218 / 231
218話 そして近付く大一番④
しおりを挟む
「…大勝負が目の前というのは、貴様も聞いているだろう?
その直前だというのに、それは何をしでかしたんだ?」
やってきたのはソウクロウの活動拠点、明穏寺院の裏口。
そこで、俺の左腕を指すソウクロウの視線を受けながら言われる。
長袖の先からは、巻かれた包帯がちらりと見えていた。
「まぁ、色々あってな。」
ロロとの勝負の時の、ロロの噛み付きの攻撃。あれを強引に払ったのが良くなかった。
魔力の毛皮を貫いた牙は、加減されてたのか刺さりこそ浅かったが、払う時に皮膚を切り裂いていった。
怪我自体は覚悟しての事だったし構わなかったのだが、問題は後処理だった。
医療品なんて必要になってから買う程度、包帯なんて家にある訳も無く。けど買いに行くにも、止血くらいはしないと通報されかねない程の怪我。
そこで思いついたのが、ハルバードみたいな感じで、任意の物を召喚術で作り出せないかな、と。
で試してみたら、右手に現れる白い布の円筒。思惑は成功した…かに思えた。
けど問題点にすぐぶち当たった。ロールの端が剥がれない。召喚に成功させる為にイメージしたものは、円筒型の布の塊でしかなかった。
どうにか包帯としようとイメージしようとしたが、じわじわと染みる痛みで硬直する思考回路ではそれも叶わず。
結局有事の為に用意されていたナナノハの部屋の救急箱から包帯を貰い、今に至る。
…というのを勝負の話と合わせると長くなるから、必要な部分だけ要約して伝えた。
「…成程。
もしや今回の頼み事の件も、それに関係しているのか?」
「あぁ。賭けの勝負に勝ったロロの要求として。
それに、俺自身も『できる事ならそうした方がいい』って思った。」
「…一先ず、事情は分かった。」
そうして通された部屋に置いてある、御札に包まれた物。丁度握り拳くらいのサイズだ。
それをソウクロウが取り、こちらに向き直る。
「事前に通告しておく。
これまでと違い、今回の件は貴様の意思によるもの。それでまた暴走でもした時は、こちらも『然るべき対応』を取る。
その覚悟があっての事だな?」
「あぁ、頼む。」
ソウクロウによって封印が解かれ、中の物が露わになる。
俺の呪いの根源、獣の骨を溶かし作られた、槍の刃だ。
その直前だというのに、それは何をしでかしたんだ?」
やってきたのはソウクロウの活動拠点、明穏寺院の裏口。
そこで、俺の左腕を指すソウクロウの視線を受けながら言われる。
長袖の先からは、巻かれた包帯がちらりと見えていた。
「まぁ、色々あってな。」
ロロとの勝負の時の、ロロの噛み付きの攻撃。あれを強引に払ったのが良くなかった。
魔力の毛皮を貫いた牙は、加減されてたのか刺さりこそ浅かったが、払う時に皮膚を切り裂いていった。
怪我自体は覚悟しての事だったし構わなかったのだが、問題は後処理だった。
医療品なんて必要になってから買う程度、包帯なんて家にある訳も無く。けど買いに行くにも、止血くらいはしないと通報されかねない程の怪我。
そこで思いついたのが、ハルバードみたいな感じで、任意の物を召喚術で作り出せないかな、と。
で試してみたら、右手に現れる白い布の円筒。思惑は成功した…かに思えた。
けど問題点にすぐぶち当たった。ロールの端が剥がれない。召喚に成功させる為にイメージしたものは、円筒型の布の塊でしかなかった。
どうにか包帯としようとイメージしようとしたが、じわじわと染みる痛みで硬直する思考回路ではそれも叶わず。
結局有事の為に用意されていたナナノハの部屋の救急箱から包帯を貰い、今に至る。
…というのを勝負の話と合わせると長くなるから、必要な部分だけ要約して伝えた。
「…成程。
もしや今回の頼み事の件も、それに関係しているのか?」
「あぁ。賭けの勝負に勝ったロロの要求として。
それに、俺自身も『できる事ならそうした方がいい』って思った。」
「…一先ず、事情は分かった。」
そうして通された部屋に置いてある、御札に包まれた物。丁度握り拳くらいのサイズだ。
それをソウクロウが取り、こちらに向き直る。
「事前に通告しておく。
これまでと違い、今回の件は貴様の意思によるもの。それでまた暴走でもした時は、こちらも『然るべき対応』を取る。
その覚悟があっての事だな?」
「あぁ、頼む。」
ソウクロウによって封印が解かれ、中の物が露わになる。
俺の呪いの根源、獣の骨を溶かし作られた、槍の刃だ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる