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連載

厄介ごとのはじまりは、社交シーズンとともに。

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 それから季節がひとつ移り変わり、アレクシアは十五歳に、ウィルフレッドは十六歳になった。
 シンフィールド学園での生活にも、だいぶ馴染みつつある。ジョッシュやキャスリーンをはじめとするクラスメイトたちとも、少しずつ親交を深められていると思う。何より、自分の財布で買い物できるようになったことは、アレクシアにとって大きな進歩だった。

 充実した日々を送っていたアレクシアだったが、貴族社会において初夏というのは社交シーズンのはじまりだ。夏の休暇には、各貴族の屋敷で毎晩のように夜会が開催される。社交界にデビューする前の子どもたちも、互いの屋敷を訪問して交流を深める大切な時期だ。

 今のところ、王家やスウィングラー辺境伯家から特に動きはないものの、社交シーズンには異国からの客人も大勢訪れる。厄介が起こらなければいいが、と密かに祈っていた彼女だが、残念ながらこういった願いは概して聞き届けられないものらしい。
 夏の休暇を半月後に控えたある日、アレクシアは再び王太子から面会の申し出を受けた。学園長経由でその話を伝えてきたエリックが、顔をしかめながら言う。

「学園長は今のところ、おまえたちの素性に関しては見て見ぬ振りを貫く方針だったんだけどよ。さすがに、王太子が非公式とはいえ国王の名代として来るとなると、そういうわけにもいかねぇらしい」
「そうか。学園長には、迷惑をかけてすまないな。くれぐれもよろしく伝えてくれ。――ふむ。面会場所がこの学園内であるなら、こちらとしては特に拒否する理由はないぞ。ただし、ウィルの同席を認めるのが条件だ」

 面白くもない会話を続けながら、平行してウィルフレッドと視覚と聴覚を共有する魔術を展開するのは、結構疲れるし面倒なのだ。
 彼女の要請に、エリックは苦笑してうなずいた。

「わかった。それ以外に、何か要望はあるか? あちらさんは、おまえたちの要求はどんなものでも受け入れると言ってきてる。何がなんでも、この面会を成立させたいらしい」
「そうか。まったくもって、面倒ごとの予感しかしないな。――いや、こちらの要望は、ウィルの同席だけだ。あちらには、そう伝えてくれ」

 とはいえ、王太子に素性を明かした時点で、こんな日が来るのは覚悟している。アレクシアは取り立てて慌てるでもなく、その翌日の放課後に、前回と同じ応接室で王太子と顔を合わせた。
 ただし、人数は以前よりだいぶ増えている。彼女の背後にはウィルフレッドとエリックが控えているし、王太子――以前の脳天気な雰囲気を思い出すのが難しいほど、どんより鬱々とした様子のローレンスは、前回とは違う近衛の制服を着た成人男性の魔導兵士三名に加え、なぜか王宮の侍女服を着た若い女性をひとり、伴ってきたのである。

(うむ。これは、苦手なタイプだ)

 端然とした佇まいで立つその女性から、幼い頃の自分に厳しい淑女教育を施してきた女性たちと同じにおいを感じ、彼女は反射的に特大の猫を被った。
 ふんわりと柔らかな微笑を浮かべて慎ましやかに立ち、相手の出方を待つ。そんな彼女を見たローレンスが、束の間視線をさまよわせたあと口を開く。

「……久しぶりだね、アレクシア嬢。元気そうで、何よりだ」
「ごきげんよう、王太子殿下。このたびは再びのご足労、まことに申し訳なく存じます」

 当たり障りのない挨拶ののち、先にソファに落ち着いたローレンスが勧めるのを待って、彼の向かいのソファに腰掛ける。
 しかし、それから一向に会話のはじまる気配がない。うつむいたままのローレンスは、時折顔を上げようとする素振りをしたものの、そのたび小さく「ぐぬ」だの「うむぅ」だのと、おかしな声を零すばかりだ。

(コイツは、何をしているんだ?)

 内心首をかしげた彼女は、元々あまり気が長いほうではない。相手の背後に控える恐ろしげな女性の存在は気になるものの、どうせこれから縁があるわけでもない相手だ。
 時間を無駄にするのがいやになったアレクシアは、ひとつため息をついて淑女の猫被りを終了させた。

「おい、王太子殿下。きみは、国王の名代としてわざわざやってきたのではないのかね。わたしに話があるというなら、さっさとしたまえ。こちらとて、そう暇なわけではないのだぞ」

 何しろアレクシアとウィルフレッドは、夏の休暇には彼の故郷であるブラジェナ王国の現状について、いろいろと調べてみる予定なのだ。彼の国は観光資源も豊かなので、近年ではこの国からも多くの観光客が訪れていると聞く。まずは、その辺りから取りかかるつもりだった。
 それに、ブラジェナ王国で使われている言葉も、基本的な読み書きができる程度には身に付けておきたい。幸い、書店でブラジェナ語の書籍をいくつか見つけたので、ウィルフレッドを教師役にして少しずつ学んでいるところだ。夏の休暇の間に、観光案内書に書かれている平易な文章程度は、ウィルフレッドのサポートなしに読めるようになろうと思っている。
 そんなことを考えながら言った途端、王宮からの一行が顕著な反応を見せた。ローレンスは何やら表情を明るく輝かせ、背後に控えていた者たちは愕然とした様子で目を見開いている。王宮侍女の女性など、青ざめて卒倒せんばかりだ。
 その異様なほど激しい反応に、アレクシアは目を細めてローレンスを見た。

「先ほどから、いったいなんだというんだ? わたしは、そちらがよけいな干渉をしてこない限り、ここでおとなしくしていると言ったはずだぞ。これ以上無駄な時間を使わせるつもりなら、我々はここで帰らせてもらう」

 ローレンスが、慌てふためいて腰を浮かす。

「すっ、すまない! 正直なところ、僕もどうしたらいいものかわからなくて、とても困っていたんだよ!」
「そんなものは、そちらの都合だ。国王の名代として呼びつけておきながら、情けなくだんまりを続けるとは、きみはそれでも我が国の王太子か。まったく、嘆かわしい」

 顔をしかめたアレクシアに、ローレンスがしょんぼりと肩を落とした。

「きみはそう言うけどね、アレクシア嬢。きみが対外的に『可憐で愛らしい理想の令嬢』を演じていたお陰で、陛下にきみの本当の姿を報告しても、まるで信じてもらえなかった僕の苦労を、少しはわかって欲しいと思うんだよ」
「む?」

 だからね、とローレンスが、ちらりと背後に控える者たちを見て続ける。

「陛下は今でもきみのことを、『両親の離縁と辺境伯家の継承権剥奪に傷ついて、自暴自棄になっている哀れな令嬢』だと思っているんだ」
「……ほほう」

 相手の言葉の意味を咀嚼し、アレクシアは腕組みをした。

「つまり、なんだ。陛下は、わたしが辺境伯家の実務に就いていたことに関しては、いまだに信じていらっしゃらないということか」
「そうなんだよ。陛下の側近たちの中には、スウィングラー辺境伯家にいた頃のきみと直接挨拶したことがある者もいるからね。彼らに口を揃えて『アレクシア嬢は、美しく優雅で礼儀正しい、まさに理想の貴族令嬢でございます。とても、魔導武器を手に戦場に立つことができるような少女ではございません』と言われては、青二才の僕の報告なんて、ただの妄言扱いだよ」

 ローレンスが不満を滲ませた声でぼやくが、腹立たしいのは彼女のほうだ。

「陛下がそのような認識であるなら、今日の面会は無意味だ。さっさと王宮に戻って、陛下の誤解を解いてから出直してこい」
「……そりゃあ、これだけの証人がいれば、きみが陛下たちの思っているような令嬢じゃないことは、信じてもらえるかもしれないけれどね。きみが辺境伯家の実務に就いていたことを信じてもらうのは、やっぱり難しいと思うよ。その……正直なところ、僕もきみが魔導武器を持って戦う姿なんて、いまだに想像できないんだ」

 ひどく言いにくそうに口にした彼の言葉に、アレクシアは淡々と応じた。

「それも、そちらの都合だな。きみたちがわたしの言葉を信じないのならば、それで構わんさ。ただ、交渉の前提が著しく歪んでいるのであれば、言葉を交わす意味もないと言っているのだよ」

 息を呑んだ相手に、彼女は続ける。

「帰れ。交渉の場に、最低限の準備すら整えないままやってくるな。不愉快だ」

 低く告げると、ローレンスは一度目を伏せてからぐっと顔を上げた。

「申し訳ない。だが、僕は今、陛下の名代としてここに来ている。この場で交わされた約束ごとに関しては、陛下の名において必ず履行されると信じてくれていい」

 アレクシアは、皮肉に笑う。

「そちらはわたしの言葉を信じないくせに、わたしにはきみの言葉を信じろとは、ふざけた話もあったものだ。そもそも、わたしがそちらに要求したのは、ウィルをこの国の戦力として利用するのはあきらめろ、我々によけいな干渉をするな、というふたつのみだ。たかが未成年の子どもふたり、なぜきみたちは放っておいてくれないのかな」

 一瞬、気圧された様子を見せたローレンスだったが、今度は目を逸らさないまま応じた。

「それは、エッカルト王国の英雄であるフェルディナント・バルツァー殿が、友好使節団の代表としてこの国にやってくるからだよ」
「……なんだって?」

 思わず眉根を寄せた彼女に、ローレンスが悲壮な表情を浮かべて言う。

「きみの母君が、バルツァー殿とご結婚されたことは知っているかい? 披露の宴はいずれ国を挙げて盛大に執り行われるらしいが、すでに神殿での誓いは済まされたそうだよ」
「いいや、初耳だ。そうなると、ブリュンヒルデさまは友好使節団代表の奥方として、再びこの国にやってくるということか。まったく、ご苦労なことだな」

 エッカルト王国友好使節団の訪問は、アレクシアの両親の離縁が間違いなく円満なものであったことを、諸外国に喧伝するためなのだろうか。
 たしかに、なんの情報操作もしなければ、いい年をした大人たちによる愛憎劇でしかない話ではある。だが、そこまで念を入れる必要があるのかと不思議に思っていると、ローレンスがため息交じりにぼやいた。

「他人事のように言わないでくれるかな、アレクシア嬢。彼の英雄殿は、愛するブリュンヒルデさまの娘であるきみに、ぜひ挨拶をしたいと言ってきているんだよ。もしきみがこの国に居づらい状況にあるのなら、ご自分の養子としてエッカルト王国に迎えたい、というご意向らしい」
「……ほほう」

 それはまた、想像以上に面倒な話だ。腕組みをしたアレクシアは、沈思したのち誰にともなく問う。

「わたしは女なので、そう言う英雄殿の気持ちがよくわからないのだが……。惚れた女性が政略結婚の末、ろくでなしの最低男の子どもを産まされた場合、男性というのはその子どもに対して、それほど寛容な気持ちを抱くことができるものなのか? 普通ならば、顔も見たくないほど疎ましく思うものではないのかね」

 ――沈黙が落ちた。
 誰もなかなか答えてくれないので、アレクシアはこの場で唯一信頼できる成人男性の担任教師を振り返る。

「なぁ、エリック。どうなんだ?」
「……ウン。ちょっと待って。俺は今、おまえの不憫さに泣きそうになってるから」

 そうか、とアレクシアはうなずく。ふわりとほほえみ、心から彼女は言った。

「おまえは、優しいな」
「よし、おまえの天然タラシ具合にびっくりしたお陰で、涙も引っ込んだわ。――いいか、アレクシア。俺にだって、外国の英雄サマの気持ちなんざわからねぇ。けどな、もし俺に心底惚れた女がいたなら、そいつの産んだ子どもが幸せじゃねぇのは、絶対ダメだ。その子どもの父親が誰かなんざ、関係ねぇ。どんなことをしてでも、惚れた女も子どもも幸せにする。それが、男ってモンだ」

 真顔でキッパリと言い切ったエリックを、ウィルフレッドが尊敬の眼差しで見ている。ということは、エッカルトの英雄――フェルディナント・バルツァーが彼のような男気のある人物であれば、ローレンスが言ったような提案もありえるのかもしれない。
 もちろん、そうではない可能性は多分にある。むしろ、この国の男性総数に対するアニキの割合を考えた場合、エリックのような心意気を持つ立派な男性は、かなりの少数派とみるべきだろう。少なくとも、今回のバルツァーからの申し出をまったく予想せず、アレクシアを排除した王家とスウィングラー辺境伯家の者たちは、アニキ的男気とは無縁なのだと判断できる。
 それに加え、思うところのあったアレクシアは、重ねて問うた。

「しかしなぁ、エリック。わたしは今までブリュンヒルデさま――あぁ、わたしを産んだ女性なのだが、彼女と一度も話をしたことがないんだ。彼女はエッカルト王国に戻られるまで、王都の外れにある閑静な別邸で、気の合うご友人たちと穏やかな日々を過ごされていたと聞いている。今更お会いしたところで、あちらがわたしをご自分の娘だと認識できるかどうかは、甚だ疑問だ。エッカルトの英雄殿の申し出は、彼女にとってはよけいなお世話なのではないかな」
「……そうなのか?」

 エリックが、なんとも言い難い表情をしてへにょりと眉を下げる。

「あぁ。子を産んだ女性が、必ずしも我が子を愛しているとは限らない。むしろ、結婚前から愛人に子を産ませているようなゲス男の子どもなど、存在自体をなかったことにしたいと思っていても不思議はなかろう」

 そこでアレクシアは、ふと別の視点からの問題に気がついた。目の前の事実を順番に確認して口にすることには、己の考えをまとめる効果もあるらしい。

「いや、たとえブリュンヒルデさまがどう思っていたとしても、彼女が産んだ娘をこの国に置き去りにしたままというのは、それこそエッカルト王国にとって外聞がよくないわけか。彼の国の英雄殿が、公の場でわたしのことを形だけでも気遣っていると示すことは、あちらの立場として必要なのだな」

 ようやく、エッカルトの英雄からの唐突な申し出の理由に納得できたアレクシアは、ひとつため息をついてローレンスに向き直った。

「それで? 今更ながらあちらの事情を慮った陛下は、わたしを王宮に保護した上で、ブリュンヒルデさまとの感動の再会でも演出しようとしてくださったわけかね」

 そう考えれば、やたらときらびやかな近衛の魔導兵士が三人も揃っていることも、王宮侍女の女性がこの場にいることにも納得できる。もし彼女が国王の思っているような少女なら、あちらの心遣いに感動でもしていたところだろうか。
 ローレンスが、ぎこちなくうなずく。

「うん。……その上で、僕が陛下から命じられたのは、きみの王家に対する不信感を解消し、丁重に王宮へお連れすることだよ」

 頭痛を覚え、アレクシアは指先で眉間を押さえる。彼女は、心底うんざりして口を開いた。

「人を虚仮にするのも、いい加減にしていただきたい。大体、わたしに対する『両親の離縁に傷ついた令嬢』というイメージは、そちらが用意した噂話に出てくる、都合のいい妄想の産物だろう。王家とスウィングラー辺境伯家は、わたしを切り捨てた。ならば、それ以後に生じた問題はそちらで処理したまえ。無関係の我々を、そんな煩わしい面倒ごとに巻き込まないでもらおう」
「……すまない。僕個人としては、きみにこれほど多大な迷惑をかけ続けてしまっていること、心から申し訳ないと思っている」

 けれど、とローレンスは青ざめた顔をして言う。

「エッカルトからの友好使節団を迎える場に、きみの姿がないという事態だけは、なんとしても避けなければならないんだ。陛下は、きみのスウィングラー辺境伯家の継承権を、復帰させるおつもりでいる。友好使節団歓迎の宴は、その事実を周知させる場にもなるはずだ」
「その上で、わたしがエッカルト王国に移り住んでしまえば、スウィングラー辺境伯家の継承問題も発生しないと? つくづく、そちらにばかり都合のいい話だな。住み慣れたこの国で静かに暮らしたいというわたしの意思は、まったく配慮されないわけか」

 皮肉をこめて言った彼女に、ローレンスが首を横に振る。

「そうじゃない。陛下は、きみを――いや、正直に言うよ。きみの従者であるウィルフレッド・オブライエンを、国外に出すつもりはない。今はとにかく、あちらの体面を立てられればそれでいいんだ。きみの継承権の復帰も、そのために必要なお膳立てだよ。今更きみに、スウィングラー辺境伯家に戻れなんて言ったりしない。それ以後のことに関しては、もちろんきみの意思を尊重して話を進めたいと思っている」
「……なるほど」

 アレクシアは、少し考えてからゆるりと笑った。

「なぁ、王太子殿下。以前も言ったが、わたしは王家もスウィングラー辺境伯家も、二度と信じないと決めている」

 ローレンスが、くっと唇を噛む。そんな彼に、彼女は告げる。

「だが、こうして正面からわたしに向き合おうとしているきみ個人ならば、信じられるかどうか検討してみる価値はあるかもしれないな」
「え……?」

 瞬きをした彼のゴールドアンバーの瞳を、アレクシアは笑みを消して見据えた。

「エッカルトからの友好使節団歓迎の宴には、顔を出してやる。その宴が終わったとき、きみが信じるに足る人物だと認められたなら、わたしは以後決してきみの敵にはならないと約束しよう。そうでなければ、きみはわたしにとって、ただの王家の一員だ」

 そう言って、アレクシアは困惑した表情を隠せずにいるローレンスに、にこりとほほえむ。

「では、王太子殿下。きみの誠実な対応を期待している。そうだな、まずはその歓迎会に出席するために必要な盛装一式を、わたしとウィルのふたりぶん用意してもらおうか」

 ローレンスが、ますます困惑した様子でアレクシアとウィルフレッドを見比べる。

「きみのドレスや装飾品は、もちろんこちらで用意させてもらうけれど……。彼のぶんは、従者の礼装ではないのかい?」
「当たり前だ。きみはわたしに、エスコートなしに外国の要人を招く宴に参加しろと言うのかね」
「あ……いや、その」

 口ごもった彼が、もそもそと言う。

「きみのエスコートは、僕が務める予定だったんだよ」
「バカも休み休み言いたまえ。敵陣でわたしの背中を預けられるのは、ウィルだけだ」

 敵陣、と呟いたローレンスに、アレクシアは淡々と続ける。

「盛装のデザインは任せる。サイズはのちほど連絡するから、適当に恥をかかない程度のものをあつらえてくれればいい」
「あ……あぁ。わかったよ」

 素直にうなずいた相手を見て、アレクシアは密かに思う。
 ――この甘やかされて育った少年は、こちらの思惑通りに動いてくれるだろうか。

(別に、動いてくれなくとも構わないのだが……。もし動いてくれたなら、多少は面白いことになるかもしれんな)

 いずれにせよ、もう二度とこのような面倒ごとに巻き込まれないようにするために、件の歓迎会では彼女自身が上手く立ち回らなければなるまい。

(さて。わたしの『家族』との再会は、いったいどんな茶番になることか)

 アレクシアは、観劇をするなら喜劇を好む。どうせなら、多くの者が楽しめる催しになってもらいたいものだ。
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