大罪の後継者

灯乃

文字の大きさ
上 下
33 / 42
旅立ち

発動条件

しおりを挟む
 ……全部、こいつが手配したのか?

 二人は政略結婚である。

 アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。

 しかし、その経緯は知らない。

 両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。

 どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。

 それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。

 ……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。

 そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。

 これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。

「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」

 ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。

「伯爵家から?」

 アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。

「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」

 ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。

 カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。

 伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。

「そういえば送られてきていたな」

 アルバートはようやく思い出したようだ。

 ……嫌な予感がする。

 ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

処理中です...