友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜

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猿渡の言葉の意味を鬼頭だけが理解したらしい。
綺麗な顔を歪ませて舌打ちまでしていた。

鬼頭が舌打ち……俺の知っている鬼頭が尽く壊れていく。

「似た者同士って……全然違うだろ?鬼頭はアンタみたいなクズでもなければ下半身ゆるゆるでもない」

「相変わらず俺にだけ容赦ないねぇ。
そういう性格の部分じゃなくてさ、もっと根っこの部分がおんなじなの」

「全く分かんねーんだけど」

「あはは、お馬鹿な桃クンにも分かるように話してあげるよ」

一々苛つかせてくるんだけど、コイツ。

馬鹿にされて不愉快な俺とは逆に、何故かとても楽しそうな猿渡が話を続ける。
その口元は緩んで口角が上がりまくっている。


「結月も俺もね【執着心】がとにかく強いの。
気に入ったものは自分の中に閉じ込めて誰にも触らせたくないし見せたくない」

さっき鬼頭が言ってた独占欲が強いっていうやつだろうか。

誰にだってそういう一面はあるだろう。
俺にだって少なからずある。

「多分だけど、桃クンが考えてるような可愛らしいものじゃないと思うよ。
俺と結月はお互いが求めている物が分かるから、4年も付き合ってこれたんだ」

そういえば、この二人は高校生の頃からの付き合いだったっけ。

よく続いたよなぁ。

「まぁそれも、桃クンに出逢ってブチ壊されたワケだけど」

「何でもかんでも俺のせいにすんなよ。
アンタが浮気なんかしなければ別れずに済んだだろうが」

「ははっ、違う違う。桃クンに出逢って見つけちゃったんだよ。
自分の渇きを満たす存在モノを」

「は?」

「俺達はね、いっつもどこか飢えてたの。
何をしてても満たされないって感じかなぁ……同じ飢えを抱えていたからお互いに依存して補充し合ってたんだねぇ」

「まぁ、今にして思えばお前との付き合いは『共依存』に近かったなと思うよ。
付き合ってた時は本気で愛してたけどね」

「俺は今だって愛してるよ。結月は唯一、俺とおんなじ子だから」

「でも今はもっと欲しいものがある……だろう?」

「流石、俺の同類だ。うん、結月よりも欲しい子ができたから……別れよう」

「さっき別れてるけどね」


またしても眼の前で繰り広げられている会話に全くついて行けない。

でも、さっきと違って今度は円満に別れられたみたいだから……いいのか?



「ライバルが一気に増えた」

俺を抱き締める腕に力を込めた翠が何かを呟いていたが、眼の前の会話に気を取られていた俺には聞こえなかった。
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