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1年目〜3年目 近藤 裕太編
山田監督の策略
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9月11日 秋季県大会抽選日翌日
練習がこれから始まるというところで、俺たちはベンチ前に集められた。山田監督から前日に決まった県大会の組み合わせについて説明が始まった。
「県大会の組み合わせが決まったから確認するぞ。初戦は北上高校だ」
南海は県内4強の一角にあたる高校だ。秋の一次予選で対戦した東雲高校と同じレベルである。64ある出場校の中からそんな強豪校と初戦であたるなんて……。
「初戦は18日になった。ちょうど来週だな。今日からは8月みたいに負荷をかけ過ぎない程度に練習していくつもりだ。来週の試合に向けて、しっかりとコンディションを整えていってくれ」
『カキーン』
『それにしても練習内容を変更して大丈夫だったんですか?』
県大会が始まるまでの1週間の重点成長能力は守備のままでいくことになっていた。しかし、今行われているのは打撃練習だった。成長効率を考えるとあまり得策ではない。
『この前の秋の大会二次予選2回戦で2点しか取れなかったからな。先月全体練習でほとんど打撃練習がなかったのが影響している気がしてな……。まぁ、このあと実際にポジションに守りをつけて、実践的な形で練習するつもりだから守備面もある程度は鍛えられるはずた』
ノックに比べて捕球できる数は格段に減るが、実際に打者が打った打球を捕ることになるので、ある程度の効果は得られるはずだ。一応守備練習ということになるので、1週間程度ならそこまで問題ないように思えた。
その日から地獄のメニューが終わりを告げ、実践的なメニューが中心となった。その結果、いつもなら練習終わりにヘトヘトになるはずだった所が、ある程度の体力を残して終わるようになっていた。
『カキーン』
「近藤先輩、もう一箱お願いするっす」
「そろそろ終わろうかと思ってたけだ……すごいやる気だな」
「いやー、8月に比べて体力があり余ってますからね。それに最近平野や飯野たち同学年が活躍しだしたんで、負けてられないっす」
「なるほど。だから岩井もあんなに気合いが入っているのか」
岩井は木下と組んで、ティーバッティングを黙々と行っていた。木下は帰りたそうだが、二次予選のときに練習に付きってもらっていたのもあって言い出せずにいるようだった。
「岩井ー!俺たちはラスト一箱で終わるから、お前らもそろそろ終わりの目処をつけろよ」
「もうそんな時間ですか……。分かりました」
俺の言葉を聞いて少し不満そうだったが、星形も終わると聞いて渋々納得したようだ。……木下そんな嬉しそうな顔でこっちを見るな。別にお前を救おうとしたわけじゃないぞ。
「俺も負けてられないなぁ」
後輩たちの頑張りはかなり刺激になった。そんなこんなで俺たちの居残り練習も日に日に時間が伸びていくのであった。
秋季県大会前日
「今日は明日に備えて早めに練習を切り上げる。聞くところによると、最近遅くまで残って練習してる自己管理ができてない部員もいるようだからな。今日ぐらいは自主トレも軽めにして、明日に備えるように。では、解散」
山田監督の視線が俺や星形、岩井、木下に向けられていたことは気のせいだったと思おう。星形や岩井は顔を青くしてるけど、君たちは気にしすぎだと思う。
俺はいつもの通り、自主トレをしようと室内練習場に向かうのだった。
『カキーン』
『カキーン』
「ふぅ…………あの、なんでいるんですか?」
俺は区切りの良いところで椅子に座ってこっちを見ている2人に声をかけた。
「「山田監督に言われたから」」
「……………」
二宮コーチとマネージャーが口を揃えて理由を教えてくれた。俺は空いた口が塞がらなかった。
「えーっと、理由はわかったんすけど、いつまでいるつもりっすか?自分ら結構長いっすけど……」
「俺は全員が帰るまでいるぞ」
「選手の体調管理もマネージャーの仕事ですから」
当たり前のことのように笑顔で答えてくる2人。正直、勘弁してほしい。
「2人はまだいいんですけど、この状況はちょっと……」
「なんで今日に限ってこんなに人がいるんだよ。狭くて満足に練習もできやしねぇ」
岩井と木下が文句を言いたくなるのも無理はない。いつもならすぐ帰るか、少ししか残らない部員たちが今日は明を除いたほぼ全員が残っていたからだ。
二宮コーチ、マネージャーにアピールしたいという気持ちや、自分だけ帰るのはまずいだろうという罪悪感からこの状況が生まれたようだった。
それによって練習で使うスペースの問題だけでなく、ネットの数、ボールなど道具の面でもかなり効率が悪い。いつもならその辺りを気にせず使えていただけに、かなりのストレスを感じる。
「はぁー、仕方ない。星形、岩井、木下、俺たちは今日はもう帰ろう。試合前日ってのもあるし、俺たちはいつも使ってるから今日ぐらいは他に譲ってやろう」
「まぁ、この状況なら仕方ないっすね」
「むー、近藤先輩がいうなら従います」
「不完全燃焼だか、諦めるしかねぇな」
俺の提案に星形、岩井、木下は渋々納得したようだった。手早く片付けて室内練習場をあとにする。帰り際に二宮コーチとマネージャーを見ると、満面の笑みでこちらを見ていた。後で必ず山田監督に文句を言っておこう。
山田監督の配慮?もあってか、いつも遅くまで残ってる俺たちはいつもよりもかなり早く帰宅することになった。そのおかげで試合前日にゆっくり休むことができたのだった。
練習がこれから始まるというところで、俺たちはベンチ前に集められた。山田監督から前日に決まった県大会の組み合わせについて説明が始まった。
「県大会の組み合わせが決まったから確認するぞ。初戦は北上高校だ」
南海は県内4強の一角にあたる高校だ。秋の一次予選で対戦した東雲高校と同じレベルである。64ある出場校の中からそんな強豪校と初戦であたるなんて……。
「初戦は18日になった。ちょうど来週だな。今日からは8月みたいに負荷をかけ過ぎない程度に練習していくつもりだ。来週の試合に向けて、しっかりとコンディションを整えていってくれ」
『カキーン』
『それにしても練習内容を変更して大丈夫だったんですか?』
県大会が始まるまでの1週間の重点成長能力は守備のままでいくことになっていた。しかし、今行われているのは打撃練習だった。成長効率を考えるとあまり得策ではない。
『この前の秋の大会二次予選2回戦で2点しか取れなかったからな。先月全体練習でほとんど打撃練習がなかったのが影響している気がしてな……。まぁ、このあと実際にポジションに守りをつけて、実践的な形で練習するつもりだから守備面もある程度は鍛えられるはずた』
ノックに比べて捕球できる数は格段に減るが、実際に打者が打った打球を捕ることになるので、ある程度の効果は得られるはずだ。一応守備練習ということになるので、1週間程度ならそこまで問題ないように思えた。
その日から地獄のメニューが終わりを告げ、実践的なメニューが中心となった。その結果、いつもなら練習終わりにヘトヘトになるはずだった所が、ある程度の体力を残して終わるようになっていた。
『カキーン』
「近藤先輩、もう一箱お願いするっす」
「そろそろ終わろうかと思ってたけだ……すごいやる気だな」
「いやー、8月に比べて体力があり余ってますからね。それに最近平野や飯野たち同学年が活躍しだしたんで、負けてられないっす」
「なるほど。だから岩井もあんなに気合いが入っているのか」
岩井は木下と組んで、ティーバッティングを黙々と行っていた。木下は帰りたそうだが、二次予選のときに練習に付きってもらっていたのもあって言い出せずにいるようだった。
「岩井ー!俺たちはラスト一箱で終わるから、お前らもそろそろ終わりの目処をつけろよ」
「もうそんな時間ですか……。分かりました」
俺の言葉を聞いて少し不満そうだったが、星形も終わると聞いて渋々納得したようだ。……木下そんな嬉しそうな顔でこっちを見るな。別にお前を救おうとしたわけじゃないぞ。
「俺も負けてられないなぁ」
後輩たちの頑張りはかなり刺激になった。そんなこんなで俺たちの居残り練習も日に日に時間が伸びていくのであった。
秋季県大会前日
「今日は明日に備えて早めに練習を切り上げる。聞くところによると、最近遅くまで残って練習してる自己管理ができてない部員もいるようだからな。今日ぐらいは自主トレも軽めにして、明日に備えるように。では、解散」
山田監督の視線が俺や星形、岩井、木下に向けられていたことは気のせいだったと思おう。星形や岩井は顔を青くしてるけど、君たちは気にしすぎだと思う。
俺はいつもの通り、自主トレをしようと室内練習場に向かうのだった。
『カキーン』
『カキーン』
「ふぅ…………あの、なんでいるんですか?」
俺は区切りの良いところで椅子に座ってこっちを見ている2人に声をかけた。
「「山田監督に言われたから」」
「……………」
二宮コーチとマネージャーが口を揃えて理由を教えてくれた。俺は空いた口が塞がらなかった。
「えーっと、理由はわかったんすけど、いつまでいるつもりっすか?自分ら結構長いっすけど……」
「俺は全員が帰るまでいるぞ」
「選手の体調管理もマネージャーの仕事ですから」
当たり前のことのように笑顔で答えてくる2人。正直、勘弁してほしい。
「2人はまだいいんですけど、この状況はちょっと……」
「なんで今日に限ってこんなに人がいるんだよ。狭くて満足に練習もできやしねぇ」
岩井と木下が文句を言いたくなるのも無理はない。いつもならすぐ帰るか、少ししか残らない部員たちが今日は明を除いたほぼ全員が残っていたからだ。
二宮コーチ、マネージャーにアピールしたいという気持ちや、自分だけ帰るのはまずいだろうという罪悪感からこの状況が生まれたようだった。
それによって練習で使うスペースの問題だけでなく、ネットの数、ボールなど道具の面でもかなり効率が悪い。いつもならその辺りを気にせず使えていただけに、かなりのストレスを感じる。
「はぁー、仕方ない。星形、岩井、木下、俺たちは今日はもう帰ろう。試合前日ってのもあるし、俺たちはいつも使ってるから今日ぐらいは他に譲ってやろう」
「まぁ、この状況なら仕方ないっすね」
「むー、近藤先輩がいうなら従います」
「不完全燃焼だか、諦めるしかねぇな」
俺の提案に星形、岩井、木下は渋々納得したようだった。手早く片付けて室内練習場をあとにする。帰り際に二宮コーチとマネージャーを見ると、満面の笑みでこちらを見ていた。後で必ず山田監督に文句を言っておこう。
山田監督の配慮?もあってか、いつも遅くまで残ってる俺たちはいつもよりもかなり早く帰宅することになった。そのおかげで試合前日にゆっくり休むことができたのだった。
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