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44. 何故そうなるの!?

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 どういうことでしょう。なぜこんな状況になっているのでしょうか?



 只今、学院の本館、応接室にいます。私達は、二人掛けのソフアに掛けてテーブルを囲んでいます。

 私の隣には、あの鑑定式で金の刺繍ローブを着た魔法科学省のお役人様です。私的には、ヤツモドキ様と呼ばせて頂いていた方です。そして、ハート先生とエーリック殿下。私の正面には、今日初めてお会いした双子王子のパリス様とカルン様。お二人の隣にはオーランド様で……

 ……私の右側に、



 



 そうですわ。ヤツとヤツモドキ様に挟まれているようなものですわ。どうしてこうなりましたっけ?









「君は、随分と稀な識別を持っているね。私も初めて見た」

 目の前に立つヤツモドキ様は、長い銀髪ストレートにグリーントルマリンの瞳がキリリとしたお美しい方ですわ。秀でた額の抜ける様な肌の白さが、少しばかり不健康な感じがしないでもありませんけど。真正面に立たれたその方は、綺麗な弧を描いて唇を上げると私に向かって更にこうも言いました。


「何とも興味深いね……君?」

 そして、鑑定式が終わった後、帰ろうとする私はローブ集団に引き留められ、訳の分からないまま応接室迄連れて来られたのです。そう言えば、エーリック殿下には鑑定式の方法は伺いましたけど、魔力があった場合の事は全く聞いていませんでした。



 そして、ヤツモドキ様に何故か、応接室にこのメンバーと一緒に座っている訳です。
 どういうこと? これから何があるのですか?

 というか、この席って思いっきりヤツと近いですわ。今までで一番の接近です。それに、ヤツモドキ様とヤツは本当によく似ていて、落ち着きません。5年前のトラウマでしょうか? 似た顔に挟まれているって、何の修行でしょう。

「久しぶりだね? 皆元気だった?」

 ヤツモドキ様が、優雅にティーカップを手にしておっしゃいました。皆さんの事をご存じという事ですわね。確かにこの顔は王室関係者でしょうから。ここにいる方は皆お知り合いでしょう。





 でも、ダレ?







「おい、レイシル。まず彼女に自己紹介しろ」

 ハート先生が、ヤツモドキ様に向かって呆れたように言いましたわ。そうですわ。それが正解ですわ。

 ヤツモドキ様は、そうだった。というように私の顔をまじまじとご覧になります。それでなくても隣同士なのに、随分と、ち、近いですわ! もう少し離れて下さい! 思わず仰け反ってしまいます。

「レイシル様。初対面の女性に随分不躾ですね? ジロジロ見るのは止めて下さい。シュゼット、大丈夫?」 

 エーリック殿下が助け舟を出して下さいました。この方、レイシル様と言うのですね? 随分失礼な方ですわ。


 このは失礼な方が多いのでしょうか!?


「ああ。ごめん。100年振りに現れた、だからよく見てしまった。自己紹介が遅くなり済まない。俺はレイシル・コール。王宮神殿の神官長だから姓は無い。でも、まあ見て判るだろうが王族の一人だ」

 レイシル様ですか。何だかさっきまでと口調が変わったような……

「レイシル様は、国王陛下の異母弟に当たる。今は王宮神殿の神官長と、魔法科学省の魔法技師で鑑定士の長をしていらっしゃる」
「そうそう。その通りだ」

 ヤツから追加情報が出てきましたわ。

 レイシル様が頷きながらお茶を飲んでいます。

 コレールに戻ってきて、ヤツが私に直接、初めて、話しかけてきました。思わず、隣を見てしまいました。何と、ヤツも私を見ていましたので、思いっきり目が合いました。









(オイ。コラ。先に言うことがあるだろう?)







 と、思いました。一瞬ですわよ? そう思ったのは。







「それで、レイシル様? このメンバーを集められたのは何か御用があるのですか?」

 多分、顔を見合わせて固まっていた私を見て、エーリック殿下が機転を利かせてくれたのだと思います。エーリック殿下の方を見ると、目配せをするように片目を瞑りました。ご配慮ありがとうございます。

「ああ。ほら、久しく会っていないから皆の顔も見ておかないと。それに、折角我が甥っ子達にも魔力があることが識別されたし、何より光の識別者が現れたのは、魔法科学省としても大変に喜ばしい事だからな! 100年近く空席だった光の識別者が、ようやく現れたのだから!」





「あの・・・、レイシル様?」





 肝心な事を聞いておかないと。このまま流されてしまいそうな感じがしてなりませんもの。



「ん? 何か? シュゼット・メレリア・グリーンフィールド」



 またフルネーム呼びされましたわ。



「あのですね。私の家系に魔法術師は一人もいないのです。私が、その……100年振りの光の識別者というのは本当なのでしょうか?」

 確かにお父様もおっしゃっていました。グリーンフィールド公爵家の血には魔力は無いって。でも、あった。ということですか?

「うーん。しっかり調べないと判らないけど、もしかしたら先代の鑑定士達が気付かなかったっていうこともあり得るかな。何と言っても100年間いなかった存在を識別できるのは、それなりの能力者でなければ無理だ。君の事が判ったのだって、魔術応用学の俺と系統学のシルヴァがいたから判った。過去に俺達ほどの人材が揃ったことは無いから、もしかしたら居たのかもしれないな」

 珍し過ぎて、判らなかった? そんなものでしょうか? もしそうなら、グリーンフィールド公爵家には光の識別者が、過去にいた可能性があったということ?

「因みに、光の識別は、何が出来るのでしょうか?」

 恐る恐る聞いてみます。

「多分。光の操作。出現。消滅? でも、一番有用な術式が実現可能ならば……」
「可能ならば?」
「癒しの効果、かもな?」

 ふむ。判ったような? 判らないような?







「「あの! レイ! 僕達も魔力が使えるようになるのですね?」」

 真正面のパリス様とカルン様が、声を揃えてレイシル様に尋ねました。

 このお二人は、緩めの銀髪巻き毛にグリーン掛かった琥珀色の瞳です。何でしょう、高級な長毛種の仔猫の様な感じです。その髪を思いきり撫で繰り回したい! なんて思ってしまう可愛らしさですわ。

「こら、お前達! レイシル様に失礼だぞ」

 オーランド様が、二人を諫めるように言うと、これまた可愛らしく同時に肩を竦めました。

「パリスもカルンもこれから、魔法術学の授業を受けて貰う。中等部では、毎週木曜日にある特別授業だ。シュゼット、君もその授業を受けて貰うよ。但し、初回の導入教育の授業だけ。その後は、魔法科学省の特別講義を受けて貰う」
「特別講義、ですか?」

 関係無かったと思っていた魔法のせいで、何だか思ってもいなかった方向へ。

「レイシル様、その特別講義とは、どのような講義なのですか? それは、私達が受けている講義ですか?」

 エーリック殿下も、特別講義を受けていらっしゃるという事ですか。

「最初は俺が専任で講義する。まあ、講義と言っても研究と解明だな。何せ、光の識別は100年間研究が進んでいないのだから。貴重な光の識別者。それも、全く魔力の系統でない家系から出現した。興味も関心も尽きないね」

 とっても楽しそう。

「レイシル様が専任で? シュゼットに? 講義を?」

 何となくですけど、聞いたエーリック殿下の表情が暗いような感じがします。それにハート先生も。

「とにかく、魔法科学省としてはを手に入れた。グリーンフィールド公爵家には悪いが、貴重な光の識別者として、みっちり4年間魔法術の習得をして、学院卒業後は入省して魔法術士になって貰う事になる。近いうちに公爵家に挨拶に伺うから、そのつもりでいてくれ。いいね? シュゼット・メレリア・グリーンフィールド」
「「「はあ!?」」」

 私を含めて、双子王子を除く全員が声を上げました。

「えっ? ダメ?」

 全く理解できないといった表情で、レイシル様が腕組みをして私達を見廻しました。

 いや、駄目でしょう? そんな簡単に私の将来を決めないで下さいませ!

「レイシル様。残念ながら、それは無理です」



 ヤツがピシャリと言いましたわ。はっきり、きっかり言い切りましたわ。




「彼女は、私のですから」







 ええっ!! 何で、ここで爆弾投下するの! 何なのコイツ!?



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