平凡くんと【特別】だらけの王道学園

蜂蜜

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王道転校生とルームメイト

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「はぁあ……」

「おい、その辛気臭ぇため息を止めろ。何回目だと思ってやがる」


隣に座っている右京が鬱陶しげに声を掛けて来た。


それもそうだ。

食事の時からずっと上の空で、まともに右京達と話していない。
相槌もかなり適当だった気がする。

訝しげな顔で見られたが、どう説明していいのか分からないから話せなくて『何でもない』としか返せない。


自分でもらしくないと思っている。



園宮の腕を掴んだ手をじっと見つめる。

細かった……俺より背が高いのに掴んだ手は細くて、筋肉があまり付いていないのか、ちょっとだけ柔らかくて……


引き寄せた時、いい匂いがした


香水って感じじゃなかったから、洗濯物の匂いかな……園宮自身もいい匂いしそう。


ずっと無表情だったのに、名前を言った時、ちょっとだけ拗ねたような顔を見せてくれた。

眉が寄って、少し垂れた瞳が細められて、薄くてやたらとピンク色な唇をほんの少しだけ尖らせて



「すげぇ可愛かった」



ありす、そう呟いた声を思い出すだけで顔がニヤけるのに、その名前で呼ばせてくれない事や、今ここに園宮がいない事を思うと気分が落ち込んでため息が出てしまう。


「はぁあぁああ」

「うるせぇ!!」


ガツンと言う音と共に頭頂部に凄まじい衝撃が来た。

おいてめぇ、これヅラ被ってなかったらたんこぶできてんぞ!
ふざけんな!


涙目で睨んだというのに、何故か右京はとても楽しそうに笑っていた。

目を細めて、口元なんて口角上がりまくってるんだけど

「おい永遠」

「………んだよ」



「すげぇ可愛かったっつーのは、誰の事だ?」



…………マズイ。

どうやら声に出してしまっていたらしい。


このままだと園宮に迷惑が掛かってしまう!!

それだけは避けないと。


「何の事だよ。俺そんな事一言も言ってないぞ」

「ほーう、庇うのか……増々気になるじゃねぇか」


面白がっている右京の隣では、副会長の雅后まさきが眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔をしていた。


マズイ マズイ マズイ

右京はともかく、雅后に知られたら園宮虐められそう!!

ぜったいに隠さないと!!!


「だから何の事だよ!俺は何も知らないから!昼休み終わるからもう行くぞ!」


焦るあまり大声になってしまった……

逃げるのは嫌だけど、あのままあそこにいたら間違いなく問い詰められて園宮の存在がバレてしまう。

園宮に迷惑がかかるくらいなら逃げる事なんて何ともない。
俺は、あの騒ぎの時に一緒にいた奴等を急かして慌ただしく食堂から出て行った。



どうかこのまま右京達が諦めてくれますように



俺の願いは叶わず、後日とんでもない形で右京は園宮と出逢う事になる
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感想 4

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みんなの感想(4件)

アリアドス
2025.02.16 アリアドス

別サイトでこちらの作品を見つけ、続編をいまだにまってます。
素敵な作品を手掛けてくださりありがとう!!

解除
れいれい
2022.02.08 れいれい

次も見たいなぁと楽しみにしております♪
めちゃくちゃお話好きです

解除
ルフ
2021.10.15 ルフ

6ページの真ん中あたりの

「仕種」は「仕草」

のほうが読みやすいと思います。
そのあたりも考えておられたらすみません。

2021.10.15 蜂蜜

ご指摘ありがとうございます。
読みづらかったら申し訳ありませんが、変えるつもりはありません。
ご了承下さいますようお願い致します。

解除

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