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親衛隊隊長と風紀委員長

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カップソーサーにカップを置いて改めて園宮へ視線を向ける。


面接以来だし、もっと園宮との時間を堪能したいけど、親衛隊隊長としてやるべき事はやらないとね。


「園宮、今日の昼休みに夢咲永遠と揉めたっていうのは本当かな?」


そう、昼休みに1年生の親衛隊の子から、園宮が件の転校生と揉めているらしいと副隊長づてに連絡が入った。

その子も様子が気になったらしいが、S組に駆け付けた時には既に人垣の山で、全く当事者には近寄れなかったのだとか。

更に、余りにも人が集まってしまった為に、風紀委員が駆り出されそうになったとか……あいつ等が関与する前に事態が収まったらしいから良かったけど。


昼休み、最近の会長は食堂にいる事が多いから、必然的に僕達親衛隊も食堂に集まる。

だから、1年S組で起きた騒動を見ていた会長の親衛隊がいないのだ。

本人からしか証言が取れないのは真偽がハッキリしなくて厳しいけれど、園宮は僕に嘘をつかないと信じよう。


「揉めたというより……教室の出入口を塞いでいて邪魔だったので、そこをどいて下さいとお願いしました」

「園宮が?邪魔だって言ったの?」


ちょっと信じられなかった。

園宮が誰かに強い物言いをしている所が想像できない。
意外に勝ち気な子なんだろうか。


「はい。俺ではなくてクラスメイトと揉めていて、内容が堂々巡りで埒が明かなかったので、少しだけお説教をしてどいて貰いました」

「説教……何て言ったの?」

「時と場所を考えて欲しいと……あと、目立つ君たちが他人に与える影響を考えるべきだと」

「それはそれは」



「…‥………俺の取った行動は駄目…でしたか?」


小さく首を傾げて問い掛けてくる園宮はとても可愛かった。

このタイミングで表情変わるの狡くないかな?

何その叱られる前の不安そうな子供みたいな顔。

眉尻も目尻も下がってて、真っ直ぐ見つめてくる瞳がほんの少し潤んでて、口元なんかきゅって締めて。


えええ、何なのかなこの可愛い後輩。


思わず手を伸ばして園宮の頭を撫でた。

え、この子の髪の毛のサラサラ具合異常じゃない?


「駄目ではないよ。教室の出入口を塞がれたら誰だって困ってしまう。
園宮は、周りの迷惑を考えて欲しいってお願いしただけなんだろう?」

「はい」

「それは主張すべき事であって、それをしたからと言って制裁にはなり得ないから安心しなさい」

「はい………ありがとうございます。雪先輩」


より垂れた目尻とほんのりと弧を描く瞳、微かに上がった口角。



園宮ってこんな風に笑うんだね








「は?可愛いんだけど」
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