
「アユムさん!?」
何で!?
え、書き置きは!?
まさか見なかったの!?
あ、見たから行き先がわかったのか……。
でも見たなら何で?
「ぐるるうぅうううううっ!!!!」
「!!」
しまった!! こっちに集中しなきゃなのに!!
私が振り上げていたもので倒すはずだった獲物がチャンスとばかりに襲い掛かる。
ここから反撃するのは不可能で、私はとっさに受け身を取ろうとモーニングスターを顔の前へ構えた。
「光の剣《ライトソード》!!」
「ぐあぁぁぁぁあああああ!!!!」
光の……剣……。
まっすぐに伸びて私を通り過ぎ、私に襲い掛かる魔物をひと突きにしたのは、びにょーんと伸びに伸びた光の剣。
これ、伸縮自在なの!?
「あ、ありがとうございます、アユムさん。でも何で……」
「説明は後。とりあえず残りを倒そう」
「ぐるるるうぅうぅうううう」
アユムさんの鋭い視線の先にはまだまだ臨戦態勢ばっちりでこちらを狙う魔物たち。
もーっ!! しつこいわね!!
仲間がこんなにやられてても向ってくるなんて、そういう癖《へき》でもあるの!?
「ティアラさん、行くよ!!」
「はいっ!!」
タンッ──!! と二人同時に地を蹴ると、私たちは武器を手に獲物めがけて駆けた!!
「はぁぁぁああああっっ!!」
「はぁっ!! くっ、たぁぁぁあああっ!!」
ザッシュザッシュと切って殴って大乱闘。
そのたびに血しぶきがかかって気持ち悪い。
早く終わらせて、早く魔石見つけて、早く帰ってお風呂に入るわよ!!
「とぅぁぁぁぁああああああああ!!!!」
ゴォォオオオオオオオオン──。
「ぐおぉぉおおおおおおお!!!!」
最後の一体を討伐して、二人乱れた息を整える。
「はぁっ、はぁっ……おわりました、ね」
「うん……っとりあえず、これで全部、みたいだね」
辺りを見回せば殺伐とした光景。
うん、見なかったことにしよう。
正当防衛よ、正当防衛。
「さて──と、魔石は……あった!!」
奥の玉座にポンと乗っている真っ黒い石。
すごい波動を感じる。
「ティアラさん?」
「これだわ……!! 私の求めていた魔王の魔石!! 早速鑑定してもらいにカナンさんの所に行かなきゃ!!」
魔石を取り扱う錬金術師には、元来鑑定のスキルが備わっているというし、きっとカナンさんならわかるはず。
きちんと鑑定してもらって、どんな能力がある魔石なのか正確に知っておかなきゃ。
そうと決まれば城下町へレッツゴーよ!!!!
「え、ちょ、ティアラさん!?」
私はアユムさんのことをすっかり忘れて、魔王城最上階の窓から城下町へと光の翼で飛び立った。
***
「す、すごいです、ティアラ様……」
ごくり、とのどをの鳴らしてカナンさんが震える手で漆黒の魔石を掲げる。
ここは城下町、カナンさんの実家である錬金工房の奥の応接室。
カナンさんは鑑定し終わると、汗をだらだらと流しながら、冒頭の言葉を発した。
「じゃぁ、やっぱり……?」
「はい。間違いなく、この魔石こそが魔王の魔石!! 魔力不干渉通信石です!!」
「!!」
やった……!!
やっぱりあの書物に描かれていたことは正しかったんだわ!!
カナンさんから魔石を受け取り、喜びをかみしめる。
「使い方は通信石と同じですから。もし使うんだったらこの部屋使ってください。私は店の方にいますから」
「ありがとう、カナンさん。助かりました」
ひらひらと手を振ってから、カナンさんはにっこりと笑ってから部屋を出て行った。
「魔力不干渉通信石?」
状況がいまいち吞み込めていないらしいアユムさんが首をかしげる。
あぁそうか、そういえばアユムさんには何も言ってなかったのよね。
それどころか魔王城に置いてけぼりにしてしまったことに今更ながらに猛省する。
「えっと、まず、さっきは置いていってしまってすみませんでした……。あまりの興奮につい……。じつはですね……。魔王の魔石が、魔力を介すことなく通信できる、魔力不干渉通信石だという書物を宝物庫で発見したんです」
「!! 魔力を……介すことなく……?」
「はい。その……それがあれば、魔力を持たないアユムさんのご両親とも繋がることができるんじゃないかと思って」
「俺の……ために……?」
呆然としてつぶやくアユムさんに、私は笑顔で彼の手に今日の戦利品をそっと手渡した。
「私のために世界を捨ててくれたあなたに、どうしても大切な人とのつながりをあきらめてほしくなかった。そしてできることなら、一週間後の結婚式は──あなたの大切な人たちにも見てもらいたい」
だって、私の大好きな人をこれまで大切に見守り育ててくれた人たちだもの。
“贄”に選ばれた時も一緒に逃げようとしてくれたアユムさんの家族。
皆、アユムさんが大好きだったんだと思う。
きっとアユムさんもそう。
「ティアラさん……」
「あなたが私のために何かを諦めなくちゃいけなかったのなら、できる限りそれを私が拾い上げてみせます。言ったでしょう? 必ず、あなたを幸せにするって」
本当に大切なものは諦めてほしくはない。
諦めるというなら、私が拾い上げるまでだ。
夫婦は二人で一人。
支えあうものだと思うから。
「思い浮かべて。あなたの、大切な人たちのこと」
「俺の……大切な人たち──」
じっと手の中のそれを見つめ、アユムさんが瞑目した、その瞬間──。
「きゃぁ!? 何!?」
「!? 歩!?」
目の前に、アユムさんによく似た男女が映し出された。
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