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1年目〜3年目 近藤 裕太編
ベンチ入りメンバー発表
しおりを挟む二宮コーチが合流後、その夜に神様にグループ分けのやり方をメールで確認した。普段重点成長能力を設定するように頭に思い浮かべるだけでできるそうだ。やってみると簡単に設定できた。
山田監督→18人 重点成長能力は守備
二宮コーチ→4人 重点成長能力は投手
俺と山田監督は相談の結果、投手の4人を二宮コーチに見てもらうことにした。
山田監督が話して聞いた限りだと、二宮コーチは投手経験もあるという話だった。
ピッチャーがブルペンで1日に投げられる球数には限りがある。バッターのバットを振るのと違って、朝から晩まで投げているわけにはいかない。
その辺りをどうするか山田監督が二宮コーチに確認したら、問題ないとのことだった。
ポール間走や坂道ダッシュなどの下半身強化、どこからか持ってきたバランスボールやゴムチューブを使ったトレーニングなど、野手陣がバットを振っている裏で付きっきりで指導にあたりはじめた。
二宮コーチが合流して1週間程経ち、途中経過を山田監督に確認してみた。
『いや、練習中は真面目ですごく助かってるよ。自分からどんどん動くし、指導も的確だし。コーチとしてはかなり有能だな』
『俺は練習メニューの関係であまり見てないけど、そうなんですね。良かったじゃないですか、問題が解決して』
『それが練習以外に問題があってな……。いつの間にか俺の住んでるアパートの隣の部屋に住んでるんだよ。おかげで毎日のように晩御飯に誘われて大変でな。いや、美味いからいいんだけどさ。ずっと一緒だと、心の休まる暇がないんだよ』
『ははは。それはご愁傷様です。』
なんだか奇妙なことになっているけど気にしなくても大丈夫だろう。ちなみにマネージャーと俺の家は隣ではない。神様よ、なぜだ。
「さぁ、ラストもう1箱分打って今日は終わりにしよう」
「「はい」」
全体練習が終わったあと、室内練習場で木下、星形、岩井と9時すぎまで居残り打撃練習をしていた。重点成長能力を守備に変更したあと、1年2人を誘って4人で行うようになったのだった。
「それにしても、近藤先輩の練習量はいつ見ても半端ないっすね。1年の頃からそんななんすか?」
「そうだな、こいつは入部してからほとんど欠かさず、練習後に残ってバット振ってるからな。甲子園に取り憑かれた変態だよ」
「おい、木下。星形に変なこと吹き込むな」
俺は変態呼ばわりに我慢できず、思わず反論する。断じて変態ではない。甲子園への思いは確かに転生するほどではあるが。
「それをいうなら木下先輩も変態なのでは?近藤先輩に付き合って一緒に練習しているんですよね」
「いや、俺もそこそこ残ってバット振ってたけどこいつほどじゃないよ。こいつに誘われない日はもっと早く帰っているし。1年の頃から近藤と残ってたのは石井だな。俺は石井がいないときに練習に付き合わされてる被害者だよ」
「おい」
岩井の質問に木下が笑いながら答えていた。確かに明がいないときだけ声掛けてたけど。被害者だと思ってたのか。
「でも石井先輩の姿は練習後は全然見ないっすね。今は練習終わったらすぐ帰ってるんすか?」
「あぁ、お前らが入部する少し前から残らなくなったな。明には明の練習があるからな」
全体練習後は、明は俺に付き合って一緒にバッティング練習をしていた。たまに俺が明の球を受けることもあったがほとんどが俺のやりたいことに合わせてくれていた。
春の大会で負けてから、明は残って練習することはなくなった。帰宅時間が変わったことで、春の大会以降一緒に帰ることもなくなっていた。
「まぁ石井先輩は投手っすからね。バットを振るのはそこまで必要なさそうっすもんね」
「いや、多分近藤に愛想を尽かしたんだろうな。フラれたんだよ」
「え!2人はそんな関係だったんすか!?」
「おい」
木下の悪ふざけを星形は本気にしすぎだろ。岩井も俺たちに見えないように笑いこらえてるし。俺はフラれてない……はずだ。
「星形、岩井お前ら一箱追加な」
「「えっ……」」
買い物カゴのような入れ物にボールが山盛りに入っている。まぁこれぐらいすぐ終わるだろ。だいたい今頃青い顔しても遅いわ。
「木下は2箱な」
「ひっ……」
こっそり逃げようとしている木下を捕まえて、俺たちはその後もバットを振り続けるのだった。
夏の大会初戦まで残り1週間となった日の練習終わりに、全員がベンチ前に集められた。
「えー、いよいよ来週から夏の大会が始まる。今からベンチ入りメンバーを発表する。名前を呼ばれたら前に背番号を取りに来るように。では1番、石井」
「はい!」
夏の大会ベンチ入りメンバー
1 石井 2年 投手
2 水谷 2年 捕手
3 近藤 2年 一塁手
4 川内 3年 二塁手
5 斎藤 3年 三塁手
6 星形 1年 遊撃手
7 岩井 1年 左翼手
8 北野 3年 中翼手
9 秋田 3年 右翼手
10 佐藤 3年 投手
11 山路 2年 投手
12 湯元 1年 捕手
13 米田 1年 内野手
14 越後 3年 内野手
15 木下 2年 内野手
16 町村 2年 内野手
17 田中 3年 外野手
18 杉山 2年 外野手
19 平野 1年 外野手
20 時任 1年 投手
「昨年の夏は7回コールド負けだった。俺はこの1年間、あの日のことは1日たりとも忘れていない。夏の借りは夏に返す。このチームはもう簡単に負けるチームじゃない。………初戦、勝つぞ!」
「「はいっ!!」」
山田監督の思いは全員に伝わったようだった。特に3年生にはかなり気合が入ったようだ。
2年目の夏が、いよいよ始まる。
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