初恋―ある連続猟奇殺人犯の告白―

柴咲もも

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第一章

友達①

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 一週間近く続いたリハビリを終えて、俺は退院することになった。
 家族と呼べる人間はいなかったため、一人でひっそりとこの病院を去るつもりだったが、ノブアキがわざわざ迎えにきてくれると言うのでお言葉に甘えてみた。
 そういえば入院中、誰も見舞いに来なかったのに下着やタオルの替えに困ることがなかった。普通なら家族が持ってきてくれたりするんだろうけど、当然俺にはそんなことをしてくれる家族はいなかった。
 てっきり病院から支給されているような気分でいたけど、入院中なに不自由なく居られたのは、あの金持ち夫婦のおかげだったのかもしれない。だからと言って、感謝しようとも思わなかったけど。
 入院中に与えられた服やタオルは持ち帰らないことにした。この病院に運び込まれた日に着ていた服は血まみれでどうしようもなく処分してしまったので、俺はノブアキに着替えを頼み、病室で迎えを待つことにした。
 都心にある病院とはいえ、広い敷地内には樹々が青々と茂っているため、窓の外はわりと良い眺めだった。天気が良いからか、患者衣のまま庭で寛ぐ人の姿も多かった。
 窓枠に肘をついて窓の外を眺めていると、真下から誰かに声をかけられた。

「なにを見ているんですか?」

 女の子の声だった。
 窓の真下を見ると、どこかで見た顔の女の子が黒目がちの瞳で俺を見上げていた。
 背中にかかる長さの、少し赤みのある濃い色の髪の、高校生くらいの女の子だった。松葉杖を片手に患者衣を着ていて、おそらくこの病院に入院しているようだった。

「別になにも……悪くない景色だなって思ってただけだよ」

 俺が答えると、彼女は嬉しそうに笑ってもう一度俺に言った。

「そっちに行ってもいいですか?」

 良い返事を期待しているらしい。彼女は瞳をキラキラと輝かせて、俺の返事を待っていた。
 同室に他の患者はいなかったけど、俺の部屋は個室じゃなかった。病室でぼそぼそと話をするのも気が引けたから、俺が外に出ることにした。

「俺がそっちに行くよ」

 他の誰かが相手だったら断っていたと思う。だけど、なぜだかわからないけど、俺も彼女と話がしてみたいと思った。
 階段を早足で駆け下りて、俺は彼女のところに向かった。

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