無限高校球児〜監督も兼任！？甲子園優勝するまで終われません〜

１年目〜３年目 近藤 裕太編

勝てば県大会

「今日勝てば県大会出場決定だ。気合を入れていけよ！それでは、今日のスタメンを発表する」


本日のスタメン


１番　セカンド　　　川内（２年　背番号４）

２番　センター　　　田中（２年　背番号８）　

３番　レフト　　　　北野（２年　背番号７）

４番　ライト　　　　秋田（２年　背番号９）

５番　サード　　　　斎藤（２年　背番号５）

６番　キャッチャー　水谷（１年　背番号２）　

７番　ファースト　　近藤（１年　背番号３）

８番　ピッチャー　　石井（１年　背番号１）

９番　ショート　　　越後（２年　背番号６）



　今日は二次予選２試合目。ここで勝てば、県大会に出場することができる。


　スタメンは１試合目と同じだった。明も昨日投げている感じ、疲れはあまり残っていないようだった。


　今日の相手は陽南ようなん高校。夏は３回戦敗退だったが、その時のエースは２年生だったので新チームにも残っている。


　打撃陣が相手ピッチャーを打ち崩せるかが勝負の鍵だな。









７回裏　ツーアウト　ランナー２塁　　


　チャンスで俺に打順が回ってきた。ここまで俺の成績は三振、ショートフライと２打席凡退。


　相手ピッチャーは出塁を許すものの、要所を締めるピッチングで得点を許していなかった。


　現在１対０でリードを許している。ここで俺が１本打てば試合は振り出しに戻る。何が何でもランナーを返さないと。


『心の支えが発動しました。作戦成功確率が上昇します』　


　ん？頭の中に何からいきなり声が聞こえてきた。そういえばそんなのもあるって神様からのメールにあった気がする。今は深く考えるのはやめておこう。


　相手投手のここまで投げた球種はストレート、スライダー、シュート、チェンジアップの４種類。横の変化と緩急にうちのチームは翻弄されていた。　


　狙いはストレート。大きいのは必要ないから、コンパクトにスイングしてライナー性の打球で打ち返すことを意識しよう。



『狙いの球種→ストレート

　打ち方　　→センター返し

　成功確率　→３２％（＋１０％）』


　成功確率に修正が入っている。なるほど、こういう感じの効果になるのか。


　切り替えてマウンドに目を向ける。ひと呼吸おいたあと、相手投手が投手動作に入り、右腕からボールが投じられる。俺はそれにタイミングを合わせて打ちにいった。


『ブルン』


「ストライーク」


　初球はチェンジアップ。ストレートだと思って打ちにいったので、完全にタイミングを外されてしまった。


　さて、どうするか。２球連続チェンジアップはないだろうし、次こそはストレートか？とりあえずは狙いはそのままでいこう。


　サインが決まったのか相手ピッチャーは頷き、投球動作に入る。俺に向かって２球目が放たれた。


「カキーン！」


　捉えた！当たりもライナー性で悪くない！ヒットなら同点だ！


　俺は慌てて一塁方向へ走り出した。


『パシッ』


「ああっ……」


　視界に捉えた光景に、思わず声が漏れる。左中間に向かって勢いよく飛んでいく俺の打球は、ショートがその場でタイミングよくジャンプし、そのグローブの中に収まってしまったのだ。


　あのままショートの頭上を越えていれば……。確実に１点入り、さらに逆転のチャンスになるところだった。それだけに今の１本は悔やまれた。


「どんまいどんまい！ナイスバッティングだったけど、運がなかったな。切り替えていこうぜ！」


　ネクストバッターサークルにいた明が、俺に声をかけてからグローブを取りにベンチに引き返していく。


　試合はまだ終わっていない。あと攻撃は２回。まだチャンスはのこされているはずだ。


　もう１度打順が回ってくると信じて、控えの木下が持ってきてくれたファーストミットを受け取ってから守備位置に向かうのだった。








「ゲーム！」


「「ありがとうございました！」」


　結果は３対１で負けてしまった。初回の失点以降踏ん張っていた明が相手打線にとうとう掴まり、８回に２点を失った。


　９回裏に３番、４番の連続ツーベースヒットで１点返したものの反撃及ばず、俺に回ってくる前に攻撃は終了した。


「負けはしたが、惜しいゲームだった。この敗戦は必ず夏に繋げよう。ここから長い冬が始まるから、次の練習までに各々しっかり気持ちを切り替えるんだぞ。特に２年生。お前らは次がラストチャンスだからな」


　ミーティングが終わり、学校に帰る。学校に着いて部室に荷物を置いたあと、特に会話もなく、一人また一人と帰宅していった。俺は木下に声をかけ、誰も残っていない室内練習場でお互いが疲れて動けなくなるまでバッティング練習を続けたのだった。






『今年はもう試合はないんですか？』


『あぁ今のところ予定していない』


　翌日の練習中、いつものように山田監督と心の中で会話をする。現在はランナーが一塁にいる状況での様々な攻め方を確認、練習しているところだった。


『まぁ息抜きに紅白戦くらいはやるだろうが基本は練習あるのみだな。まだ試合どうこうっていうレベルではないし。試合を増やすと、それに応じてどうしても練習時間が減ってしまうからな』


『まぁ、確かにそうですけど……』


　試合は大体１試合２時間前後ほどかかる。それに合わせて準備や片付けにも時間は取られるので、さらに時間はかかると考えなければならない。公式戦がしばらくない以上、実践経験を積むよりも基本的な力や技術を高めたることの方がうちのチームには必要だろう。


『１２月から３月序盤までは対外試合が禁止になるから、次の試合は３月だな』



『半年間も練習三昧か。まぁ覚悟はしてたけど、改めて言われると辛いなぁ』


　俺はこれからは何年もこの辛いオフシーズンを繰り返さなければならない。秋の県大会や関東大会までいけるようになれば、オフシーズンは今よりも短くなる。早くそのレベルのチームになることを目指すしかないな。


『とりあえずは走塁でいいんですね？』


『あぁ、月末報告を聞くまでは継続だ』


　俺の地獄はここから始まるのか……。