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67. 現の際(うつつのきわ) ♥
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「止めない」
ちゃんと言った。止めて欲しいって。なのに……
「今止めたら、辛いだけだろう」
議長さんはそう言ってからフッと息を漏らした。今止めたらって、今止めて貰わなければどうなる?
「で、でもっ、ん。こ、こんな、の、ヤダ……っ」
僕の顎に手を掛けて、言葉が終わらないうちにまた唇を合わせてきた。まるで僕の言葉を飲み込んで、その先を言わせないように。
熱い舌と、柔らかい唇で上唇をやわやわと食まれ、咥内の柔らかな粘膜を舌先で撫でられた。その間さえ、議長さんの指が僕の胸の先や、腰骨の辺りをくすぐるように滑る。
「ふ、あぁ、ぎ、ぎちょぅ、さんっ」
僅かに開いた唇から抗議の声を挙げて、熱い胸板を押し返そうとするけどそんな僕の抵抗なんて、ちっとも気にならない様だ。ふっと力が抜けた瞬間を見逃す事も無く、片手で僕の両手首を纏めると頭の上に止めに置かれた。
「な、ナニ?……」
左手一つで僕の両手を拘束すると、腕の内側の柔らかな部分を唇がなぞってきた。
「や、っ」
こんな場所にキスされた事も、舐められたことも無い。腕から脇を掠め、鎖骨をなぞって乳首をちゅくっと吸われれば、僕の腰がびくりと跳ねた。
こんな快感を、僕は知らない。
「うっ、嫌だって、い、言ってるの、にっ」
途切れ途切れに泣き声みたいになった。初めての過ぎた快感に、僕の気持ちを身体が裏切る。もう、もう、もう!
「……ハル。もう少しだ」
「っ!?」
何だ。ナニ!?
僕の中心が、温かく湿った感覚に包まれた。それは熱くて、僕のソレを扱くみたいに蠢く何かが絡まって……
敏感になった先端から、根元までをキュッと絞られたかと思うと幹の部分をチロチロと甘噛みされるみたいな感じがした。
まさか、まさか、まさか、まさかっ!?
込み上げ、熱い固まりが湧き上がる快感に茹でられるみたいにぼうっとしている。それでも僕は薄っすらと目を開けて、僕のソコを見ようと頭を上げた。
「!?」
ああ、やっぱり!? そこには議長さんの頭があった。そうだ、僕のソレは議長さんの口に咥えられ、与えられる快感に嬉しそうに勃上がっていた。
「ハル」
ああ、駄目だ。もう駄目だ。議長さんの口からぽろりと出た僕のソレは、もういっぱいいっぱいになっていた。なのに、伸ばされた舌先で先端の窪みに捻じ込まれるみたいに嬲られれば……
「……んっ、も、う出ちゃ、んっ」
幹の付け根を長い指がカリカリと擦られれて、僕のソレは耐えられない様に震えた。
「ハル、出してしまえ」
食まれたまま、低い声が聞こえて一層強く吸われた瞬間、僕は一気に熱を吐き出してしまった。
「んっはっ、はぁっ、はぁ……」
僕は、初めて‥‥‥他人の口淫によって射精した。
「ハルカ様、おはようございます」
呼びかけられて、僕は目を覚ました。聞き慣れたハノークさんの声だ。
僕は思いきり飛び起きた。
広いベッドの上で、いつもの寝間着に身を包んだ状態だった。
「えっ? あ?」
思わず辺りを見回す。普段の僕は寝相もそんなに悪くない。大体寝た時とほぼ同じ姿勢で朝目が覚めるんだけど……
シーツも、枕も上掛けの布団も、いつもと変わらないように見えた。
「まさか……夢? 夢だった?」
ハノークさんの声で起こされるまで熟睡していたことも驚きだ。こっちの世界に来てから何となく眠りが浅くなった感じがしていたから。
はっとして、僕は寝間着の紐を引っ張り胸を開いて自分の身体を見た。身体は寝汗を搔いた様子も無くサラリとしている。
何も無かった? 昨夜のアレは夢だった? だとしたらなんて夢を見た? 僕は頭を抱えた。そしてズボンの中も慌てて覗き込んだ。
イヤらしい夢を見て、その代償として粗相をしてしまったかと青くなった……けど……
「あ、大丈夫、だった?」
ソコは何もなっていなかった。確かに朝の生理現象的に兆しはちょっと見えたけど。
ああ、良かった。僕はほっと息を吐いた。
「ハルカ様、入っても宜しいですか?」
あたわたしていた僕は、うっかりハノークさんの事を忘れていた。
「あっ、はい。起きています。どうぞ」
僕はベッドから慌てて滑り降りた。
「おはようございます。ああ、これからお着替えなんですね。よく眠れましたか?」
ハノークさんがそう言いながら僕の方に近づいて来た。普段なら、ハノークさんが声を掛けて来る前に僕は大体目を覚ましていて、着替えも済んでいることが多い。眠りが浅いせいか、ちょっとした音や明るさとかに敏感になっているのかもしれない。
だから、今朝みたいにハノークさんが来た時に着替えをすることは珍しい。
「あ、はい。よく眠れたみたいです。たった今目が覚めたんです。寝坊しちゃいましたね」
僕は照れ隠しにそう言って笑った。先までのあたわた振りを思い出したからだ。エッチな夢を見て、それがまさかの議長さんにやられた事だったなんて、僕の思考はどうなってるんだ?
僕は決して男が好きなわけじゃない。今までだって恋愛対象は女の子だったし。まあ、確かにキスやそれ以上の事もしたことは無かったけど……
なんで議長さんなんだ? おかしいだろ僕。思い出すと顔が熱くなった。不味い、こんな顔ハノークさんには見せられない。僕はぶんぶんと頭を振って熱を払う。
「どうかされました? お顔が少し赤いようですけど……」
「えっ、イヤ、いいえ大丈夫です。えっと、よく眠れたんで目が覚めていなくって」
思い出したら恥ずかしくなって、僕は何とか誤魔化した。
「ふっ、そうですか。よく眠れたのでしたら良かったです。ところで今日のご予定ですが、中央大神殿に行かれますか? 昨日は結局、ハルカ様の衣装を持って来るのを忘れてしまいましたから。どうされますか?」
ハノークさんは僕が着替えるのを手伝ってくれようと、着替え用の衣類箱を開けた。
「ああ、そうでしたね。父さんの事で忘れてました。取りに行きましょうか。きっと張替え用の弦も用意してくれていますよね」
僕は答えると、寝間着を脱いでハノークさんの差し出してくれた長袴を受け取り傍の椅子に座った。少し幅のあるゆったりした長袴は、サラリとしていて履きにくいんだ。
僕は両足を長袴に入れようと、椅子に腰を掛けたまま前屈みになった。ハノークさんはそんな僕の横に膝を着いている。
「それでは、神殿に連絡し---!?」
ハノークさんの言葉が止まった。
「?」
僕は屈んだまま、ハノークさんの方に顔を向けた。何だ? ハノークさんが僕の頭? を見て固まっている。
「? ハノークさん?」
僕は両足を突っ込むと紐を持って長袴を引き上げて、勢いよくその場に立ち上がった。
「? どうかしました? ハノークさん?」
固まっていたハノークさんは、僕の顔を見上げると一瞬じっと目を見詰められた。何だろう? 僕、何かしたか?
「……ハルカ様、今日は衣装を変えましょう」
「へ? 変えるんですか?」
基本この世界の衣装は、そんなにデザインに変りは無いと思うんだけど。変えた方がいいの? 何か理由があるの?
「あ、ええ、今日は少し日差しが強くなりそうですから、襟の高い上着にしましょう」
「そうなんですね」
今、この世界は季節的には日本の夏に近い。でも日本の夏みたいに湿気が多く無くて、どちらかと言えば乾いていて日差しが強い。だからなのか、外に行く時などは被り物を頭に被ったり、直接日差しに当たらない様に薄手の長袖や襟のある衣装を着る。
僕は言われるままに頷くと、衣装箪笥から新たに選ばれた上着を受け取った。
うん。薄い水色で涼しそうだけど、首筋を全部覆う程の高い襟の形だ。へえ、初めて着る形だな。
「今日はコレを着ましょう。良くお似合いですよ」
ハノークさんはそう言って、その長い指先で僕の乱れた髪を梳くとキュッと上着の襟元を直してくれた。
……まるで、見えちゃいけない何かを隠すように……
ちゃんと言った。止めて欲しいって。なのに……
「今止めたら、辛いだけだろう」
議長さんはそう言ってからフッと息を漏らした。今止めたらって、今止めて貰わなければどうなる?
「で、でもっ、ん。こ、こんな、の、ヤダ……っ」
僕の顎に手を掛けて、言葉が終わらないうちにまた唇を合わせてきた。まるで僕の言葉を飲み込んで、その先を言わせないように。
熱い舌と、柔らかい唇で上唇をやわやわと食まれ、咥内の柔らかな粘膜を舌先で撫でられた。その間さえ、議長さんの指が僕の胸の先や、腰骨の辺りをくすぐるように滑る。
「ふ、あぁ、ぎ、ぎちょぅ、さんっ」
僅かに開いた唇から抗議の声を挙げて、熱い胸板を押し返そうとするけどそんな僕の抵抗なんて、ちっとも気にならない様だ。ふっと力が抜けた瞬間を見逃す事も無く、片手で僕の両手首を纏めると頭の上に止めに置かれた。
「な、ナニ?……」
左手一つで僕の両手を拘束すると、腕の内側の柔らかな部分を唇がなぞってきた。
「や、っ」
こんな場所にキスされた事も、舐められたことも無い。腕から脇を掠め、鎖骨をなぞって乳首をちゅくっと吸われれば、僕の腰がびくりと跳ねた。
こんな快感を、僕は知らない。
「うっ、嫌だって、い、言ってるの、にっ」
途切れ途切れに泣き声みたいになった。初めての過ぎた快感に、僕の気持ちを身体が裏切る。もう、もう、もう!
「……ハル。もう少しだ」
「っ!?」
何だ。ナニ!?
僕の中心が、温かく湿った感覚に包まれた。それは熱くて、僕のソレを扱くみたいに蠢く何かが絡まって……
敏感になった先端から、根元までをキュッと絞られたかと思うと幹の部分をチロチロと甘噛みされるみたいな感じがした。
まさか、まさか、まさか、まさかっ!?
込み上げ、熱い固まりが湧き上がる快感に茹でられるみたいにぼうっとしている。それでも僕は薄っすらと目を開けて、僕のソコを見ようと頭を上げた。
「!?」
ああ、やっぱり!? そこには議長さんの頭があった。そうだ、僕のソレは議長さんの口に咥えられ、与えられる快感に嬉しそうに勃上がっていた。
「ハル」
ああ、駄目だ。もう駄目だ。議長さんの口からぽろりと出た僕のソレは、もういっぱいいっぱいになっていた。なのに、伸ばされた舌先で先端の窪みに捻じ込まれるみたいに嬲られれば……
「……んっ、も、う出ちゃ、んっ」
幹の付け根を長い指がカリカリと擦られれて、僕のソレは耐えられない様に震えた。
「ハル、出してしまえ」
食まれたまま、低い声が聞こえて一層強く吸われた瞬間、僕は一気に熱を吐き出してしまった。
「んっはっ、はぁっ、はぁ……」
僕は、初めて‥‥‥他人の口淫によって射精した。
「ハルカ様、おはようございます」
呼びかけられて、僕は目を覚ました。聞き慣れたハノークさんの声だ。
僕は思いきり飛び起きた。
広いベッドの上で、いつもの寝間着に身を包んだ状態だった。
「えっ? あ?」
思わず辺りを見回す。普段の僕は寝相もそんなに悪くない。大体寝た時とほぼ同じ姿勢で朝目が覚めるんだけど……
シーツも、枕も上掛けの布団も、いつもと変わらないように見えた。
「まさか……夢? 夢だった?」
ハノークさんの声で起こされるまで熟睡していたことも驚きだ。こっちの世界に来てから何となく眠りが浅くなった感じがしていたから。
はっとして、僕は寝間着の紐を引っ張り胸を開いて自分の身体を見た。身体は寝汗を搔いた様子も無くサラリとしている。
何も無かった? 昨夜のアレは夢だった? だとしたらなんて夢を見た? 僕は頭を抱えた。そしてズボンの中も慌てて覗き込んだ。
イヤらしい夢を見て、その代償として粗相をしてしまったかと青くなった……けど……
「あ、大丈夫、だった?」
ソコは何もなっていなかった。確かに朝の生理現象的に兆しはちょっと見えたけど。
ああ、良かった。僕はほっと息を吐いた。
「ハルカ様、入っても宜しいですか?」
あたわたしていた僕は、うっかりハノークさんの事を忘れていた。
「あっ、はい。起きています。どうぞ」
僕はベッドから慌てて滑り降りた。
「おはようございます。ああ、これからお着替えなんですね。よく眠れましたか?」
ハノークさんがそう言いながら僕の方に近づいて来た。普段なら、ハノークさんが声を掛けて来る前に僕は大体目を覚ましていて、着替えも済んでいることが多い。眠りが浅いせいか、ちょっとした音や明るさとかに敏感になっているのかもしれない。
だから、今朝みたいにハノークさんが来た時に着替えをすることは珍しい。
「あ、はい。よく眠れたみたいです。たった今目が覚めたんです。寝坊しちゃいましたね」
僕は照れ隠しにそう言って笑った。先までのあたわた振りを思い出したからだ。エッチな夢を見て、それがまさかの議長さんにやられた事だったなんて、僕の思考はどうなってるんだ?
僕は決して男が好きなわけじゃない。今までだって恋愛対象は女の子だったし。まあ、確かにキスやそれ以上の事もしたことは無かったけど……
なんで議長さんなんだ? おかしいだろ僕。思い出すと顔が熱くなった。不味い、こんな顔ハノークさんには見せられない。僕はぶんぶんと頭を振って熱を払う。
「どうかされました? お顔が少し赤いようですけど……」
「えっ、イヤ、いいえ大丈夫です。えっと、よく眠れたんで目が覚めていなくって」
思い出したら恥ずかしくなって、僕は何とか誤魔化した。
「ふっ、そうですか。よく眠れたのでしたら良かったです。ところで今日のご予定ですが、中央大神殿に行かれますか? 昨日は結局、ハルカ様の衣装を持って来るのを忘れてしまいましたから。どうされますか?」
ハノークさんは僕が着替えるのを手伝ってくれようと、着替え用の衣類箱を開けた。
「ああ、そうでしたね。父さんの事で忘れてました。取りに行きましょうか。きっと張替え用の弦も用意してくれていますよね」
僕は答えると、寝間着を脱いでハノークさんの差し出してくれた長袴を受け取り傍の椅子に座った。少し幅のあるゆったりした長袴は、サラリとしていて履きにくいんだ。
僕は両足を長袴に入れようと、椅子に腰を掛けたまま前屈みになった。ハノークさんはそんな僕の横に膝を着いている。
「それでは、神殿に連絡し---!?」
ハノークさんの言葉が止まった。
「?」
僕は屈んだまま、ハノークさんの方に顔を向けた。何だ? ハノークさんが僕の頭? を見て固まっている。
「? ハノークさん?」
僕は両足を突っ込むと紐を持って長袴を引き上げて、勢いよくその場に立ち上がった。
「? どうかしました? ハノークさん?」
固まっていたハノークさんは、僕の顔を見上げると一瞬じっと目を見詰められた。何だろう? 僕、何かしたか?
「……ハルカ様、今日は衣装を変えましょう」
「へ? 変えるんですか?」
基本この世界の衣装は、そんなにデザインに変りは無いと思うんだけど。変えた方がいいの? 何か理由があるの?
「あ、ええ、今日は少し日差しが強くなりそうですから、襟の高い上着にしましょう」
「そうなんですね」
今、この世界は季節的には日本の夏に近い。でも日本の夏みたいに湿気が多く無くて、どちらかと言えば乾いていて日差しが強い。だからなのか、外に行く時などは被り物を頭に被ったり、直接日差しに当たらない様に薄手の長袖や襟のある衣装を着る。
僕は言われるままに頷くと、衣装箪笥から新たに選ばれた上着を受け取った。
うん。薄い水色で涼しそうだけど、首筋を全部覆う程の高い襟の形だ。へえ、初めて着る形だな。
「今日はコレを着ましょう。良くお似合いですよ」
ハノークさんはそう言って、その長い指先で僕の乱れた髪を梳くとキュッと上着の襟元を直してくれた。
……まるで、見えちゃいけない何かを隠すように……
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