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1年目〜3年目 近藤 裕太編

県大会をかけた戦い

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9月5日 秋の大会二次予選 2回戦


「今日の対戦相手は草間くさま高校だ。初戦の相手と同じく夏は2回戦敗退だったようだな。だが、秋の大会一次予選も二次予選も初戦突破している。新チームになってからの方が力はありそうだな。相手のエースは右のサイドスローで緩急を上手く使ってくるから、狙い球をしっかり絞って臨むように。では、今日のスタメンを発表するぞ」



本日のスタメン


1 ショート   星形(1年 背番号6)

2 センター   平野(1年 背番号8)

3 ファースト  近藤(2年 背番号3)

4 レフト    岩井(1年 背番号7)

5 キャッチャー 水谷(2年 背番号2)

6 サード    木下(2年 背番号5)

7 セカンド   町村(2年 背番号4)

8 ライト    飯野(1年 背番号15)

9 ピッチャー  石井(2年 背番号1)



 木下の打順が1つ下がり、一昨日代打でヒットを打った1年の飯野がスタメン入りか。神様のメールにあったアドバイスを参考に打線を組み替えたたようだった。


「名前が呼ばれなかった者もいつでもいけるように、状況をよく見て準備しておけよ。ここを勝てば県大会だ!さぁ、いくぞ!」


 県大会出場をかけた負けられない戦いが始まった。








1回裏 ツーアウト ランナーなし


 先頭の星形、2番の平野は粘って球数を投げさせてはいたが、惜しくも凡退していた。


 初打席はランナーなしで回ってきた。出塁したとしても、俺の足では盗塁は難しい。チャンスで4番の岩井に回すために、ここは単打より確率は悪いが長打を狙うことにした。


 横から見ていた感じだと、相手投手のストレートの球速は120km/h台半ばぐらいに感じる。ただ、変化球にかなりブレーキがかかっているので、その緩急のせいで打席では球速以上に速く感じてしまいそうだった。


 ここまでの打席で変化球はスローカーブ、スライダー、チェンジアップは確認できた。他にもあるかもしれないが、とりあえずは分かっている情報を駆使して狙いを考えよう。


 長打を打つなら狙いはストレートだな。追い込まれるとチェンジアップが厄介だけど、変化球の軌道も打席で確認しないと狙い辛いから仕方がない。



『狙いの球種→ストレート

 打ち方  →フルスイング

 打球方向 →レフト方向

 成功確率 →28%』


 マウンドの相手投手はサインに頷き、ランナーはいないがセットポジションに入る。動き出したのに合わせて、俺もタイミングをとる。1球目が投げられた。



 フワリとした軌道で思わず視線が上に上がる。俺は狙いとは違ったので手を出さず、しっかりとボールの軌道を確認していた。


「ストライーク」


 初球はスローカーブ。コースは真ん中よりでかなり甘めだった。しかし、ストレートのタイミングで打ちにいくとタイミングがまったく合わず、バットを振ることは難しく思えた。




 2球目は高さはほぼ真ん中のアウトコース。俺は、狙いを定めてスイングした。




『ブルン』


「ストライーク」


「!?」


 タイミングは悪くなかった。しかし、バットを振り出したところでボールが外に曲がっていき、バットは空を切った。


 2球目はスライダー。ストレートの球速がそこまで出ていないために、今後打ちにいくときにストレートとの判断に迷う球種だった。変化の幅もそれなりにあるようだった。


 さて、追い込まれてしまった。2球変化球できたから、次の1球はストレートを見せてくる気がする。そして、4球目にチェンジアップで打ち取る配球が1番可能性が高い。


 予想通り3球目はインハイにストレートが投げ込まれた。高さもコースも外れていたので、少し身体をのけぞらせて避ける。


 カウントはワンボールツーストライク。次が決めにくるボールだろう。


 狙いはスライダーかチェンジアップか……。とりあえず変化球に狙いを絞って、コンパクトにセンター返しを意識するしかないな。



『狙いの球種→変化球

 打ち方  →ミート中心

 打球方向 →センター方向

 成功確率 →15%』



 マウンドから勝負の4球目が投げられた。


 投げられたボールはアウトコース低め。ストレートなら見逃せばストライク、変化球ならボールという際どいコースだった


 打ちにいきながらボール軌道を見る。スライダーか?チェンジアップか?


『ガゴッ』


「くっ!」



 ボールは最後まで曲がらずストレートだった。もちろん捉えられるわけもなく、打ち損じた打球はセカンドへ転がっていく。


「アウト」


 何事もなく処理され、セカンドゴロ。俺とバッテリーの読み合いはバッテリーに軍配が上がった。 



『【先導する者】の効果により、チームメイトの能力が試合中2%低下します』 


 頭の中で打席の結果に応じた効果が告げられる。幸先の悪いスタートになってしまった。









8回裏 ワンアウト ランナー2塁  


 試合終盤、チャンスで俺に打順が回ってきた。先頭の星形が四球で出塁し、2番の平野が送りバントで2塁に送っていた。ここまで俺の成績はセカンドゴロ、四球、サードライナーでいいところなし。


 現在のスコアは1対1。ここで俺が1本打てばかなり勝利が近づいてくる。キャプテンとして、ここは何が何でもランナーを返さないと。



『【心の支え】が発動しました。作戦成功確率が上昇します』 


 頭の中でいきなり声が聞こえてきた。久しぶりすぎて、正直なところあることを忘れていた。


 狙いはスライダー。ここまでカウントを取るために必ずどこかで投げてきていた。そこに狙いを絞って、コンパクトにスイングしてライナー性の打球を打ち返すことを目指そう。



『狙いの球種→スライダー

 打ち方  →ミート中心

 打球方向 →センターから右方向

 成功確率 →41%(+15%)』


 修正が入り、かなり成功の確率が上がった。ここが勝負所だろう。


 切り替えてマウンドに目を向ける。初回からここまで明と投げ合ってきた相手投手は疲れた様子こそ見せないが、球威は落ちてきているようだった。


 サインを確認し、ひと呼吸おいたあとセットポジションに入る。相手投手が投手動作に入り、右腕からボールが投じられる。


 コースはほぼ真ん中で高さは低め。俺はタイミングを合わせ、スイングした。





『カキーン!』


「しゃあ!!」


 球種は狙い通りのスライダー。初回よりもコースが甘く、変化量も減っていたのもあって難なく捉えることができた。打球は1、2塁間を抜けライトの前に転がっていく。




「セーフ!」


 バックホームを狙って前に出てきていたライトが、捕球後素早く返球した。しかし、セカンドランナーはうちのチーム1の俊足星形だ。送球よりも早く、あっという間にホームまで生還していたのだった。



『【先導する者】の効果により、チームメイトの能力が試合中6%上昇します。現在トータル2%の上昇です』



 これでここまで凡退した分がチャラになった。マイナスがなければ最終回の守りも問題ないだろう。










「ゲーム」


「「ありがとうございました!!」」


 最後は明が3人できっちり締めて、1対2で勝利した。この瞬間、秋の県大会への出場が決まったのだった。












「さて、そろそろ寝るか………あれ?メールが届いてる」


 携帯には月末でもないのに神様からメールが届いていた。俺は開いて中身を確認した。




『神様  2022/09/05
 宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━
 レベルアップじゃ!

 県大会出場決定おめでとうなのじゃ!順調に進めているようでわしは嬉しいぞい。早速だがお知らせじゃ。条件を満たしたので、レベルアップしたぞい。それによって報酬も与えられるので、内容は下の方に書いておいたぞい。今後に生かすとよいぞい。では、またのぉ!




○チーム評価


 対外評価2→3(+1)



○報酬


 新入生推薦枠(県内3)獲得





「おぉ!レベルアップした!これで推薦で入ってくる実力のある部員が3人になるのか」


 来年の夏までは明がいるからいいが、それ以降は投手陣に不安があったからな……。枠が増えたことで投手をとりつつ、今年と同じように野手2人も確保できそうで一安心だな。


 野手の数が減ればそれだけ得点力はが下がる。枠自体が増えてくれるのはかなりありがたいことだった。


「この調子で県大会勝ち進んで、さらにレベルアップ、推薦枠の増加を目指したいな!」


 俺はウキウキした気持ちで、その日眠りにつくのだった。

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