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1年目〜3年目 近藤 裕太編
紅白戦
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「今日は紅白戦を行う!試合開始は1時間後だ。キャプテンチームと副キャプテンチームに別れて行う。チーム分けとオーダーは俺が考えてきたから、試合開始前に発表する。では、試合開始前と同じアップを始めてくれ」
どうやら今日は紅白戦をするらしい。本入部になって最初の土曜日、いきなりアピールするチャンスがやってきた。
毎年初戦敗退のこのチームで勝ち上がるには、少しでも能力がある選手を使いたいからだろう。前回までの監督は年功序列にこだわっていたらしく、そこを大幅に変えてきたのだ。……まぁ、過去の俺がそう考えたことだから、分かることなんだけど。
俺はランニング、ストレッチ、キャッチボールとアップを済ませ、山田監督によるシートノックを受けて試合モードに切り替わっていった。
今日まで基礎的な練習しかできなかった俺は、練習後に毎日室内練習場に残り、打撃練習を行っていた。
同じクラスで、小学校から一緒に野球をしてきた石井 明とこういう機会でしっかりアピールできるように、密かに準備してきたのだ。まぁ、このタイミングで紅白戦があると知っていたから準備してこれたのだが……。
「いやー、裕太が言ってたように、すぐアピールチャンスが来たな!」
「言った通りだったろ?後はお互いしっかりアピールして、レギュラーを掴もうぜ!」
「おう!」
すべての準備が終わったところで、山田監督から紅白戦のオーダーが発表された。
「じゃあオーダーを発表する。名前を呼ばれたら返事するように、ではキャプテンチームから……」
〇キャプテンチーム
1センター 牧田 3年
2セカンド 川内 2年
3キャッチャー 太田 3年
4ライト 山内 3年
5レフト 秋田 2年
6サード 木下 1年
7ファースト 近藤 1年
8ピッチャー 会田 3年
9ショート 町村 1年
控えピッチャー 石井 1年
〇副キャプテンチーム
1レフト 北野 2年
2センター 田中 2年
3ショート 藤田 3年
4サード 櫻田 3年
5ファースト 斉藤 2年
6キャッチャー 水谷 1年
7セカンド 越後 2年
8ライト 杉山 1年
9ピッチャー 島内 3年
控えピッチャー 佐藤 2年
控えピッチャー 山路 1年
俺はキャプテンチームの7番ファーストだった。昔のことすぎるので、オーダーを具体的に覚えていたわけではなかった。しかし、人数的にもスタメンは分かっていたことだったのでそこまで驚くことはなかった。
「まぁピッチャーは先輩優先なのは分かるけど、スタメン落ちは悔しいな……」
「それでも3イニング投げさせてもらえるんだから良かったじゃん!」
「そうだな……同じチームだから勝負できないなのは残念だけどな」
「まだ硬式に慣れてないし、ヒットを打つのは難しいかもな。まぁ、お互い頑張ろぜ」
俺は同じチームになった明とオーダーについて、言葉を交わす。活躍するとは言っても、俺と明を含めて1年生全員が中学校では軟式野球出身だ。
この違いの中でいきなり結果を出すのは、投手も野手も厳しいだろうが、やるからには結果を残したいものだ。
試合は山田監督が審判。控え投手たちは1人が1塁塁審、残り2人が登板に向けて肩を作っていた。
先行は副キャプテンチームなので、俺はファーストの守備についている。先発の島内さんはこのチームのエースなので、そこまで打ち込まれることはないだろう。
「バッター打ってこいやー!」
俺は守備位置から声を出し、ピッチャーを鼓舞する。内心では飛んでくるなと祈りながら、強気に声を出すのだった。
2回までどちらもヒットが出ず、投手戦となった。3回表、先発の島内さんは疲れからかツーアウトから9番バッターをファーボールで歩かせ、この試合初めてランナーの出塁を許す。
しかし、次のバッターをセンターフライに打ち取り、ほぼ完璧な内容で投球を終えるのだった。
3回裏になり、先頭バッターは俺だ。相手チームの先発島内さんはここまで打たせてとる投球でノーヒットに抑えている。ただ、結構打者陣はいい当たりを飛ばし、守備の正面で惜しくもアウトというのが多かったように思う。
「さて、どうするか。アピールのためには1本打っておきたいところだが……」
ここまでの配球的には、初球はストレートが多かった。ここは思い切って、ストレートに狙いを絞ってフルスイングしてみることにした。
「ん?」
『狙いの球種→ストレート
打ち方 →フルスイング
成功確率 →10%』
頭の中に、変な声が聞こえてくる。気にせず俺は打席に入った。
ピッチャーと対峙し、投球動作に合わせて左足をあげてタイミングを合わせる。
マウンドから向かってくるボールに向けて、俺は思いっきりバットを振った。
『カキーン』
「……ファール」
俺の打った打球は、ライト方向に切れていきファールとなった。走り出そうとしていた俺は、主審の山田監督の声で走るのをやめ、もう一度打席に入り直した。
うーん、球種は合ってたけどストレートに振り遅れたなぁ。ここは変化球に狙いを変えて、とりあえずフェアゾーンに打球を飛ばそう。
『狙いの球種→変化球
打ち方 →ミート重視
成功確率 →20%』
……やっぱり頭の中から声が聞こえてきた。後で神様に聞くとして、俺は目の前の試合に集中することにした。
『カキーン』
「……アウト」
結果はショートゴロ。狙い通りの変化球で、カーブがきたので俺は打ち返すことが出来た。しかし、打球はそこまで早くもなく、難なく処理され初打席はショートゴロに終わった。
その後もサードゴロ、セカンドフライ、センターフライと、ヒットを打つことなく試合は終わった。結果は1対1で引き分けだった。
「先輩に打たれて1点取られたけど、三振を2つ取れたし、四死球もなし。まぁ、悪くなかったぜ!」
「俺は4打数ノーヒット。エラーはなかったけど、特に目立つプレーも出来なかったな……」
「あー……まぁ、なんだ、元気出せよ。帰りに何か奢ってやるから」
1日練習を終えた俺は、帰りに良いピッチングをして上機嫌の明に慰められながら、家に帰るのだった。
「…………神様にメールしとくか」
俺は打席に入るときに頭の中で聞こえてきた声について、神様にメールして聞いてみることにした。
連絡先を見ると、なぜが普通に神様の連絡先が入っていた。電話番号はなかったので、メールで聞くしかないだろう。
「……これでよし、と。そういえば返信には時間がかかるかもしれないって最初のメールにあったな」
俺は質問を書き終えて送信し、すぐに画面を閉じた。返信は気になるがいつ返ってくるか分からないし、明日も1日練習があるので早く休みたかった。
「まぁ、来週中には返してくれるだろう」
俺はそんなふうに考えながら、ベットに入り目を閉じるのだった……。
どうやら今日は紅白戦をするらしい。本入部になって最初の土曜日、いきなりアピールするチャンスがやってきた。
毎年初戦敗退のこのチームで勝ち上がるには、少しでも能力がある選手を使いたいからだろう。前回までの監督は年功序列にこだわっていたらしく、そこを大幅に変えてきたのだ。……まぁ、過去の俺がそう考えたことだから、分かることなんだけど。
俺はランニング、ストレッチ、キャッチボールとアップを済ませ、山田監督によるシートノックを受けて試合モードに切り替わっていった。
今日まで基礎的な練習しかできなかった俺は、練習後に毎日室内練習場に残り、打撃練習を行っていた。
同じクラスで、小学校から一緒に野球をしてきた石井 明とこういう機会でしっかりアピールできるように、密かに準備してきたのだ。まぁ、このタイミングで紅白戦があると知っていたから準備してこれたのだが……。
「いやー、裕太が言ってたように、すぐアピールチャンスが来たな!」
「言った通りだったろ?後はお互いしっかりアピールして、レギュラーを掴もうぜ!」
「おう!」
すべての準備が終わったところで、山田監督から紅白戦のオーダーが発表された。
「じゃあオーダーを発表する。名前を呼ばれたら返事するように、ではキャプテンチームから……」
〇キャプテンチーム
1センター 牧田 3年
2セカンド 川内 2年
3キャッチャー 太田 3年
4ライト 山内 3年
5レフト 秋田 2年
6サード 木下 1年
7ファースト 近藤 1年
8ピッチャー 会田 3年
9ショート 町村 1年
控えピッチャー 石井 1年
〇副キャプテンチーム
1レフト 北野 2年
2センター 田中 2年
3ショート 藤田 3年
4サード 櫻田 3年
5ファースト 斉藤 2年
6キャッチャー 水谷 1年
7セカンド 越後 2年
8ライト 杉山 1年
9ピッチャー 島内 3年
控えピッチャー 佐藤 2年
控えピッチャー 山路 1年
俺はキャプテンチームの7番ファーストだった。昔のことすぎるので、オーダーを具体的に覚えていたわけではなかった。しかし、人数的にもスタメンは分かっていたことだったのでそこまで驚くことはなかった。
「まぁピッチャーは先輩優先なのは分かるけど、スタメン落ちは悔しいな……」
「それでも3イニング投げさせてもらえるんだから良かったじゃん!」
「そうだな……同じチームだから勝負できないなのは残念だけどな」
「まだ硬式に慣れてないし、ヒットを打つのは難しいかもな。まぁ、お互い頑張ろぜ」
俺は同じチームになった明とオーダーについて、言葉を交わす。活躍するとは言っても、俺と明を含めて1年生全員が中学校では軟式野球出身だ。
この違いの中でいきなり結果を出すのは、投手も野手も厳しいだろうが、やるからには結果を残したいものだ。
試合は山田監督が審判。控え投手たちは1人が1塁塁審、残り2人が登板に向けて肩を作っていた。
先行は副キャプテンチームなので、俺はファーストの守備についている。先発の島内さんはこのチームのエースなので、そこまで打ち込まれることはないだろう。
「バッター打ってこいやー!」
俺は守備位置から声を出し、ピッチャーを鼓舞する。内心では飛んでくるなと祈りながら、強気に声を出すのだった。
2回までどちらもヒットが出ず、投手戦となった。3回表、先発の島内さんは疲れからかツーアウトから9番バッターをファーボールで歩かせ、この試合初めてランナーの出塁を許す。
しかし、次のバッターをセンターフライに打ち取り、ほぼ完璧な内容で投球を終えるのだった。
3回裏になり、先頭バッターは俺だ。相手チームの先発島内さんはここまで打たせてとる投球でノーヒットに抑えている。ただ、結構打者陣はいい当たりを飛ばし、守備の正面で惜しくもアウトというのが多かったように思う。
「さて、どうするか。アピールのためには1本打っておきたいところだが……」
ここまでの配球的には、初球はストレートが多かった。ここは思い切って、ストレートに狙いを絞ってフルスイングしてみることにした。
「ん?」
『狙いの球種→ストレート
打ち方 →フルスイング
成功確率 →10%』
頭の中に、変な声が聞こえてくる。気にせず俺は打席に入った。
ピッチャーと対峙し、投球動作に合わせて左足をあげてタイミングを合わせる。
マウンドから向かってくるボールに向けて、俺は思いっきりバットを振った。
『カキーン』
「……ファール」
俺の打った打球は、ライト方向に切れていきファールとなった。走り出そうとしていた俺は、主審の山田監督の声で走るのをやめ、もう一度打席に入り直した。
うーん、球種は合ってたけどストレートに振り遅れたなぁ。ここは変化球に狙いを変えて、とりあえずフェアゾーンに打球を飛ばそう。
『狙いの球種→変化球
打ち方 →ミート重視
成功確率 →20%』
……やっぱり頭の中から声が聞こえてきた。後で神様に聞くとして、俺は目の前の試合に集中することにした。
『カキーン』
「……アウト」
結果はショートゴロ。狙い通りの変化球で、カーブがきたので俺は打ち返すことが出来た。しかし、打球はそこまで早くもなく、難なく処理され初打席はショートゴロに終わった。
その後もサードゴロ、セカンドフライ、センターフライと、ヒットを打つことなく試合は終わった。結果は1対1で引き分けだった。
「先輩に打たれて1点取られたけど、三振を2つ取れたし、四死球もなし。まぁ、悪くなかったぜ!」
「俺は4打数ノーヒット。エラーはなかったけど、特に目立つプレーも出来なかったな……」
「あー……まぁ、なんだ、元気出せよ。帰りに何か奢ってやるから」
1日練習を終えた俺は、帰りに良いピッチングをして上機嫌の明に慰められながら、家に帰るのだった。
「…………神様にメールしとくか」
俺は打席に入るときに頭の中で聞こえてきた声について、神様にメールして聞いてみることにした。
連絡先を見ると、なぜが普通に神様の連絡先が入っていた。電話番号はなかったので、メールで聞くしかないだろう。
「……これでよし、と。そういえば返信には時間がかかるかもしれないって最初のメールにあったな」
俺は質問を書き終えて送信し、すぐに画面を閉じた。返信は気になるがいつ返ってくるか分からないし、明日も1日練習があるので早く休みたかった。
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