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ジャクリーン・ネイヴィン著「眠れる美女」ハーレクイン文庫

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 放蕩者の伊達男が財産目当てで裕福な貴族の娘と結婚するお話。

 賭博で借金をしたヒーローが北の領地に結婚もしていない大金持ちの美女がいるという噂を聞いて求婚しに向かいます。ふたりは出会うなり険悪な仲になりますが、ヒロインの父が彼の求婚を認めたために、険悪な仲のまま婚約することになります。
 物語の中盤までは、ふたりが出会い、短い婚約期間を経て結婚して、出会いから数ヶ月のあいだに惹かれあっていく様子が丁寧に描かれます。ヒロインのツンデレのツンの部分が小気味よく、ヒーローが財産目当てで結婚したはずだったのにやたらとヒロインを気にかけてしまってモヤモヤする様子にニヤニヤしてしまいました。
 中盤でお互いの気持ちに誤解を抱えたままふたりは結ばれますが、このあたりからヒロインの身の回りで不可思議な出来事が起こり始めます。恐怖と不安で病んでいくヒロインを前に、ヒーローは彼女を守りたい、支えになりたいと思いながらも、彼女の過去について何も知らないことに気付き、歯がゆい思いをします。厩が火事になり、亡くなったヒロインの母の部屋が荒らされて、さらには殺人が起きて…
 後半はミステリーっぽい展開で、中盤までのラブロマンスを楽しんでいた身としてはちょっと物足りないというか「違う、そうじゃない」という感じがしないでもなかったのですが、ラストは無事にラブラブハッピーエンドで読後感は良かったです。
 というか、途中まで真犯人が云々というよりもヒロインが本当に病んでいて狂っていく話なのかと思ってなんかすごく不安で読んでて辛かったというか。だから、真犯人がいて、ヒロインは病んでいたわけではなくて普通の幸せを手に入れることができた。それだけで「よかった…本当に良かった…」ってなって「細かいことはどうでもいい、いちゃラブ万歳!」ってなってしまいました。
 ひとつ前に読んだ「ささやかな背徳」もそうですが、この作者さんの作品はヒロインがとにかく可愛いくて読んでてとても楽しいです。ヒーローとヒロインの人柄に魅力があると細かいことなんてどうでもよくなるんだな、としみじみ思いました(笑)
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