平凡くんと【特別】だらけの王道学園

蜂蜜

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親衛隊隊長と風紀委員長

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【百鬼 征一郎Side】

「委員長、何を食べますか?」


どうやら俺から分けてくれるらしい。

眼の前で西園寺が『ずりぃ!』と騒いでいるが関係ない。

園宮が【俺】を先に選んだのだから。


不思議な奴だ。


園宮自身に特別な華やかさがある訳でもなく、性格もどちらかと言うと大人しくて控え目な印象だ。

かと思えば先程のような辛辣な言葉を吐く。

あれは完全に口が滑ったといった感じだったが、意外と苛烈な性分を併せ持っているのかもしれない。


表情が一切変わらないから何を考えているのか分かりにくいのだが、さっきのあれは……正直かなりヤバかった。


俺達から許す口実が得られたのが余程嬉しかったのか、微かに笑った園宮の瞳が涙で潤んでいたのだ。


元々、容姿には然程拘りはないのだが、流石に今日出会ったばかりの、凡庸な後輩…それも男の泣き顔にあんなに興奮するとは思わなかった。

知らなかっただけで、俺は加虐の気があったのだろうか。

断じてそんな事はない……と思いたい。


「委員長?」

「ああ、すまない。じゃあ…卵焼きを貰えるか?」

「はい。お箸、借りますね」


園宮の声で別の思考に飛んでいた意識が引き戻される。
いかんな、折角園宮が作った料理を分けてくれるのだから、きちんと味わって食べないと。

俺から箸を受け取った園宮が、綺麗な黄色の卵焼きを俺の取皿に移してくれた。


さっきからずっと思っていたのだが、園宮は一つ一つの仕種がとても綺麗だな。

姿勢もいいし、真っ直ぐにこちらを見つめて話してくるのも好ましい。


調べでは確か実家はこれといった特徴のない、所謂【一般家庭】というやつだったのだが、最近の一般家庭はみんなこんなに綺麗な人間を産み出しているのか?

凄いな。

感心しながら、皿に移された卵焼きを口に含むと、甘く味付けされた出汁が口いっぱいにじゅわっと広がった。
色味だけではなく、味付けも完璧だ。

普段食べている、料亭や食堂で出されるプロが作るような物ではない、家庭の味というのがピッタリ当て嵌まる……それがとてつもなく美味く感じた。


「美味い」


気になっていたのだろう。
チラチラとこちらを見ている園宮の方を向いて素直な感想を伝える。


「お口に合って良かったです」


そう言った園宮の顔が、何と言うか……とても可愛らしかった。


垂れ気味の目尻を更に下げ、頬と口角を緩ませて笑った顔は、ふにゃりと効果音が付きそうだ。

ここまで嬉しそうな顔をされると、こちらも良い事をしたような気分になって、つられて笑ってしまった。

衝動のまま園宮の頭に手を伸ばして撫で回していると、向かいに座っている西園寺がキャンキャンと騒ぎ出した。


煩い奴だな。


あろう事か西園寺の馬鹿は、メインであろう生姜焼きを貰っていた。

あいつ、後で絞める。

少しは遠慮をしろという意味で西園寺を睨んだのをどう勘違いしたのか、水筒に入っていた味噌汁まで分けてくれた。

これがまためちゃくちゃ美味かった。


園宮はこの学校に花嫁修業でもしに来たのか?と思ってしまったのはきっと俺だけではないはずだ。


粗方頼んだ料理が片付く頃には園宮もだいぶ俺達に打ち解けてくれたように思う…… 突然呼出して、萎縮させたまま話を聞くのは流石に申し訳ないと思っていたのだ。

隣にいる園宮の雰囲気や話す声音が、ほんの少し柔らかくなっていて安心した。

相変わらず表情は変わらないが。


そろそろいいだろう……向かいに座る西園寺を見ると同意するように頷いて返される。


胸ポケットから携帯を取出して園宮の前に置く。


そこには、昨日の昼休みの1年S組での騒動が写っていた。


「何があったのか、説明してくれるな?」
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