友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜

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何故こんなド修羅場に遭遇する事になってしまったのか……。
俺はただ自分の家に帰って来ただけだし、鬼頭は一緒に課題をしに来ただけだ。

猿渡は今日はバイトで遅くなるから、課題の後に一緒に夕飯でもどうかと鬼頭に誘われて、それなら同居人と三人で食べようと俺が家に招待したのだ。

どうせなら人数が多い方がいいかと思って家に誘ったのが間違いだったんだろうか


そんな事をつらつらと考えている間も、ドアの向こうからは絶え間なく行為に耽る二人の声が漏れ聞こえてくる。

防音なんかしていない薄いドアだから、声が全部だだ漏れだ。

『陽斗に声が聞こえる』だの『聞かせればいい』だのと言っているから、俺が帰って来た事ぐらいは分かっているらしい。

と言うより、俺に聞かせたがっているようだ…… 

鬼頭は家に入ってから一言も話してないから気付かれてないだけで、誰かに聞かせるプレイなのかもしれないけど。

勝手に人をプレイに巻き込まないで欲しい。


(ちょっと現実逃避をしてもいいだろうか)


既に頭がパンクしそうな俺のTシャツの裾を鬼頭が控え目に引っ張って来る。

俺より少しだけ低い位置にある綺麗な顔を悲しそうに歪ませ、唇に人差し指を押し当てている友人に顔を向ける。

白くて細長い指が俺の部屋を指したのを見て小さく頷き、足音を殺して二人で移動した。



俺の家は2LDKのマンションで、2つ上の従兄弟と同居している。

『陽斗はると、俺と一緒の大学入ったんだろ?良かったら、俺とルームシェアしない?
気になってる物件があるんだけど、家賃がちょっと高くてさー』

従兄弟のこの一言が同居するきっかけ。

家賃は折半して出して、他は俺と従兄弟で毎月話し合って都度出し合っている。

バイト代と仕送りを遣り繰りして何とか生活をしている状態だが、今の所、困窮した事はなかった。

ひとえにそれは、従兄弟のおかげかもしれない。


従兄弟の【雉羽 翠きじう みどり】は、俺の従兄弟とは思えないぐらい顔の作りが大変よろしい男なのだ。

少しだけ垂れたアーモンド型の茶色い目に、同じチョコレート色の短く整えられた髪。
爽やか系な美形の従兄弟は、やはり大層おモテになるようで、ありとあらゆる物を貢がれて帰ってくる。


いつだったか、彼の誕生日に欲しい物を聞かれた時に

『食料とか日用品だと嬉しい』

と言ったそうで、それからは毎日のように様々な食べ物と日用品が送られて来るようになった。

流石に、明らかに手作りだと分かる物は何が入っているのか分からないからそっと処分させて貰ったが、それ以外は有難く頂戴している。

食費や日用品代を節約できるのはかなり大きい。


美形って本当に得だよな。
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