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鬼頭と猿渡の別れ話は何とか纏まった。
結局、猿渡は浮気を認めていないし、鬼頭を諦めるつもりもないらしいので、円満解決とはいかなかったが、恋人関係と同棲は解消するようなのでまぁ良かったのだろう。
鬼頭はまだまだ苦労しそうだけど。
残る問題は俺と翠の今後についてだ。
猿渡も一応は当事者なのだが、鬼頭と別れたばかりだし、翠に対して何の感情もないクズに話を聞くだけ無駄な気がする。
「鬼頭と猿渡。悪いんだけど、翠と話したいから今日の所は帰ってくれないかな」
鬼頭は荷造りもあるだろうから早めに帰った方がいいのではないだろうか。
「それなんだけど、今日は桃乃衣の部屋に泊めて貰えないかな?」
「え、俺はいいけど……荷造りはしなくていいのか?」
「貴士たかしに頼んで明日やるつもり。
このまま明楽と一緒の家に帰りたくないんだ」
貴士……ああ、あの人か。
【狗喰 貴士】
鬼頭の幼馴染で、俺達とは違う学校に通っている人だ。
何回か会った事があるんだが、見た目がとにかく怖い。
話せば優しい人だと分かるんだけど、とにかく見た目の怖さと圧が強過ぎて、未だに慣れない。
高い身長にガッシリとした体躯、紫のメッシュが入った黒い髪に吊り上がった黒い瞳は、狗というより狼の方が近いと思う。
怖さが上回ってしまうが、鬼頭と並んでも全く違和感がない辺り、彼もまた美形の部類に入るのだろう。
美形で硬派……男が憧れる男という感じだ。
「ええー、アイツ来るの?俺も泊めて。2泊3日ぐらい」
「ふざけんな、帰れ」
人の家をホテルか何かと勘違いしてないか、このクズは。
しかし、案の定というか……猿渡と狗喰は合わないらしい。
何を言われても大概の事は笑ってへらへらと流している猿渡が、眉間に皺を寄せて心底嫌そうな顔をしている。
(犬猿の仲とはよく言ったものだ)
まぁ、泊めてやる義理も部屋もないので全力で追い出すけど。
俺と鬼頭に断られたからなのか、猿渡が隣の翠の方に顔を向けて話だした。
さっきまでの猿渡を見ても、まだ翠はその男が好きなんだろうか。
心配で二人から目を逸らせず、聞き漏らすまいと話に集中する。
「雉羽センパイはいいの?結月と桃クンが同じベッドで寝るんだよ?」
何でそこを聞くんだ?
「…………………それは、嫌…だな」
んんん?
いまいち話が分からなくて首を傾げていると、何かを決心したのか、真っ直ぐに俺を見る翠と視線が合う。
いつもとは全く違う、垂れた目が射貫く様に俺を見ている。
爽やかさを感じる笑みも、柔らかい空気も全くない。
こんな翠の顔、初めて見た
異様な緊張感に知らずズボンを握り締め、その手には汗をかいていた。
何だ、これから何を言われるんだ俺は
「俺、ずっと陽斗の事が好きなんだ」
結局、猿渡は浮気を認めていないし、鬼頭を諦めるつもりもないらしいので、円満解決とはいかなかったが、恋人関係と同棲は解消するようなのでまぁ良かったのだろう。
鬼頭はまだまだ苦労しそうだけど。
残る問題は俺と翠の今後についてだ。
猿渡も一応は当事者なのだが、鬼頭と別れたばかりだし、翠に対して何の感情もないクズに話を聞くだけ無駄な気がする。
「鬼頭と猿渡。悪いんだけど、翠と話したいから今日の所は帰ってくれないかな」
鬼頭は荷造りもあるだろうから早めに帰った方がいいのではないだろうか。
「それなんだけど、今日は桃乃衣の部屋に泊めて貰えないかな?」
「え、俺はいいけど……荷造りはしなくていいのか?」
「貴士たかしに頼んで明日やるつもり。
このまま明楽と一緒の家に帰りたくないんだ」
貴士……ああ、あの人か。
【狗喰 貴士】
鬼頭の幼馴染で、俺達とは違う学校に通っている人だ。
何回か会った事があるんだが、見た目がとにかく怖い。
話せば優しい人だと分かるんだけど、とにかく見た目の怖さと圧が強過ぎて、未だに慣れない。
高い身長にガッシリとした体躯、紫のメッシュが入った黒い髪に吊り上がった黒い瞳は、狗というより狼の方が近いと思う。
怖さが上回ってしまうが、鬼頭と並んでも全く違和感がない辺り、彼もまた美形の部類に入るのだろう。
美形で硬派……男が憧れる男という感じだ。
「ええー、アイツ来るの?俺も泊めて。2泊3日ぐらい」
「ふざけんな、帰れ」
人の家をホテルか何かと勘違いしてないか、このクズは。
しかし、案の定というか……猿渡と狗喰は合わないらしい。
何を言われても大概の事は笑ってへらへらと流している猿渡が、眉間に皺を寄せて心底嫌そうな顔をしている。
(犬猿の仲とはよく言ったものだ)
まぁ、泊めてやる義理も部屋もないので全力で追い出すけど。
俺と鬼頭に断られたからなのか、猿渡が隣の翠の方に顔を向けて話だした。
さっきまでの猿渡を見ても、まだ翠はその男が好きなんだろうか。
心配で二人から目を逸らせず、聞き漏らすまいと話に集中する。
「雉羽センパイはいいの?結月と桃クンが同じベッドで寝るんだよ?」
何でそこを聞くんだ?
「…………………それは、嫌…だな」
んんん?
いまいち話が分からなくて首を傾げていると、何かを決心したのか、真っ直ぐに俺を見る翠と視線が合う。
いつもとは全く違う、垂れた目が射貫く様に俺を見ている。
爽やかさを感じる笑みも、柔らかい空気も全くない。
こんな翠の顔、初めて見た
異様な緊張感に知らずズボンを握り締め、その手には汗をかいていた。
何だ、これから何を言われるんだ俺は
「俺、ずっと陽斗の事が好きなんだ」
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