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第一章
間違えた選択
しおりを挟む「──さて、アユムさん、私これから五層にいってきますね」」
六層に行くにはまず五層を一掃させねばならない。
一人で勝手に行ってはまた心配をかけてしまうので、今回は先に言っておく。うん、私えらい。
「……俺も行きます」
「!? で、でも、レイナさんたちが──」
「守さんもいますし、大丈夫です」
大丈夫って……。
そもそもマモルさんって戦えるんだろうか?
アユムさんがいた方がきっとレイナさんもカナンさんも安心なんだと思うのだけれど……。
「えぇー!! 私、歩君についていくっ。守さんじゃ心許ないもん」
「あ、それに関してはあたしもそう思う。だってマモル、めちゃくちゃ弱そうじゃん」
「おい……」
剣を持っている分、アユムさんの方が強そうなのは確かだ。
だけど装備なしで言うとマモルさんの方ががっちりとした体格的に強そうなのだけれど……これが乙女フィルターというものなんだろうか。
「ね、皆で行こう。そのほうが色々食材とか持って帰られるでしょう?」
「そうそう。アユムのかっこいいとこ見たいし」
ワイワイと行く気満々のレイナさんとカナンさんに、アユムさんは僅かに眉間に皺を寄せてから「ダメだよ。危ないから」と拒否した。
あの魔物の量と強さだ。
流石に危険だから、致し方ないだろう。
「えぇー……」
「ぶー……」
あぁ……へそ曲げちゃった。
だけど私は見逃さなかった。
二人の口元が僅かに弧を描いていたのを。
二人とも、毎日置いてけぼりで待っているだけだから退屈なのだろう。
アユムさんのかっこいい姿を見たいのもあるのだろうが、気分転換したいのかもしれない。
「……アユムさん、やっぱり連れて行きましょう」
「ティアラさん!?」
信じられない、と言った表情でこちらを見るアユムさんに、私は続ける。
「黙ってついてこられて危険になるよりは、最初からいるつもりでいた方がマシです。私が二人についていますから」
あらかじめいることがわかっていた方が守りやすい。
「ティアラさん……。……わかりました。そこまでいうのなら」
「ありがとうございます、アユムさん」
渋々ながら了承の意を示したアユムさんの背後で、小さくガッツポーズをする二人に苦笑いして、私は「レイナさん、カナンさん、決して勝手な行動はしないでくださいね」と念を押す。
「はーい」
「わかりました!!」
二人とも我の強い子たちだけれど、基本素直だ。
良い意味でも、悪い意味でも。
とりあえずその返事を信じて、いつも以上に気を集中させていくしかない。
「さ、行きましょうか!!」
私たちは第五層へと向かった。
そして私は、この判断がすぐに間違っていたことを思い知る。
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