上 下
21 / 63
第一章

王の帰還、そして采配

しおりを挟む
「ミモラ!!」
「ごきげんよう、お姉様。あらまぁ、随分仲間が増えたのね。まぁいいわ、そこの新しい子達、お姉様の足手纏いにはならないようにね」
 変わらぬシスコン具合に私は苦笑いし、レイナさん達は顔を強張らせた。

「お姉様、陛下が帰ってきたわ」
「!!」
 ついに戻られたのね……。

「それで、陛下は此度のこと、何と?」
 私が尋ねると、ミモラは眉を顰めて息をつき、お父様が難しい表情で口を開いた。

「大変驚かれていたよ。勇者殿のことに関しても、ちょうど聖ミレニア国の国王の訃報を受けたばかりで、弔問準備の忙しい最中、王女が勝手に行ったこと。それを知らぬまま聖ミレニア国へと出国されたのだ驚くのも無理はない。王女も王太子も、三日間の謹慎という“大っ変”厳しい処分を言い渡されたよ」
 皮肉めいた言い方をしたお父様に私は「三日ぁぁあ!?」と思わず声を上げた。

 たったの三日なの!?
 甘くない!?

 単なるわがままで、魔王を倒してくれた勇者様を追放しておいて。
 浮気した上、冤罪ふっかけて聖女認定された伯爵令嬢を追放しておいて。
 三日!?

「アユムさん……」
「はい……。俺たちの命って……三日分で済むんですね……」
 二人、ずしんと重い表情で頬を引き攣らせる。

「陛下は、追放されたのは聖女かも怪しい聖女だったからだとおっしゃった。王族を欺き続けていたのだから、致し方ない──と……」
 お父様が虚空を睨みつける。

 冤罪で追放しておいて致し方ない!?
 そんなの有り!?

「あの……それで、城は無事ですか?」
 そんなことを言われてお父様がやらかさないはずがない。
 まだ牢に入れられてはいないということは、やらかす前にまたお母様が止めてくれたのだろうか?

「無事よ。城も、プレスセント伯爵家もね。お父様がキレ出す前に、珍しくお母様がキレちゃって、私とお父様でお母様を取り押さえたのよ」
「お母様が!?」
 温厚で、いつもは止める側のお母様なのに!?

「“私の娘は、常に聖女であろうと努力を惜しまなかった、心の優しい、聖女らしい娘だ。侮辱することは許さない”──ってね。興奮状態にあったから、お父様が魔法で眠らせて、今部屋で休んでるわ」
「お母様……」
 だからこの場にお母様がいなかったのか。

「私もミモラも同じ気持ちだよ。ティアラ、もういつでも出て来ればいい。すぐにでも魔法ロープを持って迎えに行こう。追放され、死んだとされたお前が生きていることを知った時のあの愚か者どもの顔は、見ものだろうな」

 悪い顔でニタリと笑ったお父様。
 イケおじは悪い顔をしても様になる。
 あらためて、私は本当に家族に恵まれたのだと感じる。
 私のことを信じて、愛してくれる父母、そして妹の元に転生してきて、本当に良かった。

「ありがとうございます、お父様。でも、もう少し待ってください。とりあえず“ヨミ”のボスを倒して彼らを元の世界に戻したら、そちらに戻りますね」

 まずはアユムさん達を元の世界に帰さないと。
 それと、カナンさんも、街に送って行ってあげなければ。
 喧嘩をしたとはいえ、ご両親は心配されているでしょうし。

「あぁ。わかった。終わったら連絡をおくれ。すぐに迎えにいくから。くれぐれも、無茶はせんように」
「勇者様、お姉様のこと、お願いしますね!!」
 ミモラの言葉に、アユムさんをチラリと見上げると、彼は深く頷いてから「任せてください」と返した。

「ティアラさんは、俺が守ります」
「アユムさん……」

 二人はそんなアユムさんに満足げに頷くと「では、また」と微笑んで通信は切れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...