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ミッション・コンプリート

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 少しの間のあと、フェルディナントがぎこちなく口を開く。

「アレクシア嬢。その……それは、自分は構いませんが。ブリュンヒルデさまは……」
「結構ですよ、アレクシア。『お母さま』だろうと『母上』だろうと『お母ちゃん』だろうと、あなたの好きにお呼びなさいな」

 やたらとキリッとした顔で言うブリュンヒルデの背中を、フェルディナントがとんとんと叩く。

「落ち着いてください、ブリュンヒルデさま」
「……えぇ。私としたことが、少し動揺してしまったわ」

 ふぅ、と息をつき、彼女は改めてアレクシアを見た。

「アレクシア。さっそくの前言撤回で申し訳ないのだけれど、やはり『お母ちゃん』だけはやめておいてちょうだい」
「はい。了解いたしました」

 そのとき、フェルディナントが残念なものを見る目をブリュンヒルデに向けていたのは、たぶん気のせいではないだろう。
 なんにせよ、このふたりが協力的であるのはありがたい話である。アレクシアは、さりげなく周囲の様子を確認したあと、改めてフェルディナントを見上げた。

「それでは、フェルディナントさま。認識阻害の魔術を解除していただけますか?」
「はい。我々は状況を見ながら適当に話を合わせますので、ご自由に振る舞っていただいて結構ですよ」

 穏やかにほほえんで応じるエッカルトの英雄が、頼もしすぎる。

(うむ。将来、ウィルフレッドに可愛い娘が生まれたなら、こういう立派な男性に嫁がせたいものだ)

 そんな妄想をしている間に、フェルディナントがなんの痕跡も残さずに認識阻害の魔術を解除した。その鮮やかさに感心していると、ウィルフレッドが声を低めて囁いてくる。

「アレクシアさま。エイドリアンさまがお越しです」
「わかっている。――我が父ながら、相変わらず貧相な男だな」

 反射的に顔をしかめそうになりながら、アレクシアはごく小さな声でぼそりと応じた。
 ウィルフレッドの言うとおり、会場の入り口に現れたのは、煌びやかな装いをしたアレクシアの父親と、その婚約者だ。久しぶりに直に見るエイドリアンは、おそらく世間一般的には『色男』と呼ばれるに相応しい外見の持ち主なのだろう。中年に差し掛かってもなおしなやかな体つきに、人目を引く華やかな美貌。王都の洗練された貴婦人たちから、絶大な人気を誇っているというのもわからなくはない。

 しかし、あんな薄っぺらで体幹のしっかりしてない体では、護身用の短銃型魔導武器でさえ、撃ったときの反動で簡単にひっくり返りそうだ。
 仮にも次代のスウィングラー辺境伯が、あれほどなよなよした頼りない姿をしているとは恥さらしな、と思っていると、頭上で「ごふっ」という奇妙な音がした。見れば、口元を押さえたフェルディナントが、微妙に顔を逸らしている。
 アレクシアは、首をかしげた。

「フェルディナントさま。どうかなさいましたか?」

 彼女の問いかけに答えたのは、ブリュンヒルデだ。

「大丈夫ですよ、アレクシア。何も問題ありません。少々、むせてしまっただけです」

 そうですか、とうなずき、アレクシアは自分たちに向けられるエイドリアンや周囲の人々の視線に気づかないふりをして、にこりとほほえむ。

「お母さま。フェルディナントさま。お祝い申し上げるのが遅くなってしまい、申し訳ありません。このたびは、ご結婚おめでとうございます。おふたりのご多幸を、心よりお祈りいたします」

 一瞬瞳を揺らしたブリュンヒルデが、その作りものめいて麗しいかんばせに、輝くような笑みを浮かべる。ちょっと、眩しい。

「ありがとう、アレクシア。あなたに祝福していただけるのが、私にとって何よりの喜びです。たとえどなたの妻になろうと、私があなたの母であることは変わりません。何か困ったことがあれば、いつでも頼ってくるのですよ」

 ブリュンヒルデのアレクシアに対する援助宣言に、周囲の空気が変わった。――エッカルト国王の異母妹にして、英雄の妻となった彼女の庇護があるとなれば、貴族社会におけるアレクシアの商品価値はかなり高いものとなる。
 それを受け、ひとつ咳払いをして喉の調子を整えたらしいフェルディナントが、低く柔らかな声で言う。

「丁寧なお祝いをありがとうございます、アレクシア嬢。自分はあなたのそばから母君を奪うことになってしまいましたが、こう考えていただくことはできませんか? ――あなたは母を失ったのではなく、もうひとりの父を得たのだと」
「フェルディナントさま……」

 英雄と呼ばれる男性は、さすがに仕事が速く的確だ。アレクシアが感心していると、フェルディナントは重ねて告げた。

「あなたは本当に、ブリュンヒルデさまのお若い頃によく似ていらっしゃる。恥ずかしながら、自分は若い頃から、ブリュンヒルデさまに似た娘に『お父さま』と呼んでもらうのが夢だったのですよ。もしよろしければ、あなたにその夢を叶えていただきたく思うのですが、いかがでしょう?」

 おまけに、『ブリュンヒルデへの純愛を貫いた英雄』という、本人にとっては不本意極まりないに違いない設定まで、見事に利用してくる。彼の部下となった者は幸せだな、と思いながら、アレクシアは可憐な仕草で小首をかしげた。

「わたくしなどが、フェルディナントさまのようなお若く凜々しい殿方を『お父さま』と呼んでも、本当によろしいのでしょうか」
「もちろんですとも。古来より、可愛らしい娘にそう呼ばれて喜ばない父親はおりません」

 ――エッカルトの英雄たるフェルディナントの、父親になりたい宣言。
 これでもう、この国の誰もアレクシアを『祝福されない婚姻により生まれた娘』などという、不名誉な呼び方はしないに違いない。主君の短慮の尻拭いをキッチリしようという、フェルディナントの心意気には感嘆するばかりだ。
 アレクシアは、いかにも喜びを抑えきれないというように愛らしい笑みを浮かべ、明るく弾む声で応じる。

「ありがとうございます、フェルディナントさま……いえ、お父さま。それでは、わたくしのことはアレクシア、と呼んでいただけますか?」
「はい、喜んで。――アレクシア」

 ちなみにアレクシアは、これまで実の父親を『お父さま』と呼んだことはない。……想像するだけで、気分が悪くなった。
 その当人であるエイドリアンが、婚約者とともに近づいてくる。その姿を視界の端に捉えながら、彼女は改めて気合いを入れ直す。

(よし。これからが本番だぞ。がんばれ、わたしの演技力!)

 エイドリアンとその婚約者は、巷で語られている美談が正しいものであったことを明確にするため、フェルディナントとブリュンヒルデに挨拶しにきたのだろう。アレクシアが彼らと親しげに談笑していたことで、その輪の中に加わればより一層互いの円満ぶりをアピールできると考えたのかもしれない。

 だが、それは考えが甘すぎるというものだ。
 アレクシアは、エイドリアンが声をかけてこようとした寸前、フェルディナントとブリュンヒルデに笑顔で一礼する。

「それでは、お父さま、お母さま。今日は、おふたりにご挨拶できて本当に嬉しゅうございました。いつかまたお会いできる日まで、どうぞご健勝でいらしてくださいませ」
「あぁ。きみたちも、元気でいるんだよ。アレクシア。ウィルフレッド」
「こちらこそ、あなた方とお話ができて楽しかったですよ。ふたりとも、どうか元気でいてくださいね」

 ふたりの気遣いにウィルフレッドともども謝意を述べ、踵を返したアレクシアは、そこではじめてエイドリアンと婚約者の存在に気づいた素振りで目を瞠る。
 その場に立ち尽くした彼女に、エイドリアンがいかにも機嫌よく笑って声をかけてきた。

「やぁ、アレクシア。ヴァルツァー殿と、随分仲よくなったようだね。けれど、まだ三十歳にもならない彼をきみが『お父さま』と呼ぶのは、少々お気の毒ではないかな」

 ただの軽口のようだが、そこにはフェルディナントに対する若造呼ばわりと、アレクシアに対する『自分を差し置いて、あまり彼と親しくするな』という牽制がこめられている。つくづく、器の小さな男だ。
 アレクシアは社交用のにこやかな笑みを浮かべ、エイドリアンに対して深く一礼する。そして、よく通る澄んだ声で彼女は言う。

「お初にお目にかかります、エイドリアンさま。不肖の身ながら、こうして次期スウィングラー辺境伯たるお方にご挨拶できたこと、心より嬉しく存じます」

 その瞬間、エイドリアンの顔が盛大に引きつった。
 だが、アレクシアが彼と言葉を交わすのは、正真正銘これがはじめてである。挨拶としては、まったく間違っていない。

(ブリュンヒルデさまが、別邸に籠もっていてくださってよかったな。わたしが密かにあちらへ挨拶へうかがったことがあったと言っても、誰にも真偽をたしかめようがないのだから)

 一方、エイドリアンの乱れた生活は、とても未成年の少女が近づけるようなものではなかった。この場に集う招待客たちの多くは、その事実を知っているだろう。周囲の空気が、若干微妙なものとなる。
 アレクシアは、無邪気な笑顔で彼の隣に寄り添う女性を見た。

「ごきげんよう。エイドリアンさまの婚約者の方でいらっしゃいますか? わたくしは、アレクシア・スウィングラーと申します。どうぞ、お見知りおきを」

 たとえエイドリアンと婚約していようと、今の彼女は男爵家の娘に過ぎない。『格上』のアレクシアから声をかけても、問題はない。
 女性はひどく驚いた素振りをしたあと、すがるようにエイドリアンを見上げる。アレクシアは、あやうく社交用の笑顔が崩れそうになった。

(おい、ちょっと待て。娘のような年のわたしを相手に、まともに挨拶もできないのか?)

 彼女の前にいる茶色の髪と瞳をした女性は、ほっそりとした体つきに、これといった特徴のない平凡な顔立ちをしていた。どこか不安げなおどおどとした態度は、他人からの悪意を受け流すのに慣れていないのだろうことを感じさせる。
 とてもではないが、国一番の放蕩者と呼ばれたエイドリアンの愛人から、その正妻に成り上がった女性には見えない。そんな覇気を、まるで感じられないのだ。
 そう思ったところで、アレクシアはふと納得してうなずいた。

(なるほど。これが、男の庇護欲を誘う生存戦略として正しい態度というわけか。ひとつ勉強になったな)

 両手をぽんと打ち合わせたくなったが、今はそんなことをしている場合ではない。困惑した表情を浮かべ、エイドリアンを見る。

「エイドリアンさま。そちらの方は、あなたの婚約者ではないのですか?」
「い……いや。こちらは、ダフニー・ケンブル。もうじき、僕の妻となる女性だよ」

 まぁ、とアレクシアはほほえむ。

「やはり、そうでしたか。エイドリアンさま、ダフニーさま。ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう、アレクシア」

 定型的な祝いの言葉に、エイドリアンがここぞとばかりに艶やかな笑みを浮かべる。その笑顔の魅力に、火遊びの好きな貴族女性ならばうっとりとするのかもしれない。実際、ダフニーがとろけきった眼差しを婚約者に向けている。

 だがそんなエイドリアンの笑顔も、不本意ながら彼の血を分けた娘であるアレクシアに対する攻撃力は、まったくのゼロだ。
 さめた目で状況を検分している彼女に対し、自身の魅力に絶対の自信を持っているらしいエイドリアンは、完全に油断しきっているようだ。

 ――攻めるなら、今か。アレクシアは、笑みを深めて彼に問う。

「エイドリアンさま。あなたにお会いしたら、ぜひお尋ねしたいことがあったのです。よろしいでしょうか?」
「あぁ。もちろんだよ、アレクシア」

 ありがとうございます、と応じ、彼女は小首をかしげた。

「ずっと、不思議だったのです。お母さまは、貴族女性の義務としてわたくしを――家の跡継ぎとなり得る子をもうけたのちは、お父さまを想ってひとり別邸で過ごしていらした。けれど、エイドリアンさまはわたくしが遠くからお姿を拝見するたび、いつも違う女性を伴っていらしたでしょう。なぜ、ダフニーさまを事実上の妻としてお連れにならなかったのですか?」
「そ……っ」

 エイドリアンが、奇妙な声をこぼして黙り込む。
 無垢な少女の問いかけという形で、「テメェのような下半身ゆるゆるのゲス野郎が、純愛だと? ふざけたことを言ってんじゃねェぞ」と言ってやるのは、ちょっと楽しい。
 相手が隙を見せたなら、叩けるだけ叩いて徹底的に潰す。それが、戦場で生き抜くための最善だ。アレクシアは、機を逃さずに重ねて問うた。

「ダフニーさまには、わたくしより年長のご子息と、わたくしと同い年のご息女がいらっしゃるとうかがいました。そうやってダフニーさまと愛する家族を得ていたのですから、エイドリアンさまがお母さまやわたくしを疎んじられるのは、仕方のないことだと理解できます。けれど、もしわたくしの愛する殿方が、ほかの女性と親しく過ごしたらと思うと――そのようなことを想像するだけで、辛くて悲しくて胸が潰れそうになるのです。エイドリアンさまは、なぜダフニーさまを苦しめるようなことをなさったのでしょう?」

 答えはない。エイドリアンの顔色は、アレクシアが何か言うたびどす黒くなったり真っ青になったりと、実に忙しい有様になっている。ここが王室主催の園遊会の場でなければ、アレクシアにつかみかかるか、暴言のひとつでも吐いていたかもしれない。

 ふと見れば、ダフニーがひどく複雑そうな表情でアレクシアを見ている。思わず笑いそうになりながら、彼女はわずかに目を細めた。

(わたしが、きみの味方をするような発言をするものだから、戸惑っているのかね? 悪いが、ダフニー・ケンブル。わたしはきみのような、不道徳で恥知らずな女性が大嫌いなのだよ)

 そういえば、とアレクシアはふと思い出したという口調で言う。

「わたくしは家庭教師から、殿方に肌を許すのは婚儀を挙げてからでなければならない、と教わったのです。未婚の身でそのようなことをするのは、大変ふしだらで恥ずかしい振る舞いであると。けれど、真に愛する方を得るためであれば、ダフニーさまのように未婚の身であっても、お相手がエイドリアンさまのように妻子ある男性であっても、その方の手を取るのは正しいことなのですね」
「……っ」

 ダフニーが、真っ赤になってぱくぱくと無意味に口を開閉する。アレクシアは、困りきった表情を浮かべて続ける。

「けれど、ダフニーさま。価値観というものは、人それぞれでございましょう? わたくしはどうしても、幼い日に家庭教師から教わったことを忘れられないのです。ダフニーさまのように、妻子ある殿方と子をもうけるのは、とても耐えられないほど恥ずかしいことだと感じてしまうのですわ。ですから、これからダフニーさまが内向きを取り仕切るスウィングラー家で暮らすのは、ダフニーさまとまったく違う価値観を持つわたくしにとって、とても苦痛なことになると思うのです」

 申し訳ありません、とアレクシアはダフニーに詫びた。そして、今にも卒倒しそうな様子のエイドリアンに向けて言う。

「エイドリアンさま。わたくしは、これからエイドリアンさまとダフニーさまが築かれる新たなご家庭にとって、自分が邪魔にしかならないと理解しております。そこでお願いなのですが、以前お母さまが暮らしていらした別邸を、わたくしにいただけないでしょうか? それ以上のことは、何も望みません。スウィングラー辺境伯家には二度と関わらず、従者とふたりで慎ましく生きて参ります」
「おまえ、は……ッ」

 その瞬間、アレクシアが放ったのは、エイドリアンに対する殺気だ。視界の端で、フェルディナントが反射的に左腕でブリュンヒルデを引き寄せるのが見えた。彼にとって妻が紛れもなく庇護対象であることがわかり、ほっこりした気分になる。
 しかし、彼女の殺気を正面からぶつけられたエイドリアンにとっては、まったくそれどころではないようだ。蒼白を通り越して真っ白になった顔は激しく強張り、まるで化け物でも見るような目をアレクシアに向けてくる。

「……エイドリアンさま」

 ことさらゆっくりと、言葉を紡ぐ。

「わたくしは、できることならこれからもずっと、慣れ親しんだ愛する祖国で生きていきたいのです。けれど、スウィングラー辺境伯家には、もうわたくしの居場所はございませんでしょう? 大変ありがたいことに、お父さまとお母さまは、わたくしが望むならエッカルトでともに暮らすことを許してくださるとおっしゃっています」

 エイドリアンとて、アレクシアを――彼女の従者であるウィルフレッドを国外に出してはならない、という国王判断くらいは認識しているはずだ。精神的に追い詰めながら、都合のいい条件を提示すれば、大抵の人間はそれに食いつく。

「もしお母さまが暮らしていらした別邸をいただけないなら、わたくしはそのお言葉に甘えさせていただこうと思います」

 にこりとほほえみながら、軽く殺気の圧を強めれば、エイドリアンがひゅっと喉を鳴らした。血の気の失せた額にはびっしりと汗が滲み、よく見れば膝ががくがくと震えている。
 少し脅し過ぎただろうかと思ったとき、ブリュンヒルデの穏やかな声がした。

「スウィングラーさま。私からも、お願いいたします。アレクシアのささやかな望みを、どうか叶えてあげてくださいませ。この子の将来については、私たち夫婦が後見人となって、きちんと面倒を見させていただきます。辺境伯家には、これ以上のご迷惑をおかけしないとお約束いたしますわ」

 そうですね、とフェルディナントが微笑する。

「我々の手前勝手な行動により、一番傷ついたのはアレクシアです。せめて、これくらいの罪滅ぼしはさせていただきたい」

 アレクシアは、演技ではなく感動してふたりを振り返った。まさか彼らが、ここまで的確なサポートをしてくれるとは思わなかったのである。

「お父さま、お母さま……! ありがとうございます! ――エイドリアンさま。おふたりがこうおっしゃってくださっているのですもの。どうか、わたくしの願いを叶えていただけませんか?」

 彼女が再び請うた瞬間、ウィルフレッドが殺気とも言えないような軽い威圧を、エイドリアンに向けた。直後、エイドリアンが裏返った声で叫ぶように言う。

「わ、わかった……! その別邸は、おまえにくれてやる……! だからっ、にっ、二度と僕らの前に現れるなァア……ッ!!」
(よし。立派な証人となる大勢の紳士淑女の前での言質、たしかにいただいたぞ。エイドリアン・スウィングラー)

 内心、ぐっとガッツポーズを決めながら、アレクシアは晴れやかな笑みを浮かべてみせた。

「ありがとうございます、エイドリアンさま! 今日を最後に、わたくしは二度とあなたの前に姿を現さないとお約束いたします!」

 少し離れたところで、同年代の招待客とともにこちらをうかがっていた王太子が、うつむいて胃の辺りを片手で押さえていることには、気づかなかったことにする。あちらから提示されたミッションはきっちり完遂したのだから、文句を言われる筋合いはない。
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