初恋―ある連続猟奇殺人犯の告白―

柴咲もも

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第二章

合鍵①

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 街がクリスマスの準備で賑わう季節になった。
 聴き慣れた定番のクリスマスソングが流れる遊歩道をのんびりと歩きながら、俺は携帯の待ち受け画面を確認した。
 バイトの時間まではまだ余裕がある。駅前のデパートに寄って、彼女へのクリスマスプレゼントを下見しておくのも悪くないか。
 そんなことを考えて、駅の改札前を通り過ぎた。

 あのあと、俺と彼女は正式に付き合うことになった。友達の振りをするのではなく、恋人として傍にいようとふたりで決めた。
 今はまだ婚約者がいるけれど、近いうちに俺のことを両親に話して認めてもらうつもりだと、あの夜、俺の部屋を去る前に、彼女は言っていた。
 もしも本当に両親に認めてもらえるなら、それ以上望むことは何もない。でも、彼女の両親は絶対に反対するはずだ。
 そんなことを考えて渋った俺に、彼女は毅然として言った。

「これまでは、ただ恋をしてみたいから、見ず知らずの相手と結婚なんてしたくないと思っていただけでしたけど、今は違います。わたしには大切な人が——傍に居て欲しい人がいるんだって、父と母にちゃんと伝えます」

 彼女の曇りのない真っ直ぐな瞳を見てしまったら、それ以上何も言えなくて。結局、俺はそのまま彼女を見送ることしかできなかった。

 彼女が両親に話をしたという報告はまだない。けれど、例え両親に反対されたとしても、俺達が別れることは決してない。
 俺はそう信じていた。

 駅前のデパートの一階は、フロア面積の半分がアクセサリーを取り扱う有名店のテナントだった。
 俺と同年代かそれ以上のカップルで混み合う店内で、野郎一人でアクセサリーのショーケースを眺めるなんて気が引けると思っていたものの、時期的に同じような状況の人も多いようで、俺の他にも同じような男性客がちらほら居た。
 付き合いたてでいきなり指輪のプレゼントは重いかと考えて、俺は手頃なネックレスに目を付けた。ショーケースには色々な花をモチーフにしたデザインのものが並べてあり、ご丁寧に花言葉の解説までつけられていた。
 愛を誓うものや、相手を求めるもの、この身を捧げるといった意味を持つものなど、プレゼントに好まれる花はたくさんあるようだったけど、俺が興味を引かれたのは、紫の小花ライラックを模ったペンダントだった。

「……いいんじゃないかな」

 ネックレスを身につけた彼女の姿を思い浮かべ、誰にともなく呟いて、俺は店員に声をかけた。

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