上 下
26 / 31
1年目〜3年目 近藤 裕太編

先導する者

しおりを挟む
 新チームスタートから10日程経ち、最初の練習試合の日を迎えた。


「今日の対戦相手は森内もりうち高校だ。夏は初戦敗退だったようだな。だからといって、油断するなよ。それでは、今日のスタメンを発表するぞ」



本日のスタメン(背番号は夏のときのもの)


1 ショート   星形(1年 背番号6)

2 セカンド   町村(2年 背番号16)

3 ファースト  近藤(2年 背番号3)

4 レフト    岩井(1年 背番号7)

5 サード    木下(2年 背番号15)

6 キャッチャー 水谷(2年 背番号2)

7 ライト    杉山(2年 背番号18)

8 ピッチャー  石井(2年 背番号1)

9 センター   平野(1年 背番号19)



「野手陣で名前が呼ばれなかったものも全員出す予定だから、試合中準備を怠らないこと。この試合は石井に完投させるから、石井以外の投手陣は全員2試合目備えておけよ」


 山田監督から発表されたスタメンには、夏の大会でレギュラーだった選手は全員名を連ねていた。スタメンの約半分が残ったことで、秋はある程度は有利に戦えるはずだ。







1回裏 ワンアウト ランナー2塁


 先頭の星形が四球で出塁し、2番の町村が手堅く送ってチャンスの場面で打席が回ってきた。


 相手投手の持ち球はここまでストレート、カーブのみだった。今までは打順が中盤以降だったのである程度の情報は手に入ったが、この打順ではそう簡単にはいかないようだった。


 とりあえずはストレートに絞って、センターから右方向を狙うことにしよう。大きいのは狙わず、あくまで低く鋭い打球で最低でも進塁打になるようにしないと。




『狙いの球種→ストレート

 打ち方  →ミート打ち

 打球方向 →センターから右

 成功確率 →43%』




 マウンドの投手がセットポジションに入り、第1球を投げてきた。ボールのコースは真ん中やや低め。俺はタイミングを合わせて、向かってくるボールに向けてスイングした。




「カキーン!」


「しゃあ!」


 打球はセンター前に抜けていった。狙い通りのストレートだったことでしっかり打ち返すことができた。



「セーフ!」


 センターからホームに返球されるが、セカンドランナーの星形が快足をとばし、悠々とホームに帰ってきて幸先よく1点先制した。



『【先導する者】の効果により、チームメイトの能力が試合中6%上昇します』 



 2塁ベース上でスライディングして付いた土を払っていると、頭の中から声が聞こえてきた。なるほど、打席が終わるごとにこういう感じで能力の上がり下がりを教えてくれるのか。


 練習試合だし、他の結果だとどうなるのかいろいろ確認するにはいい機会だな。


 俺はこの試合を通して、新たな力について解明することにしたのだった。







「ゲーム」


「「ありがとうございました!!」」


 結果は1対6で勝利した。俺は4打数2安打1打点1四球だった。いろいろと試した結果から、【先導する者】の力についてこの試合でわかったことをまとめてみる。


・ヒットや打点で能力が上がる

・四球などの出塁でも上がる

・凡退すると下がる

・チャンスの場面の方が上がり下がりが大きい

・途中で出場した選手たちにも適用されている。


 とりあえずはこの辺だろうか。他にもなにか条件があるかもしれないし、公式戦だとまた違うかもしれない。今後も検証は必要だな。









「あっという間に月末か……」


 新チームになって、キャプテンとして活動しているとあっという間に1日1日が過ぎていくのだった。


 森内高校との試合後も毎週練習試合があり、その中で【先導する者】の効果について検証してはいたが特に新たな発見はなかったのだった。


 日課の勉強もやり終え、寝る時間となったのでいつもの流れで神様から送られてきていたメールの中身を確認した。





『神様  2022/07/31
 宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
━━━━━━━━━━━━━━
 月末報告じゃ!

 久しぶり、神様じゃ。元気にしとるかのぉ?今日で7月が終わるので、月末報告をするぞい。



◎個人能力値


近藤 裕太(2年) 右投げ右打ち キャプテン


※各数値の最大値は100 

※数値の右側は補足説明


〇ポジション 


 ファースト55(+3)

 他0


〇打撃


・ミート力   56(+3) バットにボールを当てる能力

・スイング速度 53(+3) スイングの速さ

・パワー    55(+3) 打球速度、飛距離


〇走塁


・足の速さ 38 (+1)単純な足の速さ

・走塁技術 30 (+1)ベースランニングとスライディング

・盗塁技術 21 (+1)リード、スタート、スライディング


〇守備


・肩の強さ   34(+1) 距離

・送球の正確性 32(+1) コントロール

・握り変え   28(+1) 取ってから握り変える早さ

・捕球力    31(+1) 球際の強さ

・打球判断力  32(+1) ボールとの距離感、スタート

・守備範囲   35(+1) (足の速さ+打球判断力)÷2


〇投手  


・球速   98km/h

・制球力   8

・スタミナ 11

・変化球  なし


〇その他


・体力     57(+2) 練習をする上で必要不可欠

・精神力    41(+4) 様々な場面での度胸

・サインプレー 33(+2) 理解力

・バント    36(+2) バントの技術


◎チーム評価


※最大値は10


・投手力  3

・打撃力  4

・機動力  3

・守備力  3

・指導力  3

・対外評価 2 


◎推薦枠部員情報


・星形 光(1年) 打2(+1)走4守3投1他2

・岩井 武(1年) 打4走1守2投1他2



◎アドバイス


 指導力を優先して上げよ。






 「俺も後輩たちも順調に成長してるな。アドバイスは……どうしたらいいんだろう?」


 夏の大会が終わったあと、山田監督と話して野手陣の重点成長能力は打撃に変更していた。星形の成長はそのおかげだろう。岩井に関してはもとの数値が高いから、同じ速度で数値が上がるとはもともと思ってはいなかったので問題ない。


 それにしても指導力か。山田監督に伝えて今後の方針を決めるしかないな。




 俺のキャプテンとしての最初の1か月は大きな問題は起きず、何事もなく過ぎていったのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、内容が異なります。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~

はぎわら歓
ファンタジー
 国家占い師である胡晶鈴は、この中華・曹王朝の王となる曹隆明と結ばれる。子を宿した晶鈴は占術の能力を失い都を去ることになった。  国境付近の町で異民族の若い陶工夫婦と知り合う。同じく母になる朱京湖とは、気が合い親友となった。  友人になった夫婦と穏やかな生活を送るはずだったが、事情のある朱京湖と間違えられ、晶鈴は異国へと連れ去られてしまった。京湖と家族の身を案じ、晶鈴はそのまま身代わりとなる。  朱彰浩と京湖は、晶鈴の友人である、陸慶明に助けを求めるべく都へ行く。晶鈴の行方はずっと掴めないままではあるが、朱家は穏やかな生活を営むことができた。  12年たち、晶鈴の娘、星羅は才覚を現し始める。それと同時に、双子のように育った兄・朱京樹、胡晶鈴との恋に破れた医局長・陸慶明とその息子・陸明樹、そして実の娘と知らない王・曹隆明が星羅に魅了されていく。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...