そして俺は召喚士に

ふぃる

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218話 そして近付く大一番④

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「…大勝負が目の前というのは、貴様も聞いているだろう?
 その直前だというのに、それは何をしでかしたんだ?」
 やってきたのはソウクロウの活動拠点、明穏寺院の裏口。
 そこで、俺の左腕を指すソウクロウの視線を受けながら言われる。
 長袖の先からは、巻かれた包帯がちらりと見えていた。
「まぁ、色々あってな。」

 ロロとの勝負の時の、ロロの噛み付きの攻撃。あれを強引に払ったのが良くなかった。
 魔力の毛皮を貫いた牙は、加減されてたのか刺さりこそ浅かったが、払う時に皮膚を切り裂いていった。
 怪我自体は覚悟しての事だったし構わなかったのだが、問題は後処理だった。
 医療品なんて必要になってから買う程度、包帯なんて家にある訳も無く。けど買いに行くにも、止血くらいはしないと通報されかねない程の怪我。
 そこで思いついたのが、ハルバードみたいな感じで、任意の物を召喚術で作り出せないかな、と。
 で試してみたら、右手に現れる白い布の円筒。思惑は成功した…かに思えた。
 けど問題点にすぐぶち当たった。ロールの端が剥がれない。召喚に成功させる為にイメージしたものは、円筒型の布の塊でしかなかった。
 どうにか包帯としようとイメージしようとしたが、じわじわと染みる痛みで硬直する思考回路ではそれも叶わず。
 結局有事の為に用意されていたナナノハの部屋の救急箱から包帯を貰い、今に至る。

 …というのを勝負の話と合わせると長くなるから、必要な部分だけ要約して伝えた。
「…成程。
 もしや今回の頼み事の件も、それに関係しているのか?」
「あぁ。賭けの勝負に勝ったロロの要求として。
 それに、俺自身も『できる事ならそうした方がいい』って思った。」
「…一先ず、事情は分かった。」
 そうして通された部屋に置いてある、御札に包まれた物。丁度握り拳くらいのサイズだ。
 それをソウクロウが取り、こちらに向き直る。

「事前に通告しておく。
 これまでと違い、今回の件は貴様の意思によるもの。それでまた暴走でもした時は、こちらも『然るべき対応』を取る。
 その覚悟があっての事だな?」
「あぁ、頼む。」
 ソウクロウによって封印が解かれ、中の物が露わになる。
 俺の呪いの根源、獣の骨を溶かし作られた、槍の刃だ。
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