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鬼ごっこと不良の王様

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「あの…そろそろ始まるので……手を離して下さい……んんっ」

さっきから至近距離で見つめられてるから周りの視線が怖いし、指をすりすりと動かされると擽ったくて変な声が出て困る。

「………園宮、ここ弱いんだ?」

「知らなっ……ゃっ…くすぐったい…っ!」

「っ……ははっ、かわいい…離したくないな」

「やだっ…たら!……ひっ…んっ」

ぞわぞわするから本当に止めて欲しい。

懇願するように見つめた先にいる雪先輩は、これまた見た事がない顔をしていた。

………捕食者

そんな言葉がぴったりな程、いつもは涼やかな翠色の瞳に謎の欲が滲んでいた。

「雪先輩……っ」

怖くなって叫ぶ様に呼んでしまう。

それでも離してくれない雪先輩にどうしようかと戸惑っている時だった。


「おいこら姫乃塚てめぇ!逃走者が逃走者捕まえて欲情してんじゃねぇぞ!
さっさと持ち場につきやがれ。俺が直々に捕まえに行ってやるから泣いて感謝しろ」


マイク越しに会長の怒声が校庭中に響き渡る。

その声につられるようにして周りを見渡すと、周囲だけだったはずの野次馬が、全校生徒に変わってしまった。


恐るべし生徒会長。


流石の雪先輩も会長の言葉には従ってくれるようだ。

しばらく見つめ合った後、大きく息を吐いた雪先輩がやっと手を離してくれた。


「名残惜しいけど仕方ないね」


まだ指の股を擦られた感触が残っててぞわぞわする。
指を擦りながら壇上に上がっている会長に視線を移した。

よくあんな所から見つけられたな……

関心していると、琥珀色の瞳と視線が合わさる。


『捕まった』


心臓を鷲掴にされるってこんな感じなんだろうか。

自分の身体なのに、指先一つ、瞬き一つ自分の意志で出来ない。


ただ……目が合っているだけなのに…全てを支配されているようだ


多分、実際に目が合っていたのは、ほんの数秒の出来事だったんだと思うが、俺には数十分のように感じていた。

そんな数秒の見つめ合いの後、会長の形のいい唇が笑みの形を作った。

琥珀色の瞳を弧の形にし、楽しそうに笑った会長の口元は間違いなくこう動いた。



『みつけた』



あまりの恐怖に会釈だけしてその場から逃げるように去ってしまった。

実際、逃げたんだけどな……怖かった。



とんでもない事になった気がする。

更に追い詰められた感が凄いけど……考えたくないから、雪先輩の戯れから助けてくれたんだと思う事にしよう。


現実逃避をしながら、出来るだけ人が少ない場所へ行こうとしていると、未だに俺の側にいたらしい雪先輩が声を掛けて来た。



「園宮、決して人気ひとけがない所に逃げてはいけないよ?」



「?はい、分かりました」



この時、雪先輩の忠告をもっと重く受け止めていたら……



あんな【厄介事】に巻き込まれずに済んだんだろうか
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