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ある日の家庭教師
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ちょっと重い気分で小田急に乗り成城学園前で下車、何時もの道を何時ものように歩いていた。すると
「先生!」
と、弾んだ声で後ろから声を掛けられた。振り向くと学校の制服をきた麗佳がいた。
「こんばんは。」
彼女は何時もの癖で首をやや右に傾けながら挨拶してきた。
「こんばんは、今日は遅かったんだね。」
こうして見るとかなりいい感じのお嬢なんだけれど、天は二物を与えないらしい。
「先生、先に帰って用意をしますからゆっくりいらして下さい。」
「うん、いいよ。」
僕がそう言うと、彼女は小走りで走っていった。僕は取りあえずコンビニに寄って週刊誌を立ち読みすることにした。(もちろん変な雑誌ではありません、一応。)
今夜の麗佳は何故か素直だった。だから勉強もスムーズに進み時間にゆとりができた。
早く帰れるぞ、ラッキーと思った矢先、麗佳の表情が一変した。
「カツミの彼女見たよ、趣味悪いね。」(オイオイ、余計なお世話だ。)
「何処で?」
「小田急でカツミがデレデレしてるのみてわかった。隣に立ってるおばちゃんが彼女だって。」
「おばちゃん?」
って、モモも中学生からみたらおばちゃんになるのかな?最近は高校生でも自分の事をおばさん何て言ったりするからな。
「うん、カツミより年上でしょ。それに趣味も悪いね。」
言葉の割に、どこか元気ないような気がした。
そんな麗佳は、ちょっと心配だけどナイフの飛び方は尋常じゃなかった。それでつい僕は、やや冷静さを失って強い口調で言ってしまったんだ。
「それは、君とは関係無い事だ。」って。
麗佳は鋭い視線で僕を見つめたかと思うと、いきなり僕の胸に飛び込んできた。突然の展開に、『何がどうした?』的状態のまま暫く呆然としていた。そしてそっと見下ろすと、僕の腕の中で泣きじゃくっている麗佳がいた。
「ごめんね。」
と、どうして僕が謝らなきゃいけないのかわからないまま、何とかこの状況を落ち着かせようと何度も繰り返していた。
すると、
「ごめん。」
と呟き、突然机に向かった麗佳は
「出てって。」
と曰う。思春期の女の子の心理は難しい。読めない。
『一体何が起きたんだろう?』的気持ちをひきづりながら、僕は麗佳の部屋を出た。麗佳に気持ちを残したまま僕は家路についた。あんな麗佳は初めてだ。学校で何かあったのだろうか。もしかしたら『いじめ』?だんだんと僕の中で不安が膨らんできた。性格はあまり良くないけど一応僕の生徒だし、最近変なニュース続いてるし、発作的に死んじゃう一部の超刹那的中高生の実態もあるし、と明日の朝刊の見出しさえ脳裏に浮かんできたりしたのだった。とりあえず駅から彼女の家に電話して、彼女の母親にそれとなく彼女に気を配るようにお願いした。余計なお世話だとしても何かあったら困るからね。だって麗佳は、まだ中学三年生、十五歳なんだから、独りでは解決出来ない問題は山ほどあるし死にたくなる位に困ることだってきっとあるだろうと思う。(でも命をかける程の問題なんて、そんなに沢山ある訳じゃないってことがわかってくるのが、ある意味大人になるってことかもしれない。取りあえず困った状況になったら、百メートル十四秒以上のスピードで逃げてみたらいいよ。それで逃げ切れるなら大切な問題じゃないことが多い。)
電話を終えてほっとした僕は、明日のモモとのデートの事を考えて、少しずつ、まったりな気分になっていった。
翌朝はモモと渋谷で待ち合わせて、一日一緒に過ごした。買い出しした物は、ほとんど期日指定で送ってもらうので楽な買い物だった。一通り買い物を終えて、僕らは代官山で昼食をとることにした。モモが調べてくれた評判のお店は、フレンチだけどランチサービスがあって、お手頃価格で、しかも本格的なコースを味わう事ができた。その後は、お洒落なショップ巡りをしながら散策を楽しんだ。もちろん見るだけ、今は。いつかは
「これなんか、君に似合うね。」
なんて言いながら、買い物できたらカッコイイなとか空想しながら… そんなたわいもない一日だったけど僕にはかけがえのない楽しい思い出になった。夕食は残念ながらモモに先約があり渋谷で別れたけれど、充実した素敵な一日だった。
「先生!」
と、弾んだ声で後ろから声を掛けられた。振り向くと学校の制服をきた麗佳がいた。
「こんばんは。」
彼女は何時もの癖で首をやや右に傾けながら挨拶してきた。
「こんばんは、今日は遅かったんだね。」
こうして見るとかなりいい感じのお嬢なんだけれど、天は二物を与えないらしい。
「先生、先に帰って用意をしますからゆっくりいらして下さい。」
「うん、いいよ。」
僕がそう言うと、彼女は小走りで走っていった。僕は取りあえずコンビニに寄って週刊誌を立ち読みすることにした。(もちろん変な雑誌ではありません、一応。)
今夜の麗佳は何故か素直だった。だから勉強もスムーズに進み時間にゆとりができた。
早く帰れるぞ、ラッキーと思った矢先、麗佳の表情が一変した。
「カツミの彼女見たよ、趣味悪いね。」(オイオイ、余計なお世話だ。)
「何処で?」
「小田急でカツミがデレデレしてるのみてわかった。隣に立ってるおばちゃんが彼女だって。」
「おばちゃん?」
って、モモも中学生からみたらおばちゃんになるのかな?最近は高校生でも自分の事をおばさん何て言ったりするからな。
「うん、カツミより年上でしょ。それに趣味も悪いね。」
言葉の割に、どこか元気ないような気がした。
そんな麗佳は、ちょっと心配だけどナイフの飛び方は尋常じゃなかった。それでつい僕は、やや冷静さを失って強い口調で言ってしまったんだ。
「それは、君とは関係無い事だ。」って。
麗佳は鋭い視線で僕を見つめたかと思うと、いきなり僕の胸に飛び込んできた。突然の展開に、『何がどうした?』的状態のまま暫く呆然としていた。そしてそっと見下ろすと、僕の腕の中で泣きじゃくっている麗佳がいた。
「ごめんね。」
と、どうして僕が謝らなきゃいけないのかわからないまま、何とかこの状況を落ち着かせようと何度も繰り返していた。
すると、
「ごめん。」
と呟き、突然机に向かった麗佳は
「出てって。」
と曰う。思春期の女の子の心理は難しい。読めない。
『一体何が起きたんだろう?』的気持ちをひきづりながら、僕は麗佳の部屋を出た。麗佳に気持ちを残したまま僕は家路についた。あんな麗佳は初めてだ。学校で何かあったのだろうか。もしかしたら『いじめ』?だんだんと僕の中で不安が膨らんできた。性格はあまり良くないけど一応僕の生徒だし、最近変なニュース続いてるし、発作的に死んじゃう一部の超刹那的中高生の実態もあるし、と明日の朝刊の見出しさえ脳裏に浮かんできたりしたのだった。とりあえず駅から彼女の家に電話して、彼女の母親にそれとなく彼女に気を配るようにお願いした。余計なお世話だとしても何かあったら困るからね。だって麗佳は、まだ中学三年生、十五歳なんだから、独りでは解決出来ない問題は山ほどあるし死にたくなる位に困ることだってきっとあるだろうと思う。(でも命をかける程の問題なんて、そんなに沢山ある訳じゃないってことがわかってくるのが、ある意味大人になるってことかもしれない。取りあえず困った状況になったら、百メートル十四秒以上のスピードで逃げてみたらいいよ。それで逃げ切れるなら大切な問題じゃないことが多い。)
電話を終えてほっとした僕は、明日のモモとのデートの事を考えて、少しずつ、まったりな気分になっていった。
翌朝はモモと渋谷で待ち合わせて、一日一緒に過ごした。買い出しした物は、ほとんど期日指定で送ってもらうので楽な買い物だった。一通り買い物を終えて、僕らは代官山で昼食をとることにした。モモが調べてくれた評判のお店は、フレンチだけどランチサービスがあって、お手頃価格で、しかも本格的なコースを味わう事ができた。その後は、お洒落なショップ巡りをしながら散策を楽しんだ。もちろん見るだけ、今は。いつかは
「これなんか、君に似合うね。」
なんて言いながら、買い物できたらカッコイイなとか空想しながら… そんなたわいもない一日だったけど僕にはかけがえのない楽しい思い出になった。夕食は残念ながらモモに先約があり渋谷で別れたけれど、充実した素敵な一日だった。
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