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第一章
ダンジョン飯、最高ぉぉぉぉお!!
しおりを挟むぐぅぅぅぅぅ~~~~……。
洗いたての服に身を包んだ私は、テントの中で一人、腹に住む邪悪な虫と戦っていた。
「……お腹すいた……」
アユムさんは今、泉で身体を清めに行っている。
今度は私が見張りと洗濯をするから、と申し出たが、自分でやると言って聞かなかった。
挙げ句の果てには「テントの中で大人しく、いい子で待っていてくださいね」と念を押された。
オカンだ……。
にしても──。
ぐぅぅぅぅぅ~~~~……。
やっぱりお腹すいた……。
でもあとどのくらいここにいなければいけないかもわからない今、あまり飴を使いすぎてもいけないし……。
ここはやっぱり、何か食料を探すしかないか。
テントの中にあったであろう食料は食い荒らされた跡があった。
おそらく魔物が食い荒らしていったのだろう。とても食べることはできない。
保存食はあったけれど、やっぱり少ししかない貴重な食料はとっておきたい。
食物連鎖ってやつなのかしらね。
食料をとって食べる人。
人や人がとった食料をも食べる魔物。
魔物を食べる──人?
食べる? 魔物を……?
「!! そうだわ!!」
魔物の肉を焼いて食べればいいのよ!!
この国ではそんな風習はないけれど、同盟国である聖ミレニア国では魔物も貴重な資源。
食べても害のないものや、調理の注意点が書かれた書物を以前読んだことがある。
今日倒した一角兎《ホーンラビット》の肉なんて、プリプリしていてとってもおいしいと書いてあったし、ちょうど炎の魔石もあることだし、やって見る価値はある──!!
焼くのはアユムさんに任せるとして、捌くのだけはやっておきましょ。
私はテントから出ると、さっき魔物を倒した場所へと一角兎《ホーンラビット》の回収に向かった。
「ただいま戻り──って何してんですか!?」
「あ、お帰りなさい」
泉から帰ってきたアユムさんは、テントに入るなり大声を上げた。
それもそうだ。
目の前では一角兎《ホーンラビット》が綺麗に捌かれ、処理され、原型を留めない姿でまな板の上に並んでいるのだから。
テントの中に包丁やまな板があってよかったわ。
おかげでとっても綺麗に捌くことができた。
それに、前世でお母さんに料理を教えてもらっておいてよかった。
根っからのこの国の貴族だったら、血を見た時点で卒倒して、捌くなんてできなかっただろうから。
「アユムさん、肉は捌いたので炎の魔石で焼いていただけますか? 一応、あった調味料で下味はつけてみたので、美味しくいただけるはずですから。私、ちょっと泉で手とタオルを洗ってきますね」
私は胸元に挟んでエプロン代わりにしていたタオルを掴むと、再び泉のある二層へと向かった。
「あ、ちょ、ティアラさん!?」
二層から戻った私をまっていたのは、テントから漂う香ばしい良い匂い。
「焼肉……!! アユムさん!!」
「ティアラさん、お帰りなさい」
そう言って迎えてくれたアユムさん。
目の前のテーブルの上にはお皿に盛り付けられた焼肉たち。
じゅるり……。
「美味しそうに焼けましたね!! さすがアユムさんです!!」
「ティアラさんが綺麗に捌いてくれていたおかげですよ」
うっ……このしごできオカンめ。
「さ、座ってください。今お水用意しますから」
そう言うとアユムさんは、洗ったコップを二つ用意し、汲んでいた飲水を注いでいった。
オカン……いや、妻だ……。
甘やかそうとしていたはずが逆に甘やかされている気がするんだけど気のせいかしら。
「すっごく美味しそうです。食べましょう、アユムさん」
「はい。そうですね」
私たちは二人微笑み合うと、同時に手を合わせ、そして「いただきます」と食前の挨拶をした。
前世からの癖で今世でもこれだけは外せない。
公の場ではできないが、家ではいつも食前はこの挨拶をしていた。
まさか再び、誰かとこのあいつをすることができるだなんて。
「はむっ。ん~、美味しいっ!!」
「本当ですね!! プリプリしていて、味もしっかり塩胡椒が効いていて美味しいです」
あぁ……ダンジョン最高……!!
でも早いうちに全部処理しないと、腐ってしまうわね。
「後のお肉はどうしましょう。氷魔法か氷の魔石でもあれば保存もできますけど、ないですし……」
「そうですね……」
二人同時に俯き少し考えてから、アユムさんが再び顔をあげた。
「それなら、炎の魔石で燻製にして、干し肉にしましょう。そうすればもう少し長く保存できます」
「!!」
天才か……!!
「そうですね!! 早速食後、また一角兎《ホーンラビット》をとってきますね!! 今はとりあえず──」
「はい。食事を楽しみましょう」
そして私たちは、ダンジョン焼肉をお腹いっぱい食べたのだった。
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